八重歯の兄妹   作:特撮ファンA

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【前回のあらすじ】
ごめん、ネタ切れ。


合宿編⑤

 模擬戦は参加者が赤、青、黄の三つの組に分かれて行われる三つ巴戦である。一回戦は二組に分かれていたのだが、少し人数が合わなくなったので変則的な分け方にしたらしい。

 組分けは赤組が高町さん、ルーテシア、ノーヴェさん、ヴィヴィオちゃんの四人で、青組はハラオウンさん、ティアナさん、キャロ、アインハルトちゃん、スバルさんの五人。

 そして黄組。リオ、コロナちゃん、エリオ、そして俺。みんな近距離メインじゃねえか。

 ちなみに分け方はクジだった。

 

 そういうわけで、模擬戦の始まりである。

 

 

 既に空中にはスバルさんのウイングロード、ノーヴェさんのエアライナーで作り出された青と黄色の二本の道が見える。

 が、黄組にはそういった魔法を使える人間がいない。あのどちらかの道に乗って移動しても良いのだが、それよりも良い方法がある。

 あの道がないということは即ち、こちらのチームメートがどこへ向かうのかを予測する方法が、相手側には一切無くなるということだ。

 つまり。

 

「不意打ちするしかないよな」

 

 建物の影に隠れ、繰り広げられる戦闘を見ていた俺は、悪どい顔をしていたかもしれない。

 汚いとか言わないで欲しい。なにせ、我ら黄組には回復要員がいないのだ。ライフが全て無くなれば、その時点でゲームオーバー。慎重に行かなければすぐ全滅も有り得る。

 もちろん他のメンバーの手腕は信じているが、念には念を、だ。

 

(まあ隠れ切る自信は無いが)

 

 俺では不意打ちする前にたぶん見つかってしまう。だからこそ気付かれないうちにするのは、不意打ちではなく『仕掛け』だ。

 俺はゼロの格納領域から、ある物を取り出した。

 

 

 

 だがしかし数分後。

 

「リオさんのお兄様!」

「ファッ!?」

 

 背後からかけられたそんな叫びに心底驚かされる。

 バッと振り返ってみると、大人モードのアインハルトちゃんが猛然と走ってくるのが見えた。

 しまった。まだ仕掛けが終わって無い。

 

「気付くの早すぎるって……!」

「強者の気配に気付かない私ではないです!」

 

 なにその理屈。

 言っている間にもどんどんアインハルトちゃんは近付いてくる。

 

「一槍、お願いいたします!」

「逃げて良いかな……」

『別に良いが、たぶんすぐ捕まるぞ』

「だよなぁ」

 

 ひとまず、仕掛けを施していた物をゼロに再び格納してから、アインハルトちゃんと正面から向かい合う。

 できる限り接近戦は避けたかったが、ここまで来たら仕方ない。

 左手を胸の前に構えて拳を握り、右手は前方に伸ばして拳を開き、足元に魔法陣を展開する。

 

『昨日の訓練で多少は感覚が戻っているはずだ。そう弱気になるな』

 

 しかし多少で勝てる相手じゃないことは、一回戦の様子を見たから分かっている。本気で戦ってもどうなるか分からない。

 

 問、ならばどうするか。

 

 答、初見殺しでなんとかする。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 タイガが構えたのを見て、アインハルトは自分の予感が正しかったことを確信する。どこか脱力しているようにすら感じさせるその構えは、しかし一分の隙も見せていない。紛れもない、強者の構えだ。

 当の本人はブランクを感じて若干弱気になっているようだが、彼自信が積み重ねてきた練習はこうした基礎的な部分にこそ現れるのだ。もし嘗ての実力を発揮できなくとも、決して弱くなってなどいないのだ。

 だからこそ、アインハルトは全力を以って目の前の青年と戦うことを決める。

 

「行きます!」

 

 タイガの足元には、既に魔法陣が見える。迎撃の準備は出来ているのだろう。

 ならば正面から打ち破ろう。アインハルトは拳を振り抜こうと足を強く踏み込み、

 

烈火(れっか)衝墜(しょうつい)!」

 

 次の瞬間、足元が爆ぜた。

 

「なっ……!?」

 

 自分の体が倒れていくのを感じ取る。踏み込もうとした場所が爆発したのなら、体制が崩れるのも道理。

 何をされたのかはわからないものの、これが誰の仕業なのかは十分理解できる。

 何か来る。一瞬にしてそう判断したからこそ、アインハルトは視界に飛び込んだ赤い光にも対処できた。

 

「炎炮!」

「くっ!」

 

 その正体は炎に包まれた右脚。ミドルキック気味に放たれた蹴りは腕を胸の前でクロスして防ぎ、更に衝撃を後方に飛ぶことで受け流す。

 着地したアインハルトは警戒を緩めず構えた。

 そしてそれはタイガも同じ。

 

(やっぱり大したダメージにならないか……)

 

 烈火衝墜は魔法陣を通して地中に魔力を打ち込み、任意の場所で爆破する魔法だ。一見接近戦の構えで待ち構えるタイガに警戒している隙を突く魔法である。

 ただし、めちゃくちゃ威力が低い。あまり爆破力が強いと自分まで巻き込む危険があるからだ。奇襲のためだけに存在する魔法なのである。

 だからこそ次の炎炮で決める、のははっきり言って無理だがそれなりにダメージを与えるつもりだった。実際、技への繋ぎは上手くした自信があった。

 失敗したのはアインハルトの技量を少し見誤っていたためだろう。

 

 

 想像より、ずっと強い。

 

 

「炎龍!」

 

 自分の地力だけでは勝てる気がしない。タイガは炎熱変換した魔力を龍として顕現させた。

 咆哮を上げてアインハルトに向かう炎龍、だが彼女は慌てることなく対処してみせる。

 

「覇王空破断!」

 

 力強く踏み込んで拳が振り抜かれる。拳に込められた力が強烈な衝撃波となって炎龍を襲い、激突する。

 だが拮抗は一瞬のことだった。

 

 悲鳴にも似た轟音とともに揺らいだのは、炎龍の方だった。

 徐々に空破断の威力に押され始め、やがて完全にかき消される。弾け飛ぶ熱波。それは空破断の威力を半減させるが、相殺には至らない。空破断は威力そのままに、炎龍の背後のタイガを貫く――

 

「いない……?」

 

 ――ことはなかった。

 空破断が破壊したのは地面のコンクリートだけだ。

 どこだ? アインハルトは辺りを見回し、そして数メートル先で強い魔力を感じ取る。

 そこへ目をやると、炎に包まれた右拳を中腰に構え、今まさに拳を握り込んでいるタイガが見える。

 だがパンチを放つには離れ過ぎている。そのことを疑問に思いながらも、何らかのミドルレンジ攻撃を覚悟して対峙する。

 

吼牙(こうが)爆砕(ばくさい)ッ!」

 

 タイガが足を踏み込み、その勢いを拳で爆発させて強力なパンチを繰り出す。だが届くはずはない。ただのパンチならば。

 次の瞬間、その()が弾丸の如く打ち出された。

 

「んなっ!?」

 

 ゴッ、と空気を薙いで迫るソレは、ジェット噴射の如く吐き出される炎を推進力にグングンと加速してくる。

 

 そう、パンチはパンチでもロケットパンチ。右腕の腕部装甲に炎熱魔力をチャージして打ち出すミドルレンジ攻撃。

 

「くぅっ!」

 

 旋衝波で跳ね返す、間に合わない。

 断空拳で相殺する、これも間に合わない。

 できたのは咄嗟に張った障壁での防御。直後、衝撃。受け止めた障壁を越えて、腕に凄まじい力と熱が襲う。

 噴射炎は留まるところを知らず、むしろどんどん勢いを増しているのではと思わせる威力でアインハルトの体を押していく。踏ん張った足は地面を削り、砕けたコンクリートが後方へ飛ぶ。

 これ以上後退してたまるか、と障壁を抑える力を更に強める。

 だが――障壁の方が先に限界を迎えた。

 ピシリという音とともに小さなヒビが走る。

 背筋が凍る感覚を覚えるのと同時、ヒビはどんどん広がっていき、そして。

 

「あぐっ!?」

 

 障壁が四散し、勢いそのまま胸に激突する炎の弾丸。

 アインハルトの姿が爆炎に包まれる。

 

『四十五点だな』

「……昨日の四十点よりマシだろ」

 

 タイガは額の汗を、腕部装甲が無くなったことで露出している右手で拭う。

 炎龍で時間を稼いでいる間にできるだけ多くの魔力をチャージ、そして吼牙爆砕の発動。

 ゼロ発案の攻撃方法は見事成功したようだ。どの程度のダメージを与えたのかは疑問だが……。飛んで戻ってきた腕部装甲を再装着しながら、爆煙の中に潜むだろうアインハルトへの警戒を続ける。

 

 模擬戦開始から既に二十分ほど経っていた。

 

「……そういえば、全体の状況はどうなってる?」

『赤組ノーヴェ・ナカジマ選手と青組スバル・ナカジマ選手が相打ちで戦闘不能。あとエリオ選手がハラオウン選手と高町選手の戦闘に巻き込まれて撃破された』

「ありゃりゃ」

 

 と、物音が聞こえる。

 やはりというべきか、アインハルトは立ち上がった。円形のライフゲージが空間に表示される。

 

 

『アインハルト・ストラトス

  LIFE 1820/3000』

 

 

 あれだけ魔力を込めた割には、期待ほどのダメージ量では無い。軽く絶望感に襲われるタイガだが、構えを緩めることはなかった。

 近接主体の相手から逃げ回ってミドルレンジからの攻撃ばかりしたためか、幸いにもこちらはまだノーダメージ。しかし、恐らくパターンはもう読まれている。彼女の意表を突く攻撃をしてもある程度対応されてしまうだろう。

 ――が、もうそんなことは関係ない。

 

 別に、この模擬戦は黄組vs青組の試合ではないのだから。

 

 ほら、目立つ炎龍に気が付いて、今まさに近付く人影がある。

 

 

「一閃必中、ディバイーンバスタァー!」

 

 

 恐らくアインハルトも気付いていたのだろう、不意に襲ってきたヴィヴィオの虹色の魔力砲撃を見事に回避してみせる。

 逆にタイガは、僅かに身をそらして直撃を避けるに留め、衝撃波をそのまま補助にして物陰まで跳ぶ。

 気が付いたアインハルトが、あっと声を出す。

 

「まっ、待ってください!」

「ごめん、無理」

『Sonic move』

「あ! 逃げたー!」

 

 更にゼロの補助も受け、高速移動。

 

 アインハルトとヴィヴィオの非難じみた声を背中に受けながらも、それを聞かなかったことにして逃げる速さを上げた。

 集団戦なのだから、こういう行動も大切だと思う。……言い訳じゃないよ?

 

 

 

 

 

 ――だが後のことを考えると、あそこで戦っていたままの方が良かったのではないか……と思わずにいられないのは、多分気のせいではない。

 




スカさんは使いやすいんだけどやり過ぎるとコレシ゛ャナイ感がすごいよね(前回のあらすじを書いた感想)
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