【凍結】Infinite Stratos ~ The Accomplice of Black   作:餌屋

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前回短かった反動で今回は長めです。


第6話: 運命のクラス代表決定戦

 

月曜日。

 

新学期が始まってから丁度一週間が過ぎたこの日の放課後、ISアリーナには多くの生徒が詰めかけていた。

一年生の専用機持ちであるイギリス代表候補生と噂の男子操縦者の決闘ともなれば皆の注目は避けられない。

その為一年だけではなく、上級生やはたまた教員まで観戦に来ていた。

 

そんな中、一夏はアリーナ横のピットでそわそわしながら俺の到着を今か今かと待っていた。

 

「おいーっす、お待たせーぃ」

「「「「 遅い(って)(です)(じゃないですかあ)!!!! 」」」」

「え、皆そこ揃えてくる?」

 

その場にいる全員から怒られるとか流石の俺も傷つくんだが。

ちなみに順番は千冬、一夏、箒、真耶ちゃんの順だ。

 

「それより湊、時間が押している。さっさと準備してやれ」

「了解・・・それじゃ一夏、始めるぞ」

 

と、俺は持ってきたIS用台車を変形させ、簡易ハンガーにする。

 

「初めての時のようにゆっくり背中を預けろ。ISはただの機械じゃ無い、パートナーのような物だ。安心して身を任せてやれ」

「パートナー・・・」

「そう。そしてこれがこれからお前のパートナーになる専用機、<白式>だ」

 

その名の通り、純白のISが一夏の身体を優しく包み込んでいく。

俺は初期調整を済ませるため、ハンガーに接続されているキーボードに手を伸ばす。

 

「1分で終わらせるぞ」

 

そして俺はキーボードを『いつものように』猛スピードで叩き始めた。

 

「各部動作チェック・・・完了。ハイパーセンサー・・・動作確認。移行作業、開始。初期チェック完了。一夏、気分は悪くないか?」

「ああ、大丈夫。いけるよ」

 

その言葉に俺の視界の端で千冬が一瞬ほっとした顔を見せる。

何だかんだで千冬も心配しているのだ。

 

「・・・よしOK。一夏、白式の準備が完了するまで後10分かかる。それまでに落とされなければ十分勝ち目がある。良いな?食らいついてみせろ」

「了解!」

 

一夏は、元気よく返事をすると箒の方に顔を向けた。

実はそれまで一夏に声をかけようか、しかし何とかけたものかと悩んでいる顔をしていた箒。

ISのハイパーセンサーはやろうと思えば人の微妙な反応の変化をも知覚できるほどの精度を誇る。

故に気づいたのだろう。

 

「箒」

「な、なんだ一夏?」

「行ってくる」

「あ・・・・・・ああ!勝ってこい!」

 

その言葉に一夏は頷くと、そのままゲートへ飛び出した。

 

 

***

 

 

「ようやく、いらっしゃいましたわね」

 

アリーナの空中でセシリアは腕を組んで俺の到着を待っていた。

 

「悪いな、さっき専用機が届いてさ」

「確かにレディを待たせるなんて失礼ですけど、今回は構いませんわ。きちんと来てくださったんですから」

 

そういってセシリアは長いレーザーライフル・・・確か<スターライトmkⅢ>だったか・・・を呼び出し腰に構えた。

 

『それでは織斑一夏とセシリア・オルコットによる模擬戦を開始する。5秒前・・・』

 

アリーナに千冬姉のアナウンスが響き渡る。

 

 

『4、3、2、1・・・試合開始!』

 

 

その瞬間。

 

「うおっ!?」

 

開始の合図と同時にセシリアがライフルの引き金を引き、突然撃ってきたのだ。

腰撃ちで狙いも何もなかった為、驚きはしたものの比較的簡単に避けられたのだが。

 

その驚きが決定的な隙を産んでしまった。

 

「そこですわ!」

 

この状況を狙ったセシリアが次弾を外す訳が無く、稲妻のような閃光が走り俺に命中した。

 

 

***

 

 

開始直後のセシリアによる不意撃ちからの狙撃が一夏に命中し、衝撃で爆炎が舞う。

 

「一夏!?」

「・・・」

 

箒が突然の出来事と一夏の身を案じ悲鳴を上げる。

それとは真逆に千冬は真剣な目で様子を見つめていた。

 

「セシリア上手えなあ。だけど」

 

すぐに白式が煙から抜け出してきた。

 

「どれだけ俺達がぼこ・・・特訓したと思ってる」

 

 

ISの基礎知識は参考書で。

 

ぶれない剣筋は、毎日の素振りで。

 

戦闘の勘と回避の術は試合で。

 

 

それが一夏の特訓においてやった事だ。

 

習うより慣れろとは良く言った物で、事実その通りだと思っている。

どれだけ人に教わっても、自分が出来るようにならなければ意味はない。

そして一夏は身体に覚え込ませるという事が非常に得意なタイプだった。

 

「元々一週間って短い期間なんだ。やれる事なんて限られてる。特に白式はな」

 

そんな俺のつぶやきに真耶ちゃんが反応する。

 

「黒崎さん、特に白式はって・・・どういう事ですか?」

「ふふん、さーね」

 

後、7分。

特訓の成果、見せてみろ。

 

 

***

 

 

(すげえ・・・まだぎこちない部分はあるけど、白式の反応に何とか追いつけてる!)

 

初撃を肩の装甲を飛ばされるだけで何とかやり過ごし、その後の狙撃と複数ビット<ブルー・ティアーズ>による連続攻撃を俺は何とか躱し続ける事ができている。

 

「くっ・・・思った以上に動きが良い・・・これが特訓の成果だと言うんですの?」

「はは・・・あんまり思い出したくないんだけど・・・なっ!」

 

セシリアと言葉を交わしながら、ビットが的確に狙ってくるのを紙一重で避けていく。

 

(しっかし、きついな・・・逃げ続けるのは体力がきれないか不安になる)

 

降り注ぐ射撃の雨を避けながら、俺は焦りを感じた。

白式の準備が出来るまで残り4分。

俺は賭けに出ることにした。

 

俺は武装として唯一積まれている近接ブレードを呼び出す。

何故ブレード一本だけなのか気になる所だが、今はこれで十分だ。

 

「ぜああああっ!」

 

急ブレーキと加速を行い、それまで逃げに徹していたのを一転攻勢に出る。

 

「なっ!」

「スナイパーは近づかれると弱い・・・っていうのはお約束だよな!」

「甘く見ないでください!なら近づかれないようにすれば良いだけですわ!」

 

セシリアは急速に近づいてくる俺から距離を離しながら、ビットを俺の周囲に展開させ足止めを狙う。

放たれるレーザーをくぐり抜け、1機のビットに刀を向ける。

横薙ぎに振り切り、真っ二つに切り裂き爆散させた。

 

「そんな!?」

「次!」

 

俺は続いて近づいてきた2機のビットの軌道を先読みし同じように爆散させた。

 

「湊兄には『遠隔無線誘導型射撃ビット』としか聞いていなかったけど、無線誘導って事は毎回自分で命令を送らなければ動かない、自動じゃ無いって事だよな?」

「くっ・・・」

「しかもその時、お前はそれ以外の攻撃ができない。制御に意識を集中しないといけないんだ、そうだろ!」

「~~~~~!!」

 

セシリアが引きつった顔をさせる。

どうやら図星のようだ。

 

残ったビット2機が向かってくる。だがその軌道は既に読んだ。

あれは必ず俺が一番反応しづらい死角を狙ってくる。

狙いが分かればもはや死角では無い。

俺は難なくビットを落とし、がら空きとなったセシリアへ肉薄した。

勿論、これまで使用していないだけで近接武器を待機させている可能性はあるが、いくらなんでも間に合わないだろう。

 

白式の準備完了まで残り1分を切った。

だが、その前に勝負は・・・決まる!

 

 

***

 

「すごいですねえ織斑君・・・オルコットさん相手にここまで・・・」

 

真耶ちゃんがリアルタイムモニターを見ながら感心したように呟く。

確かに一夏の特訓は予想以上の成果を出したようだ。

健闘どころでは無く確かにこれならセシリアに勝ちそうだった。

 

だが。

 

「あーこれは・・・」

「あの馬鹿者。浮かれおって・・・」

 

千冬と俺は微妙そうでどこか忌々しげな表情になっていた。

 

「え?どういうことですか?」

「左手だよ真耶ちゃん」

「左手・・・?」

「さっきから左手を閉じたり開いたりしているのが分かるか?あれは、あいつの昔からの癖でな。あれが出ている時は油断して、たいてい簡単なミスを犯す」

「そんなミスがISバトルで起きたらどうなるか・・・」

 

そんな俺と千冬の解説に真耶ちゃんがはっとした顔をする。

 

その横でずっとモニターを険しい様子で眺めている箒。

その心中を俺は察するが何も声をかけなかった。

 

 

 

***

 

 

「はああああああっ!!!」

 

俺は猛スピードでセシリアに突っ込む。

ブレードを振り上げ、袈裟斬りで一撃入るタイミングを掴んだ。

 

 

「かかりましたわね」

 

にやり、とセシリアが笑う。

 

しまった、と自らの失策に気づき距離を空けようと急反転させようと試みるが、もはや遅かった。

 

ガシャン!

 

そんな音と共にセシリアの腰部に付いていたスカート状のアーマー、その突起が外れて動く。

 

「残念ですが、ブルー・ティアーズは全部で6機あるんですの」

 

そのビットはしっかりと俺に狙いを定めている。

あれは、射撃型ビットではない。

 

弾道型ミサイルビットだ。

 

 

ドガアアアアアアンッ!!

 

白い、爆炎が起こり、俺は直撃を受けた。

 

 

***

 

 

「一夏っ!」

 

箒が血の気の引いた顔をして叫ぶ。

だけど問題ない。

 

 

「・・・ふん、機体に救われたな」

「・・・ホント、冷や冷やさせやがってあの野郎」

 

***

 

 

完璧にミサイルビットが決まり、織斑さんが爆炎に包まれる。

思った以上、いやもはやそんな言葉じゃ言い表せないほど素晴らしい戦いをしてくれた織斑さん。

こちらもあれから短い期間ながらもなるべく隙を無くそうと鍛錬を重ねていたのにここまで追い詰められてしまった。

 

(結果的に私の勝利となりましたが、後で甘くみた事を謝罪しなければなりませんわね・・・)

 

私の知っている男性とは確かに違った。

私もまだまだだ、そう思っていた。

 

「・・・?なっ!そんな馬鹿な!」

 

白い爆炎が晴れ、そこに先ほどとなんら変わりない姿で浮かんでいた織斑さんを見て私は驚愕する。

いや、正確には先ほどとは少し・・・織斑さんが纏うISの姿が変わっていた。

 

「まさか一次移行!?あなた、今まで初期設定だけの機体で戦っていたのですか!?」

 

それまでの無骨な凹凸が無くなり、なめらかな曲線、シャープなライン、どこか中性の騎士甲冑を思わせるデザイン。

何より変わったのは、近接ブレードだった。

 

あのブレードには見覚えが・・・あれは!

 

 

***

 

 

本当に危なかった。

直撃後本当にギリギリエナジーが残り、一次移行の完了ボタンを押せたのだから。

 

やっとこの機体は俺専用になったんだ。

 

そして俺は右手に持つブレードに目をやる。

 

近接特化ブレード<雪片弐型>。

 

それはかつて現役時代千冬姉が振るっていた専用IS装備<雪片>と同じ名を冠する武装。

勿論、その能力もしっかり継承している。

 

「全く・・・俺は世界で最高の姉さんを持ったよ」

 

俺は雪片弐型を構え、セシリアとの距離を一歩で詰める。

覚醒した白式のスピードはそれまでとは打って変わって速かった。

 

 

「おおおおおっ!」

 

俺は何千回とやった型の通り、ぶれの無い逆袈裟斬りを放つ。

 

 

 

そしてブザーが鳴った。

 

 

 

 

 

 

『試合終了。勝者―――織斑一夏』

 




一夏、勝っちゃいました。
まあ原作でもエナジー切れが少しでも遅ければ一夏の勝ちっぽかったですし別に良いかなって。

さて、次回で第1章は終了です。
第2章では鈴、襲来編をお送りいたします。
鈴ファンの皆様お待たせいたしました。


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