アクセル・ワールド~加速探偵E・G~   作:立花タケシ

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 おはようございます。こんにちは。こんばんわ。やっと9回目、ふた桁まであと1回を控えて有頂天な作者です。今回も見ていただき有難うございます。
 いいですね、書き溜め。すごいですね、書き溜め。今週1Pも進めず別のを書き直すことに集中できまいた。泣けますね。
 はい、つまりまだ2章書き終えてません。ホントにスイマセン。
 それではごゆっくり。


俺と彼女とアイツとダレカ

ある日の真昼間、彰祐はもくもくと昼食のサンドイッチとおにぎりを頬張っていた。だが、その顔は決して美味しいものを食べているようには見えず、どこか険しくなっている。

 昼休憩を告げるチャイムが鳴り、5分ばかし経っている時のことである。

 その場には勇魔の姿はいない。しかし、決して一人で食べているわけでもなかった。

 彰祐の額には汗がにじんでいるが、決して気温によるものではない。むしろ少し肌寒く感じる10月の中頃。彰祐や周りにいる生徒の制服は長袖である。

 「ねぇ、なんで黙ってるの?」

 隣に座る人影。彰祐に比べ凹凸のはっきりしたボディラインがあるのはそれが女性のものだからだ。

 本来、青春真っ盛りの男にとっては女子とのランチは人によっては狂喜乱舞してしまうようなイベントではあるはずだ。彰祐はそれにもかかわらず、ただ黙って尚且つ隣の少女から目をそらしながらBLTサンドを口に運んだ。

 決して眼を逸らしたくなるような容姿を持つ少女ではなかった。

 真珠のように潤いのある大きな瞳。

 栗毛色の、風になびくセミロングの髪。

 通った鼻筋に艶のある唇。

 褒められこそはすれども貶されるような点は見当たらない、一時でも長く2つの眼と脳内に焼き付けたくなるような容姿を持った彼女になんの不満があるのだろうか。

 「無視しないでよ」

 少女は四つん這いになり彰祐に迫りよる。傍から見たら昼間からイケナイ事をするんじゃないかと思わせる構図である。

 段々と近づく彼我の距離に反比例し、彰祐の顔に浮かぶ汗の量は多くなっていく。そして彼女の蠱惑的な声が鼓膜を震わせる。

「あんなに私をイジメてくれたのに」

 また一歩、腕を前にだし縮まる距離。

 彼女の唇は彰祐の耳元にまで迫り、ポツリと一言。

 「ね、店長」

 瞬間、彰祐から滝のような汗があふれ出し、恐怖で顔が青く染まった。

 その場から跳ねるように飛びのき、気づけば彼女の正面に向かい正座をして──

 「すいませんでしたー!」

 見事なまでにフォームの整ったDOGEZAを披露した。

 腕の関節の角度はキッチリ30°、たたまれた足は平行に揃えられ額はコンクリートに擦りつけてある。

 その姿に彼女──忠石 早苗(ただいしさなえ)またの名をドーン・パンサーはフンっっと鼻をならし眼を釣り上げながら見下している。

 「それだけ?」

 「それだけ……とは?」

 「私、猫が見たい気分なのよね~」

 10月の、少し肌寒くなってきた遠くに色づく山の見える秋空を見ながら、まるで呟くように、かつしっかりと彰祐の耳に届くように言った。

 

 「くっ……、すいませんでした──にゃあ……」

 「聞こえないわね」

 屈辱を押し切った彰祐の一言はあっさりと切り捨てる早苗。彰祐は一度は睨むものの「文句ある?」といった早苗の表情にあえなく負ける。

 そしてすぅっと大きく息を吸い込み。

 「すいませんでしたにゃあご主人様!どんな調教でもしてくださいにゃあ!」

 「────っ!!!???」

 屋上どころかグラウンドにまで届くんじゃないかと思うような大きな声で恥ずかしいセルフを叫んだ彰祐に、一気に狼狽しだす早苗。

 周りにいた屋上で昼休憩を楽しんでいた生徒たちが一斉に二人の方を向き驚きと怪訝が混ざり合った視線を向ける。

 「ちょっと!?馬鹿ぁっ!!」

 「どうかしたかにゃあ?」

 「気持ち悪いのよ!」

 「ぐぶァ──っ!」

 真っ赤に色づき狼狽を示す表情(かお)に向かってニヤリと笑う彰祐に、早苗は羞恥と憤慨の混ざった正拳を突き出した。

 

 

 忠石早苗との邂逅はひょんなことから始まった。彰祐と勇魔で加速世界のことで談笑しながら弁当をつつくある日の昼下がり。

 「いや~、店員増えて楽になったわ」

 「お前こき使いすぎなんだよ、もしパンサーのリアルが目の前に現れてみろ、どうなることやら……」

 「いやいや、加速世界の知り合いにリアルで会おうとするなんてよっぽどのリスクと運が必要だろ?第一同じ学校に3人もバーストリンカー、それも知り合いがいてたまるかっての!」

 勇魔は鼻で笑いながらおかずと白飯を口に運ぶ

 「その油断が……ん?」

 ふと、彰祐は気がついた。ちょうど勇魔から死角になる真後ろ、彰祐にとっては真正面にいる女子グループがあった。それだけでは普通だが、その一人がじっとことらを見ているのだ。

 

 彰祐と勇魔から女子グループの距離はそんなに離れているわけではない。それに勇魔の声のボリュームもなかなかのものだった。何か気になることでもあったのだろうか。

 そこまで考え、彰祐に走るたった一つの勘。

 勇魔の能天気な顔を見ながら苦笑いを浮かべ、ぜひ杞憂に終わって欲しいと願うのであった。──無残にもその勘はクリティカルヒットしてしまうのだが。

 少女はグループになにかを断り、一人離れていく。そして反比例するように彼我の距離は近づいていった。

 何も知らない勇魔の肩に置かれる小さな手。

 思いもよらない感触につい振り向いて住まう勇魔。そして少女あは口を開いた。

 「初めまして、パンサーです」

 その言葉は後ろに音符でも付いているかのように弾んでいた。

 

 

 「そういえば、ダー……杉森がいないわね」

 「痛っ──、あ?」

 早苗は、痛む頬をさする彰祐の正面に座りながら言った。

 確かにこの場には彰祐とよく一緒にいる勇魔の姿はない。だがそのことに彰祐は慌てた様子もなく、ただ痛む右頬をさすりながら答えた。

 「たまにあるんだよ、フラッとどこかにいってフラッと帰ってきたり、もしくはそのまま休憩終わるまでどこかに行ってる事がな」

 「え、あんたその時ボッチ飯じゃない!?」

 「違う友達と食うわ! 別に友達少ないわけじゃない!!」

 早苗のあまりに理不尽かつ不名誉な言葉に声を荒げてツッコム彰祐。早苗はどうどう、と馬を落ち着かせるようになだめていると、ふと見たグラウンドの端に見知った顔があることに気が付いた。

 「ねぇ、あれ杉森じゃない?」

 「──え、どこだ!?」

 彰祐と早苗は急いで立ち上がり、勢いよく屋上の珊に駆け寄った。

 グラウンドの右端、卒業生からの記念品として植樹された桜の木の並ぶ木陰に勇魔の姿はあった。

 

 だがそれだけではなく──

 「女……か?」

 「女……ね」

 遠くてハッキリとは顔は判らないが、女子生徒用の制服と風に流れる黒髪から勇魔の隣に居るのが女子というのはわかる。

 早苗は肘をつきながら「へぇ~」とどこか納得したように頷いていた。

 「確かにモテそうではあるよね、相手は誰なの?」

 「──知らない。」

 さも当然のように質問した早苗にとっては、意外な答えが返ってきた。思わず、反射的とも言えるスピードで聞き返してしまう。

 「あんたが知らないの!?一体どういう──」

 「……りもの」

 「え、なんて?」

 「この裏切り者がぁぁぁあああああ!!!!!」

 突然、彰祐は天を仰ぎながら力の限り咆哮(さけ)んだ。近くで鳴る大声に耳を塞ぎながら早苗は彰祐を見ると、今にも血涙を流さんばかりに顔を歪めている。

 「くそ……くそぉ……。なんで、なんでなんだよぉ! いくらちょっとくらい顔がいいからってサクッといつの間にかツレなんぞ作りやがってこん糞ファァァァァァアア〇!!」

 「うっさい」

 「あ、すいません」

 隣からの冷静な、それこそ氷点下並みの感情のない冷たいツッコミに、彰祐の沸点のあまり高くない怒りは冷まされてしまう。

 「まさか彼女と会っているなんてね、そりゃ店長をほっておくわけだ」

 「その言葉だけ聞くとアイツがダメ店員みたいだな」

 「違うの?」

 「……違わない」

 彰祐はため息をつき、手すりに寄りかかるようにうずくまった。そして遠方に見える友人と、傍らにいる少女の姿を捉えながら物思いにふける。

 「どうしたの、暗い顔して」

 「やっぱ相棒でも知らないことはあるんだなって思ってよ」

 「はぁ?」

 早苗は彰祐の一言に眉をひそめ、呆れた顔を作りながら答えた。

 「そんなの当り前じゃない、他人と他人なんだから知らないことの一つや二つあって当然よ、てか無い方がおかしい」

 「まぁ、そうだよなぁ」

 どこか気の抜けた声を出す彰祐。二人の昼休憩は予鈴と共に幕が下りた。

 




レックス「自分で言ったね。あの屑は」
ダーク「ほんとだね~」
パンサー「自分で遅い遅い言ってるんだからせめて努力すればいいのに」
3人「この屑!」
作者「……すいません」
???「まったくです!!」
4人「お、お前は!?」

~???が解るまであと2話~

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