美城プロでアイドルになった男の日記   作:宇賀神

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しっかし、全然女性アイドルとの絡みが無ぇな、お前どう?




■月◇日

 

昨日、美城プロ所属アイドル専用の女子寮が完成された。

完成記念式典とかテープカットとか、大したイベントも無かったし、俺はマンション住まいだからプロデューサーから聴かされて無かったしで、橘と村上の帰る方向がいつもと違うことに気づかないと一生気づかないままだっただろう。

知ったところで「へぇ完成したんだ」位のモンだったが、やはりどんな建造物に仕上がったか気になるもので、寄り道がてらレッスン終わりに二人と一緒に帰った。

 

歩きながら、大分今更になったが、橘の出身地を知って驚いたりもした。

橘は兵庫でスカウトされて、東京に住んでいる親戚の家に泊まっているらしい。関西出身の奴ら東京に親戚持ちすぎィ!

というか、この話は初めて聴いた。

いやいやいや、標準語で喋ってるし、前に村上の出身地の話が出た際は特に反応無かったし、事務所の近所に住んでたと思ってたし、だからと言って勝手に東京在住と決めつけていた俺も俺なんだけどね。

でも、少しだけ橘の事が分かった気がする。自分から話題を振るの得意じゃないなこいつ。

 

で、肝心の寮だったが、かなあああああああああぁぁり立派だった。

 

写メでも貼るか [写真添付.jpg]

 

部屋は二人で一室を使い、食事も自室に備え付けのキッチンか、或いは食堂を使う、謂わばルームシェアのタイプらしい。

その時の俺は、愕然としてたと思う。

今これを書きながらも、自分の処遇とあまりに違いすぎるからだ。

 

いやまぁ、マンション暮らしでも良いっすよと俺自ら提案したから仕方ないっちゃ仕方ないんだがなぁ。

 

そんな俺を見かねたのか、橘と村上は部屋でお茶でも飲んでいくかと気を遣ってくれたが、大人しく帰った。

多分部屋も立派な造りになっているだろうし、新築の、あのなんとも言えない匂いを嗅いだら今以上に後悔しそうだからだ。

 

いや、別に今済んでるマンションが悪いワケじゃないんだけど、何となく羨ましくなるんだよなぁ、ああいう新築の家って。

数日したらどうでもよくなるのに。

 

 

それと、寮の完成に合わせて、レッスンスタジオ通いは今日で終わりを告げられた。

明日から、あの立派なオフィスビルの一室が、アイドル部署の部屋として使用される事になるからだ。

女子三人はそこそこ喜んでいたが、俺は私服を、しまむ○やユニ○ロで済ます人間なのだ。

美城の人や部外者に社員と混同されないよう、スーツは禁止と言われてしまったし、社員さんや美城所属の役者さんからどんな目で見られるだろうか、想像しただけで胃が痛い。

 

 

 

■月★日

 

今日は色々あった。

 

集合場所が、美城のオフィスビルの一室だと連絡されて向かったら、三村がオフィスビル近くの噴水のベンチに腰掛けてお菓子を黙々と食べていたのだ。

中に入らないのか聞いたら、その存在感に圧倒されたて、お菓子を食べて元気を付けていたんだと。

それも俺が来たら、じゃあ中に行きましょうかとスックと立ち上がったのは良いことだったが、おい三村、俺はお菓子の代わりか何かか。

 

それから、アイドル部門とネームプレートの書かれた部屋に入ると、橘と村上とプロデューサーに加え、もう一人別の女性もいた。

名前は千川ちひろという女性で、アイドル部署のアシスタントさんとして一緒に働くことになった。

どこかで聴いたことある声だなと思ったら、そうだ、前に電話に出ていただいた人だ。

 

次に、ホワイトボードを使って、初めてミーティングらしいミーティングを行った。いつもいつもレッスンスタジオにみんな集合してたしね。

学生三人に合わせて、平日は何時も通り夕方からレッスン、場合によってお仕事。

休日は、午前中はこの部屋に集まって、一週間のスケジュールを確認し、午後からは、レッスンか仕事か、或いはお休みかの三択に分かれる。

 

 

何というか、こうして書いてると、いよいよアイドルという存在が『仕事』って感じがしてきたな。今までレッスンばっかりだったし。

 

 

さて、雑誌の発売は明日だとプロデューサーから通告を受けた。

最後に受けた橘の取材から一週間近く経ったが、やたらと発売するタイミングが早くないか?

それにも理由があるのだろうとプロデューサーにそれとなく聴いたら、やはりあった。

今月号の発売に合わせて、俺をスカウトした日から雑誌記者と日程を調整しており、俺達に割くページ数と取材だけを残し、他はほぼ完成していたのだとか。

このプロデューサー、ぐう有能。

 

 

で、だ、そろそろ俺を売り出す方向性をプロデューサーと改めて話し合った。

もう雑誌は発売されてしまったが、俺からちょっとしたキャラ作りの提案があったのだ。

 

俺は、ネット関連の、特にネトゲに関する造詣が深い。

この日記だって、ネトゲ仲間とチャットしながら片手間に書いてるしな。

 

詰まるところ、『ネットアイドル(現実しかも男)』である。

 

が、これは先駆者がいた、876事務所所属の水谷絵理という子だ。ネトゲ仲間も知っていた。

 

まぁまぁまぁ、あっちは動画サイトやブログ中心の活動みたいだし、ゲーム方面には弱いから、一応の差別化は図れるから、無くは無いだろう。

それに、雑誌の反応を見て前向きに検討しましょうとプロデューサーも言ってくれたし、売り出す方向性が自分の趣味と一致しているとボロが出ないし、多分この案は通る(確信)

 

 

とにかく、これで俺のファッションセンスが壊滅的なのにも理由付けが完了した。

これで「え……?あの服装でアイドル……?」と思われても言い訳ができる。

 

 

 

■月☆日

 

雑誌が発売され、いよいよ、アイドルとして本格的に始動。

 

まず、三村と村上が近々ソロデビューを飾る予定だ。

二人は今日、レコーディングの準備として、スタジオに行き、作詞・作曲家やスタッフに挨拶をして曲の試聴を済ましたらしい。

三村は可愛らしい曲で、村上は演歌に近い曲だと言っていた。

 

これも早く感じたが、やはり、プロデューサーは二人をスカウトしたタイミングで、作曲に携わる人間と相談していたらしい。

有能すぎやろなんやコイツ……。

 

しかし、なるほどと、俺一人のために男アイドル寮を増設しない理由が分かった。

アイドルの予算がそこまで降りなかったか、女子寮で予算を使い切る手前かのどっちかだろう。

入念に新人のアイドルをデビューさせる下地を作りつつ、現在進行形でも様々なプロモーションやイベントの準備をしていた。

それも全部この短期間でだ、そりゃ金も多少はばらまく事になるわ。

 

それと、雑誌も買って読んだ。俺に関してはまぁ良いんだ、取材内容は自分で覚えてるからな。

まず三村だが、取られた写真がキメ顔じゃなくて、パフェを美味しそうに食べている一枚が載せられていた。中々良いじゃないか。

次に村上、完全にメンチ切ってる、というか、全然笑顔じゃないし妙な凄味がある。まぁ、これも村上の良さが現れてるっちゃ現れてるのか。

最後に橘、笑顔とかけ離れた仏頂面。これも橘らしいっちゃらしいんだけど……。

 

大丈夫かこれ、半分が笑顔じゃないのにアイドル雑誌に掲載されて。いや、そりゃ初見の人間が見たら興味を引かれるだろうけどさぁ……。これモデル雑誌と勘違いされない?大丈夫?

 

 

 

ちなみにネットアイドル(物理)は通った。やったぜ。

 

 

 

■月〓日

 

今日も二人は、レコーディングに向かい、レッスンスタジオには俺と橘とトレーナーしかいなかった。

何となく広く感じるなぁと悲壮感に浸っていたら、橘が珍しく思案顔をしていた。

自信家で子供らしい橘は、どうやら自分が先に、若しくは全員で仲良く一緒にデビュー出来るものだと思っていたらしい。

「どうしてあの二人が先なんでしょうか」と聞かれたりもしたが、そりゃ大人の都合だからとしか言えない。

したら「これだから大人は……」と言われてしまったが、いやいや橘、あのプロデューサーぐう有能だったろ、絶対になんかしら理由があるんだって。

 

例えば、曲が作りやすかったとか。

村上は出身地が広島だし、ボイトレの時も一人小節効かせてたし、演歌っぽい曲って本人も言ってたからイメージし易かったんだろう。

三村はお菓子好きで、華の女子高生って感じがするし、ファンシーなアイドルの曲が似合うから、これもすぐにイメージ出来たんだろう。

 

何て論理立てて説明したら、そうかもしれないなんて納得する辺り、やはりまだ橘は子供だなぁ。

レッスンスタジオから寮までは距離もあったし、プロデューサーも二人のレコーディングに付いていったしで、橘を寮まで送っていった。

あと、帰りに自販機でイチゴミルクを買ってあげたら、そこそこ御機嫌を取れた。やっぱコイツ、苺好きだろ。

 

しかし、あの二人がソロデビューか。俺はてっきり女子三人でユニットを組み、俺一人がソロで売り出すのかと思っていたが……。

 

 

 




なんか番外編的な感じで、日記に書かれてない日を三人称視点で書ければ良いなと思っています(希望的観測)

でもそんな事始めたら完全にエタるんだよなぁ……
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