【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black 作:餌屋
ありがとうございます!
今回は短めです。
何がなんだか分からないうちに、湊兄と箒の試合が始まってしまった。
うろたえながらも俺は開始の合図に挙げた右手を振り下ろす。
瞬間、箒が早速踏み込み胴目掛けて竹刀を振るう。
普通なら完璧には対処しきれないそれを、湊兄は読んでいたかの如く最低限の足運びで難なく躱した。
速い。
箒のスピードも速いが、湊兄の動き・・・いや判断力というべきか、はもっと速い。
流石ブリュンヒルデ、千冬姉と剣技において肩を並べるだけの事はある。
その後も箒は先ほどとは打って変わって臆せず攻め込み続ける。
面打ち、胴、小手・・・時折牽制に別の場所を狙ってもその軌道は幾度も空を切ってしまう。
「くっ・・・」
苦々しい顔をする箒。
それもその筈で湊兄は箒の連続攻撃を足運び一つで捌ききっており、未だ竹刀を動かしていないのだから。
手加減されているという屈辱と形勢がどんどん悪くなっていく焦りで箒の動きも乱れ始める。
と。
「そこだ」
箒の僅かな、しかし決定的な隙を逃さず湊兄は一瞬で距離を踏みつぶし肉薄する。
そして次の瞬間、箒の竹刀が吹き飛ばされ宙を舞った。
「なっ・・・」
「はぇぇ・・・」
少しでも視線の先が違えば見逃した所だが、間合いを詰めることによって箒の動きを制限し相手の手元に竹刀を差し込んで巻き込ませた・・・ようだ。
箒は一瞬で勝負を決められた事に呆然としている。
「・・・今の歩法は篠ノ之道場で師範から千冬と一緒に教わった物を昇華させた物だ」
「・・・うちで?」
「剣道は戦うための物じゃない。自らの心技体を鍛え、自らを律する物だ」
「自らを・・・律する」
「剣術は戦うための物だ。だがそれでも心が鍛えられていなければただ力に溺れるのみ。俺は道場での鍛錬を通じてその事を学び、活かしている」
「なんと視野が狭いのか私は・・・」
「箒・・・」
「力は所詮力だ。剣道を進む事は力を律することを覚える為にとても良い。箒はその辺りを忘れているようだがな。さ、もう一本やるぞ」
湊兄は開始場所にすたすたとあっさり戻っていく。
「え、ちょ湊兄?」
「わ、私は既に負けたのですが・・・」
「なんだ?一回負けたくらいで。お前俺に喧嘩売ったんだ。このまま終わらせる訳ねえだろ?どうせだ、箒も鍛え直してやる」
そう、湊兄は気持ちの良いくらいニッコリと微笑んだ。
「あ・・・これアカン奴や」
めっちゃ怒ってますはい本当にありがとうございました。
そして箒にとっての地獄が幕を開けた。
この時の俺は知らなかった。
まさか俺にも同じだけのキツいしごきが待っているなんて。
お手柔らかにお願いします・・・・・・
***
一夏の特訓開始から時は経ち、既に土曜日の昼を迎えている。
今頃、一夏は俺の命に従い箒と地獄の1000本試合を千冬監視の下行っている事だろう。
俺が手が空けられなくなったので今日明日だけ千冬に練習メニューの監視を頼んだのだ。
では俺は何をしているのかというと。
専用地下ラボでISの最終調整を行っていた。
事の発端は昨日の夜。
一夏の専用機開発を担当していた倉持技研から協力を求められたのがきっかけだった。
元々、倉持技研は日本代表候補生の専用機開発に携わっていた。
そこに突然政府から『男性操縦者用のISを作れ』と特命が下り、2機を同時進行で開発していたがどうにもこうにも手が回らなくなったらしい。
倉持側には知り合いもいたし、こうして協力している。
まあ元から自分で手がけるつもりだったのだが。
とにかく俺は月曜日の試合に間に合うよう、土日をフルに使って一夏用ISを製作しているのだった。
「う~ん、やっぱりこのコアはじゃじゃ馬だな・・・一夏に使いこなせるのか?」
今作っているISに使用するコアは特別なコアで、産みの親である束でも細心の注意を払って扱わなければならない物なのだ。
正直今の一夏にこの機体は宝の持ち腐れだ。
だが何としてでも使いこなせるようになって貰わないといけない。
その為、初戦がセシリアとのバトルなのは好都合だ。
一夏自身にも、機体自身にも経験値が積まれる。
そしていずれは・・・
「まあ、大丈夫だろ。何せ一夏にとってはこれほど嬉しい専用機は他に無いだろうからな」
そして、白が鼓動する。
待ち望んだ瞬間が。
―――― クラス代表決定戦当日まで、後二日。
次回、セシリア戦!
・・・戦闘描写は未だ慣れません。
執筆の励みになりますので評価、感想などドシドシお待ちしております。