刑務所に逆戻りしてしまったスカさん。そこで彼を待っていたのは、パンツを取られて激怒する娘の姿であった。果たしてスカさんは、頭に被っているパンツを隠すことができるか!?
昼頃、合宿に参加している人達に昼食を振る舞った。自分の料理をこんなにたくさんの人に食べてもらうのは久しぶりだったため張り切ってしまい、作り過ぎたかと不安になるほどの量を出したのだが、大食いの人間が自分含めて数人いたので杞憂だったようだ。瞬く間に料理が減っていく様を見て、内心ホッとする。
おかわりを持っていくと、ちょうどリオとコロナちゃんが俺の作った豚肉入りの包子を食べていた。
「これ美味しい!」
「肉まんですか……?」
「
「口を空にして話しなさい」
両手に一つずつ包子を握り、口いっぱいに頬張っている妹の頭を軽く小突く。食欲旺盛なのはいいことだが落ち着きなさい。
「もう一つもらっても良いですか?」
「ん、好きなだけ食べて良いよ」
コロナちゃんがいただきます、と言いながら一つ包子を取り、ふと思い出したように聞いてくる。
「これお兄さんが作ったんですか?」
「そうだよ」
「んぐんぐ、んむぐむぐ」
「おいリオ」
さすがに今度はなんて言ったのかわからなかったぞ。
やっぱり友達との食事が楽しくてテンションが上がっているのだろうか。
それは良いのだが、そのうち喉に詰まらすぞ? と思いながら持ってきた水をリオの目の前に置いておく。
「むぐむ……んむっ!?」
「ほら言わんこっちゃない」
まさに水を置いた瞬間に喉に詰まらせた。反射的に目の前のコップを持ち上げると口に運び、ぐびぐびと水を飲み始めた。
軽く背中を叩いてやりながら、他の人の分の水も渡す。
「な、慣れてるんですね……」
「まあ、よくあることだから」
リオの兄をやっていれば、何かやらかす時は自然と分かるようになる。基本は良い子だからそんなに役に立たない能力だが、今日に限っては友達と一緒でテンションが上がっているのだろう。何よりリオは基本的に元気な女の子なのだから、まあ仕方ないととうの昔に受け入れてしまっている。
「……あれ? あと二人どこ行った?」
「ああ、ヴィヴィオとアインハルトさんなら……」
あっちですと言われて見てみると、まるで油の切れたロボットのような動きで蠢く二つの物体。
ヴィヴィオとアインハルトだな。
「どうしたのあの子たち」
「水斬りのやり過ぎでああなっちゃったみたいです」
「すごいな……何回やったらああなるんだろ、まるで死にかけの老馬みたいだけど」
俺なんか二回くらいで既にちょっと筋肉に来ているというのに、普段から鍛えている彼女たちが何回やればあんな疲れるというのか。考えたくもない。
まあ体はあんなんでもちゃんと料理は楽しんでいるようだし、問題ないだろう。俺は他のとこにおかわりを持っていくとしよう。早くしないと冷めてしまう。
◇
昼食後も管理局組は引き続き訓練を続け、ちびっ子は各々練習に励んでいた。
俺はというと、なぜか高町さんに誘われて少しだけ訓練に参加させられたりしたが、なんとか無事に午後を生き抜くことができた。
そんなことがあった後の夜。ホテルアルピーノの有する極上の温泉で疲れを癒している時のことだった。
「まさか男子が二人しかいないとは思ってなかったよ」
「僕はもう一人いてくれて良かったですよ……」
この風呂がやたらと広く感じられるのは実際の広さ故か、はたまた浸かる人数の少なさ故か。合宿参加者の中でただ二人だけの男――つまり俺とエリオ・モンディアルは、揃ってだらしない表情を浮かべていた。
いやほんと、周りが女性ばっかりだと精神的疲労が凄まじいのだ。リオくらいの子供ならば慣れてるっていうか、普通に子供として扱えば良いので楽なのだが、同年代かそれ以上の女性相手だとそうはいかない。一級フラグ建築士でもない限り、男とは何もなくても女性に気を遣ってしまうものなのである。
そんなわけで、男しかいないこの空間は気を抜ける数少ない瞬間である。
更に、そのもう一人がもともと知り合いだったら尚更のこと。
「でも、タイガさんが来るなんて聞いてなかったので驚きましたよ」
「俺も最初は来る予定なかったんだけどね。もしかしてハーレム状態の方が好き――」
「男女比1:11の空間に投げ込まれても同じこと言えますか?」
「ごめん」
死んだ瞳で虚空を見つめている彼、エリオは俺の二歳年下でありながら、管理局で働いている立派な少年である。以前、一度だけ虎屋にデバイスのメンテナンスを依頼されたのだが妙に馬が合い、以来私的な交友が続いている。
とはいえ、仕事があるので大概は通信だけである。
故に、こうして面と向かって話すのは久しぶりになる。
「そ、そういえばまた身長伸びたんじゃないか? もう俺と並びそうだよな。いつも何食べてんの?」
「そんな特別なものは食べてないんですけどね……やっぱり、しっかり食べて運動することでしょうかね」
「ふうん」
熱湯風呂に浸かって夜空を眺めながら、つらつらと他愛ない話を続ける。
いい湯加減だ。
「管理局だといっつもあんな訓練してるのか?」
「あれは訓練合宿だから過酷ですけど、普段はもうちょっと優しい訓練ですよ。仕事に響くと悪いですし」
「そうなんだ」
「もうちょっと」の具合がものすごく気になるが気にしないでおく。
「……あの、タイガさん」
「なに?」
「もう出ませんか……?」
「えーもうのぼせた? 情けねーなー」
「炎熱持ってる人と一緒にしないでください!」
と、いい加減熱いのに耐えられなくなったらしいエリオが、熱湯風呂から出る。
ああは言ったが、炎熱も持ってないエリオがここに五分以上入ることができたのはすごいと思う。俺が平気なのはひとえに高熱耐性があるからなのだ。
ちなみにリオも炎熱変換を持っているため、家の風呂の温度設定は普通の家庭より高い自信がある。
更に言うと俺は水風呂も大好きである。
別の風呂に避難したエリオを見ながら、リオは何してるかな、とふと思った。
『炎雷炮ッ!!』
『あ〜っ』
その時、リオの裂帛の叫びと何者かの悲鳴が夜空に響き、人型の何かが空に飛んでいくのが見えた。
「………………」
何してんのあの子は。いやむしろ何されたのあの子は。あれか、最近の格闘技は入浴中も練習するのが普通なのか? つくづく厳しい世界である。んなわけねえだろ。
「あの、タイガさん」
「なんだ」
「今のリオちゃんの声……」
「知らん。俺は何も知らんぞ」
脱衣所に置いてきたゼロ(非常時はソルフェージュから緊急連絡が入るよう設定している)から何も連絡が来ないということは大したことないだろうしな。ていうか俺が
「……そういえば、リオちゃんも変換二つ持ちなんですね」
「そうだよ、言ってなかったか?」
「兄弟で変換を持ってることしか聞いてないです」
「そうだっけか」
そういうエリオもたしか電気の変換を保有しているはずだ。記憶が正しければ。
……あ、良いこと思いついた。
ちょいちょい、とエリオを手招きする。
「なんですか」
「ちょっと害のない程度に電気流して欲しい」
「良いですけど……」
しばらくするとビリビリきた。
うむ、思った通りだ。
「電気風呂だ」
止められてしまった。
作者はちょっと熱めの風呂が好き。40度くらいあると最高。