今更ながらこれが初投稿作品でしていろいろ至らないところがあると思います。この間、初めてのアドバイスをいただきとても参考になりました。
これからも改善点などございましたらよろしくお願いいたします。
アキハバラBG
正式名称「アキハバラバトルグラウンド」
東京台東区は秋葉原、アミューズメントビル・カドタワーのローカルネットから入場できるかけ闘技場。
絶対中立域にてバーストリンカーの聖地。
天井から吊り下げられた大型モニターには何かの文字と数字が常に動いており、その画面を食い入るように数々のアバターが双眸で眺める。
そこに二人のアバターが来ていた。
「なんでわざわざこんなとこに? その情報提供者の趣味が疑われるね」
「お前に疑われるような趣味を一般人は普通と言う。 まあ黙ってついてこい」
小型の恐竜型アバターと忍者型アバターは自分たちの店とはどこか似た雰囲気を持ちつつもまた別の個性をもった赤く錆びたスチームパンクな内装の酒場を闊歩する。
「景気はどうだい?」
レックスはカウンターの前に来ると、両腕をのせ体を預けながら目の前のアバターに悠長に話しかける。
「見ての通りじゃよ、探偵屋」
「……え?」
ダークは驚いていた。 たとえ目の前のアバターがレックスの知人だとしても、決してレックスは簡単にその仕事のことを話はしない。
なのに知っていた。
「おい、何を呆けているんだ。 この人が情報提供者の[マッチメイカー]だ」
「お前らの噂はきいとるよ。 今回だってそう。 おぬしらが人をさがしとると小耳にはさんでの。 だから協力してやろうとな」
マッチメイカーと呼ばれたドワーフ型のアバターは自慢げにその立派なヒゲをピンと立てた。
そのヒゲの奥に除く口の端は吊り上っている。
「で、その情報とやらは? 情報料も言い値で払おう」
「いやいや、そこまで高い情報ではないんじゃよ。 わしが教えるのはその人物を知っているであろう人物じゃからな」
「へぇ、なるほど」
レックスはうなずき、ダークはいまだに状況が呑み込めていない。
「その人物とは、どこにいる?」
「そやつの名はホライズン・アックス。 居場所はホレ、あれをみるんじゃ」
察しのいいレックスは頭だけで振り向き、大型モニタの文字列に目をやった。
【[ホライズン・アックス Lv6] & [キャナリー・マジック Lv5]
1・24 VS [ペル・ティンク Lv5] & [インディゴ・フロウLv5] 5・16】
「高ウッズの選手(ファイター)ってワケか」
「え、ここって闘技場なの?」
2~3週の周回遅れな言葉をもらすダークに嘆息しかでないレックス。
「そうだ。 ちなみにここの存在を教えなかったのはお前が入り浸るからだ」
「うん、確実に入り浸るね!」
「マッチメイカー、出禁を一名追加だ」
「うむ、了解」
「いやいや! ちょっとまってよ!」
二人のやり取りに慌てふためくダーク。
二人が「ははは!」「ぶわぁっはっは」と大笑いされるまで自分がからかわれていることに気付かなかった。
「ところで、選手が情報を持っているとしてどうやって会えばいいんだ?」
「そんなの簡単じゃよ。 いや、難しいかもしれんがそこは探偵屋、我慢強いじゃろ? ホレ、まずはタッグを組め」
「……? おいダーク」
「はいよ」
二人とも慣れた手つきでオプションをひらきタッグを組む。
「それじゃこのボタンを押すんじゃ」
「はいはいっと」
「───ん? あ、おいちょっ、待て!」
レックスの制止もむなしく、時すでに遅し。
ダークの指先はポチリとソレを押していた。
少し横を見てみれば、ヒゲをたくわえた年季の入った顔が意地の悪い笑みを浮かべている。
「どうしたんだ?」
「お前……アレ見ろよ」
レックスが指をさし、その方向につられてダークは首を動かす。
その方向にあるのは例の画面。
そして見覚えのある名前が二つ
【[エメラルド・レックス Lv6] & [ゴールデン・ダーク Lv6]】
「さて、[T・レックス]と[金色のシノビ]の実力をみせてもらおうか」
「運が良いのやら悪いのやら……、結局2回余分に戦うハメになっちまった」
「まぁいいじゃん。 1000円儲かったし」
二人は現在《原始林》ステージで来るべき相手を探し歩いている。
相手はお目当てのホライズン・アックスとキャナリー・マジックだ。
この二人にたどり着くまでに2回の対戦を経て、少々疲労気味での3回戦目。 しかし本命のご登場にやや高揚している。
この試合のウッズは
【[ホライズン・アックス Lv6] & [キャナリー・マジック Lv5] 1・51 VS [エメラルド・レックス Lv6] & [ゴールデン・ダーク Lv6] 2・39】
と、あちらに傾いている。
流石は人気ファイターなだけはある。そうレックスは思った。
「レックス、やっこさんのご登場だぜ」
「お前らが今回の相手か。いいねぇ、特に緑の! なかなか堅そうじゃねぇか」
白みがかった青色をした甲冑を着込んだ騎士型アバターが、自身の身の丈ほどありそうな大斧を片手で振り回す。
「お前がホライゾン・アックスか、強いらしいな」
「らしいじゃねぇ、強えぇぞ」
「対戦前に一つ聞きたいことがある。いいかな?」
「いいだろう、なんだ?」
アックスは鼻歌を歌いながら、大斧を肩で担ぐ。
「ウィート・ブル。知ってるな? コイツについて教えてほしい」
その名前を出した瞬間、アックスの動きが止まった。
鼻歌をやめ、陽気に動き回っていたのが嘘のように殺気立つ。
「何故……と聞こうか」
「会いたいからだ。ダメか?」
「なるほど、良いだろう。ただ───、」
「な───っ、!」
アックスは言い切る前に踏み込み、一気にレックスと彼我の距離を詰める。
その勢いにのって大斧を振り上げ───。
「俺を倒したらな」
ズドォォォォン!
と、重力と質量に任せた剛斧が大地を割り、土埃が舞う。
「レックス!?」
「チッ! 手ごたえなしか」
風が土埃をさらい、視界がクリアになる。
そこには地面に深く突き刺さった大斧と、紙一重で避けたレックスが佇んでいた。
「まさに間一髪ってな。これが開戦の狼煙か?」
「それじゃ、俺が先に頂いちゃうよ」
いつのまにかダークはアックスの背後に立ち、手にはクナイが握られていた。
「まずは一撃くら───、ッガァ!」
アックスの脇腹にクナイを突き刺そうとした瞬間、ダークは不意の横からの衝撃に耐えきれず吹き飛び地面を転がる。
「僕を忘れちゃ困るよ、金ピカお兄さん。お兄さんの相手は僕がするよ」
ダークに蹴りを入れたのはアックスの相棒、キャナリー・マジック
マジックはダークが転がった方向へ歩を進める。
「さぁ、始めようかいね」
低く唸る声の持ち主がレックスの前に立ちはだかる。
レックス「やっと3回目だ」
ダーク「今回もあんまり話が動かなかったね」
レックス「内容は一応かなり先までできてるらしいぞ」
ダーク「ホントに!?」
レックス「あぁ、頭の中でな……」
ダーク「……」