皆さんは毎日同じ日の繰り返しに
飽き飽きしていませんか?
新しい日常が欲しくないですか?
新しい刺激が欲しくないですか?
新しい出来事が欲しくないですか?
日々の疲れの乾き切った心に
何か新しい潤いが欲しい。そう思ったことは
ありませんか?
これはその潤いを求めたある少女のお話。
少女
静けさが耳につく薄暗い夜道を
前に進む足音だけが響き渡る
今日1日を振り返る頭の中の
足を止める出来事は、
今日もない。
「非日常」 「刺激」 「興奮」
どれもない。
わかっていても足を止めることは
できず、何度も足音を響かせる。
「つまんない」 と言ってみた所で
聞く人もいなければ言う意味もない。
そんな毎日に嫌気がさしたのは
いつからだろう
高校に入った辺りから
自分の今まで歩んできた道に
何もないことに気が付いた。
気がついてしまってからの毎日は
1日1日がとても長く、重く、
気だるく思ってしまうように
なった。
かと言って自分からそれを
求めるための行動に出る勇気
などあるはずもなく。
ベルトコンベアに流される
ダンボールのような気持ちで
日々を過ごしていた。
「ただいま」
心配をかけぬよう、無理に
明るくする。
「おかえり、塾どうだった?」
キッチンで料理をしながら
背をこちらに向け言った。
「いつも通りだったよ。あ、
そういえば今日ご飯いらない、
ダイエット始めたから」
「ほどほどにしなさいよ
お弁当箱出しといてね。」
「はーい」
嘘をついたところで
何が変わるというわけでもない
学校の明るさを詰め込まれた
空っぽの弁当箱をテーブルに置き
すぐに部屋に向かう
部屋に入り、お目当ての物を
カバンから取り出す。
昨日塾帰りに出会った
目の細い怪しげな男との
会話を思い出しながら。
「人生に楽しみを見出せない
そんな顔をしてるね」
「……え?」
鳩が豆鉄砲食らった顔とは
このような顔を言うのだろう。
的を射たその豆鉄砲を放った
男は、驚いた私を無視するかの
ように続けた。
「楽しみを見出せない、
でも探す行動に出る勇気も
ない。
何か非日常とか刺激とか
ないかなぁ…」
静けさに溶け込ませ、
充分過ぎる間を持たせながら
おもちゃを見つけた子供のように
無邪気な瞳をこちらに向け
「違うかい?」
と言った。
自分の心を見透かされ
それをおもちゃのように
転がした挙句、
土足で私の心に踏み入ってきた
その男に
何故か警戒心などなくなって
いた。
「…どうしてわかるんですか」
「前までの私と同じ眼を
しているからだよ。」
「だったら何なんですか、
楽しみをくれるんですか?」
「楽しみをあげることは
できないな、
だけど踏み出す勇気なら
あげれる。」
そう言って、夜色の似たコートの
右ポケットからおもむろに
何かを取り出した。
「踏み出すための''勇気''
欲しくないかい?」
右手にある包み紙をひらつかせ
私に言った。
「ちっぽけな勇気ですね。
なんですかそれ」
「案外その君の言うちっぽけが
人生を変えるんだよ」
「…そうですか。」
「これを君にあげよう
同じ悩みを抱えてたよしみでね。ちっぽけなプレゼントさ」
そう言って、
プレゼントとは到底思えない
荒い手つきで投げ渡された。
そして同じように間を持たせ
こう言った。
「それをどう扱うかは君次第だ
使うのもよし、誰かに売り
その金で非日常を買うのもよし。
好きに使ってくれ」
そう言って耳につく静けさを
かき消すかのように足早に
歩いて行った。
「何なんだろうこれ…」
そのちっぽけな''勇気''を
見つめながらそうつぶやいた。