【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black 作:餌屋
それから二日後。
集合場所である学校の剣道場にやって来た一夏は、疲れ切った顔をしていた。
「あぁ・・・まだ腕が痛え・・・毎日腕立て腹筋素振り500回ずつはキツいぜ・・・」
「だらしがないぞ一夏!鍛錬を怠っていたからそうなるんだ!」
「受験勉強にバイトにで忙しかったんだよ・・・」
一夏の隣で箒が檄を飛ばしている。
今回、箒には一夏の特訓のサポート役をして貰うことにした。
まあこれには色々考えがあるわけで。
「よーし、この二日間良く地獄の体力トレーニングをこなしきった!ここで潰してやろうかとm・・・もとい、ここで踏ん張らなければセシリアに勝つなんて夢のまた夢だからな!」
「おい今何言いかけた」
一度潰してからの反発力で鍛え上げる!
これぞ黒崎式ブートキャンプだ!!
勿論嘘だ。
「まあこれである程度体力は元に戻っただろ。こっからは実戦訓練だ」
「遂に来たぜ・・・」
「しかし、訓練用のISは使えないはずでは?」
「勿論。実戦訓練ってのは剣の訓練の事だ」
と、俺は持っていた竹刀を一夏に投げ渡す。
「おっと・・・剣?」
「そう。一夏は昔剣道をやっていたし、獲物は剣や刀が慣れてるだろう。というか期間的にそっちを磨いた方が良い。射撃は無理だ。使い物にするにはどれだけ早くても数ヶ月はかかるし知識もセンスもいる。大体セシリア相手に射撃戦挑むとか自分から負けにいくようなもんだしな」
「確か、彼女のISは専用機でしたか」
「IS≪ブルー・ティアーズ≫。第3世代兵器『BT兵器』の実用化に向けたデータサンプリング目的の試験機だ。主兵装である巨大な特殊レーザーライフルによる狙撃と、全方位からの遠隔無線誘導型射撃ビット『ブルー・ティアーズ』によるオールレンジ攻撃を得意としている。まあようするにわざわざ同じ土俵にあがれば嬲り殺しにされる相手って事さ」
俺が何でもないように言うのを見て一夏は苦笑いを浮かべるしかなさそうだった。
「嬲り殺しって・・・」
「随分詳しいですね。やはり教員の方には情報が?」
「まあそれも間違いじゃ無いが、元々あの機体の武装は俺が作ったからさ」
そんな俺の突然の告白に。
「「・・・・・・はあああ!?!?!?」」
一夏と箒は驚きのあまり大声をあげた。
「んでまあ今日から剣技の訓練って訳なんだが」
「いやいやいや!何話進めてんだよ!え!?湊兄が作った!?どういう事だよ!?!?」
「どうもこうも・・・仕事の依頼で一ヶ月イギリスに特別講師で招かれた時、めでたく専用機持ちに選ばれたセシリアへプレゼントした・・・ってだけなんだが」
もう少し正確に言うと、イギリスから受けた仕事は『代表候補生選出の為の最終講義の講師』と『第三世代IS製作における技術協力』の二つ。
結局技術協力といっても機体自体はほぼ俺のプラン通りに作らせただけで、実際に一から手がけたのは武装各種だ。
『BT兵器』は俺が手がけた第三世代最新技術の一つなのである。
「本当規格外だな湊兄・・・流石『細胞レベルでオーバースペック』族の一人」
おいその族名やめろ。
「初日の挨拶で話していた軍との仕事というのはそういう事だったんですね・・・」
「まあな。それより話を戻すが・・・まずは一度箒と剣道のルールで一本仕合ってくれ。現時点の実力を見たい」
「分かった」
「・・・分かりました」
そうして一夏と箒は竹刀を片手に所定の位置で向かい合った。
「いくぞ箒」
「ああ、来い」
***
「ちっくしょ~」
結果的にいうと一夏の惨敗だった。
最初はお互い牽制しあいながら相手の隙を探す読みあいが起きていたが、唐突に一夏が勝負を決めようと面狙いで踏み込んだ瞬間、がら空きになった胴に箒が決め一本勝ちとなった。
「あれだな、一夏は昔から我慢効かないんだよな」
「ぐう・・・」
「まあそれでも相手も悪かったしそこまで気に病むことはねえよ。基本は一応身についているみたいだからじっくり戦い方を叩き込むぞ」
「お、おう」
「・・・」
俺が一夏と方針について話していると、箒が黙ったまま俺をじっと見つめてきた。
「・・・どうした?」
「この間、私に言いましたよね?剣の道を進む事について『お前は俺とは違う』と」
「そうだな」
「・・・湊さんは剣の道を捨てたということですか?」
箒が厳しい顔で俺に問いかけてくる。
一夏は突然の不穏な空気におろおろし出した。
「・・・だったら?」
「・・・私と一本仕合ってください」
「それで?」
「私が勝ったら一夏の訓練から手を引いてください」
「お、おいおい箒!」
一夏が慌てて箒をたしなめるがその声は届かない。
「何を言ってるか分かってるな?」
「・・・ええ」
恐らくだが。
元々箒は面白くなかったのだろう。
一夏は特訓に先立ち俺をまっ先に頼り、箒には全く話をしなかった。
箒は一夏に恋心を抱いている。要は嫉妬だ。
そして剣道を極める為日々鍛錬を重ねた箒は、剣道を辞めた俺に少なからず怒りもあると思われる。
「じゃ、まあやるか」
俺と箒は先ほど同じように竹刀片手に向かい合う。
「一応言っておくが、俺は別に剣道を捨てた訳じゃない。師範の教えはしっかりと身についている。その上で、俺は実践的な技術を身につけるため剣術に進んだ。剣道で培った技術は剣術を身につける中で非常に助けになった」
俺は初め両手で正眼に構えていたのを片手で持ち直し、腕を下ろし一見隙だらけのような体勢になる。
「・・・どういう事ですか」
「お前の考えてることはわかるつもりだ。だから剣術で相手をしてやる。どちらかが先に相手から一本奪えば勝ちなのは変わらん」
「・・・望む所です」
「良く見とけよ一夏」
そして一夏を置いてけぼりにしたまま、俺と箒の試合が始まった。
ここで一旦分けさせて頂きました。
一夏やセシリアは既に原作よりも成長し始めてますが箒はまだまだ面倒な子のままです。
果たして迷走する箒はどこに向かうのか。
というわけで次回に続きます。
夜21時か午前0時頃更新予定です。