~冬馬サイド~
俺が今の世界に来たのは8歳の頃だ。
転生するということで、赤ん坊からスタートするのかと思ってたけど、そうじゃなかった。
既に住居が整えられ、子供一人で生活するには事足りる額の金が用意されていた。
ふと部屋の中を見ると、知らない大人に抱かれて笑っている小さい俺が映っていた。
一応、親がいたという痕跡は残されている状態。俺が一人じゃなかったという証明。
でも、真実は違う。偽りの家族はいないし、本物は俺が死んでしまったと受け入れてるはずだ。
色々戸惑ったけれど、俺にはコイツらが居てくれた。
雨燕、雷牛、雲ハリネズミ、晴カンガルー・・・そして、嵐猫だ。
ここがREBORNの世界じゃないことが判明したとき、俺は悲しくなって塞ぎ込んだ。
だって、並盛町じゃなくて海鳴市だったんだもの。偽物掴まされた気分だった。
それでもコイツらは一生懸命俺の事を励ましてくれた。落ち込むなよ!ってさ・・・。
だから、コイツらは俺の親友以上の存在だ。俺の自慢の家族だって堂々と言ってやる。
伊達に1年間一緒に居たワケじゃない。俺達の絆は本物のはずなのだから・・・。
・・・・・・・・・・・だからさ?
「今すぐに!! 俺のプリン食べたヤツは名乗り出なさい!!」
「「「「「・・・・・・・・・・・・」」」」」
日曜日の朝、俺はリビングにアニマルズを集めて取り調べをしている。
匣の中でジッとしているのは嫌なんだとアピールされ、家の中にいるときは全員放ってる。
始めた当初は炎を大きく消費しないといけないからバテていたけど、修行の一環だと自分に言い聞かせて毎日続けた。今ではそんなに辛くもないから俺も成長したと思う。
シャドーボクシングしているのが大好きな晴カンガルーの「了平」
新しく買ったクッションの上で丸くなるのが好きな雲ハリネズミの「雲雀」
プロ野球が始まる時間にはテレビのリモコンを渡してくれない雨燕の「武」
泣き虫だけど、グレープジュースに目がない雷牛の「ランボ」
いざというときには皆を引っ張るリーダー役の嵐猫の「隼人」
1年間、苦楽を共にしてきた俺の相棒達だ。
なんでアニマル匣兵器達の名前を引用しなかったのかというと、ランボのためだ。
だって牛丼だよ? 名前が牛丼ですよ? 他の子は特に問題ないのに、一人だけおかしいんだ。
実際、牛丼に命名しようとしたら泣き出して雷落とそうとしたからな。宥めても泣き止んでくれないから、そのまま守護者達の名前を貰うことで落ち着いた感じだ。
「俺がテーブルに出していたプリンが何処かに消えた。
トイレで小便に行ってる間の1分でプリンが消えたんだよ!」
俺がドンとテーブルを叩く。くそ! あのプリンは限定物で手に入れるのは至難なのに!!
「さぁ、犯人は名乗り出てもらおうか!!」
「ガアアアア!」
「極限に知らんだと?」
「ぴゅーい!」
「俺も知らないと?」
「・・・・・・きゅ」
「ボクはそんなのに興味はない。噛み殺されたいの?だとォ!?」
「モォオオオオオ」
「それよりも遊んでくれだぁ?」
「にょおん」
「早く終わらせろ?・・・・・・お前ッ!!?」
俺はなんとなくだが、コイツらの伝えたいことは分かるようになった。
直接言葉を理解しているワケじゃないけど、仕草や表情を見ればなんとなく分かる。
くそ! みんな最初はいい子だったのに、守護者の名前をつけてから変わった気がする・・・。
「じゃあ、俺のプリン何処よ?」
「にょおん」
「了平がプリンの周りをウロウロしてた? そうなのか、了平!!」
「ガアアアア!?」
「極限に俺じゃないぞ?」
「ガァ!!」
「雲雀がテーブルの上を歩いてた? 雲雀、何をしてたんだ?」
「きゅ!」
「ボクを疑ってるなら見当違いだ。ボクは散歩をしてただけ・・・。じゃあ、誰が・・・」
「きゅきゅ!」
「そこで必死に口の周りを舐めてる牛が怪しい? ランボ!!」
「モォオオオオオ!?」
「おれっちはやってないよ? じゃあ、誰だって言うんだ!」
クソ! いったい誰が俺のプリンを・・・
「にょおん?」
「ぴゅーい」
俺がランボを疑っている間に離れたところで隼人と武が何かを話してた。
「なにコソコソしてんだ?」
「にょおん!」
「なに? 冷蔵庫の中を見てみろ? なんで出したプリンが冷蔵・・・庫・・・・に?」
隼人の指示で冷蔵庫の中を確認した俺。そして、言葉を失った。
俺がみんなを疑ってまで探していたプリンが冷蔵庫に存在していた。
ヤバイぞ。この事実は墓場まで持っていかねば・・・・。
「ぴゅーい・・・」
「思い出したんだけど、冬馬が冷蔵庫にしまっていたのを見た気がした・・・だと・・・?」
お、思い出した。テーブルに出したままじゃ温くなると思って、一旦戻してたんだっけ・・・。
ひ、雲雀くん? ゴルフボールサイズの球針態をたくさん生成しないでもらえます?
それって尋常じゃないくらい痛いんだからさー?
「きゅ・・・」(噛み殺す・・・)
「アタタタタタタタ!?」
俺が疑心暗鬼になったせいで、雲雀が小さい球針態を高速で連射して飛ばしてくる。
マジで硬い上、小さい針が全体に生えてるから手でキャッチするとか出来ないんだよ!!
それに匣を開匣するヒマもないから雷のリングで簡易シールドを展開して凌ぐことしか出来ない。
「ご、ごめんってば!?」
「きゅ?」(まだ元気だね?)
「バカバカ!!? 降参してんのに、デカイ球針態を造るなよ!?」
「きゅきゅ!!」(仕置きが足りないみたいだね!!)
「もうしませんからーーーー!?」
俺が必死にデカイ球針態を止めていると、他のアニマルズが哀れそうな眼で俺のことを見てた。
「ぴゅーい・・・」(あーぁ・・・)
「ガアアアア!!」(極限に頑張るのだぁああああ!!)
「モォオオ・・・・」(なんか疲れたんだもんね・・・)
「にょん」(やれやれだぜ)
くそぅ!! 誰も助けにこないとは・・・
「きゅ?」(余所見してるヒマがあるの?)
「うぉ!? いつの間に!?」
誰も救援に来てくれないことを呪っていたら、雲雀が俺の背後に移動していた。
「きゅっ!!」(お尻がガラ空きだよ!!)
もう俺に逃げる時間なんて残されてはいなかった。
雲雀は球針態を造る時間がもったいないと判断したらしく、たいあたりを仕掛けてきた。
雲雀はハリネズミだから体に針を生やしている。つまり、けっこうな数の針が俺のケツに・・・。
「いてぇええええええええええええ!?」
俺のケツに容赦なくブッ刺さった・・・・。
「ぴゅ、ぴゅい?」(や、やりすぎなんじゃ・・・)
「ガァ!」(冬馬なら極限に大丈夫だ!)
「モォ・・・」(おれっちじゃなくてよかったもんね・・・)
「にょぉん?」(コントは終わったか?)
い、痛いぞ・・・。俺のケツが4つに分かれちまったみたいだ・・・。
「きゅっ?」(これでチャラになると思ってるの?)
「えっ!!?」
こ、これ以上に凄い拷問をかける気か!?
「きゅ」(30分以内に戻ってこないと噛み殺すから)
「へーい・・・」
俺は雲雀からパシりに使われるという屈辱を受けることになってしまった。
みんなが空のペットボトルをケツの痛さで悶絶し、踞っている俺の眼前に置いたんだ。
最初は何を伝えたいのか分からなかったけど、すぐにジュースを買ってきてというメッセージだと理解出来た。了平はポカリ、隼人と武は三矢サイダー、ランボはグレープジュース、雲雀はお茶を要求してきた。当然断ろうとした俺だったが、雲雀が俺のケツに狙いを定めていたため、泣く泣くパシりをやってます。
「1年前に戻りたい・・・」
あの頃はみんな弟みたいに甘えてきて超楽しかった。
雲雀も無垢な瞳で俺のことを見つめて甘えてきてたし・・・・。
なんで本家の雲雀恭弥みたいな鋭い眼をするようになったのかな?
「あと17分か。余裕で30分以内には間に合うな」
俺達の家の周りには自販機がない。
一番近いここの自販機まで来るのに約15分はかかってしまう。
けど、2分は余裕があるから慌てる必要はないんだけどさ?
「えっと・・・。了平がポカリ、隼人と武が三矢サイダー、ランボがグレープで、雲雀がお茶」
無事に全員の飲み物を手に入れたから、もうこの自販機には用はない。
まぁ俺のド忘れから始まったことだし、ちゃんと皆に謝らないとな・・・。
そんなことを考えながら瞬きして右に1歩踏み出すと、誰かが俺にたいあたりしてきた!
「うぉ!? いってぇ!!」
俺はぶつかれた事でバランスを崩してしまい、尻餅をつく形になってしまった。
大分痛みがマシになったと思ってたのに、尻餅ついたから痛みが鋭くなる。
当然、怒りが沸々と込み上げてくるのを抑えられなかった。
「誰だ バカ野郎!? 気をつけやがれ!!」
「ご、ごめんなさい・・・」
あれ? なんか金髪ツインテールの女の子が涙目で俺のことを見てるぞ?
「だ、大丈夫か?」
「は、はい・・・。変な子に追われてたから・・・」
そう言って、女の子が俺が落としてしまったジュースを拾おうとしてくれる。
「わ、悪かったよ。怒鳴ったりしてさ?」
俺は慌てて謝り、女の子から落としてしまったジュースを受け取った。
ん? なんか見たことあるような子だな・・・。もしかして・・・・フェイ・・・。
「見つけたぞ! フェイトォオオオ♪」
「ひっ!?」
あ、あのぅ・・・咄嗟に俺を盾にするのやめてくれない?
「一緒にジュエルシードを探してやるって・・・・・・なんだ? お前?」
ヤベ、コイツはバカ3人衆の一人じゃねぇか。
それにこの子はやっぱり有名なフェイトか。ていうか、「ひっ!?」って言ったよね?
「俺の前でフェイトとイチャイチャするなんて、自殺志願者のモブみたいだな?」
あのさ、良い眼科を見つけてみせるから目ん玉を取り換えてくれ。
俺の後ろでガタガタとフェイトが震えてるんだよ! それにイチャイチャしてねぇし!!
「フェイト、君は俺の側にいるべきなんだ。早くそのモブから解放してあげるよ」
ヘルーーーープ!? トチ狂ったバカの相手は俺には出来ませーーーん!!
「もう私に付きまとわないでくれませんか? 私にはやることが・・・」
「照れなくてもいいんだ。俺が格好いいから照れてるんだろ?」
「「ひっ!?」」
俺とフェイトの悲鳴が合わさる。なんなの? あの子は宇宙人なのかな!?
「さぁ、一緒に行こうじゃないか? 君の願いは俺しか叶えられないんだ」
「い、意味の分からないことばかり言わないで下さい! え、遠慮します!!」
「いい加減、俺に素直にn・・・」
「えっと・・・ちょっといいかな?」
「ア!?」
もう俺も家に帰りたい一心でバカの話を遮る。
無駄かもしれないけど、相手は俺と同じ転生者で人間だ。宇宙人ってワケじゃない!
心から話せば理解してくれるはずだ!!
「この子は本当に嫌がってるんだ。本当にこの子の事が大切なr・・・」
「モブのクセにナメた口をきくなァア!!?」
駄目だ。宇宙人だった。
「バグは掃除しないと・・・王の財宝(ゲートオブバビロン)!!」
「嘘だろ・・・」
コイツは本当になんなんだ!? こんな街中で転生者の力を平気で出すなんて・・・。
普通、周りの人間を巻き込みなくないとかあるだろうが!?
「俺のために神が用意してくれた世界だ。バグは消えてくれないと・・・」
神が用意してくれた世界? いったいどういう・・・・
「困るだろうがァアアアアアアア!!」
「くっ!?」
くそが!! フェイトが俺の後ろにいるのに撃ってきやがった!!
宝具をSISTEMA C.A.Iで防ぎきれるか不安だけど、これしか手が・・・。
もう王の財宝(ゲートオブバビロン)から宝具が発射されてる・・・。間に合ってくれ!!
俺はフェイトから受け取ったジュース達を地面に落とし、嵐のボンゴレリングに炎を灯す。
「きゅ」(球針態)
「なっ!? 俺の攻撃が変な塊に邪魔されただと!?」
「雲雀!?」
「ハ、ハリネズミ・・・?」
俺がSISTEMA C.A.Iを展開しようと匣に炎を注入しようとした直前だった。
聞き慣れた可愛い鳴き声が聞こえてきたと思ったら、俺とフェイトを護るように球針態が顕れた。
球針態は直径3mは越えてそうな大きさで、乱回転をしながら射出されていた宝具を防いでる。
ていうか、なんていいタイミングで登場してくれてんの!? 超感動したーーー!!
「な、なんだ? お前も転生s・・・」
「雲雀ぃいいいいい♪」
「きゅっ!?」(頬擦りしないでよ!?)
「えっ!? えっ!? 君の使い魔なの!?」
「んん!! お前も転s・・・」
「雲雀ぃいいいん♪」
「キュアッ!」(うっとおしい!!)
「いってぇええええええ!?」
俺の感謝の意を全力で伝えていたら、雲雀にまた刺された。
「・・・・・・・・・お前もt・・・・・・・」
「なんでここに? 家で待ってたんじゃ・・・」
「きゅ?」(時計を見てごらん?)
「時計?」
雲雀が小さくて可愛い手で俺の着けている腕時計を見てみろと伝えてきた。
なるほど。約束の時間を10分もオーバーしていたから噛み殺すために迎えにきただけなのね?
お前に感動した俺の純情を返せ・・・。
「おm・・・・・・・」
「まぁ、とにかく助かったよ。ありがとな?」
「きゅ」(冬馬に死なれると活動出来なくなるからね。サービスだよ)
「俺を無視するなよ!! この雑種がァアアアアアアアアアアアアア!!?」
今いいところだったのに・・・。故意に無視していたら怒られた。
「あ、あの?」
「はいよ?」
「アナタはいったい・・・・その子はなんなの?」
あー、外野にしてごめんな? でも、説明するヒマをくれそうにない。
「お前の力は分からんが、俺の最強の力で葬り去って・・・」
英雄王ギルガメッシュの天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)を撃つ気か!?
「フェイト、離れてろ」
「えっ!?」
「急げ!! 死にたくないだろ!?」
俺はフェイトに逃げるように指示し、赤炎の矢(フレイムアロー)を撃つために嵐の炎を灯す。このバカを病院送りにしないと、俺が死ぬ。だから、お前が撃つ前に全力で撃たせてもら・・・
「きゅ」(引っ込んでよ)
「・・・・・・・・・・・・・・ん?」
今、変な鳴き声が聞こえたぞ?
「きゅ」(ボクの獲物だ。冬馬は手を出さないで)
「はぁあああ!?」
ひ、雲雀のヤツ、天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)を止める気か!?
む、無理だろ!? そもそも雲雀は天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)のヤバさを知ってるのか!?
「顕現せよ! 乖離剣(エア)よ!!」
ヤベェ!? バカが乖離剣(エア)を出そうとしてる!!?
雲雀に気を取られてたから開匣しても間に合いそうにな・・・・・
「天地乖離す(エヌマ)・・・・・・・」
「きゅ!」(遅いよ!)
俺が死を覚悟していたとき、雲雀がヤツに向かって走っていった。
そして、あっという間にヤツの間合いに侵入すると、ヤツの頭の上によじ登った。
「あのバカ!?」
「なんだこのネズミはぁああ!? 俺から離れ・・・・・」
「きゅ」(苦しんでもらうよ)
ヤツが雲雀を掴もうとした直前、雲雀から雲の炎が放出された。
そして、10年後の雲雀恭弥がツナを雲のドームに閉じ込めたように、ヤツを雲のドームの中に閉じ込めてしまった。・・・・・・・・・・両手と両足が出てるから気持ち悪いパックマンみたい・・・。
唯一許せる部分があるとすれば、頭の上に乗ってる可愛い雲雀くらいだぞ?
「ハッ! この最強のオリ主である俺を封じたと思ってるのか!?」
喋んな。人の手足が生えた醜いモンスターに見えてきたんだけど・・・・。
「きゅ」(チェックメイトさ)
「こんな子供だましなど・・・こ、こどもだま・・・・・」
!? 雲雀さん・・・いったい何やるつもり!? ま、まさか・・・・・
「い、息が・・・・い、い、い、いき・・・・」
「や、やめたげてーーーーーーーーーーーー!!!?」
俺はフェイトに変な目で見られてるけど、致し方ないと思うしかない。
雲雀がやろうとしてることを全力で止める義務が俺にはあるんだ!!
おそらく中の酸素を急激に減らしてる。"窒息死"なんてエグい真似はさせねぇ!!
「こひゅー、こひゅー、こひゅー・・・・」
「雲雀止めろ!!」
「きゅ?」(なぜ?)
「なんで止めるの?的な顔してんじゃねぇ! 殺すな!!」
「きゅ!」(嫌だね!)
「雲雀・・・・・・・」
「きゅ」(コイツはボクの家族を殺そうとした。だから、全力で潰してるだけだ)
「もう戦意なんてあるかよ! 今すぐ解放してやれ!」
「・・・・・・・・・」
雲雀は呆れた表情を見せて雲のドームを消した。
ドサッとバカが解放されるけど、意識が朦朧としているみたいだ。
医療とか全然分からねぇから、とりあえず雷の炎で電気ショックを!!
「アババババババババ!!?」
「きゅ・・・」(君、自分の言ったことと矛盾してないかい・・・)
「わぁ!? こ、殺しちまったか!?」
え!? 息してない=電気ショック必要という俺の勝利の方程式が間違っていたのか!?
「ゴホゴボ!! うぉええええええ!!」
あ、よかった。生きてる・・・・。形振り構わずに死ぬ程ゲロ吐いてるよ。
「ハァハァ・・・・」
ゲロを死ぬ程吐き出したあと、俺と雲雀のことを憎い相手を見るように見ている。
「懲りた?」
「貴様ァ・・・・・」
「正直こんなことになるなんて思わなかったけどよ、俺達も死にたくないからさ」
「・・・・・・・・・・・」
「あと、病院にちゃんと行ってくれ。そして、なのはとフェイトを追いかけ回してやるな」
「・・・・・・・ッ・・」
「俺の言いたいことはそんだけ。今日のことは俺も本意じゃないんだ。
俺は普通に生活したいだけだしさ・・・?」
さっきから俺の言うことを聞いてるだけで、コイツは喋ろうとしない。
きっと自分のやってきた迷惑行為に気付いてくれたんだな?
「じゃ、俺達帰るわ。雲雀!」
「きゅ」(ボクに指図しないで)
俺は雲雀を肩に乗せて、地面に落としたジュース達を拾い直す。
あーぁ、炭酸抜けてんじゃねぇの?
「あ、危ない!?」
俺に危険を報せるフェイトの声を聞いたと思ったら、バカが乖離剣(エア)を握り締めていた。
フラフラしているが、俺と雲雀のことを殺意を籠めた眼差しで見つめている。
「お前は・・・俺を侮辱した・・・だから・・・」
上手く力が入っていないのは一目瞭然だ。乖離剣(エア)を持つ手がフラついてるぞ・・・。
「お前は俺に殺されるべ・・・・・・」
「果てろォーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
俺は一瞬で開匣し、左腕に赤炎の矢を装着して赤炎の矢(フレイムアロー)を撃った。
地面にまたジュースが転がるが、気にしてはいられない。
天地乖離す開闢の星(エヌマ・エリシュ)が撃たれる前に潰すしか選択肢がないからな。
しばらく入院生活してもらうぞ。
「ば、バカなァアアアアアアア!?」
「ハァハァ・・・、もう二度と悪さするんじゃねぇぞ。この大馬鹿が!!」
「ア"ッ!?」
俺の赤炎の矢(フレイムアロー)がバカを捉えた。
威力を抑えてあるから死ぬことはないと思う。・・・・・・・・・・たぶん。
バカが起き上がらないのを確認し、俺は匣に赤炎の矢を納める。
「あーぁ、疲れた」
「きゅ・・・」(噛み殺してしまえばよかったのに・・・)
「雲雀ィ?」
はぁ、コイツの容赦のなさにはビックリした。
でも、雲雀が来てくれなかったら本当に死んでたかもな・・・・。
「ま、まだだぁ・・・・・」
「おわぁ!? しぶと過ぎるだろ!!」
俺が地面に落としたジュースを拾い集めていると、バカが立ち上がろうとしてた。
「俺は・・・・・あの方に・・・・・・・ロk・・・・・・・・・・」
また変なことを言ってるよ・・・・・・・。"ろ"がどうしたって?
「きゅ!」(煩い!)
「ぴ!?」
「雲雀ーーーー!?」
バカが振り絞った最後の力を雲雀が摘み取る。
10年後の雲雀恭弥が使っていた雲ハリネズミの攻撃を雲雀が単独でやってのけた。
バカは数メートル吹き飛ばされたあと、白目を剥いて意識を今度こそ失った。
「きゅ」(敗者はそうやって這いつくばってればいい)
「おま!? 雲雀! な、なんてことを・・・・・い、生きてるよね?」
あのまま死なないよね・・・・・? 誰か教えて!?
「・・・・・・・・あの・・・・?」
ハッ! バカの相手で精一杯でフェイトのこと忘れてた!? ここはアレをやるしかない・・・
「・・・・・・・・・さいならーーーーー!!!」
「えっ!? えぇえええええええ!?」
俺はREBORNの力のことを話すつもりはないから逃げる選択をした。
いつぶりだろう? こんなに全力で走ったのは・・・・・? 最近ついてねぇ・・・・。
フェイトの戸惑いの声が聞こえるけど、無視だ! 水樹奈々ボイスなんて聞こえない!!
このまま真っ直ぐ家に帰らせてもらうぜ。あとで救急車を呼ぶから、そこで寝てろバカ!
とにかく俺はリリカルマジ狩るなんて・・・・しない!!
~フェイトサイド~
「いっちゃった・・・・・・」
まるで嵐のような時間だった。私を追いかけ回していた子が見事に負けてしまった。
私の顔を見て逃げた子に色々と聞きたかったけど、仕方ないかな。
「きゅう・・・・」(ボクを忘れて置いていくなんて、噛み殺す必要があるね・・・)
「あ!」
「きゅ?」(ん?)
あの子、自分の使い魔を忘れて行ってる・・・・・。
~冬馬サイド~
「ただいま・・・・・」
「ガァ?」(極限に遅かったな?)
家に辿り着いた俺を迎えてくれたのは了平だった。
他の奴等も俺が帰ってきたから出迎えにきている。
「にょん?」(酷い顔だぞ?)
「き、今日はもう寝るよ・・・・」
「モォ?」(冬馬?)
「ぴゅい?」(雲雀がいないな?)
「ガァ!!」(極限に雲雀がおらんぞーーーー!!)
「へっ!?」
雲雀がいない? ヤ、ヤバイ!? あの場所に置き去りにしたんだ!!
「にょおん!?」(そんなに慌てて何処に!?)
隼人が大慌ててで外に出ようとする俺に戸惑いの声をあげる。
悪いけど、全部あとで話すから! 雲雀を迎えにいかなくちゃ!
そして、俺は思いきり玄関の扉を開いた。
「あぅ!?」
・・・・・・・・・・・・・・え?
「にょ!?」(女の子が倒れたぞ!?)
俺が思いきり玄関の扉を開けたことにより、オレん家を訪ねようとしていた女の子を倒してしまった。ただの見知らぬ女の子だったらどんなによかっただろう・・・・・? どういうわけか、不動の人気を誇るフェイトがオレん家の玄関の前で意識を失うというアホな奇跡が起きてしまった。
「きゅ」(ただいま)
「雲雀!?」
「きゅ」(冬馬も鬼だね。ボクを送ってくれた女の子を噛み殺すなんて)
「噛み殺してないわ!?」
「にょん!」(それより今は家に上げてやれ!)
「ぴゅい!」(早くしようぜ!)
「お、おう・・・・・・」
玄関の前で倒れているフェイトをそのままにしておくことは断じて出来ないため、リビングのソファーの上に寝かせるしかなかった。フェイトが起きてくれないと事態が進まないということで、さっき戦ったことを皆に伝える。
もう俺はリリカルマジ狩るに巻き込まれようとしている。
ていうか、今原作がどの辺まで進んでるかすら分からない俺が介入する余地はあるんだろうか?
あと、なんで雲雀は俺のケツを噛み殺そうとしてんの?
「きゅ」(ボクを置いていったからさ)
なるほど? それは俺の過失だから甘んじて受けようじゃないか・・・・。
俺はせめて報いを受けようと思い、雲雀にケツを突き出す。
「・・・・・・・・・・優しくしてくれる?」
「きゅ」(無理)
・・・・・・・俺は椅子に当分座れなくなった。