アクセル・ワールド~加速探偵E・G~   作:立花タケシ

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 おはようございます、こんにちは、こんばんは。今回でとうとう一区切りつけたとなってテンションが高くなっております。
 2連続投稿と自分史上初の快挙を成し、7話というラッキーセブンで一区切り付き、うれしい限りでございます。
 これも今まで見てくださった方々のおかげです。
 飽き性の私が初投稿作品をここまで続けれたのも皆様のおかげです。
 次もある予定ですが、当分のあいだ進みません。すいません。
 それではどうぞお楽しみください。



EGオペレーション

 「尋ねるが、ここに牛のようなアバターが来なかったか?」

 「だったら……どうした」

 レックスは感情をできうる限り押し殺した声で返す。でないと今にも感情が噴火しそうだったからだ。

 

 「知っているのか……。いや、もしかすると───消してくれたのか?」

 鋼色のアバターからその言葉が出た瞬間、飛び出したのはダーク。

 距離を一気に縮め、両手に一本ずつ持った小太刀で流れるような連撃を魅せた。

 

 だがそれを相手のアバターは、それはダンスでも踊るかのようにリズムに乗って、トントンとかわして見せる。

 

 「いきなり攻撃してくるとは無礼だな。だが手伝ってくれた礼だ、見逃してやる」

 「生憎こっちは見逃す気はないんでね」

 「事情聴取は最低でもさせてもらうぞ」

 レックスも頭にきたのか、鉤爪をこすり合わせながら相手に歩み寄る。

 

 「なるほど、ならば手合せしてやろう。グレート・ウォール《六層装甲(シックスアーマー)》第三席、アイアン・パウンド。参る!」

 パウンドと名乗ったアバターが踏み込んだ。

 そこへダークが体を回転させながらの2撃を打つが、上半身の動きだけで回避される。

 ダークの後ろに居たレックスが右手を突出し、パウンドはそれを右ストレートを打ち出して相殺する。

 

 ───いや、相殺ではなかった。

 パウンドの拳の方が威力が勝り、レックスは後ろにのけぞってしまう。その隙へパウンドは距離を詰め、入り込み、左左右とテンポよくパンチを入れる。

 テンポも良いが威力も高い。

 のけぞるだけだったレックスが、追撃の3連撃で数メートル吹き飛ばされてしまう。

 

 「ボクシングか? その動き、経験者としか思えないが」

 地に倒れ、痛みの残る体を無理やり起こしながらパウンドに問う。

 

 「そう、俺は現実でボクシングを経験しているし、アバターもこの通りだ。加速世界で使わない手はないだろう」

 「……っく、面倒な」

 レックスと話すパウンド、その背後から音もなくダークが素早く忍び寄る。

 小太刀を振り上げ、ヘッドギアの側面に突き刺そうとした瞬間、パウンドが振り向いた。

 

 「経験というものも手伝ってか、殺気に敏感でな。シノビが殺気をもらしてはだめだろう」

 パウンドの凶器と化した左腕がダークの小太刀と交差し、さらに一歩早くダークの頬へと届いた。

 カウンターを決められたダークは輪郭を歪めながら威力に従い頭から後方へ吹き飛ばされる。

 

 元々装甲が薄いダークがブルの攻撃で既に体力を削られた所にくらった電光石火のカウンターパンチ。

 ダークは経つ気配も見せず、一瞬輝いたかと思うとその場に爆散し、金色の小さな光の球をその場に残した。

 

 「金……か、脆いな」

 パウンドは興味を失ったように踵を返し、レックスに向き直り腕をまげ再度構える。

 

 「やりやがったな……」

 レックスの声には怒気が満ち溢れ、周りには野生の肉食動物がもつ鋭い殺気が纏わっていた。

 

 「……来い!」

 パウンドの掛け声でレックスはパウンドに飛びついた。

 鉤爪を使った隙のない連撃を絶え間なく放ち続けた。

 

 それをパウンドは上半身の動き───スウェーだけで避け、躱し、受け流し続け、その最中に反撃の気配はまったくなかった。

 

「いつまで避け続けてんだよ!」

 「なら反撃しよう」

 レックスがパウンドの胴体を抉ろうとしている時、パウンドは足を滑り込ますように踏み込み、レックスはそれによってバランスを崩してしまう。

 

 倒れこむ瞬間に3発。

 

 のけ反る瞬間に2発。

 

 宙に浮く瞬間に1発。

 

 もはや達人としか呼びようのない、それほどまでに無駄のなくなった実践的な巧みなコンボの数々の前に、レックスはまたもや地に伏してしまう。

 

 「もう一発で決まる」

 「───痛ッ! く……ゲホ、ゴホッ。まだまだぁ!!」

 動かぬ体に鞭を打ち、軋む関節に無理を強い、フラフラになりながらもレックスは立ち上がってみせた。

 

 「体力は残り少ないがよ、必殺技ゲージは満タンだ」

 「必殺技で逆転できると思っているのか?」

 「必殺技こそジャイアントキリングの鍵だ。師匠が教えてくれた」

 両腕を力なくダラリと垂れ下げ、腰を前に倒し両足を開き鋭い眼光は相手に向ける……まるで恐竜のように。

 

 「《エボリューショナル》!」

 まさしく文字通り進化し、レックスはティラノサウルスへと成った。

 荒廃した土地を踏み鳴らし響かせ、その咆哮は天を震わせた。

 すべてを飲み込んでしまいそうな顎は全開に開かれ、目の前にある獲物───パウンドを食い散らかそうとする。

 

 「恐竜になったか……でも」

 眼前に大顎が迫りながらも諦めの様子を見せないパウンド。見せないどころか構えをより一層精錬された物へとし、闘気を滲ませた。

 

 「でも言ったはずだ。必殺技で逆転できると思っていたのか?」

 

 パウンドの闘気が爆発し───

 

 「《鉄拳乱舞(ハンマー・レイブ)》」

 数多数千数万のジャブ、ストレート、フック、アッパーそれらが乱れに乱れ視界を埋め尽くすほどに打たれる。

 標的の大きくなったレックスの頭部に全てが命中し、瞬く間に風前の灯だった体力が削れ───無くなる。

 

 恐竜が顎を閉じるときには粒子となりパウンドの周りを飾っていた。

 ポツンと一つのエメラルド色の光が揺れている。

 

 「さらばだ探偵よ」

 灰色にかすむ視界の奥で、パウンドの背中が遠のいていくのをただ茫然と見送ることしかできなかった。

 

 

 

 ここは年季の入った板張りの床に少しシミの浮いた古臭い壁が映える内装の[BAR G・E]。

 その内部には3人の人影が二つのソファーに座り一つのテーブルを囲みながらどこか暗い影を落としこんでいる。

 

 「以上が今回の結果、失敗は失敗。大失敗だ」

 皮肉げにそういったのはレックス。

 

 その言葉に手を振りながらパンサーは抗議する。

 

 「いえいえ、見つけて頂いただけでも十分でしたし……何より別に話したかった事があるわけでもなかったので報酬は受け取ってください」

 「失敗したのに報酬を受け取るのはカッコ悪いでしょ? レックスはそーゆーの気にするからここは失敗で納めてくれねーかな」

 「ですが……」

 尚も食い下がるパンサーにレックスが前に出ながら冷たい声で言う。

 

 「真実とは過程で事実こそが結果、師匠が言っていた。だから俺たち探偵に求められているのは過程よりも結果。真実よりも事実」

 「……そうですか」

 力をなくしたようにソファーに座り直し、パンサーは肩を落とす。

 

 「……でも、でも私が納得できないんです!」

 「納得もなにも無くないか?」

 「依頼主が納得いかないと言ってるんです、報酬が受け取れないんだったら私にできる事なんでもするんで言ってください。これは見つけたまでの報酬です!」

 言っていることはめちゃくちゃだが、ものすごい剣幕で押し切られるためレックスとダークは閉口して、ただ頷くしかなかった。

 

 我に返って落ち着いたのか、パンサーは乗り出した状態から咳払いを一つしてソファーに座りなおす。

 

 「それで、別件なんだが……」

 思い出したように語りだしたレックス。パンサーとダークはつい視線をレックスの方へ集中させてしまう。

 

 「お仲間がよろしく伝えておいてくれと言ってたぞ、グッレート・ウォールのドーン・パンサーさん」

 「───ッ!?」

 「……??」

 

 一人は驚きを隠せず。

 

 一人は疑問符を浮かべる。

 

 「何言ってんだ? パンサーはレギオンには入ってないって」

 「そもそもその前提すら嘘なんだよ。結果は変わりはしないが真実を語ってやろう」

 

 レックスは続ける。

 グレート・ウォールは離反者であるウィート・ブルを消さなければならなかったがどこにいるのかわからない。それに王はなんらかで手が離せないためレギオンメンバーで解決しなければならなかった。その中で事情を知らせずに外部から協力してもらう案がでた。 

 そこで白羽の矢が立ったのが探偵であるレックスとダーク。報酬さえ払えばどんな事でもする彼らに居場所を突き止めさせようとしたのだ。結果的に居場所がわかり、ブルはちゃんと処分することに成功した。

 

 「まてまて、俺たちがいつグレウォに情報流したんだよ」

 「だからメッセージ送ったんだよ、霞ヶ浦にいるかもってな」

 「でも全損だぞ? 復活する時間も合わせてどれくらいかかると思ってるんだよ」

 「それはだな、俺たちがパンサーに情報をわたし、それがあのアイアン・パウンドに横流しされる。俺たちが現実で移動してる間にパウンドは加速世界で移動しブルと戦闘。その終盤に俺たちとバッタリってとこだろ」

 語尾は誰かに問いただすように上がり、レックスの視線の先にはパンサーが居心地わるそうにうつむいている。

 

 「よく……わかりましたね」

 「パウンドがよ、去り際に俺の事を『探偵』って呼んだんだよ」

 両手をあげ、降参のポーズを取るパンサー。

 

 「どうぞ、煮るなり焼くなりしてください」

 「何言ってんだ、さっき自分で言ったじゃないか。「私にできる事なら何でも言ってください」てな。煮るなり焼くなりするのは元より決まってる!」

 「……え?」

 レックスとダークの双眸がキラリと猛禽類のように鋭く怪しく光った気がした。

 

 「いやぁ、このバーには花が足りないと思わんかね、ダーク君」

 「わたくしウェ~イトレスというものが大好ぶ……もとい大好きでしてねぇ」

 「今大好物っていったよね!?この金ピカ大好物って!」

 必死に叫ぶもゆらりゆらりとした二人の怪しさには勝てず。

 

 「まずはレギオンから抜けて真っさらになってもらいましょうか。聞けばグレウォは自由なレギオンだとか……。それに迷惑料を盾にすればレギオンメンバーの一人や二人引き抜けないわけがない」

 「それでウチに来てもらいましょうね~、ウェイトレスとして輝いてもらいましょうね~」

 「助手がほしかったんだよ~」

 「萌えがほしかったんだよ~」

 「ひっ……ひぃ!」

 その日、その店からは悲鳴が聞こえてきたせいで客がよりつかなかったとか。

 

 

 町が一望できる高台にて、真緑の巨体を持ったアバターが立っている。

 その後ろから鋼と同じ色をしたアバターが近づく。

 

 「我らが王よ、例の闇の心意を乱用していた輩の処分は終了しました」

 「……」

 王は何も言わない。だがそれこそが返事だと思える風格が存在していた。

 

 「あの探偵が対象と接触してしまったようですが問題はありません、即座に対象を全損させたようで心意については何も知らないでしょう」

 

 尚を言葉を続ける。

 「我らの代償は探偵の接触役のレギオンメンバーが脱退したことですが、彼女も今回の事にはほとんどなにも知らせて無いので問題はございません」

 

 報告が終わると王に動きが見えた。掌をだし、その上には画面が表示され何かの動画が映し出されているようだ。

 「これは……っ! ここまできたか、加速研究会!!」

 

 その声は加速世界への憂いと異分子への怒りが込められていた。

 




ダーク「イェアアアアアアアアアアアアアアアア!」
レックス「イヤァアアアアアアアアアアアアアー!」
ダーク「金汁ブシャアアアア!」
レックス「一生じゃなくて一章終了!」
ダーク「うれしいナッシィィーーー!」
パンサー「うるさいわよ!」
レックス「ようこそ、おバカコンビの集いへ!」
ダーク「いやいや旦那、もうト・リ・オですぜ」
レックス「おぉっとイカンイカン」
レックス&ダーク「ぐふふふ」
パンサー「もうやだ」

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