【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black   作:餌屋

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大変お待たせしております。


第2話: 転校生は突然に

 

 

その日、1年1組朝のHRは突然の転校生がやって来たにも関わらず静まり返っていた。

 

いくら担任が鬼教師織斑千冬だからといっても、突然の知らせに驚き騒がない十代女子はいない。

 

では何故か?

 

 

 

 

転校生の片方が銀髪、眼帯、軍服といかにも軍人といった装いなのに小柄な少女だったからか?

 

その少女が色々噂の絶えない黒崎にべたりとくっついて幸せそうに満面の笑みを浮かべていたからか?

 

 

 

いやそれはそれで理由の一つではあるが違う。

 

 

 

 

 

もう一人の転校生が男子だったからだ。

 

 

 

***

 

 

「シャルル・デュノアです。フランスから来ました。不慣れな事が多々あるとは思いますが、どうぞよろしくお願いしますね」

 

そんな転校生の一人、シャルルはそうにこやかな笑顔で自己紹介し一礼する。

 

人懐っこそうで中性的な顔立ち、礼儀正しい立ち居振る舞い。

『貴公子』という表現がここまで似合うのも中々いないだろう。

 

「お、男…?」

「はい、こちらのクラスに同じ境遇の男性がいると聞きまして転入を…」

「きゃ…」

「きゃ?」

 

おっとやっぱり来たな。

 

俺は自前の耳栓を自分で着け、さっきから俺にひっついて甘えてくるラウラの両耳を優しく塞いでやる。

 

「ん?どうしたんだ?」

 

ラウラは俺を見上げ純真無垢な困惑顔を俺に見せる。

 

「きゃああああああああああああああ!!!!!!!」

 

ぐおおおおっ!?

 

クラス中から上がる歓喜の叫び声が衝撃波のように耳栓を突破して俺に攻撃をしかけてくる。

研究したらマジで兵器化できるんじゃねえかな…

 

「男子!二人目の男子!」

「夢じゃないのよね!?」

「しかも庇護欲を掻き立てられる美男子!」

「お母さん!私を産んでくれてありがとう!!」

「あぁ…私もう死んでもいいわ…」

 

最後のやつ、大丈夫か。

 

「ああもう…騒ぐな、まだ自己紹介は終わっとらん」

「そ、そうですよ~!!皆さん~!お静かに~!!」

 

千冬と真耶ちゃんがクラスを宥めにかかる。

お仕事お疲れ様。

 

「さて、ラウラ。皆に自己紹介だ」

「うむ、分かったぞ!」

 

俺はいつまでもひっついて離れないラウラの背中を押してやる。

 

「ドイツ空軍特務IS部隊所属、ラウラ・ボーデヴィッヒだ。国からの指示と父様に会う為にやってきた。私も不慣れな事が殆どだがよろしく頼む!」

 

おお!完璧すぎる自己紹介だ!!

成長したのう…父さん感動で涙が止まらないよ…

 

「む?」

 

おや?ラウラの様子が…?

 

ラウラは正面に座っている一夏を見つけるとおもむろに近づいていく。

一夏も突然の事に戸惑い、千冬はそれを止めようと一歩を踏み出そうとする。

 

(まあ、待てって)

(どういうことだ…!)

(見てろって)

 

「貴様が織斑一夏か」

「あ、ああ。そうだけど…」

 

緊張した空気のクラス。

 

そしてラウラは右手を…

 

「織斑教官の弟だそうだな。話は聞いている。会えて嬉しいぞ」

 

一夏に差し出し握手を求めた。

 

「お、おう!よろしくな」

 

その友好的な態度に一夏も握手を返す。

 

(そんな…あのラウラが…!?湊、何かやったのか!?)

(まあちょっとな)

 

想像するに千冬はラウラが一夏を引っ叩く未来でも想像したのだろう。

まあ千冬が知ってるラウラならそうしてただろうな。

 

小声でそんな会話をしている間に、シャルルとラウラは既にクラスメイトに囲まれ歓談を始めていた。

 

「そういえばラウラ、自己紹介でお父さんに会う為に来たって言ってたけど…」

「ああ!長く離れて暮らしていたのだがようやく連絡が取れたのだ!」

「そっか~良かったね~!」

「でもウチ寮生活で外出も週一じゃない?折角会えたのに寂しくない?」

「何を言っているんだ。父様とは学園でもずっと一緒にいるぞ?」

 

「「「へ?」」」

 

 

 

…ん?何か嫌な予感が。

 

 

「ふふっ!もう離さないぞ父様!」

 

そう言ってラウラは俺に走り寄り飛びついてくる。

 

「「「は?」」」

 

「あの~ラ、ラウラさん?もしかしなくても…そのお父様というのは…」

 

額に青筋を立てながら震え声でラウラに問うセシリア。

 

「ああ!黒崎湊は私の父様なのだ!」

 

 

 

 

 

「ええええええええええええ!?!?!?!?」

 

 

クラス中がシャルルの時と同じ位驚きの声をあげる。

 

その中に目から光が消え、冷たいオーラを発する金髪と黒髪の女性が二人。

 

 

 

 

 

 

あ、ダメだこれ。

 

 

 

***

 

 

昼休み。

 

 

応接室に昼食を持ち寄り、俺とラウラ、そして千冬とセシリアの四人はランチタイムと洒落込んでいた。

 

「「…………」」

 

まあ、若干二名は未だ不機嫌オーラを漂わせ続けていたが。

 

「父様!このチーズケーキ凄くおいしいぞ!」

「そうか~それは良かったな~食堂のおばちゃん達に後でお礼言おうな~」

 

ラウラが食べているのは、我がIS学園食堂おばちゃんズフォース渾身の人気裏メニュー、『日替わりプレミアムスイーツ』だ。

一日限定10個で値段も1500円と本当に学生食堂のメニューなのかと疑うが、昼休み開始10分程で売り切れる超人気メニューなのだ。

 

今日はラウラの転校祝いにと俺が頼みに頼み込んで、1個多く作ってもらっていたのだ。

 

「…はぁ。何かいつまでも不機嫌でいるのが馬鹿馬鹿しくなってくるな…」

「ええ…こんな穏やかな親子会話を見せられて流石に大人げなくなってきました…」

 

千冬とセシリアはそんな俺たちの雰囲気に根を上げたのかなんなのか、機嫌を直してくれたようだ。

 

「それで?一体どういう事なんだ?」

「そうですわ!親子というのはどういう事なのです!?」

「どういう事って言われてもなあ…ほら、千冬ドイツにIS訓練の教官として赴任していた時期があっただろ?」

「ああ」

 

自己紹介の時、ラウラが一夏に千冬の事を『織斑先生』ではなく『織斑教官』と呼んでいたのはそういう事情がある。

ある事件がきっかけでドイツに借りができた千冬は一年ほど教官役として派遣されていた。

ラウラはその時の教え子という訳だ。

 

「それと入れ違いでドイツ軍に雇われたんだよ。『次世代IS開発への技術協力』って事でな」

「私の時と同じ…」

「なるほどな。そんな計画があるという話だけは聞いていたが…という事は学園に報告された専用機というのは」

「そ、俺の作品。といっても元々基本フレームやらソフトウェアはドイツの技術チームが作ってたからな。俺が関わったのはほぼ装備プランだけ」

「それで、乗り手と詰めなきゃ仕事にならんって言ったのがきっかけでラウラと知り合ってな…まあ、その、紆余曲折あって義理の娘として引き取ったんだ」

 

あの時は色々大変だったな…

 

「義理の娘…という事はご結婚されたという訳ではないんですの?」

「当たり前だ!ていうかそんな相手いないっつうの!」

「そ、そうですわよね…よし、なら問題なしですわ」

「……」

「ん、何か言ったか?」

「いえ!別に…」

 

その時俺は千冬が苦しそうな表情をしていた事に気づかなかった。

 

 

 

いや、気づいていたが見て見ぬふりをしたのだ。

 

 

 

 

***

 

 

夜。

 

寮に戻ってきた俺と千冬は最近日課となっている晩酌をしていた。

 

「…ところでさ」

「ん?何だ?」

 

俺は今朝HR前からずっと気になっていたことがあった。

 

「…なんであいつ『男のフリ』してんだ?」

「…気づいていたか」

「いやだって滅茶苦茶怪しいだろ」

 

一夏の一件で世界的に男性を対象としたIS適性検査が実施された。

結果は空振り。

俺というイレギュラーを除き、男でISを動かせるのは一夏以外にいなかった。

 

しかしここに来て突然現れた男性操縦者?

しかもあの『デュノア』姓ときた。

 

『デュノア社』とはフランスにあるIS開発の大企業だ。

デュノア社の量産機IS『リヴァイヴ』は世界第三位のシェアを誇り、その名は世界に轟いている…

 

というのは過去の話。

 

『リヴァイヴ』は例え世界的シェアがあっても所詮は第二世代型。古いのだ。

 

現在欧州連合で計画されている統合防衛計画『イグニッション・プラン』では次期主力機の選定中で各国は第三世代機をコンペに提出している。

しかしフランスでは未だ第三世代機の開発に至っておらず、その所為もあって戦力外としてプランから除名されている。

 

勿論これは不味いという事でフランスIS開発の顔であるデュノア社には政府より強いプレッシャーが掛けられているというのはその道の人間には周知の事実。

 

そんなデュノア社の血縁者から男性操縦者が見つかったらすぐに公表し広告塔にするだろう。

事実デュノア社はシャルルの転入を境に精力的なキャンペーンを行っている。

 

 

だがここで違和感が残る。

 

元々一夏が現れた事から、世界的な適性検査が実施されたのだ。

例えその時に見つかったとしよう。

なのにそこから専用機を与えられ、国家代表候補生として選ばれる?

 

 

果たしてたった1、2カ月でそれまで訓練を積んできた周りを押しのけて候補生になれるものなのだろうか。

 

「大体体つきもよく見てみれば違和感だらけだしな。何だあれ、晒でも巻いてんのか?」

 

結果、疑念の行き着く先は一つ。

 

 

シャルル・デュノアは女である。

 

 

「まあ…色々と事情があるのだろう」

「一夏のスパイかもしれないぞ?それでも良いのか」

 

男のフリをしてIS学園に潜り込んだという事は何か目的があるという事だ。

という事はターゲットとして必然的に思い浮かぶのは男性という事で近づきやすい、一夏と白式。

恐らくデュノア社からは白式の稼働データを盗んで来いとか色々言われている事は間違いないだろう。

 

気に入らない。

 

 

 

「それは…」

「お前はどうなんだ?生徒会長」

 

 

「その時はその時よ」

 

俺はさっきからずっと感じていた気配に声をかける。

するとドアから返事が返ってきて、IS学園生徒会長、更識楯無…刀奈が部屋に入ってきた。

 

「聞いていたのか」

「聞き耳とは趣味が悪いなあ」

「すみません織斑センセ。彼女の今日の様子を聞きたくて」

 

どうやらというかやはりというか、刀奈はこの件に関わっているようだ。

まあ『更識』の仕事というのもあるのだろう。

 

「んで?どうするつもりなんだ?」

 

場合によっては、出るとこに出ないといけなくなる。

 

「それは勿論…彼女の『本当の』気持ち次第ね」

 

 

 

 

 

 

 

「ところで、ラウラちゃんと親子関係って聞いたんだけどどういう事か説明してもらえるかしら?」

 

 

お前もか!

 




改めまして、本当お待たせしました。

約二ヶ月の放置・・・最近時が進むのが早すぎる気がします。
歳なんでしょうか。
まだ20代なんですけどね。

さて、次回は来週水曜日の投稿になります。
よろしければ是非これからもお付き合いくださいませ。
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