【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black 作:餌屋
Prologue01 ― 始まり
― この世界は悲しみで溢れている
西暦2012年5月。
ここは、趣のある一軒家の離れ。
そこからは薄い明かりが漏れている。
薄暗い部屋に沢山の機械類が置かれている。
― この世界は理不尽で溢れている
その部屋の中心には白銀の鎧のような物がライトに照らされていた。
― 正しいモノが損をし、正しくないモノが得をする
その前では一組の若い男女が端末を操作している。
― どうしようもなく、この世界は残酷だ
「出力上昇。動作安定。コアシステム、正常に起動確認」
「PIC動作確認。ハイパーセンサー動作りょーこー」
「コア・ネットワーク接続完了。完全動作、確認」
「よーっし、完璧。良い子だねぇ~」
「・・・最後にもう一度聞く。本当に良いんだな?」
男の子が女の子に問いかける。
「・・・うん。これは、私にとって第一歩なんだから」
女の子は男の子に目を向けず、端末を操作しながら答える。
だが至って真剣で、本気の目をしていた。
― だから俺は力を求めた
「ああ、そうだな」
― 正しいモノが正しくあれる世界を創る為に
「みーくんこそ良いの?私なんかに協力して・・・」
突然、端末を操作する手を止め女の子が申し訳なさそうに男の子の方を見る。
「良いんだ。俺にも目的があるし・・・何より千冬も言ってただろ?お前だから協力するんだ」
「・・・へへっ、ありがとう!束さんは世界で一番の幸せ者だよ!!」
女の子は男の子の言葉に満面の笑みを見せる。
― だから
「さあ、世界を変えよう」
「さあ、世界を壊そう」
― だから俺は
「私の」
「俺の」
『共犯者さん』
西暦2012年6月7日。
その日、突然日本を射程距離内とする軍事基地が一斉にハッキングされた。
瞬く間に基地の機能は掌握され、基地に配備されていた長距離弾道ミサイルおよそ2341発が日本へ向けて発射されてしまう。
誰もが混乱と絶望に堕とされた。
しかし突如白銀の鎧のようなスーツを着た女性が現れ、その半数を手にしていた剣で撃墜し、まだ試作型しか世に存在していないはずの大型荷電粒子砲で残り半分を打ち落とした。
周辺各国はこの異常事態に際し、国際条約を無視して現地に部隊を派遣。
その全てを白銀のスーツは人命を奪う事なく無力化した。
この戦闘での被害は、ミサイル2341発、戦闘機207機、巡洋艦7隻、空母5隻、監視衛星8機。
この全てを一切の死者無しに撃墜、あるいは無力化した『究極の機動兵器』に世界中は驚き、恐怖し、そして注目した。
後に白騎士事件と呼ばれるこの出来事の後、丁度一ヶ月前に発表された最新技術<IS>の評価を改め世界各国がISを受け入れるようになる。
何故なら現行兵器全てを無力化したその白銀のスーツこそ、ISだったからだ。
ここから世界は変わっていく。
急激に、しかし緩やかと。
Infinite Stratos
The Accomplice of Black
だが、これはまだ始まりの始まりにすぎない。
「彼ら」にとってまだこれはスタートラインに立っただけなのだ。
本当の始まりはここから10年後。
2022年2月。とある雪の日まで飛ぶ。
◆
その日、俺は隠れ家にしている自宅マンションの一室で多くの書類とモニターに囲まれながらテレビのワイドショーを見ていた。
手にはコーヒーとお手製のクッキー。
優雅な午後のティータイムだ。
「・・・へぇ、この女優結婚するのか。まだまだ若いのに・・・いや若いからかねぇ」
今日旬の芸能ニュースは若手女優の電撃結婚のようだ。
かなり熱狂的なファンがいるようだし、ネットで炎上しなければ良いんだがねえ。
大体、ただのファンに人の色恋沙汰に口を出す権利があるのだろうか。
女優やアイドルとはいえ、一人間なのだ。
そうカッカする事もないだろうに・・・
そんな事を考えていると。
『ここで臨時ニュースが入ってきました。えーっと・・・え?いや、これ嘘でしょ?本当なの??・・・えー、信じられない事が起きました。本日午前11時過ぎ、東京都某所で行われた特殊国立高等学校IS学園の入学試験において、『男性』がISを動かしたという発表がありました』
ん?
『日本政府の発表によりますと、ISを動かした男性は織斑一夏さん、15歳・・・なんとあのブリュンヒルデ、織斑千冬さんの実の弟だという事です!』
・・・遂に、か。
『今後の織斑一夏さんの処遇についてですが、4月よりIS学園への入学という方向に動いている模様です。またIS委員会では今回の事態を受け・・・』
俺はまだ続くニュースを聞きながらある人物に電話をかけた。
『もすもす~!束さんだよ~!』
「久しぶりだな束。俺の送ったデータはどうだ?」
『おー!みーくんじゃないか!いやぁ~ありがと~助かったよ~。流石天才束さんのライバルだね!』
「お役に立てたようで何より何より。さて・・・本題だが」
『ん?何かな何かな??』
「『そろそろこちらも動く事にするよ』。取りあえず、今後は学園にいるから何かあったらこの携帯に連絡をくれ」
『・・・うん!分かった!今度会った時には愛を育もうZE!』
ピッ!ツーツーツー
最後何か言ってた気がするが、何も聞こえなかった事にしよう。
さあ、久しぶりに顔を見に行きますか。
◆
私、織斑千冬はIS学園の職員室で頭を抱えていた。
いや、本当は頭を抱える程度で済まないのだが。
「何故一夏がISなぞ・・・くそっ!」
悩みの種は勿論、弟である一夏がISを動かしてしまった事だ。
私は過去にあった出来事から、一夏がなるべくISと関わらないよう手を尽くし、言い聞かせてきた。
それが、ある日突然本来受験予定だった学校とは別の試験会場に辿り着き、しかもISを動かしたという。
これは悪夢か何かだと思いたい。
別に一夏が嫌いだとか疎ましい訳ではない。愛しているが故、ISには関わらせたくないのだ。あいつにはもうこれ以上・・・
ピーッピーッピーッ
と、机に置いていた端末がけたたましく鳴り響く。これは急を要する時に使われる回線だ。
私は即座に頭を切り換え、端末を取った。
「私だ。何があった」
『あ、織斑先生!警備室です!実は今、校門前で暴れている方がいらっしゃいまして・・・』
「あぁ・・・ならいつも通り拘束して近隣の警察に・・・」
『それが・・・織斑先生に会わせろと仰っているんです・・・』
「はぁ?」
訳が分からん。心当たりが無い。というか何故そんな不審者相手に敬語を使っているのだろうか。
『相手が相手ですので、私達も手荒な事はやり難くて・・・』
「相手・・・?一体誰なんです?」
『実は・・・』
電話越しに不審者の名前を聞いた途端。私は端末を放り投げ校門前へかけだしていた。
全速力で走った為校門前にはすぐ辿り着いた。
確かに大声で言い争っている男がいる。
懐かしい声・・・懐かしい顔・・・
そこにいたのは
「だーかーらー!用件は千冬に会ってから直接話すって・・・お、よう!千冬!何年ぶりだ?」
「・・・湊、何でここに」
黒崎 湊・・・私の数少ない、『親友』の一人だった。
皆様、あけましておめでとうございます。餌屋です。
最新作お読み頂きありがとうございます。
遂に新作がスタートしました。
今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。
さて、正月三が日連続更新。
また明日、お会いしましょう。
感想、評価などお待ちしています。