ソードアート・オンラインってなんですか?   作:低音狂

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ラフィン・コフィンの代わりとなるのか、それともラフィン・コフィンも登場させるかは未定ですが、とりあえず宗教団体を登場させることにしました。
多分、宗教が出来たって不自然ではないはずですから。
それと、今回はあの人達が登場します。名前は明記していませんが。


こんな世界では宗教の一つや二つ出来たって可笑しくないでしょう

 

「魂の開放っテ……宗教家の気持ちは理解出来無いナ」

 

 始まりの街にて配布されていた一枚のチラシを手に、同じギルドに所属する――メンバーは2人しかいない――アルゴが、苦笑いを浮かべながらそう呟く。

 宗教家の気持ちは理解出来無い、確かに彼女の言葉には頷けるものがある。いや、寧ろこれを否定する材料を探すほうが余程酷というものだろう。でも、今はそれよりも……。

 

「アルゴ、貴女は何故私の腰に座っているのですか」

 

 幸い、重いだとか腰が痛いということは無いのだが、如何せん何故いきなり座ってきたのかが理解できない。

 アルゴの手にするチラシを貰い、そして2人でとっている取っている宿に帰ってきたのだが、その前に掃除に出ていた為に――理由はそれだけに非ず――少々疲れが溜まっていた。

 心地よい疲労感に身を任せて、ベッドにうつ伏せに寝転んだのだが、彼女は椅子に座るかの如く、さも当然のように私の腰に座ってきたのだ。

 

「そんな細かいことは良いじゃないカ」

「いや、細かくはないと思うのですが……」

 

 私の言葉など気にした様子もなく、あろうことか私の臀部をタップするように叩くアルゴ。だがその直後、何を思ったのか、アルゴは私のお尻を撫で始めた。

 相手が女性でなければ、今頃私の目の前にハラスメント防止コードが発動し、ボタンをタップすれば相手を監獄に飛ばすことが出来る。しかし、残念ながら?アルゴは女性なため、コードは無効であった。

 ただ、その手つきは感触を愉しむ為のものではなく、ただの遊び半分で撫でているようなものだったため、特に取り乱すようなことはない。

 

「アルゴ、申し訳ありませんが、私には女色の気はありません。くっ、私が不甲斐ないばかりに!」

「オレっちだって無いからナ!?」

 

 普段であれば、「それは残念ダ」とぐらい言いそうだが、彼女も疲れているのか、それとも手にしたチラシになにか思うところがあるからか、大凡素の反応を見せた。

 もしかすると、私が本気で悔しそうな声音を作ったからという可能性もあるかもしれない。……違うか。

 

「……なぁ、アルトリア」

 

 そんなアルゴは、どうやら真面目な話をしたいらしい。人を食ったようないつもの声音とは違い、どこか沈んだ声で問いかけてくる。

 

「なんで奴らは、平気で人を殺せる(・・・・・・・・)んだろうな。なんで奴らは、平気で死ねる(・・・・・・)んだろうな」

 

 今日の掃除の際、アルゴの情報収集が、私の足が間に合わず、2人のプレイヤーがこの世を去った。それも、私達の目の前で。

 そのプレイヤーを殺したのは、この世界で初めて確認されたPKの実行犯と、恐らく同一人物である4人組。

 全員が同じ、黒い外套を羽織って顔を隠し、そして「魂の開放を」、等と言って2人のプレイヤーを殺していたのだ。

 間に合わなかったことを悔やみつつも、先に下手人を拘束することが最優先だと、まだ生き残っている他の4人と下手人達との間に割って入った。

 だが次の瞬間、私の顔を見た彼奴らはその場に跪き、わけのわからないまま私のことを拝み始める。まるで女神の降臨を心から喜ぶ信徒であるかのように。

 いや、事実奴らは信徒そのものだったのだろう。呆気に取られた私の隙を突き、奴らは互いに殺しあった。

 予め残りHPを少なめに調整していたのか、「魂の開放を」と叫んだあと、互いに胸を刺しあった。その直後、フィールドで日々狩られている雑魚と同じように、安っぽいエフェクトを撒き散らしながら死んでいった。

 結局私自身が手を下さずとも、殺人犯達は死んだ。

 自分の手を汚すことも視野に入れていた為に、少々拍子抜けではあったが、それでも殺さずに済んだのは良いことだと一度彼らのことは頭から消し去り、殺された2人とパーティを組んでいた他のメンバーの方へと見やる。

 そこに居たのは、怯えと恨みの混じった瞳で私のことを睨みつける亡者であった。

 もともと感謝されたくて始めたことではないとはいえ、見に覚えのないことで敵意を向けられるのは、こちらとしても気分が良いとはいえない。

 生き残ったプレイヤーたちをアルゴに任せると、私は一足先にこの宿へと帰って来ていた。

 

「怖気づきましたか?」

 

 彼女の気持ちは理解できる。あれ程簡単に命を捨てることが出来るなど、正気の沙汰ではない。

 まさかこの様な奴らが相手になるとは考えても居なかっただけに、心底恐ろしいのだ。

 

「まぁ、な……私は奴らが怖いよ」

 

 いつもは自分のことを「オレっち」と称する彼女が、「私」という一人称を使う。今回ばかりは冗談でも何でも無く、本当に彼女は怯えているのだろう。

 肩越しに覗く彼女の表情は、まさに悲痛そのもの。しかし、今まで見たことのないアルゴが見れたことに、正直に言うと私は嬉しかった。

 なんだかんだと言って、この世界で一番長く行動を共にしたのが彼女。私が今最も心を開いている相手かもしれない。

 

「そうですか……少し安心しました」

 

 だから、正直な気持ちをアルゴに伝える。

 こうして、奴らのように狂った人間に対して恐怖を感じるうちは、まだ心が正常なのだから。

 

「恐怖を感じることは、決して悪いことではありません。だからアルゴ、貴女は今のままで居て下さい」

 

 この先、誰かの死を目にする機会は間違いなく増える。あんなにも呆気なく、現実味もない程簡単に人が死ぬ様を、何度も何度も目にするだろう。

 あまりにも死を見過ぎると、何れは奴らのように心が壊れるかもしれない、死そのものに快楽を見出してしまうかもしれない。

 それだけは、私としてはなんとしても避けたいことなのだ。

 

「柄にもなく真面目な話をしてしまいましたね。いい加減お腹が空きました。美味しいものでも食べに行きましょう」

「……そうだナ。というか、お前さんは真面目な奴だと思ってたんだガ?」

 

 私の提案に少し間をおき、そしていつもの声音で同意する。

 だがその提案の前に言った「柄にもなく真面目な話をした」という言葉が気にかかったのか、そこに対して指摘を入れた。

 

「攻略会議に遅れそうになる人間が、真面目なわけがないでしょう?それに、真面目という言葉は善人のための言葉です。私の様に、八つ当たりで誰かを害すると言う奴が、善人であるはずがありません」

 

 この言葉を聞いたアルゴは、まるで目から鱗が落ちたかのように間抜けな面を晒す。その直後、私の臀部を思いっきり叩きながら大笑いし始めた。

 ペインアブソーバーのおかげで痛くはないのだが痛い。矛盾していると思うが、兎に角何故か痛いのだ。

 少々真面目な話をしているはずなのに、その姿勢は、私がベッドにうつ伏せに寝転び、その上にアルゴが座るという。なんとも締まらない空気が生まれるが、私達の場合はこれでいい。

 寧ろ、真面目な話をするのに彼女を退かせ無かったのは、ただ億劫だったから、というだけではない。

 今のような軽い雰囲気に戻すための保険だったのだ。

 恐らくそう思っているのは私だけではないはず。アルゴも空気を戻しやすくするための保険として、ずっと私の上に座っていたのだろう。

 真面目な話も終わり、ご飯を食べに行くと決まったら、彼女はすぐに私の上から降り、速く食事処へ行こうと私を促す。

 

「えぇ、行きましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらず、よくそんなにも食えるよナ」

「ん?」

 

 第三層のとあるレストランにて、向かいに座るアルゴが、私の食事量を見て溜息を付き、そして呆れたように言葉を漏らす。

 ここしばらく食事量を減らしていた為に、ここまで食べるのは久しぶりだが、それでも彼女の何倍も量を食べている為にこの様なことを言ったのだろう。

 いや、今日一日で6人も人が死ぬところを見たからか。

 

「それはそうと、攻略の方は順調なのカ?」

「えぇ、今のところは」

 

 現状攻略組の活躍には特に不平不満があるわけではない。問題があるとすれば、それは自分にある。

 

「なんか含みのある言い方だナ?」

 

 言葉の隠れた意図に気付いた彼女は、そこを指摘する。

 ディアベル主体となってボスに挑む攻略組は、確かに安定してボスに挑むことができている。

 第二層で決定した私の扱い、ワンマンアーミー的な扱いにもだいぶ慣れてきたこともあり、今のところボス戦による死者は出ていない。

 だから先程も言った通り、問題は私の個人的なものに過ぎないのだ。

 

「攻略組そのものは大丈夫だと思います。しかし、私自身の武器が……」

「曲刀、だったよナ?」

 

 確かに同じギルドに所属している、というか2人でギルドを作ったのだが、私達は同じ前線で戦っているわけではない。

 アルゴは今まで通り情報屋としての活動と、そしてこのギルドの目的であるPKの情報収集を。

 そして私は言わずもがな、フィールドに出て1人黙々と敵を屠り続け、いざというときはPKと直接斬り合う。

 活動している時以外はなるべく共に行動するようにはしているが、ずっとというわけにもいかない。

 それ故にアルゴは私の武器を改めて確認する。

 

「えぇ、今は曲刀です。ただし、刀スキルが取れるようになったら直ぐにそちらを取りますが」

「……え?」

 

 するとどういうわけか、宿にいた時と同様の間抜け面を晒すアルゴ。一体何だと言うのだろうか。

 

「ハァ……まったく、アルトリアには驚かされっぱなしだヨ」

「でしょう?」

 

 何を指して驚かされっぱなしと言っているのかは分からないが、とりあえず同意だけはしておく。

 それはそうとして、今は目の前の料理に集中しなければならない。これはもはや、私の使命とさえ言っても過言ではない。

 だから、私に近づいてきているプレイヤーの存在など、名前を呼ばれるまで気付くことが出来なかった。

 

「もしかして、佐々木、さん……?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうしてゲームなのに人が死ななければいけないのか。この世界は一体何のために作られたのか。どうして私はこの世界にいるのか。

 同じ高校の部活の仲間とこのゲームにログインし、そして、この世界での死は現実世界でも死に至ることを告げられたあの日から、ずっと考え続けていることだ。

 フィールドに出てモンスターと対峙するのが怖い。

 自分が、そして仲間が敵の攻撃を受けるのが怖い。

 現実は残酷だと言うが、私にとっては今いるこの世界こそが現実であり、そして恐ろしく残酷なもの。

 だからと言って、いつまでも宿に引きこもっているわけにもいかず、私は一緒にログインした仲間とフィールドへ出る。

 気持ちの上では、本当は始まりの街から出たくはなかった。けれど、私達5人で過ごすには、そして少しでも安全性を確保するには、やはり自分を強化するしか道はない。

 そんなある日、この世界でタブーとされるPKが行われた報せが、このアインクラッド全域に広まった。

 人を殺すことは、理屈とか抜きに禁忌とされること。

 このゲームが普通のゲームであるのならば、PKという行為も容認されるのだが、この世界でのPKは、現実世界での殺人と同義なのだ。

 にも関わらず、ついにというべきかこのゲームでもPKが行われたという。

 その報せを聞いた私は、ますます震え上がるとともに、圏外に行くのが今まで以上に恐ろしくなってしまった。

 しかしその報せの数日後、広場の掲示板にとある告知が張られていた。

 

『PK、その他犯罪行為を見かけた方は、ギルド”LEON”にまでご報告下さい』

 

 内容は、犯罪行為に関する情報提供のお願いだった。

 どうやらこのギルド"LEON"が、犯罪者となったプレイヤーを監獄へと放り込むとのこと。

 そしてこの告知の下の方に、このギルドのメンバーらしき2人の二つ名が記載されていた。

 一人はこの世界で最も信頼できると言われている情報屋の鼠。最前線で戦うタイプではないはず、と思ったが、そのとなりに書かれた名前を見て納得することが出来た。

 

 ”選定の女神”

 

 こちらは鼠と違い、この世界で最強と言われているプレイヤー。

 なんでも、とても美しい女性プレイヤーであり、その強さは誰も隣に並び立てないほどだとか。

 私と同じ女性プレイヤーにも関わらず、前線に立ち、敵を蹴散らしているというそのプレイヤー、名前は”アルトリア”。

 一体どんな人なのだろうか。モンスターと戦うのは怖くないのだろうか。

 様々な疑問が尽きないが、アルトリアというプレイヤーは攻略組の一人。私のような、私達のような中層レベルのプレイヤーとは住む世界が違う。

 

「飯行こうぜ!」

 

 そんな私の思考を遮るように、パーティメンバーの声が聞こえてきた。

 確かに、これ以上会えるはずのない人のことを考えていても仕方がないし、何より告知がされたのは数日前のこと。雲の上の人のことを考えるより、今後、自分達が生き残ることを考えた方が余程有意義だ。

 その今後のことを考えるにも、お腹が空いていてはうまく思考もまとまらず、悪い方向にばかり行ってしまう。

 だからメンバーの提案に乗り、ご飯を食べに行くことにした。

 場所は第三層の主街区にあるプレイヤーが営むレストラン。選定の女神お墨付きということで、とても評判の良い店だ。

 このアインクラッドの中には、幾つか選定の女神お墨付きと言われているレストランがあるのだが、最前線に立つプレイヤー以外、その女神の容姿を知らないため、実質誰も見たことがないという。

 

「な、なぁ、あの人って……」

 

 店に入った途端、どうやらリーダーが知っている人を見かけたらしく、私達に声をかけてくる。

 リーダーの口ぶりからして、私達も知っている人のようだが、一体誰だろうか。

 そう思って彼の視線の先を見ると、そこには美しい金の髪と、透き通るような白い肌の女性が居た。

 その女性は、確かに私も見たことがある。なんせ、同じ高校に通っているのだから。

 

「もしかして、佐々木、さん……?」

「貴女は……」

 

 

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