海鳴市のとある公園。そこに少女はいた。
少女の名前は高町なのは。
愛嬌のある幼い顔にくりくりとした丸い瞳、栗色の髪を両端でまとめた可愛らしい3、4歳位の少女。
なのはの顔にはいつもの周りを和ませるような笑顔はなく、寂しそうな顔をして一人ブランコに座っていた。
数週間前、父親の高町士郎が仕事で意識を失うほどの大怪我をしたのが事の始まり。
それは母親の高町桃子が洋菓子店『翠屋』を開いたばかり頃であった。
開店したばかりで店が一番忙しい時期、兄姉である高町恭也、美由紀も店の手伝いや、士郎のお見舞いでなのはに構う時間も減っていた。
なのはも迷惑をかけてはいけないと思い、邪魔にならないようにと外へ出かけてきていたのだ。
だが元々内向的で友達も少なく遊ぶ相手のあてもない。
公園にやって来ても俯きながら一人でブランコを揺らすだけだった。
日はだんだん沈んでいき、公園にいた子供たちは親に連れられ一人、また一人と帰っていく。
周りが暗くなってきていることに少女が気づく頃には既に他の子供たちは公園から姿を消していた。
「……」
なのはも帰らなければいけない時間だったがブランコから動かず再び顔を伏せ寂しそうに座っているだけ。
小さいなのはの体は寂しげな雰囲気と相まって余計に小さく見えた。
何分かそうしていると後ろからゆっくりと近づいてくる影がいた。
小さい影、皆帰ったと思ったけどまだ遊んでる子がいたんだ、となのはは気にも止めることはなかった。
だがなのはが意識を影から外しても影はゆっくりとにじり寄ってくる。
それに忍者かと思うほど足音を完全に消して近づいてくる。
なのはがすぐ後ろに気配を感じた時には影の主はすぐ真後ろまで来ていた。
流石に気配を感じ、顔を上げると突然目の前が真っ暗になった。
何も見えなくなり混乱する。
もしかしたら自分は誘拐されて事件に巻き込まれてしまんじゃないかという考えが浮かび背筋が冷たくなる。
身の危険を感じて叫ぼうとすると、
「だーれだ?」
気の抜けるようなのんびりとした声がした。
「だ、誰なの?」
緊張感のなく、悪意も感じられないような声だったが全く知らない人だ。体を硬直させながら問い返すと目を解放されたのか目が見えるようになり、ブランコの前の砂場が目に映し出される。
それと同時に後ろから同い年くらいの赤のラインが入ったパーカーを着た少年が正面に回り込んできた。
撫で付けられた黒髪に一本だけ重力に反抗してぴょん、とはねたアホ毛、何が楽しいのかにこにこと笑っている。そして足元にはお使い途中なのかネギの飛び出た買い物袋が置いてあった。
「やぁ、はじめまして。ぼくは
少年は親指を立て、ウインクしながら自己紹介を始めた。
「え? あ、よろしくなの?」
なのはは急な展開についていけず戸惑いながらもなんとか挨拶を返す。
「君の名前は?」
「た、高町なのはなの」
「た、高町なのはなのちゃんか、いいなま」
「高町なのは、なの!」
「あはは、冗談だって高町なのはちゃんね」
なのはと名乗った少女は変な名前の間違いをされ、憤慨したが少年はどこ吹く風で相変わらずにこにこと笑っている。
「じゃあ、なのはちゃん、いきなりですがぼくとお友達になってくれませんか?」
そう言い少年はなのはにちいさな手を差し伸べる。
突然知らない子から友達になろうなんて言われたのは初めてでどうすればいいのか戸惑った。
思わず手を伸ばしかけたがやはり少年の考えている事が分からず、すぐ手を引っ込めてしまう。
その手を見ながら少年は「だめかな?」と瞳に涙を溜め、悲しそうな顔に歪める。
そんな少年の寂しそうな顔を見て今の自分の顔と重ねてみてしまう。
なのははなんとなくだけど、この少年を笑顔にできれば自分も心から笑えるような気がして、少年の手を握り立ち上がる。
「ううん、わたしでよければよろしくなの」
目の前の少年とならずっと笑い合える友達になれる。
これもなんとなくだけど、そんな気がして今できる精一杯の作った笑顔でよろしくと言った。
すると少年も悲しそうな顔から元の笑顔より一層嬉しそうな顔になる。
「うん、よろしく! これからなのちゃんって呼んでいい? ぼくのことはシュウとでも呼んでよ! あ、優斗でもいいよ?」
「う、うんいいけど、どこから優斗って名前は出てきたの?」
少年の急な変わりように気圧されながらも疑問を口にする。
しかし少年はなのはの疑問を聞いていなかったのか自分の足元に置いてあった買い物袋を見て思い出したように叫ぶ。
「あ、そういえばお母さんにお買い物頼まれた帰りだった! 早く帰らなきゃ!」
少年は買い物袋をつかむと足早に公園の出口に走っていく。
そして途中後ろを振り返ってなのはに思いっきり手を振り、
「じゃあね、なのちゃん! 明日暇だったらここで遊ぼうよ、約束だよ! バイバイ!」
と一方的に約束をして走り去っていった。
なのはは呆然としながら、少年が公園から出て見えなくなるまで手を振り返す。
気がつく頃には既に夕日が完全に沈んでいた。
◆
◆
◆
次の日。
なのはは昨日友達になった佐藤秀也に一方的に約束されたにもかかわらず律儀に公園にやってきていた。
公園には砂場で山を作ったり、シートを広げママゴトをしたり、ジャングルジム頂上で談笑したりとたくさんの子供たちが遊んでいる。
だがその子供たちの中を探しても肝心の秀也はどこにもいない。
からかわれただけだと思い、諦めて帰ろうとすると公園の入口に植えられていた木から声がした。
「残念だな、なのちゃん! そっちにはぼくはいないよ! どこにいるかあててみたまえ、ふぅーははははは!」
木を見ると枝とは別に黒い紐のようなものがぶら下がっている。
よく観察してみると声に反応してぴょこんぴょこん、と動いているようにも見える。
気になったので引っ張って見ると
「ちょ、いたいたい! ちぎれる! マジヤバイって、てかホントヤヴァくない!? あ、多分今ちぎれた」
と、訳のわからない奇声が上の方からする。
見上げると秀也が太い枝に足を引っ掛けてぶら下がっていた。
なのはに気づくと足を離し、反動を使いながら空中で半転して地に上手く着地した。
「もー、ひどいよなのちゃん、このアホ毛がとれたらぼくの特徴なくなっちゃうじゃないか」
「ご、ごめんなさい、なの」
「うん、いいよいいよー。なのちゃんは素直だねぇー」
秀也はアホ毛を押さえながら文句ありげな顔をしていたが謝れるとすぐ表情を変え、にこにことした笑顔になる。
「でも秀也くんって運動神経いいんだね」
「なんで?」
「だって木からおりる時くるんって」
なのはは大げさな手振りで回転する動作を伝えようとする。
「あー、うん、おじいちゃんにもらったからね」
「? 何をもらったの?」
「え? 才能だけど」
「さ、才能っておじいちゃんからもらうものだったんだ。知らなかった……」
「うん……うん? なんか違う気がするけど……まぁ、いいか!」
二人は何か勘違いしたまま、なのはは気づかず、秀也は気にしないことにした。
「でもなのちゃん、ぼくはもっとすごいことできるんだよ? 見ててね?」
秀也は後ろに下がり、体の力を抜くように軽く飛び跳ねる。
そして準備ができると勢いよく走り出し助走を1mつけると側転した。手を使わず足だけで、である。
手を使わない側転を数回成功させ、側転の勢いをそのまま利用し前方に宙返りを華麗に決め、最後は連続でバク転をしてなのはの目の前まで戻ってきた。
……これでもかと言うほどドヤ顔で。
それを見てなのははドヤ顔など気にせず目を輝かせ大きく手を鳴らした。
「す、すごいの! まるで体操の選手みたいなの!」
「ふふん、そーでしょそーでしょ」
「わたし運動音痴だから本当にすごいと思うの!」
なのはに褒められるたびに鼻を高くしてアホ毛をぴょこぴょこと動かす。
「そうなんだ、じゃあ鬼ごっこでもしようよ。動いてれば運動もできるようになるし、遊べるし一石二鳥だよ」
「でも私と秀也君の二人でするの?」
「いやいや、さすがのぼくも2人でやろうとは思わないよ。まさかなのちゃん分身でも出来るの?」
「できないよ……じゃあどうするの?」
「そこにみんないるから誘おうかと思って」
秀也が指差した先には数人の子供たちが砂場で遊んでいた。
「みんな秀也君の友達なの?」
「ううん、全然知らない子達。というよりぼく今日初めてこの公園で遊ぶからね」
「初めて会う人に話しかけるの怖くないの?」
「なんで?」
「だっていきなり話しかけて拒絶されたらどうしようって」
「大丈夫だよ、笑顔で話しかけて名前を呼び合って、お互い笑い合えればそれで友達。嫌がられるところなんてどこにもないよ」
秀也はニッ、と白い歯をのぞかせて笑う。なにもおかしくなんてないと一切疑ってない純真な笑み。
なのはも出会った時のような作り笑いではなく、自然とこぼれた笑みで秀也を微笑み返していた。
「……シュウ君は強いね」
「うん、ぼくは強いんだ! わっはっは! それじゃ一緒に遊ばないか聞いてくるね」
秀也はなのはの呼び方が変わったのにも気付かず笑いながら砂場のほうへかけていった。
改めて読み直したけどこれはひどい
↓おまけ
▲ 変出者のおじさん があらわれた ▲
コマンド?
→たたかう ぱんち
どうぐ →きっく
にげる ?
しゅうやは 変出者のおじさん に蹴りをはなった。
蹴りは急所(股間)にあたった。
変出者のおじさん はうれしそうにもだえている!