【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black   作:餌屋

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第2話: 春は木刀で死にそうになる季節

 

 

クラスでのHRが終わった後。

 

俺は千冬と一緒に一般生徒出入り禁止の地下区画へやって来ていた。

 

「お~広いな」

「轡木さんからこのスペースを自由に使って構わないと言われている」

「マジか!さっすが太っ腹だな!」

 

俺がIS学園にやってきた際頼んでいたプライベートラボの準備がようやく整ったので、用意されたスペースを観に来たのだ。

広さは学園の大教室1個分くらい。これだけあれば使用する端末がどれだけ多くても十分設置可能だろう。

 

「よーし、それじゃあ早速荷物を運び入れるかねえ」

「私は授業があるからもう行くが、1人で大丈夫か?」

「大丈夫大丈夫」

 

そして千冬は授業のためクラスへ戻っていった。

時間がある時には真耶ちゃんの授業監督もしてるっていうから驚きだ。

常に仕事をノンストップでこなしているに等しい。

 

 

それから俺もノンストップで機材設置を行い、気づけば一日最後の授業である5限目終了のチャイムが鳴っていた。

 

 

***

 

 

「は~食った食った」

 

俺は作業を終えた後、流石に空腹に耐えきれず枯渇した糖分を補給する為、急いで食堂に向かった。

 

本日のメニュー。

 

ラーメン(大盛り)。

 

チャーハン(大盛り)。

 

ペペロンチーノ(大盛り)。

 

 

 

それだけ食べて太らないのかと近くにいた女子に聞かれたが、「しっかり運動すれば問題ない」と答えると恨めしそうな顔をされた。

きちんと運動もせず痩せようとするのが間違いなのだ。

 

大量の炭水化物を苦も無く食べきり、俺は自分の寝室がある寮へと向かう。

 

 

さてここで大事な話だ。

 

ISは今まで女子しか動かすことが出来ないとされていた。

しかし今では男子である一夏が動かせるという事が判明している。

更にこれまで女性教員のみだった学園に男性教員である俺が加わった。

 

また、千冬とは昔からの馴染みで実は轡木さんより一緒に寝泊まりするよう言われている(まあ、これは監視の意味もあるのだろう)訳で。

 

千冬は寮長だ。

 

 

 

 

つまりどういう事かというと。

 

 

「あれ!?黒崎先生!?先生もこの寮なんですか!?」

「織斑君に続いて2人目の男子!キターーーーー!!!」

「織斑君と一緒の部屋なのかしら・・・ハァハァ・・・それは色々と滾るわねぇ・・・」

 

俺と一夏はめでたく花園、女子寮で暮らすことになった。

・・・めでたくねえなあ。

部屋が千冬と相部屋と決まった時から予想はしていたが・・・これは少々居心地が悪い。

そして俺でも居心地が悪いのだ。あの一夏はもっとキツいだろう。

 

後、最後の婦女子は今度千冬に鉄拳制裁してもらう。

 

そんな事を考えながら寮の廊下を歩いていると突然一夏が部屋から飛び出してきた。

なにやら顔を青ざめて酷く焦った様子だ。

 

一夏は背中を扉に預けながらふぅと一息付く。

 

「助かっ―――」

 

ズガン!

突如一夏の顔真横から木刀の切っ先が突き出てくる。

おい、これまさか・・・

 

ズガン!ズガン!

 

「待て待て待て!本気で殺す気か!!」

 

一夏は憤慨しながら扉から距離を空ける。

 

「あれ、織斑君どうしたの?」

「へー、ここが織斑君の部屋なんだ!良い情報ゲットしちゃった!」

 

しかし一連の騒ぎを聞きつけ、女子達がぞろぞろ部屋から出てきてしまう。

一夏にとっては最悪の展開だ。

何せ周りの女子はほぼ男の目を気にしない格好をしている。

中には下にズボンもスカートも履かず長めのパーカーのみだったり胸元が見えている子までいる。

 

ったくしょうがねえ。

 

「おーい、一夏。生きてるかー」

「え、み、湊兄!どうしてここに!?」

「俺もここで千冬と同部屋なんだよ」

「千冬姉と!?」

 

その言葉を聞いた瞬間一夏の顔が悔しそうに歪む。

 

「おらシスコン野郎、何て顔してんだ。別に何もないんだから良いだろ」

「何もないなんて事は・・・」

 

駄目だ、それ以上は言わせられない。

 

「それより!中にいるのは箒だな?」

「え、ああ・・・」

「取りあえず事情を聞くがその前に・・・」

 

俺は扉の前に立ち、向かいにいるだろう相手に声をかける。

 

「箒、俺だ。湊だ。事情を聞くから開けろ」

 

しばしの沈黙があった後、ゆっくりと扉が開いた。

 

「どうぞ・・・」

 

部屋の中には一夏と同じく古い知り合い、篠ノ之箒がいた。

 

「お邪魔します。ほら一夏も入れ。さ、今日はここまでだ!もう部屋に戻って寝ろよー!」

 

俺は一夏を部屋に入れ、周りで見物していた女子生徒を解散させた。

 

 

***

 

 

俺はベッドに座る一夏と箒の前に椅子を持ってきてそこに座った。

 

「さて・・・取りあえずきちんとした挨拶もまだだったな。久しぶり2人とも」

「お久しぶりです・・・湊さん」

「ああ、久しぶり・・・ってそうじゃなくて!何で湊兄がIS学園の教師に!?しかも千冬姉と同室って!」

 

一夏が更にヒートアップして俺に詰め寄る。

 

「世界中のスカウト躱して飛び回るのも嫌気が指したんだよ。千冬が同じ部屋なのは学園の都合だ。んな事よりお前ら一体何があったんだ?」

「それは・・・」

 

と一夏がバツが悪そうに眼をそらす。

 

「・・・見られたんです」

 

顔を赤らめながら俯き気味に箒は一通りの事情を話してくれた。

 

「なるほどな。一夏」

「な、何だ?」

「・・・馬に蹴られて死ね」

「酷え!!」

 

酷い事なんてあるか。

 

「一体何なんだお前は!?いつもいつもラッキースケベ起こしやがって!しかもその癖鈍いしよお!!」

「鈍いってなにがだよ!!」

「・・・そうだよな。お前ならそう返すよな。もう良いや・・・取りあえずそれは謝れ。不用意に入ったお前が悪い」

「ああ・・・すまなかった箒。嫌だったよな」

「いや、その・・・わ、私だって恥ずかしいんだからな・・・」

 

一夏の謝罪に箒は更に顔を赤らめて返答する。

・・・なんだこれ。

 

「それと・・・箒も謝れ」

「な、何故ですか」

「お前なあ・・・自分が何をやったか自覚はあるのか?」

「!」

「一夏の不用意な行動に怒るまでは構わんさ。むしろ怒らない方がおかしい。だがその後木刀を持ちだして攻撃、挙げ句の果てに扉を破損させるのはいくら何でもやり過ぎだ。上手く一夏が避けたから良い物の一発でも当たっていたら今頃怪我じゃ済んでないぞ」

「・・・それは」

「お前は剣道を極める者だ。お前の剣は理不尽な暴力のためにあるのか?」

「っ!」

「違うはずだ。お前は俺とは違う。自らを律し、高める為に剣の道を歩んでいるんじゃ無いのか」

「はい・・・」

 

俺は意気消沈した箒の頭に手をやり努めて優しくなでながら続ける。

 

「すぐに治せとは言わねえよ。だがもう少し直情的な性格を押さえなければ叶う想いも叶わねえぞ?」

「~~~っ!」

 

箒は俺の言葉に本日最大に顔を赤らめながらうつむく。

 

「よし、じゃあこれで話は終わりだ!千冬には上手いこと言っておくからお前達も早く寝ろよ」

 

言いたいことは伝わったと感じた俺は自室に戻るため扉へ歩き出す。

と、後ろから箒が呼び止めた。

 

「み、湊さん!」

「ん、何だ?」

「・・・その、今姉さんは?」

「・・・」

 

篠ノ之箒。彼女は束の妹だ。

昔起こった事件を機に家族は散り散りになっていて、その頃から2人の仲は悪い。

というより箒の方から拒絶している感じではあるが。

 

「・・・まあ、元気にしているみたいだな。どこにいるかは流石に知らないが」

「・・・姉さんは何を考えて」

「さあ、それは簡単に分かる物じゃない。だが、これだけは言える」

「?」

「あいつは、ずっとお前を気にかけてるよ」

 

それだけ言って俺は部屋を後にした。

 

 

***

 

 

自室。

 

帰ってくると千冬がデスクで書類整理をしていた。

 

「ん・・・帰ってきたか」

「ああ、早速メンタルケアをね」

「何かあったのか」

「一夏の唐変木パワーが火を噴いてた。相手は箒」

「・・・まったくあいつは」

 

千冬は何度目だろうか、頭を抱えてしまう。

 

「・・・箒は危ないかもな」

「何か気になることでもあるのか?」

「あいつが出場した去年の剣道全国大会見たか?」

「ああ・・・そういえば出場していたな。だがまだ見ていない。それが?」

「俺は試合後動画で見たんだが、その時のあいつの剣が酷く歪んで見えてな」

「歪んで?」

「ああ、まるで憂さ晴らしのような・・・相手を心の赴くまま叩きのめしたいかのような」

 

今でも思い出す。

あの時の箒は見ているだけで気分が悪くなる位歪みきった剣筋をしていた。

 

「憂さ晴らし、か」

「長い重要人物保護プログラムによる転校生活。しかも一夏とは離ればなれ、連絡も取れない。束の件で執拗なまでに監視と聴取が繰り返される。そりゃあストレスの一つや二つ溜まる」

「・・・あんな事がなければ」

 

千冬は苦々しげに顔を歪める。

 

「いや、あの事件が無くても時間の問題だったと思う。だからこそ、何とかしてやりたいんだよ・・・元をたどれば全て俺と束が原因でもあるし」

「お前が箒を鍛えてやればどうだ?」

「駄目だ、既に俺は剣の道から外れている。届かんよ」

「難しいものだな・・・」

「過ぎた力は必ず身を滅ぼすし、不用意に力を付けさせるわけには行かないと思う。かといって俺の剣や言葉じゃきっかけは作れても変えることは出来ないだろう。この学園生活で少しは何とかなれば良いが・・・一夏に期待してみるか」

「一夏に?」

「ああ・・・あいつの女誑しっぷりはこういう所で活かされないと」

 

 

さて、今日中にラボ設置は終わったし明日は早速研究再開だ。

今手がけている奴が佳境を迎えているのでそろそろ完成させたい。

 

 

この時は、そう思っていた。

 

 




第2話です。
あんまり話進んでいません。でも大事なシーンだと思っています。
しかし鈴が出てくるのはいつになることやら・・・
そして転入生コンビが出てくるのはこれまたいつになるのやら・・・
彼女たちのファンの皆様は気長にお待ちください。

製作状況などは活動報告にてお知らせいたします。

それではまた次回!
感想、お気に入りなど励みになりますので是非お願いいたします。
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