Fate/lyrical ~白銀の少女と魔法少女の紡ぐ物語~ 作:紅鷲
両作品共に独自解釈と独自設定を多用しております。
また、一部登場キャラが半オリ化している可能性があります。
そして、作者の更新速度は遅く、文章も粗末です。
それもいいぜ! どーんとこいと言う心広い方はどうぞ!
あと、一応ではありますがにじファン掲載時のものに少し加筆修正を加えております。
気が付けば、高町なのははその空間を漂っていた。
「…………ここは?」
何も無い漆黒の空間。
上下左右見渡しても、終わり無く続く闇の空間。
「……レイジングハート?」
思わず、胸元にいる筈のレイジングハートに語りかけるも反応が無い。
「………あれ?」
疑問に思い、胸元に視線を向けてみると、其処にいる筈の相棒はいなかった。
慌てて全身を調べるも、レイジングハートは見つからない。
「どういうこと? 一体何がどうなってるの?」
ゆっくりと混乱する余裕等なのはには与えられなかった。
何故なら―――
―――!
「……えっ?」
突如なのはの前の空間が、何の前触れもなく裂けたからだ。
いきなりの事態に、半ば反射的に警戒して、目の前の空間の裂け目を睨む。
そのまま数秒が経過した時、空間の裂け目に人影が現れた。
その人影は、ゆっくりと空間の裂け目から出てくる。
なのはの目の前に現れたのは、一人の老人だった。
無論、唯の老人で無い事はなのはの目には一目瞭然だった。
紅の瞳に灰色の髪と長い髭。
老人にしては有り得ない程の貫禄。
最高クラスの魔導師である高町なのはが身動きが取れない程、凄まじい重圧を放つ。
この老人を一目見て、なのはは瞬時に悟る。
―――このお爺さんと戦ってはいけない、自身が勝てる存在ではない。
と。
そんななのはの心情等全く気にせずに、老人はなのはに目を向ける。
「ふむ、何やら急に人の気配が現れたので来て見れば……お主、何故
この空間におる?」
「えっと………、その……」
「どうやってこの空間に来た? 我が第二魔法やそれに準ずる神秘を行使
した気配等しなかったのだが……」
いきなりの質問詰めに戸惑うなのはだが、気持ちを落ち着かせて老人の
問い掛けに答える事にする。
現状、何の手がかりも無い以上それが最善だと判断したからだ。
「それが、分からないんです。気が付いたら此処を漂っていて……」
まあ答えると言っても、何故こんな空間に居るのか全く分からない
なのはにはこう答えるしかなくて……
「どうやら、嘘をついている訳では無さそうじゃな」
内心戸惑っているなのはの目を見てそう呟くと重圧を止める老人。
一方なのはは、少しでも現状を把握するべく、此処が何処だか知って
いそうな目の前の老人に問い掛ける事にした。
「あの、少し聞きたい事があるのですが……いいですか?」
「何じゃ?」
問い掛けて来るなのはに、老人は面白そうと言わんばかりの
視線を、隠す事無く堂々と向ける。
「ここは一体何処ですか?」
「……知らずに迷い込んだのか。
ここは言うならば並行世界と並行世界の狭間と言うべき空間じゃ」
少し驚いた様な表情を浮かべて、老人はそう答える。
「並行世界……ですか、次元世界じゃなくて?」
聞き慣れない言葉に思わずそう返すなのは。
「ほう、我が第二魔法どころか、並行世界も知らんのに此処に来るとは
益々に興味深い」
まるで、新しいおもちゃを見つけた子供の様な視線をなのはに向け笑う老人。
なぜか急に笑い出した老人を怪しみながらも、表面には出さずになのはは
情報を少しでも得ようと質問を続ける。
「あの、並行世界って一体?」
「説明の一つでも無いと不安か……。
簡単に言えば、無限に広がる可能性の世界だな」
「無限に広がる可能性の……世界?」
老人の言葉がイマイチ良く分からなく、首を傾げるなのは。
そんななのはを見て、老人は更に言葉を続ける。
「そうじゃな、例えば魔力が一切存在しない世界。
逆に、大気中の大源が濃く、常識として幻想種が存在している世界。
魔術が一般常識として存在する世界。
そう言った風に無限に並行し、広がるIFの世界……それが、並行世界じゃ。
まあ、そのような事は如何でも良い」
そう言葉を切ると、老人は再びその真紅の眼を向ける。
「先ほど、何故此処にいるか分からないと言ったな?」
「えっ? あ、はい」
「ならば、覚えている限りの最後の記憶はどうなっている?」
老人の問い掛けに、なのはは目を瞑って此れまでの記憶を思い出そうとする。
しかし……
「えっと……だめです。何か頭に霞が掛かったみたいに記憶が混乱してて
名前と年齢とか、基本的な事以外思い出せない……」
暗い表情で、そう答えた。
そんななのはに老人はふむと頷いた後、なのはに近づいた。
「どれ、ならばワシが軽く診断でもしてやろう」
「えっ?」
返事も待たずに、老人は軽くなのはの頭に手を翳す。
「……どうやら、この空間に落ちた際の出来事を原因とする記憶混乱
のようじゃな。時間経過と共に記憶も完全に元に戻るだろう」
「ええ? 一分も経ってないのに分かっちゃったんですか!?」
「ワシにかかればこの位は当たり前じゃ」
時間にしてみれば一分にも満たない間で、完全になのはの状態を把握する
老人に、思わず驚きの声を上げるなのは。
「さて、本来ならここで出会ったのも何かの縁と、元の世界にでも戻してやりたい
のだが……、先程も言った通り、並行世界は無限に存在しておる。
残念ながらお主の記憶が完全で無い上に、ワシはお主の元の世界を知らんから
元の世界に戻す事は出来ん」
「……そんな」
老人の口からなのはにとって、絶望的な宣告が下される。
いきなりもう元の世界に戻れないと告げられ落ち込むなのは。
訳も分からず、いきなりこんな空間に居て、もう戻れないと告げられたのだ。
その反応はむしろ当然だろう。
そんななのはの様子を気付いていない筈は無いのだが、老人は
更に言葉を続ける。
「先ほど、失礼かとは思ったがお前さんの過去を少し見せてもらった。
見かけの年に似合わず、随分な人生を歩んできていた様じゃの」
「え?」
気に入った!っと全く反省する様子を見せずに笑う老人。
もしかして、診察ついでに興味本位で失われている筈の記憶を覗いたのだろうか?
「正直、元の世界に戻れんからと言って、この空間に放置するのは
勿体無いと思うし、この様な空間で出会ったのも何かの縁じゃ。
元の世界には戻せぬが、限りなく近い世界なら……まぁ、なんとかなるじゃろう。
だからこそ侘びと言っては何じゃが、お前さんに一つの可能性でもやろう」
そう告げると、老人は懐から一振りの奇妙な剣を取り出す。
どう見ても、実戦用に作られたとは思えない、刀身まで宝石で
構成されている七色に光る剣。
そして、手に持った宝石の刃を虚空に一振りする。すると、宝石の刃
によって空間が裂けて、その裂け目からなのは自身が良く知る
世界が、街が見えた。
「……あ、……海鳴…市」
街並み、駅、人々の行き交う様子……その全てが、彼女に残る記憶と
一致している。
「さて、これからお前さんが飛ばされるのは、無限に存在する並行世界の一つ。
お主にとっては過去の世界に近いが、この世界はお主の過去の世界に
似て異なる並行世界であり、決してお主の世界でもお主の過去の世界でも無い」
老人の言葉が、何も無い空間に響き渡る。
「土地、人々、時代の流れ……その全てがお主が生まれ育った世界と同じ様で
ありながら、異なる世界。そんな世界で、これからお主は生きていく事となる。
どう行動するもお主次第。
この世界で、お主が望む叶え切れなかった可能性の一つでも示して見せるが良い」
だが……っとそこで一旦言葉を切る。
「覚えておけ。この世界には、この世界のお主も存在する。
お主の知り合いや友人達、家族も無論存在している。
そしてこれから先、この世界がお主が失った記憶通りに歴史が動くとは限らん。
お主と言う存在の介入によって、全く異なる動きをする可能性もある。
お主と言う存在がこの世界にどういう影響を齎すのか、見せてもらおう」
そこまで言うと、次に老人は虚空より一つの黒いトランクケースを取り出す。
「これは餞別じゃ、一応当面の必要な物は入っておる。受け取るが良い。
中身は後で確認すると良いじゃろう」
「あ、ありがとうございます」
言葉と共にトランクケースをなのはに投げ渡す老人。
何処から取り出したのか気になりながらも、なのはは投げられた
トランクケースを受け取った。
それを確認した老人は、まだ話は終わっていなかったらしく
説明を再開する。
「ああ、それと同一人物が二人存在する事による世界の修正が働くかも
知れんので、気をつけておくと良い」
「世界の……修正ですか?」
またもや、なのはが知らない言葉が出てくる。
「うむ、この辺りは話は話すと長くなるし、時間も無いから割愛するが
そういうのがあるとだけ認識していて貰えれば良い」
その言葉と同時に、徐々に目の前の空間の裂け目を中心に周囲が荒れ始めた。
「まあその辺りはワシがどうにかして置くが……、もしかしたら
完全に世界の抑止力を抑えきれぬ可能性がある。
その場合、若干お主に何らかの軽い修正が働くじゃろうが……
まあ、死んだり消えたりする事はないから安心すると良い。
ただし、一つだけ忠告しておこう。
もう一人の自分に接触するのは構わんが、時が来るまでもう一人のお主
がお主の正体に気付かれぬようにしておけ。
もし、定着する前にその様な事態になれば、流石のワシも押さえ
切れる事が出来なくなるかもしれん」
空間の荒れ具合が徐々に強くなっていく。
そんな中、老人は徐に懐から一枚のメモを取り出すと、サラサラと
そのメモに何かを書き、折り畳んでなのはに渡した。
「これは、メモですか?」
「うむ、向こうに着いたらこのメモに書いている事を行うと良い。
なあに、本来なら下支えが無ければ無謀なことじゃが、お主の保有する
その魔力量と、あの世界の大気の大源(マナ)の濃さなら大丈夫じゃろ。
必ずやお主の力となってくれる筈じゃ」
ははははと豪快に笑う老人。
そして、老人が一通り笑い終えた後、老人はふと周囲を見渡し
小さく独り言を呟いた。
「時間じゃな……」
その呟きと同時に、老人の手にある宝石の刃が凄まじい
光を放出し始め、辺りを包み込む。
「では、少女よ。先程説明した事を忘れずに精々頑張ると良い」
「待ってください! あの、貴方のお名前は!?」
「ワシか? おお、そう言えば言ってなかったな。
ワシの名前は―――」
薄れて行く意識の中、なのはは朧げにだが確かに聞いた。
―――キシュア・ゼルレッチ・シュバインオーグ。
まあ、ゼルレッチや宝石翁と覚えておけば良い。
次に会う時を楽しみにしておるぞ。
―――と言う返事を。
To be continued
初めましての方は、初めまして。
お久しぶりの方は、お久しぶりです。
そして、この作品の移転を心待ちにしていたと言う偉大な方(居ないでしょうが)
は大変お待たせ致しました。紅鷲です。
Fate/lyricalなんとか移転を開始することが出来ました。
いや、ホント今更ですが……。
とりあえず、当分はにじファンで連載していたものに加筆修正を加えて
投稿していく感じです。
尚、現実の忙しさもあって更新は不定期になりますが、着実に進めていきます
ので、もしよろしければ応援して頂けると有難いです。
では、また次話でお会いしましょう。