【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black   作:餌屋

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第3話: 『逃げる』のではなく『受け入れる』

 

 

次の日の昼休み。

研究に没頭していたら腹が減ってきた俺はラボから出て食堂へ行こうと中庭を通りかかった。

 

 

それが運の尽きだった。

 

「・・・・・・」

「お願いします!神様仏様湊兄様!俺を助けてください!!」

 

俺は突如現れた一夏に突然土下座されて何かを頼み込まれていた。

ちなみに何を助けて欲しいのか俺は聞いていない。

 

「・・・一夏、お前何の真似だ?何の恨みで俺を『生徒を土下座させる教師』像に陥れようとしている?」

「え、いやそういう事じゃ無く!」

「はぁ・・・取りあえず腹減ってるし、話は食堂で聞く。良いな?」

 

俺は嫌な予感を感じながら一夏を連れて食堂へ向かい話を聞くことにした。

 

 

***

 

 

時は昨日まで遡る。

 

湊が地下で設置作業に追われていた頃。

1年1組教室。

 

 

 

二時間目の休み時間。俺、織斑一夏は突然女生徒に声をかけられた。

 

「すみません、よろしいかしら?」

「へ?」

 

わずかにロールが掛かった鮮やかな金髪、白人特有の透き通ったブルーの瞳。

確か自己紹介の時に聞いた名前はセシリア・オルコットだったはずだ。

 

「改めまして、イギリス代表候補生のセシリア・オルコットですわ」

「あ、ああ。織斑一夏だ。それで、何か用?」

「あなた、織斑先生の弟さんだそうですわね」

「一応、な」

「その織斑先生と先ほどのみなt・・・黒崎先生が何か親しげなご様子だったのが気になりまして。何かご存じかしら?」

「あ~・・・何と言ったら良いか、まあ幼馴染みみたいな関係かな?」

「お、幼馴染み!?」

 

突然セシリアが凄い剣幕で俺の机をバンと思い切り叩き詰め寄ってきた。

だがセシリアは咳払いを一つするとすぐに落ち着きを取り戻した。

な、何なんだ!?

 

「そ、それがどうかしたのか?」

「そ、それではあなた自身も黒崎先生とは?」

「ああ、湊兄は千冬姉と俺と同門の道場出身だし昔は何度も稽古に付き合って貰ったな」

「な、何度も稽古を・・・」

「おう。一緒に風呂にも入って背中を流し合った仲だ」

「お、お風呂もですって!?」

 

まあ、俺が小学生の頃の話だけどな。

離れた所から女子達の黄色い悲鳴が聞こえてくるが何かあったのだろうか。

 

「それで・・・それがどうかしたのか?」

「それがって・・・私にとっては重大なのですわ!良いですか!私は・・・」

 

その時三限目開始のチャイムが鳴り響く。

 

「っ・・・!また後でお話しします!」

 

まじか・・・

憂鬱になりながらも前を向いて授業を受ける体勢に移行する。

次の授業は千冬姉が担当するようだ。

 

「さて、次の授業を始める前に再来週行われるクラス対抗戦に出る代表者を決める」

 

説明によるとクラス代表者とはそのままの意味で、対抗戦だけで無く生徒会の開く会議や委員会への出席もしなければならない所謂クラス長の役割もあるようだ。

まあ面倒そうな役どころだなあ、と思っていると。

 

「はいっ!織斑君を推薦しまーすっ!」

 

・・・ん?

 

「私も賛成です!」

「では、候補者一人目は織斑一夏だな。他にはいないか?自薦他薦は問わんぞ」

「お、俺!?」

 

待て待て待て!何で俺が!

 

「織斑。席に着け。自薦他薦は問わないと言ったはずだ。他薦された者に拒否権はない。選ばれた以上は覚悟を持て」

 

そんな馬鹿な・・・

 

「お待ちください」

 

こ、この声は・・・

 

「物珍しいからと理由だけで織斑さんに押しつけるのは如何なものかと思いますわ」

 

セシリアが俺の他薦に異論を挟んでくれた。

何だ、感情的な奴かと思ったが意外と良い奴じゃないか!

 

「それに幾ら現時点での実力調査とはいえ、実力が定かでは無い男性にお任せして最下位になってしまえばクラス全体が低く見られてしまいます。そのような事は避けるべきですわ」

「む・・・それは俺が最下位になるかもしれないって言いたいのか」

 

何か、面白くない。

低く見られるのは好きじゃないんだ。

 

「当然です。幾らあなたがISを動かせるといってもろくに訓練をしていない状態で勝ち抜けるとは思えません」

 

それは確かにそうかもしれない。

俺とは違って他の女子達は高校入学前からIS関連の授業を受けており多少なりともISを動かしたり、知識をしっかり蓄えてきている子が殆どだ。

それに比べて俺は初めてISを動かした時と、入学の際に試験官と模擬戦闘を行った時の二回しかこれまで動かしていない。

 

「私は代表候補生として訓練しておりますし、一位を取ることも不可能ではありません。それならば織斑さんより私がクラス代表になる方が良いですわ」

 

だけども。

 

「納得いかねえ」

「え?」

「確かにセシリアの言うことは一理も二理もあるけど、だからって低く見られたまま『はいそうですか』って引き下がれるほど俺は大人じゃねえんだ。男の子だからな」

 

俺の発言でセシリアとの間に不穏な空気が生まれる。

 

「・・・そういえばあなたは黒崎先生と同門だったそうですね。そして私も祖国で黒崎先生の教えを受けたことがあります」

「え、セシリアも?」

 

初耳だ。

 

「良いでしょう。でしたら決闘ですわ!どちらがクラス代表に相応しいか、どちらが黒崎先生の教えを受け継いでいるかハッキリさせましょう!」

「良いぜ、正々堂々勝負だ!」

 

こうして俺は一週間後、セシリアとクラス代表の座を賭けたISバトルによる決闘をする事になったのだ。

 

 

 

 

 

あれ、ISバトル?

 

 

 

***

 

 

「というわけで俺にISの事を教えて欲しいんだ・・・」

「・・・」

 

 

言って良いか?

言うぞ?

 

 

 

聞かなきゃ良かった。

 

「呆れてなんも言えねえ・・・」

 

俺はそのまま食堂の机に力なく倒れ込み顔を置く。

 

「ど、どうしたんだよ」

「どうしたもこうしたも・・・後先考えず先走りやがる大馬鹿野郎に呆れているんだよ・・・」

「ぐっ・・・」

 

言い返せない一夏は苦い顔をした。

 

「・・・まあ過ぎたことは仕方ないか。それで?ISの事を教えて欲しいのか?言っとくけど俺は男だぞ?」

「ああ、それが訓練用のISは貸し出しが無理って断られちゃってさ。ならISの知識とか戦う時のアドバイスとか貰えればって」

「その位なら教科書や図書館で本漁れば幾らでも出てくるし、俺は何もしてやんねえ」

「えぇっ!?何でだよ!」

「あのなぁ・・・お前ホント身の程知らずだな」

 

俺が白けた目で吐き捨てると流石に一夏がムッとした。

 

「・・・ずいぶんな言い方だな」

「だってそうだろうよ。相手を誰だと思ってんだ」

「誰って・・・セシリア・オルコット、クラスメイトでイギリスの代表候補生だろ」

「代表候補生って何か知ってるか?」

「そりゃあ、特待生みたいな感じだろ」

「あのなぁ・・・普通の高校でも特待生っていったら死にそうになるくらい勉強して良い成績取ったザ・努力の人なんだ。ここはIS学園、しかも海外からの特待生で代表候補って事は・・・ここまで言えば分かるだろ?」

 

一夏はハッとした顔をする。

流石に察することができたみたいだ。

 

「祖国の名を背負いモンド・グロッソに出場する各国代表になる為、自分の国で数百時間に及ぶ軍隊仕込みのIS訓練を行い、IS関連の知識を叩き込まれ、他の代表候補生とのレースに勝ち上がり最新の専用機を貰っている。その苦労と苦難は計り知れない。お前はそんな相手と戦うんだ」

「・・・俺は」

「ISが動かせないからISの知識を入れておく?戦う時のアドバイス?そんなのはな、ISバトルにおいて入っていて当たり前の知識だ。お前は朝千冬と会ったら「おはよう」と挨拶するだろ?それくらい当然の事なんだよ」

 

一夏は俯き、膝の上で握り拳を作っている。

 

「・・・情けねえな」

「ああ・・・情けねえな。意に反した現状に甘えていたか?お前はただ逃げているだけだ。受け入れないといけねえ。そして、受け入れて・・・『織斑一夏』は何をする?」

 

俺の問いに一夏は顔を上げ、凜々しく、決意に満ちた眼差しでこちらを見る。

 

「俺は、勝ちたい。勝って、セシリアに謝りたい。甘く見てたって事。それから・・・もっと強くなる」

「強くなってどうする?ただ腕っ節を強くするだけなら馬鹿でも出来るぞ」

「俺は、千冬姉のように誰かを引っ張って皆を守れるようになりたい。そしていつかは・・・」

 

一夏は周りの事も考え声を抑えながらもハッキリと想いと夢を口にした。

 

「・・・上出来だ」

「えっ」

 

口をニンマリさせ呟いた言葉に一夏は驚いたような顔をする。

 

「そこまで理解して、受け入れて、前に進む気があるなら俺も協力してやる」

「ほ、本当か!?」

「ああ、だが・・・俺はス・パ・ル・タ・だ・ぞ・?」

「・・・望む所です」

 

俺の邪悪な声に怯む一夏。

試合まで一週間切ってるんだ。やるからには徹底的に。

 

 

・・・その前に久しぶりにあいつにも会いに行かないとな。

 

 

***

 

 

その日の放課後。

俺は一夏に本格的な訓練前の課題としてIS関連書籍10冊を一晩で読み終えるよう言い渡し、ISアリーナへ向かっていた。

目的はそこで丁度訓練をしているある生徒と話をするため。

 

アリーナの観客席へ足を踏み入れると丁度フィールドを飛び回る青いISがいた。

 

「おーい、セシリア~」

 

俺が青いISへ向けて手を振るとISは急停止し、観客席の近くまで寄ってきた。

 

「湊さん!お久しぶりですわ!」

 

ISを纏っていたのはセシリアだった。

俺は職員用のアリーナへの通用口を通りセシリアと向かい合う。

 

「もう!何で昨日挨拶してくださらなかったんですの!?」

「悪い悪い・・・忙しくてな」

 

ちなみにHRの時セシリアも出席していたのだが、後ろの方の席だからか最初全く気づかなかったのは言わないでおく。

セシリア、マジごめん。

 

「まあ・・・許して差し上げますわ。折角の再会ですし・・・」

 

実はセシリアとは数年前にイギリスで会ったことがある。

当時のイギリス政府からの依頼で代表候補生達の訓練の特別講師として1ヶ月指導した時だ。

その時担当した候補生は6名だったがその中でもセシリアは貪欲に俺に指導を求めてきて、どんどん実力を伸ばしていった。

最後の一週間にはセシリアが得た専用機、ブルー・ティアーズを使った訓練もみっちり行った。

 

「しかし、あれから2年くらい経ったけどまた一段と動きにキレが出たな。それにビットの使い方も上手くなってる」

「本当ですか!」

「だが・・・まだ同時操作は難しいか」

「うっ・・・流石すぐにお気づきになりましたか。ええ、仰るとおりです。どうも感覚が掴みにくくて・・・未だ、最大稼働にも至っていませんし」

「まあ、今のままなら一夏との決闘も楽に勝てるだろ。『今のまま』ならな」

「お聞きになったんですか・・・ってどういう意味ですの?」

 

セシリアは俺の言い回しに眉をひそめる。

 

「実は俺、一週間一夏の訓練をする事になってな」

「え・・・えぇっ!?」

 

セシリアは目を見開き、裏返った叫び声を上げる。

 

「どどどどど、どういうことですか!何で湊さんが織斑さんを!?!?」

「落ち着けよ・・・今のまま戦っても勝敗は分かりきってるし、雑魚と戦ってもセシリアの為にならん」

「それは・・・私が勝利に驕るようになると言う事ですか?」

「ふっ・・・今のお前にそんな心配はしてねえよ」

「では何故ですの?」

 

最初、ムッとしていたセシリアだったが今は真剣な顔付きで俺に聞いてくる。

分かっているのだ。俺が回りくどい言い方をする時はきちんと理解しなければならない、大事な話なのだと。

 

「今まではお互い性格が分かり、また同じ機体で知っている戦法しか使わない相手としかお前は戦ってきてない」

「ええ、今までは祖国で競い合った候補生達としか模擬戦は行っていませんわ」

「だが、ここはIS学園だ。望み、研鑽する気概さえあれば未知の相手と幾らでも戦って吸収していける。その初戦が噂の男子でしかも俺のスパルタ指導で鍛えられた状態。うってつけじゃないか?」

 

俺の誘いにセシリアの目に火が、いや炎が宿る。

 

「・・・ええ、最高の初戦ですわね」

「いいか、セシリア。俺は一夏を鍛えて、本気で勝ちを取りに行く。だからお前は、今実現できる最高のコンディションで掛かってこい」

「望む所ですわ!」

 

俺とセシリアは拳と拳を軽く打ち合わせて宣戦布告し合う。

 

「さて、俺はそろそろ戻るな。頑張れよ」

「ええ!湊さんも織斑さんを是非鍛え上げてくださいまし!」

「おう!あ、そうそう。今度の模擬戦が終わったらお前の訓練も見てやるよ。ついでにブルー・ティアーズの調整もしてやる。何せ、それは『俺が作ったんだから』な」

「はい!お願いしますわ!」

 

さあ、面白くなってきたぞ~!

 

 

***

 

 

「あぁ~!!結局湊さんにあの時のお答え、お返しできてませんわ~!!」

 

その後、ISアリーナにセシリアの叫び声が響き渡ったのは運良く誰の耳にも届いていなかった。

 

 




お待たせしました第3話です!

さあ、今回は一夏強化フラグとセシリアヒロインルートフラグを立たせましたよ!やったね湊くん!伏線が増えたよ!
最後のブルー・ティアーズを湊が作った云々はそのうち詳しく解説します。

ちなみに現時点での一夏セシリアの力量差は1:100位としています。
ここに湊のスパルタ指導とアドバイスが加わってどこまで差を縮めることが出来るのか。
しかも湊はセシリアとブルー・ティアーズをよく知っていますし・・・
そんな不利な状況でどこまでセシリアが強さを見せることが出来るのかもお楽しみに。
※ちなみに現時点で勝敗をどうするかは決めてなかったり

次回は剣道場で本格的訓練開始です。


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