【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black 作:餌屋
「ん~困りましたねぇ。思った以上にシルヴィアは手強いようです」
6月中旬。IS学園理事長室。
その日俺は轡木さんと千冬、楯無の4人でシルヴィア・デュノアへの対抗策を練っていた。
あれから情報を集め、シャルロットを助けようと動いてきたのだが、ここに来て躓くことになってしまった。
というのも攻め切ることが出来そうにないのである。
当初俺達は、IS学園の名を使い全世界にデュノア社の違法行為、そしてシルヴィアの告発を狙っていた。
被害者であるシャルロットが学園に助けを求め、それを受けて学園が動いた。
先に世論をこちらの味方につければ勝つことも容易だろうと。
しかしシルヴィアは万が一の事を考えてか保険を掛けていた。
奴は決定的な証拠を残しておらず、調査報告やシャルロットの証言があってもシルヴィアまで責任問題が届かないのだ。
今の状態で行動を起こせば奴は必ず、トカゲの尻尾切りとばかりに他の者へ全責任を擦り付けまんまと逃げおおせるだろう。
必要なのは、シルヴィア・デュノアが黒幕であるという決定的な証拠。
「一応、更識には追加調査を命じてますけど…多分これ以上は何も出てこないでしょうね」
「くそ…フランス議会の重鎮、警察幹部、軍上層部にデュノア社部門責任者まで…はっきりクロの奴はどんどん出てくるが肝心のシルヴィアにたどり着かないとは…」
刀奈と千冬もどうしても苦い顔になってしまうようだ。
正直手詰まりの状態。
こうなっては…
「もう賭けに出るしかねえなあ…」
「賭け?」
「奴が関わっている確かな証拠がいる。なら自白してもらうしかもう手はねえだろ」
「自白って…」
刀奈が何言ってんだこいつといった目で俺を見る。
こいつめ…
「どうするつもりだ?」
「そうだなあ…」
***
「…っていうのはどうだ?」
「「・・・・・・」」
「なんだよその目は」
人が折角案を出したというのに、この女子二人と来たら人の事を白い目で見やがって。
泣くぞ。
「…相変わらず単純そうでえげつない事思いつくわよね」
「考えもしない事にたどり着くというのは良い事だが…上手くいくものか?」
「ずる賢い奴ほど思わぬ手に弱いもんなんだよ」
「シルヴィアもお前だけにはずる賢いなんて言われたくないだろうな」
「ホント、あなただけには言われたくないわね」
「お前らホント容赦ねえな」
千冬といい刀奈といい、昔はもっと優しかったと思うんだが…
俺が何かしたか?…ダメだ心当たりが多すぎる。
「まあ、黒崎君なら大丈夫でしょう。学園としてもメリットの大きい話です。頼みましたよ」
「了解です」
若干話が逸れかかっていたのを轡木さんが話を締める。
二人も元々反対ではないようで、何も言うことはなかった。
「そういえば…織斑先生、そろそろトーナメントの告知時期でしたか。準備の方は?」
「問題ありません。各国にも連絡を送り、既にスケジュール調整に入っているようです」
「トーナメント?なんだそれ」
聞きなれない単語に首をかしげる俺。
すると千冬は呆れた顔で再び白い目を向けてきた。
「あぁ、お前はこの間の職員会議すっぽかしていたからなあ。そりゃあ知らないだろうなあ」
「…申し訳ありませんでした」
「まったく…あのね。IS学園ではこの時期、学年別トーナメントっていう参加者を募ったISバトルの大会を開くのよ」
完全に俺の落ち度だった。
そんな俺に刀奈がこちらも呆れ顔をしつつ詳細を話してくれた。
「あぁ、なんか生徒が話しているのを聞いたような」
「ま、希望制といっても代表候補生や専用機持ちなんかは基本全員参加だし、あくまで授業の一環だから不参加の生徒も絶対観戦しないといけないんだけどね」
「なるほど…」
「ただ例年はシングルマッチだったが、今年はタッグマッチになる」
「タッグマッチて…ああ、この間の」
「ああ。万が一が起きる可能性は否定しきれないからな」
俺たちの脳裏に、先日のゴーレム襲撃事件が思い出される。
問題が起きた際の生徒たちの生存確率を上げる為にも、連携行動という要素は非常に重要なものとして学ぶべきだ。
普通なら、ただ1回襲撃事件が起きただけでこの対応は過剰反応だろう。
だが、今年はイレギュラーが多すぎる。
初の男子生徒に、黒崎湊という存在、そしてゴーレムを送り込んだ束の動向。
各国政府も情勢の動きに敏感と聞く。
「今年はどのような大会になるか楽しみですねえ。織斑一夏君の成長も期待できますし」
「理事長…私としてもお気持ちは嬉しいですが、流石にあいつはまだひよっこも良い所かと…」
「そうですか?黒崎君が中心となって特別指導しているとも聞きますし、男の子という物は時に想像もつかないような成長を見せてくれるものですよ?」
「はぁ…」
「ま、3か月の成長度合い楽しみにしてようぜ?」
***
「失礼します!」
それから数日後、学年別トーナメントの告知と参加受付が始まってすぐ職員室に一夏とシャルロットがやってきた。
「お、早速来たか」
「湊兄…トーナメントの参加申請に来たんだけど」
と、ここで俺は違和感に気づいた。
どうも一夏の様子がいつもと違う。
何だろうか…どこか固いというか、何か決意したような…
「あいよ、受け取ろう。相方は…シャルロットか。意外だったな。てっきり箒か鈴と組むのかと思ってたぞ」
「ええ、僕もそう思ってたんですけど一夏が…」
「…シャルはまだ男って事になってるし、下手に別々にタッグ組めば正体がバレてしまう事もあるかもだろ」
「ん…まあそうだな」
「それに…シャルには色々教えてもらいたい事がまだまだ多いし、トーナメントの特訓でそれが出来たら良いなって」
「ああ、確かに。シャルロットはサポート型の高い才能がある。良いコンビだと思うぞ」
「それでさ…頼みがあるんだ」
「頼み?」
力強いまなざしで俺を見据える一夏。
ああ、久しく見ていなかったこの目は…俺が一夏に期待するようになった『あの日』の目と一緒だ。
「俺たちがトーナメントで優勝したら、俺と一対一で模擬戦をして欲しいんだ。本気の」
その言葉に職員室にいた教師全員とシャルロットが息を呑んだ。
今、彼は黒崎湊に喧嘩を売ったのだ。
「…一応理由を聞こうか」
ある程度答えは予想がついているが、念のため一夏に確認を取る。
「俺は強くなりたい。それもただがむしゃらに力が欲しいんじゃなくて、皆と並んで、一緒に戦えるように。俺の大事なものを自分の力で守れるように」
「一夏…」
「その為には今俺がどの位置にいるのか身をもって知らなきゃならないと思ったんだ。『本当の強さ』を持つ相手と戦う事で」
「はは…あっはっはっはっは!!!」
「な、笑い事じゃないんだぞ!俺は本気で…」
「いや、すまんすまん。別に馬鹿にした訳じゃないんだ」
まったく…千冬よ、これは本当にもしかするかもだぞ。
覚悟を決めた一夏は、とても強い。
「良いだろう。その喧嘩買ってやる」
「ここまで辿り着いてみろ。織斑一夏」
***
某国軍事施設。
秘密裏に運営されているその施設の司令室で一組の男女が向かい合っていた。
豪華な椅子に座る年配の男。
その前には白衣に身を包んだ眼鏡の若い女。
「実戦テストですか」
「ああ、1週間後日本のIS学園で生徒同士によるタッグマッチの大会が行われる。アレも専用機持ちとして参加するそうだ。そこで例のシステムを動かせ」
「ですが…よろしいのですか?アレは仮にも代表候補生。政府の方々も目を掛けていると聞きます」
「構わん。アレは所詮我が軍が作り上げた兵器に過ぎない。使いつぶしても替えはいくらでもいる」
「しかし、彼の怒りを買う事にはなりませんか?」
「ふん、確かに委員会から奴がISを動かせるという話は聞いているが、だからといって我々に牙を向ける力などない」
「…だと良いのですが」
「第一、たとえ奴が報復に出ようとしても我々まで辿り着けるわけがない。この計画は秘密裏に動かしてきた最上級機密事項なのだ」
「…了解いたしました。ではそのように準備します」
彼らは気づかない。
傍にあるパソコンの画面に小さく、兎のマークが浮かび上がっている事を。
自らがどうしようもなく誤った道に進んでいる事を。
どうも餌屋です。
今回は前置き的な話。
既に白くなった状態のラウラな為、セシリアと鈴がボコられる話は無くなりました。
さて残りの組み合わせはどうなるのか。
さて来週木曜より東京旅行に帰省と執筆に時間が取れなくなるので何話か書き溜めたいと思います。
その為次回更新は未定という事で。
遅くとも来週金曜くらいには更新したいなと。
お盆スペシャル的に連日投稿とかできればしたいなという願望があったり。
それでは次回もよろしくお願いします。
感想、評価などお待ちしてます。