読み飛ばして構わないです。
吾輩は転生者である。
名前はまだ秀也。
……超有名な小説風に言ってみたけどなんかおかしい。
どこがおかしいんだろう? 自分を事を吾輩って呼んだからかな?
僕の名前は佐藤秀也。
さっき言った通り、転生者。
前世の名前は黒野優斗。
転生してからは折角子供に戻ったんだし友達100人目指してみようなんて考えてみたり。
とりあえず目標に向けて公園デビューというのをしてみた。
おかげで友達が15人ほど増えました。
ツッコミが将来有望な高町なのはこと、なのちゃん。
僕のテンションについてこれるが名前も顔もデフォルトな田中太郎こと、タナッティー。(たまにテンションが高すぎてウザイ)
名前のインパクトはすごいのにその他が平凡な
話しかけても5回に1回くらいしか反応してくれない無口な想馬くん。
以下
そこらじゅう遊びまわって悩みなんてなさそうに見えるけど僕にも一応悩みがある。
それは……。
それは…………。
うん、悩みがある。
「秀ちゃん、おやつよー。なんと今日は生々しいプリンです!」
「やったぁ! 今行くー」
忘れたけど悩みがあるのだ。
いや、別に忘れてないよ? アレだよ? 忘れたっていうか思い出せないだけで。
「ごちそうさまでした」
「はい、お粗末さまでした」
生チョコと生クリームが乗ったプリンを食べ終わるとお母さんがお皿を片付ける。
その様子をボーッと見ていると悩んでいたことを思い出した。
「思い出した! お母さん、遊びに行ってくるー」
「はいはい、車に気をつけてね」
「はーい、行ってきます!」
思い立ったら吉日。
荷物を持って遊びに行ってくることを伝えると勢いよく家を飛び出す。
僕が悩んでいたのは魔法のこと。
おじいちゃんからもらった戦闘の才能のおかげか運動神経はものすごく良くなってる。
けどもう一つ、魔法の才能を貰ったはずなんだけどどうやっても魔法が使えないのだ。
なので魔法が使えるように特訓しようと思う。
……魔法を使ってるところを見つかったらオコジョとか魔女ガエルとかにされたりしないだろうか?
「というわけで今日は誰にも見られないような所。廃墟にやってきましたー、ぱちぱちぱち」
廃墟玄関前で手を叩きながら口でも言ってみる。誰もいないので相槌をくれる人はもちろんのこといない。少しさみしい。
「それにね、ここはもっぱら出ると噂なのだよマイケル。
な、なんだってー一体何が出るって言うんだい? ジョニー。
それはね……幽霊、だよ。
マジかよー、こえー…………飽きた」
THE☆棒読みで一人二役の芝居してみたけど流石にめんどくさいし飽きた。
「どうせなら金髪のおねーさんの幽霊が出て欲しいな」
そんなことを言いながら開きっぱなしの玄関から廃墟の中へ入っていった。
「巨乳で金髪のおねーさんの幽霊でないかなー」
廃墟の中はいかにも廃墟だという感じだった。
壁はひび割れ、床には割れたガラスと蛍光灯の破片が散らばっている。
部屋を区切るための扉なんて取れかけていたり倒れていたりと機能を果たしてない。
1階を一通り見回ると廊下の先にあった階段を上る。
「巨乳でえっちなおねーさんの幽霊でないかなー」
2階も1階とそう大して変わらなかった。
壁の崩れてできた瓦礫に、そこらじゅうに散らばった布や綿。綿の近くにはツギハギだらけのぬいぐるみ。
部屋の中にはベットがいくつか。
元は病院だったのかな? なにか出そうな感じバリバリ最強No.1だ。
「巨乳で金髪のマミさ……おねーさんの幽霊でないかなー」
「巨乳じゃなくて悪かったわね」
人の気配はなかったはずだったけど後ろから女の子の声がする。
振り向くとそこには金色の髪をツーサイドアップにした10歳くらいの女の子が……浮いてる。
「チェンジで」
「……」
金髪で顔も好み、浮いてるのもすごいと思うけど僕は元々年上好きなのだ。
今は5歳だが転生前は中学2年だったので小学生には興味はない。
まあ、浮いてるのはすごいと思うよ? 浮いてる…………
「って浮いとるぅぅぅううう!!」
「今頃!?」
僕自身驚いたが違う意味で女の子にも驚かれた。
数分後、僕が落ち着いた頃、女の子が浮いてる理由とかを説明してくれた。
彼女の名前はアリサ・ローウェルというらしい。
「貴殿が噂の幽霊でござったか。おっと、拙者は佐藤秀也と名乗る者でござる」
「どうでもいいけど口調変わってるわよ?」
驚きすぎて口調が変わっていたらしいでごわす。
これだけ驚いたのも久しぶりでやんす。
「……治ったでごじゃるか?」
「若干悪化してる」
「あーあーあ、うん、よし、治ったおっぱい。これで大丈夫おっぱい」
「わざとやってない?」
「あ、バレた? ごめんごめん」
「ま、いいけどさ」
おお、なのちゃんと違ってすごく落ちついた反応。
なのちゃんならそこで赤面してわーわー言いそう。……今度試してみよう。
見た感じアリサちゃんは結構ドライな性格なんだろう。スルースキルとか高そうだ。
「そういえば秀也は私のことが怖くないの?」
「なんで?」
「だってわたし幽霊だし」
「うーん、そうだね。だけど残念ながら僕も一度死んでるんだよね」
そう言うとアリサちゃんはきょとんと目を丸くした。
「え? 死んだって……あなた生きてるじゃない」
「ふっふっふ、聞いて驚け! 実は僕、転生者なのです!」
アリサちゃんは訳のわからないと言いたげな顔を僕に向ける。
「転生者って……あれよね? 死んだ人が生まれ変わるっていう」
「うん、それだよ。あ、けど転生する前に違う世界に行くみたいなこと言われたっけ?」
「パラレルワールドってやつ? にわかには信じがたいなー」
「ホントだってば! 前世の名前は黒野優斗、13歳。剣道部所属。部活帰りに階段で足を滑らせ死にました!」
「そういう設定……ってわけでもなさそうね。設定作るならそんな間抜けな死に方にしないでしょうし」
「ほっといてよ」
「へー、でも本当に転生なんてあるんだ」
頬を膨らませて怒ったそぶりを見せたけどスルーされた。思ったとおりスルースキルは高いようだ。
「秀也は辛くなかった? その若さで死んだんなら親とか悲しんだでしょうし」
「んー、僕の両親さ、僕が小学生くらいの時に死んじゃったんだよね。飛行機の事故で」
「あー、ごめん」
「あ、この世界の両親はちゃんと生きてるから大丈夫だよ? それに質問の答えだけど辛くなんてないよ。この世界のお母さんはお菓子作りが上手だし優しいし、お父さんは面白い人だし喋るビー玉みたいなの作ってくれて楽しませてくれるしね。……前の友達に会えないのは少し寂しいけど」
「そっか、ただのお馬鹿な子だと思ってたけど案外強いのね」
「アリサちゃんって結構失礼だよね」
「あはは、嫌いになった?」
「むしろ新鮮な感じで楽しいよ。周りの子より大人っぽくて」
「まぁ、わたし頭いいから」
「あはは、なんだそれ」
「あはは」
二人して笑い合う。
前の世界でも友達と馬鹿なことをしてばかりで落ち着いた奴なんていなかった。
だけど初対面なのにアリサちゃんといると落ち着くし、色んなことを気兼ねなく話せる。だからアリサちゃんと話すのはとても楽しいと思える。
「ところでアリサちゃんはこんな所で何してんの? 自分探し?」
「それ普通幽霊にする質問じゃないわよね。最初に地縛霊だって説明したし。……あー、でも自分探しってのもあながち間違ってないかも」
「どゆこと?」
「わたしさ、覚えてないのよね」
「覚えてないって、何を?」
「……死に際の記憶。だから心残りも思い出せなくて成仏できないのよね」
僕も死んだ時のことは覚えていない。だけど僕には教えてくれる人がいたから納得できたけどアリサちゃんにはいない。
だったら
「じゃあ僕が探すよ」
「え?」
「僕が探す。アリサちゃんが安心して成仏できるように、僕がアリサちゃんの心残りを見つけてみせるよ」
「でも悪いよ」
「僕ら友達だろ? 友達が困ってるところなんて見たくないからね」
「っ! …………じゃあ、頼んじゃおうかな。わたしここから離れられないし」
いつもの癖で笑いながらサムズアップ。
アリサちゃんはそれを見て一瞬ハッとした顔になったけどすぐ元に戻った。
僕の名言に感動してたりして。……それはないか。
「任せといてよ! 僕はこれでも迷惑な探偵、略して迷探偵って呼ばれてたからね」
「はげしく不安になる俗称ね」
そして今日から僕の『アリサちゃんの心残りを探すぞ大作戦』が始まったのである。
と思ったら探し始めて初日で見つかった。
インターネットの検索ページ。
『アリサ・ローウェル 事件』で検索したらあっけなく出た残酷な事実。
これが微笑ましいニュースや、くだらない冗談を載せた記事なら「インターネットすげー、簡単に見つかった!」って笑い飛ばしてたところだけど、今回は本当に笑えなかった。
パソコンのウインドに表示されたのは一昨年の記事。
○○病院廃墟で児童強姦殺人事件。
被害者はアリサ・ローウェルちゃん(10)
9月×日、△時△△分頃、怪しい男4人組が眠っている子供を○○病院廃墟へ向かって運んでいると通報を受けた。数分後、地元の警察官が通報を受けた場所へと赴き、そこで4人の男が少女に性的暴行をしているところを発見した。警官が男達に声をかけると男の一人が隠し持っていたナイフで少女の腹部を刺し逃走。…………犯人は未だ捕まっておらず逃走中。…………現場には様々な薬品が落ちており、少女に投与され…………。
……こんなににもムカついたのはいつぶりだろう。
不謹慎かもしれないけど全くの他人が巻き込まれた事件ならひどい事件があったんだとしか思わなかっただろう、けど知り合いが、それも友達が被害者になったことにぶつけようのない怒りが湧いてきた。
この記事をアリサちゃんに見せていいんだろうか。
見せればきっとアリサちゃんは生前のことを色々思い出すんだと思う。
だけど同時に思い出したくもない記憶も一緒に思い出すんだと思う。
ショックは受けるがその代わりに記憶は思い出す。
それでいいのか。アリサちゃんが傷つかずにすむ方法があるんじゃないか。
僕はどうすればいいんだろう。
こんな時『あいつ』ならどうしたのかな。
前の世界での、僕の『
あいつと出会ったのは転生前の僕がちょうど今の年齢くらいの事。
両親が飛行機の事故で死んだ頃だ。
両親が死んで、まだ幼かった僕は心が欠けた。
感情の変化に乏しくなり、笑えなくなったのだ。
笑えなくなるほどショックを受けておきながら欠けた心のどこかで2人が死んだことを信じていない自分がいた。
信じていない(死んでない)から、信じてる(生きている)から、帰って来るはずのない二人を毎日家の前で待ち続けた。
毎日毎日、晴れた日も、雨の日も、風の強い日も、雪の日だって待ち続けた。
そしていつの日か「ああ、二人とも本当に死んじゃったんだな」と、理解するようになった。
いや、本当は最初から
それでも、理解していても相変わらず家の前で待ち続ける。それがどうしても受け入れられなかったから。
その日もいつもと同じように2人の帰りを待ち続けていた。
すると突然後ろから「だーれだ」と、声がする。
後ろを振り向くとそこにはぼくと同い年くらいの少年が自分の両目を手で塞いで立っていた。
「だーれだ」
少年はぼくが後ろを向いたことにも気づかずに再び問いてくる。
そんな奇妙な光景に思わずツッコミを入れてしまう。
「いや、本当に誰?」
「あ、あんたオイラが見えるのかい!? オイラは何も見えねぇ」
それはそうだろう。少年は両目を手で塞いだままなのだから。
「……とりあえず手どかしたら?」
「ん? そうか! 君は天才か!」
少年は目から手を離すと何が楽しいのかケラケラと笑っていた。
「……それで何の用? っていうか誰?」
「んあ? ああ、オレの名前は
「ふーん、アルプスの少女さんが何の用?」
「はは、よく言われる。君、いつもつまんなそうにそこで突っ立ってただろ? そこで、今日は君に笑顔を持ってきてやったぜ!」
灰次と名乗った少年は白い歯を覗かせながらサムズアップをした。
だがそれを見て、ぼくはこいつは馬鹿なんじゃないかと思った。目を隠す相手を間違え、皮肉を気付かず笑い流し、更には僕に笑顔を持ってきたと言った。
もう一度言うけど本当に馬鹿なんじゃないか。
初対面の相手に馴れ馴れしく話しかけてきて、笑顔を持ってきた? 恩着せがましいにも程がある。
ぼくはそんなこと望んでいない。
「いらない」
だからそう答えた。だけどその答えに灰次は納得してくれないようだ。
「まあまあ、そう言わさんな。今なら俺の秘蔵の品、そこのコンビニで買ったグミがついてきますぜ旦那」
『愚民共のグミ』と書かれた、いかにも不味そうなパッケージをこっちに向けて差し出してくる。
秘蔵でもなんでもないと口に出しかけたが相手のペースに乗せられるのも癪なので意図的に口をつぐみ灰次の好意を否定した。
「いらない」
「なんだよ。このグミ美味しいのに……まっずっ! なにこれ不味い!」
灰次は袋を破り中身のグミを口放ると2,3回も咀嚼しないうちに吐き出す。
本当に何がしたいんだコイツは。
「なんか焼肉で肉と間違えて食べたラードみたいな味がする。……残りいる?」
「そこまで聞いて欲しがるやつなんていないよ」
「しょうがない残りはペットの犬にでも無理やり食べさせよう。あ、そういえば今日はアニメの放送日だった! というわけで今日は帰るぜ! 明日も来るから楽しみにしていたまえ、はっはっはー!」
そう言い残すと灰次は走り去っていった。
訳のわからない奴に絡まれたと内心思っていたがなぜか表情が少し柔らかくなっている自分がいた。
「ほっほっほ、励んでおるかね、少年」
次の日、宣言通り奴はやってきた。
「いや~、昨日はクッソ不味いグミ買っちゃったから今度はハズレの少ないポテチ買ってきたにゃー、一緒に食おうぜぃ?」
灰次はぼくの立っているすぐ横で直接アスファルトに座りこむ。
手には『カツアゲポテト あの日の屈辱の味』と書かれたお菓子を持っていた。……明らかにハズレだろう。見る目がない……というより目が腐っているんじゃないかと思ってしまうほど選択が残念だ。
そんなことを思っているうちにも灰次は袋を破り、お菓子を口に運ぶ。
「ほほう、口に入れた瞬間広がるドブのような悪臭、噛めば噛むほど舌の感覚を麻痺させてゆく刺激的な味、そして1秒でも口に入れていたくないと思わせるネトネトな舌触り! これは! まるでお菓子の大革命だ! ……っていうかこんな不味いもん食えるかぁぁぁあああ!!」
やっぱりハズレだったらしい。
「畜生、明らかにこれ食べ物じゃねぇよ! そのくらい不味い! ……食う?」
「……いらない」
「そうか……。ポチ、死ぬなよ。っていうことで今日は一旦帰るわ。ああ、そんな寂しそうな顔するなって明日もちゃんと来るぜ? じゃーな」
おそらくポチというのは飼い犬のことだろう。ポチを不憫に思っていたら何か勘違いされた。
勘違いを訂正しようとしたが灰次は既に走り去って目の届く範囲にはいなかった。
それからというもの、灰次は毎日ぼくの元へ来るようになった。
明らかにハズレだと分かるパッケージのお菓子を持ってきて、言うまでもなく物凄く不味くて、……それでなにが楽しいのかあいつは笑っていた。
そんな灰次に影響されてか、ぼくも少しずつ言葉数が増えて表情も作れるようになっていった。
「そういやお前ってなんでいつもここで突っ立てるん?」
出会って一ヶ月ほど経った頃、灰次が尋ねてきた。
正直言うのは気が進まなかったがそれでも包み隠さず灰次にここで両親を待っていることを話す。
自分自身では気づかなかったがそれほどまでに灰次という人間を信用してきていた。
こいつならわかってくれるだろうと。
だが灰次の放った言葉はぼくの予想を大きく裏切った。
「ふーん、そりゃお前の両親死んでるだろ。普通に考えて」
その言葉を聞いた瞬間、頭が真っ白になり気づくと灰次の胸ぐらを掴んでいた。
「おー、怖。何? 大丈夫、お前の両親は生きてるって言って欲しかったわけ?」
「……」
親が死んでいることくらい自分でも分かっている。なら、なぜぼくは灰次を睨みつけているんだろう。
何も言えなくて黙ってしまう。
「その様子だと図星か。まぁ、そういう気持ちも分からんでもないけどさ」
灰次の言葉に握りこぶしを強く握る。
「……分かるわけない」
「ん?」
「お前にぼくの気持ちなんて分かるわけがない!」
――自分でも自分の気持ちをわかってないのに。――
握った拳を振り上げ殴りかかろうとするが灰次は表情を変えず、落ち着いた瞳をぼくに向けている。
「どうした、殴らねぇのか? 別に殴ってもいいんだぜ? 元を言えばオレがお前の気に障ること言ったんだしな」
いつもの振る舞いとは180度違った、年相応とは言い難いとても落ちつた態度。そんな灰次の態度に自分の幼稚さが浮き彫りにされた気がして、熱くなった頭が急に冷えていった。
「っ本当に……なんだよっ……お前」
「ふっ、灰次さんだぜ?」
灰次は一度微笑みそう答えた。
なんだか激情にまかされている自分が馬鹿馬鹿しく感じてきて振り上げた腕から力を抜けていった。
「おお、殴られるかと思ってヒヤヒヤしたぜ。ま、確かに誰かの気持ちなんてそう簡単に分かるもんでもないわな」
「……ごめん」
「いやいや、悪いのオレだろ」
「それでも、ごめん」
自分で自分の気持ちも分かってなかったのに他人に八つ当たりしたことに謝る。
「……まぁ、それでお前の気が済むならいいけどさ」
「……うん」
本当に彼は何者なんだろうか。
一ヶ月近く話しているが本当によくわからない。
「とにかくオレが言いたかったのはさ!」
しんみりとした空気を破るように灰次が声を張る。
「オレはもうウジウジとしたのが嫌いだし、お前の両親もそういうの望んでないだろ、ってそういうこった」
……ああ、そうだった。
ぼくの名前は黒野 優斗。
お父さんが、優しい子に育って欲しいと願ってつけた名前。
ぼくは優しさというものを履き違えていたのかもしれない。
「……うん、ありがとう。そうだねなんだか目が覚めた気がする。もうウジウジ悩むのはやめるよ」
死んだ人を想う優しさじゃなく生きている人に優しさを向けるために。
「んん? ……おう! それでこそ……そういや名前まだ聞いてなかったな。じゃ、改めて、オレの名前は北山 灰次、よろしく!」
灰次は笑顔で右手を差し出す。
「うん、ぼくの名前は黒野 優斗。改めて……よろしく」
ぼくは差し出された手を笑顔で握り返す。
こうしてぼく等は出会って初めてお互い、最高の笑顔で握手を交わした。
灰次は僕の心を取り戻してくれた心友。彼ならきっと迷わず答えを出すんだろう。
だからこそ僕も迷わず前に進もう。