魔導書は冒険譚を綴る   作:日λ........

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今回捏造設定入ります。
ヒントは主人公の親友の娘達。個人的には書籍版で一番大きな変更点だと考えてる彼女達です。
アニメのエンディングのあの曲を聴きながら書きました。いい曲ですよねー、アレ。




一話 「魔導書は誓う」

『ユグドラシル』で実装されている、NPC製作のシステムは中々に自由度が高い。人間種から亜人種、異形種からモンスターまで実に様々な種族を選択できる上に、拘れば様々な機能を追加が可能だ。かゆいところに手が届く、この手のシステムとしては最高クラスの自由度があった。

だが……リソースの関係上、彼らに使用されているAIは決められたルーチン内の行動までしかできないし、表情なんかも基本変わらない。

コマンドを使用して笑顔にする事くらいならできるが……それでも作り物めいた雰囲気を出してしまうのは変わりないのだ。例外はタブラ謹製の彼女だが……アレも行動がかなり複雑ではあるが、決められたルーチン内の行動を行っているに過ぎない。

それはそれで凄まじいのだが、今のアルベドは色々な意味でそれを遥かに凌駕している。

表情がある。その姿に生きている鼓動を感じる。そして……自分から話しかけられる。

どれも、ユグドラシルNPCの仕様から逸脱したような……いや、違う。まるでそう縛られていたものが解かれたような状態だ。まるで、そこに生きているかのような……生きている?

 

「……!?そんな馬鹿な」

 

空気の匂いか感じられる。口の中の唾液を飲む感覚がある。

どれも『ユグドラシル』では意図的に削られていた部分の感覚が、昔からそうであったかのように感じられた。まさか……

 

「……えい」

 

手のひらにむにっとした感覚が感じられた。やわらかく、それでいて弾力がある。それでいてほんのり暖かい。

……運営からの警告は無い。いくら自分のキャラでも、セクハラに該当するであろうこんな行為をしたら、最低でもイエローカード不回避であろう筈。だというのに、一切反応無し。

メッセージをモモンガさんに送り、声を出さずに会話する。

 

『モモンガさん、仕様的に絶対ありえない筈の味覚と嗅覚が感じられます。それと、ハラスメントコードに該当する筈の行為の確認もしましたが、運営からの反応ゼロです』

『どうやら、感覚の変化に関しては自分の勘違いではないようですね。まさかとは思いますが……』

『まずは、NPCの状態を確認してから判断しましょう。今確認できる、一番の差異ですし』

『そうしましょう。では、話しかけてきたアルベドに話してみます』

 

メッセージでの会話を区切り、意識を跪いているNPC達へと向ける。

……やはり、先ほどまでとは全てが違う。確かに丹精込めて作り上げたのは確かだが、仕様の関係上無機質な対応しか出来ない人形然とした存在であった筈なのに、皆、意思を秘めた表情をしている。

どうやら、主人である自分達が取り乱している事に皆不安を覚えているようだ。

 

「不安にさせてすい……すまない。予想外の出来事が起こってな」

「モモンガ様とぐりもあ様が、予想できないような出来事が……!?いったい、このナザリックで何が起こっているのでしょう?」

「その事については、今から調査しようと思っている所だ。セバス」

「はっ、いかがいたしましょうか?」

「今からお前と、戦闘メイドの誰かを連れてナザリックの外の様子を軽く確かめてきて欲しい。コレは、今起こった事に対する非常に重要な任務だ。もしなにか自身の身に危機が迫った場合、即座にナザリックに帰還するようにしろ。今は、情報がなによりも必要だ。共に調査する者の選別はお前に任せる」

「かしこまりました。準備を整え次第、即座に任務を遂行いたします」

 

そういうと、セバスはメイド達に指令をだし、第10階層から静かに出ていく。

……今モモンガさんが下した任務は、恐らく外の調査だけではなくユグドラシルにおける仕様が生きているかの確認の意味も込めた命令であろう。

ここが『ユグドラシル』であれば、NPC達はこのナザリックから外に出れない筈だ。ギルド運営NPCとして生み出された彼らは、同時にこのナザリックに縛られた存在である筈なのだ。

さて、今度は僕から話をしようかな。

 

「皆、不安にさせてしまったようですまなかった。僕もモモンガも、それまで普通に出来ていた筈の事が一部出来なくなってしまっていてね。少々取り乱したんだ。セバスが帰還して次第、皆にも今がどんな状況なのかを説明しよう。アルベド」

「はい、・・・・・・ぐりもあ様。私に何か御用でしょうか?」

 

?何か言いかけたけど、言葉を飲み込んだ?……彼女がどうなってるか確認したい。少し口実的に用事があると伝えよう。

 

「すこし、手伝って欲しいことがあるから、君にはモモンガに着いてて欲しい。他のみんなは、通常業務に戻ってね」

「!? はっ、はい!!かしこまりました!」

 

そういうと、アルベド以外の皆は僕たちに一礼した後、第10階層を出て行った。

うん、少し悪いとはおもうけれども、コレだけの人数がいたら話をするのも大変だし、まだ色々情報が足らないからね。

僕の作ったNPCともじっくり話をしてみたいけれども、それは後回しだ。

 

『ふー、なんとか切り抜けましたね、モモンガさん』

『そうですね、グリモアさん。これからどうすれば……あ、また沈静化された。実はさっきからアンデッドの基礎能力の精神作用無効と思われる物が発動してるみたいで、妙に頭がすっきりしているんですよね。お陰で落ち着いてセバス達に指示を出せました』

『そんなものが……自分はロールしてる時の自分を取り繕って話しましたが、そんなものは発動した感覚は無いですね。でも、妙に頭が落ち着いています。こんな異常事態なのに……そういえばアンデッドの技能とちがって、自分の種族『スペルブック』の『精神狂気耐性』は、アンデットの精神作用無効とほぼ同じ効果でしたが、アンデッドと違って基本技能ではなく、成長した後の後付けの互換スキルでしたね。その差が出ているのでしょうか?』

『そうかもしれませんね……やはり、自分達は人間では無くなってしまったのでしょうか』

『そうですね。まあ、不謹慎かもしれませんが自分的には、不思議と後悔はありませんね。ある意味現実の自分の理想の姿だったから、納得ですけれども……複雑です。女の子の姿になっても違和感がまったく湧かないとか……!』

『自分なんか骨ですよ、骨。……結局、息子を使う前に失ってしまったか……あ、今のぐりもあさんの姿だとセクハラですね。ごめんなさい』

『いや、息子に関しては自分も無くしてるので……というかナチュラルに女の子扱いしてませんでしたか今。自分、男……だったんだよなぁ。はぁ……』

 

ラスボスめいた骸骨と、ひらひらした法衣を着た中性的な美少女が、同じ理由ようなシモの理由でため息をついてる姿は実に滑稽であろう__あ、深く落ち込んだからか、なんとなくスキルが発動したような感覚が分かった。本当になんとなくであるが、落ち込んでたはずの感情は綺麗さっぱり消えている。この感覚だと、自分で消すマイナスの感情や強いプラスの感情を選択できそうである。後天的技能だからだろうか。中々に小回りの効く能力であった。

 

『そういえば、どうしてアルベドだけ残したんですか?確かにアルベドの担当の守護階層はここですけれども』

『……確認ですよ。さっき自分達がアルベドに施した事を思い出してください』

『あっ』

 

そう、自分達は『ユグドラシル』の最後の最後で、アルベドのキャラ設定を弄っていた。その一文はとてもシンプルかつ大胆。

『モモンガを愛している。』と……そう打ち込んでしまったのだ。いくらタブラが「モモンガさんになら自分の作った娘寝取られてもいいよ」と言ってたからって、いや、ねぇ……

 

『まさか本当にタブラの娘をNTRしちゃうモモンガさんの光景を見ることになるかもしれないとは……』

『やめて!なんか心にグサグサ来ます!!……あ、こんな時にも精神が……』

『ま、まあアルベドに聞いてみないことには本人の心は分かりませんし、もしかすると設定の部分にはあまり強制力がないかもしれない可能性もありますよ!多分……』

 

逆に実に設定通りの、忠実に再現されてる可能性もあるのだが__というかこっちの方がセバスの様子を見るに、可能性高そうなのは今は言わないでおこう……

さて、気になる事もあるし、色々と聞いてみようか。まずは、モモンガさんに話を切り出そう。

 

「モモンガ、アルベドと二人で話がしたいんだ。ちょっと席を外すけどいいかな?」

「ええ、今はセバスの報告待ちですからね。時間はありますし、大丈夫ですよ」

 

こんな風に声を出しながら話しつつも、裏ではメッセージで本心を語り合う。

 

『一体どうやって聞き出すんですか?』

『ちょっとシンプルに聞いてみようかと思いまして。もしも設定通りだとしたら、思い人の前でそんな事聞くなんて昼ドラじゃないんですしかわいそうかと思いますから、ちょっと遠くで話しますね』

『そ、そうですね……よろしくお願いします』

 

モモンガさんは非常に心配そうにそうメッセージを伝えてきた。声が震えてるのが丸分かりである。まあ、自分もそうなったらこの状態になる自信がある。むしろ表情に出してないだけ凄く器用だと思う。

まあ、アルベド美人だもんねー。仕方ない。ある意味自画自賛(・・・・)になるのはこの際置いてとして。

 

そうして僕とアルベドは玉座から少し離れた場所で__具体的に言うと、モモンガさんには会話が届かない程度の距離で、お互い対面して会話を始めた。今の僕、「ぐりもあ」の身長は130cm位である為、アルベドと普通に話すと自然に見下ろす形になってしまう為か、何も言わずに膝を折って正座してきた。いや、別にお説教とかする気はないんだけれども……

 

 

「アルベド、僕は先ほどモモンガさんに着いていてくれと言ったけれども、実は一つ聞きたい事があって呼び止めただけなんだ。期待させてごめんね」

「い、いえ……ぐりもあ様、つかぬ事をお聞きしますが、私に一体何をお聞きになるのでしょうか?」

「何、簡単な事さ__君は、モモンガを愛しているのかな?それも、忠義とかそういうのを超えて、女としてさ」

「!?な、ななな、何故それを……ッ!?」

 

……ごめんよモモンガさん。この反応、どうやら設定通りのようだ……ああ、タブラが大笑いしてる姿が幻視されるッ!チキショウ、アイツの性癖通りになっちまったよ!?

 

「別に、否定しないよ。むしろ、個人的にはうれしいくらいだ」

「ほ、本当ですか……!!」

 

…うん、この子かわいいよ。ちょっと女の子としてしちゃいけない表情してたりするけども、どういう訳だかなんか愛おしい。

しかし、表面の『色』は桃色に染まっているが、深い部分には『悲しみ』や『怒り」を表す色がごちゃませのままだ。これは一体、どういう……!!

あれ、ちょっと待てよ……!?

とんでもない事に気がついた。よく考えたら、自分達が作ったNPCとかって自分の娘や息子同然なのではないだろうか。今、自分の意思をもって歩き、会話してる生きた存在であるならば尚更……

なら、俺たちは……その子供達を、自分達の勝手な理由で、捨てた最低な……!?

な、なんて事だ……!!

 

「……」

「ぐりもあ様……?」

「一つ、話しをしよう。君達、三姉妹の話だ」

「わ、私達の話ですか?それは一体……」

「君達三姉妹はね、タブラがとある存在に着想を得て、作り出した存在なんだ」

「え?そ、それは」

「僕たち、似てるでしょ?顔の感じとか、ね?」

「っ!?ま、まさか……!」

「うん、タブラが僕の姿を元に、作り上げたのが君達三姉妹。だから、タブラが君達の父親だとしたら、僕は君達の母親になるってだけの話さ……嫌だった、かな?」

「そ、そんなことはありません!!」

 

そう__その元になった存在こそ、自分のPC『ぐりもあ』である。

『ぐりもあ』を製作した時の3Dデータを貸して欲しいと頼まれた時は、アイツのことだから悪用はしないだろうと思って快く渡した。でも『ぐりもあ』の雰囲気を残しつつ、絶世の美女に育ったかのようなアルベドを作った時は本当に驚愕したものだったよ……!

 

「まあ、長い間放置していて、今更親面したってって話かもしれないけれどもさ……ごめんね、アルベド」

「僕たちは、君に、君の愛する人のあんな寂しそうな姿を毎日見せてしまった……僕らがナザリックに帰ってくるのをモモンガはずっと待ってたのに、最後まで去らなかった僕でさえ、半年も彼にギルドをまかせっきりだった。本当に、ごめんよ」

「ぐりもあ……さま……わ、わたしは……」

 

……やはり、か。睨んだとおりだ。

アルベドは見ていたんだ。誰も来ないギルドを守る為に、ずっとずっと一人でがんばり続けるモモンガさんの姿を。悲しそうな姿をずっと見せていた、モモンガさんの背中を。

……モモンガさんには言ってなかったけれども、僕が『ぐりもあ』となり、『スペルブック』という種族になった時点で、目を閉じるとあるものが見えるようになった。

それは、魔力だ。魔導書である「スペルブック」系種族は、魔導書であるが故に魔力に対して非常に敏感な感覚器官を持っており、それは『魔力探査』というスキルで表現されていた。

簡単に言ってしまえば、魔力を持った存在に対するソナー的な能力だ。かつては敵対モンスターや敵対プレイヤーが赤のマーカーで、非敵対モンスターが黄色で、非敵対NPCやプレイヤーが青で表されるだけのよくあるレーダー系能力だったが、シンプル故に強力な能力だった。

ゲームから現実になり、コンソールが出せなくなった今ではどんな能力になっているかといえば……魔力から位置の割り出しが感覚で可能な事と、それが発する生物の感情から、魔力が色で見ることが出来るようになっていたのだ。先ほどから色がなんだといっていたのはこの能力で、色を見ていたのだ。感情に眠る色を。もっとも、長く見続けなければ深層心理までは読み取れないようだが。

……アルベドの発する魔力の色から、他のNPC達とは違う深い『怒り』や『諦め』、『悲しみ』の感情を感じ取れたのは、偶然だった。

これらの色調が色彩心理学におけるものであると気がつけたのは、現実で嫌というほど色について勉強していた頃があったからであり、そうでなければ、魔力の色の意味など気がつかなかっただろう。

 

「ごめん。本当にごめんね……!」

 

気がつけば、アルベドの頭を優しく抱きしめていた。しとしとと涙を流す彼女をみていて、いてもたってもいられなくなってしまった。

ああ、この感情は一体なんなのだろう。もしや、体が女の子になってしまったせいで母性本能にでも目覚めてしまったとでも言うのだろうか。

……まあ、こんなにかわいい娘の母親になれたのならば、気にすることじゃないかもしれない。元が男だったとしてもである。

 

「……ぐりもあ、さま。いえ、『お母様』、無礼を承知で申し上げます。私は、とんだ、とんだ勘違いをしていました!!」

「私は、至高の方々がお隠れになり、ナザリックを捨てたのではないかと、私達やモモンガ様をすてたのではないかと!ずっとそう思ってきました……私達を見捨てずにいてくれたモモンガ様以外のお方は、私たちをもう愛してくれていないのかと思っていましたッ!!」

「私たちを、作った方々が__私たちを捨てたのではないかと思うと、とても恐ろしくて__怖かった……!」

「ごめんなさい、ごめんなさい……!こんなにも、私達を愛してくれているお方がいらっしゃったのに……!!」

 

綺麗な瞳の顔を大きくゆがめて、アルベドは泣いてる。

その姿に、僕たちが残していってしまったモノの大きさを、感じざるを得なかった。

 

「……アルベド。謝るべきなのは僕たちの方だ。君達の気持ちを考えてなかった僕らに、責任があるんだ」

「だから、君は謝らなくていい。親に見捨てられた子供の気持ちを考えれば、それは当然の感情だよ」

「それは、正しい怒りって奴なんだ。ろくでなしは、僕たちの方だよ」

「もしも、君が許してくれるなら……仲直りしよう。悲しいことに、僕ら以外のギルドメンバーがナザリックに今後帰ってくるかは分からないし、限りなく低いかもしれないけども」

「僕は、ここにずっといるよ。君達が望むかぎり。コレからは、ずっとね」

「こんな母親だけれども、君は受け入れてくれるかい……?」

 

「……是非!お帰りなさいませ、お母様!!」

 

 

この時、僕はようやく、ナザリックに本当の意味で帰還を果たしたのだろう。

確かに現実の事や、他のギルドメンバー達のことは気になる。だが、一度は見捨てかけてしまった、自分達の作った者達がここに残って欲しいと願うならば、ここもまた、『僕』にとっての現実であると受け入れよう。

ここが、胡蝶の夢のような世界だとしてもだ。

もう二度と、モモンガさんやアルベド達を孤独にはしない。そう固く、堅く、心の中で誓った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さて、話はずれたけれども、アルベド。僕は応援するよ。君の恋心」

「お、お母様……本当、ですか?」

「というか、タブラもある意味公認だしね!君のもってるワールドアイテム『真なる無』は、嫁入り道具代わりに渡してくれたものだよ」

「え、ええええええ!?そ、そんな、タブラ様も……ああ、感謝いたします!我が創造主タブラ・スマラグディナ様!!親不孝物な私をお許しください!!」

 

……湿っぽい空気が、このやり取りで吹き飛んでいってしまったときは、タブラがどんだけ偉大だったかを思い知った。流石ナザリックが誇る、るし☆ふぁーと肩を並べるネタキャラ兼問題児……!!

お前の思いを汲み取って、この愛おしい娘を、かならずモモンガさんの嫁にしてやるからな!まってろよ親友!

SS送れるかわかんないけれども、結婚式が開かれたら絶対映像とっていつか送ってやるからな!!

先ほどの誓いの上に、欲塗れの誓いを立てた自分は、いずれ来るであろうその日に心躍らせた。

 




他の至高の41が来る時にナザリックにおける一番の地雷になりうる存在、アルベド 完 全 攻 略。個人的にこの子、愛情が深かったからこそ、ああいう風になってしまっているんだと思います。だから、真正面から正直に謝れば許してくれるとおもうのです。
そういえばむちむ……ゲフンゲフン!丸山くがね先生も言ってましたが、ナザリックは他の至高がいた場合、色々なルートを辿るようですね。全員来るとモモンガさんでも纏めきれず仲間割れするという悲しい現実を知りました(遠い目)
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