事務所の扉を開く。
部屋の中には、自分が受け持っている部署のアイドルがいた。
全員が心配そうにこっちを見てくれている。
「プロデューサーさん、本当にIS学園に入学するんですか……?」
「もう、私たちとは会えないんですか……?」
「P君と離れちゃうの、寂しいよ……」
……ここまで自分は皆から頼られていたのか。そう思うと、少しだけ気恥ずかしい。
「大丈夫だよ。週末にはここに絶対帰ってくるし、会えなくなる訳じゃないよ。」
「そう…………じゃあ、連絡ぐらいはしてよねっ、…………私だって、寂しいんだから。」
普段はクールな子ですら、動揺の色を隠せてない。
「あぁ、ちゃんと連絡するさ。……んじゃあ、行ってくるな。」
こうして俺、織斑 一夏改め、舞音 刹那の非日常な日常が始まるのだ。
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「全員揃ってますね~。それじゃあSHR始めますよ~。」
結構小柄で、全然サイズのあってない黒縁メガネをかけた女性副担任、山田 真耶先生が黒板前で立っている。
「それでは皆さん、1年間よろしくお願いしますね。」
「………………」
無言。誰かなんかしゃべってあげなよ。ほら、山田先生涙目じゃないか。ま、俺はしゃべんないけど。
ちなみに、俺の周りには事務所同様、女子しかいない。
もちろん全員の視線は感じているが、これはそこまできつくない。むしろ、新企画のプレゼンの方がこたえる
ちなみに、真ん中最前列の席にいるから、恐らく視線の集まり方も、割り増ししているはずである。
「舞音 刹那君、じ、自己紹介をお願いしますっ。し、してくれますよ…ね?」
「はい。」
そう言って俺は、皆の方を向く。……まぁこの際、多くの視線が突き刺さるのは無視しよう。
「346プロダクション所属、舞音 刹那です。皆さん、3年間という短い間、しかもあまりこちらの学園に来ることが仕事上出来ませんが、どうぞよろしくお願いします!」
「ほう、唯一の男子ということだが、まともに挨拶できるじゃないか。」
声のした方を見ると、黒スーツ、タイトスカート、引き締まったボディラインの……
「ブリュンヒルデさんじゃないですか。」
俺は出来るだけの下婢な笑顔で挑発する。
パアンッ!
「その名で呼ばれるのは好きじゃない。」
これはひどいや。元弟のことも忘れちまったのかよ。まー、ずいぶん長い間あってなかったし、そもそも最後に見た姿は小6だからしゃーないか。
「諸君、私が織斑千冬だ。君たち新人を――――――――――――――――――」
あの日以来、自分の姉を見たことがなかったから、とても懐かしく思えた反面、腹立たしく感じた。
一時間目のIS基礎理論授業が終わって休み時間。
事務所である程度女子の視線には馴れたつもりだったのだが、なかなか厳しいものがある。
廊下にも女子が溢れかえっている。おっそろしい。俺を見に来るためだけに、こんな動物園のパンダ級の事態が起こるなんてな。
それにしても、ここの学園の女子はレベル高いな……俺もさっきからスカウトにいきたいと思ってしまっている。
絶対この中にアイドルできるやついるって。
「ちょっといいか?」
目の前には、かつての俺の幼馴染み、篠ノ之 箒がいた。相変わらずのポニーテール、仏頂面。
ちょっとは笑ったら、アイドルとしてやっていけそうな……おっと、またプロデューサー目線になってた。
「何か用? 篠ノ之さん?」
「まさかとは思うが、お前は織斑 一夏なのか……?」
……どうしよう。ここでほんとのことをいうと、大騒ぎになることになる。ちなみに、俺が織斑であることは、346プロダクションの社長、並びにアイドルたちだけである。
あの日以来は束さんからも連絡は来ないし、たぶんかつての織斑 一夏を知っている人全員は、俺が生きていることを知らないだろう。
まてまて、そもそも何があったらあっさりと一夏ってばれるんだよ! これが幼馴染みの力かっ。
俺は――――――
「いや、織斑 一夏って名前は知っているけど、俺は舞音 刹那だ。」
嘘をついた。
「そ、そうか。いや、お前がどことなく一夏ににている気がしてな。すまない、変なことを聞いて。」
「ま、これからもよろしくな、篠ノ之さん。」
俺ははじめて知った。知り合いに、いや、人に嘘をつくことが、ここまで辛いことに。
三時間目。
「それでは実践で使用する各種装備の―――あ、いや。その前にクラス対抗戦に出る代表者を決めるか。」
教壇には千冬姉が立っている。
どうやらクラス代表とは、学級長の強化版みたいなものらしい。
「自薦他薦は問わない。どうだ、誰かいるか?」
「はいっ、舞音君を推薦します!」
「私もそれで!」
ふーん、舞音ってこのクラスに他には……いないよな。俺のことだよな。
「では舞音 刹那でよいか?無投票当選になるぞ?」
バアン。
「待ってください! 納得いきませんわ!」
なんか後ろの席の……オルコットさんだったっけ? が、立ち上がった。
「そのような選出は認められません!大体…………くどくど……ピーチクパーチク……」
もはや何いってるのかわからん。強いてわかるのは、俺や日本に対する誹謗中傷をくどくどしゃべってるってとこだけだ。
つーか、タカビーキャラはうちんとこの幸子だけで十分なんだが……あっ、あっちはナルシだった。
にしてもやっぱうっせーなぁ……。」
「五月蝿いですって!? 貴方はこのセシリア・オルコットに向かってそんな暴言をたたくのですの!?」
あれ、口に出てた? 仕方ない。ちょっとあいつ黙らせるか……
「決闘ですわ!」
その前に話を締められた。
こうして俺とオルコットさんの代表を決める試合が1週間後の月曜日に決まった。
「はぁ。なんでこんなことに…………」
盛大にため息をつく。理由は今日の出来事全部だ。
オルコットさんの誹謗中傷、来週の試合。あげくのはてには、箒に正体ばれかけて…………
ピリリリリ。デンワデスケドーデンワデスケドー
ん、事務所から? 誰かなんか問題起こしたか……?
「はい、舞音ですが、どうかしましたか?」
『あぁ、舞音君、ちょっと重大発表があってね。今からこっちにこれるかい?』
「いえ、恐らく週末にならないとそちらには向かえませんが。」
『そうか、では用件を伝えておこう。君には、新しい企画……シンデレラプロジェクトのアイドルたちのプロデューサーになってもらう。』
…………はぁ?
「ちょっと待ってください! それじゃあ今まで見てきた子達はどうなるんですか!?」
『大丈夫だ。その子たちも見つつ、同時にプロデュースしてもらうんだ。第一、そんなことしたら後ろから刺し殺されちゃうよ。ハッハッハ。』
「はぁ…………では来週、その子たちに会いに行くので、よろしくお願いします。」
『期待しているよ、舞音くん。』
……これは大変だなぁ。
はじめましての方も、お久しぶりの方も、まずは閲覧ありがとうございます。めっさんです。
前作『一年遅れの戦士』の最新話(約一ヶ月前)のあとがきでもありました、新作なんですがその前に、
一ヶ月はしばらくの間じゃないですよね。
それと、この作品、結局最後まで書いてません。(第一話投稿時点)
「~と言ったな、あれは嘘だ。」では済まされないですねこれ。どうやら自分は手元に未提出のレポートがあることに違和感を覚える感じみたいに、作ったら即投稿したい派閥です。
そう言うわけで、安定の急展開ストーリー、またよろしくお願いします。