灰燼の禿鷲   作:SUNRISE

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Engage~交戦~

-7月31日-

 

~山城上総 side~

 

「・・・ぁ」

 

機体の異常を示す警告音で目が覚める、しかしすぐさま戦術機全体のシステムが落ちてしまった。

 

「っ!」

 

爆砕ボルトのレバーに手を伸ばそうとするが、右腕には深い傷ができており、動かすことすらできなかった。

左腕も思うように動かせず、救助を待つしかなかった。しかし周囲の惨状を見るうえで考えれば、救助など来ないだろう。

自決もできず、ただBETAに食い殺されるのみとなってしまった。

 

ふと、親友の顔が思い浮かんだ。

 

「たかむら・・・さん・・・」

『山城さん!?どこなの!?』

 

頼みの綱として掠れる声で無線に呟くと、すぐさまその返答が帰ってくることにわずかに安堵した。

しかし、直後に振動が襲った。同時に深い傷に鈍い痛みが走った。

どうやらBETAに食われているらしい。次の瞬間にはコックピットブロックの装甲板が外され、隔壁を取り除こうとしているようだ。

 

『山城さん!?大丈夫!?』

 

機体を解体される際の衝撃が、その傷の痛みを増幅させた。

このまま食われてしまうのだろうか。恐怖心が身を支配させ、痛みとともに精神へ降りかかった。

 

目の前の隔壁が取り外され、戦車級のその体躯が眼前を覆った。

 

直後、戦車級がその視界から消えた。いや、血をコックピットに撒き散らしながら横っ飛びに吹き飛んだ。

 

けたたましい炸裂音が場を埋め尽くした。

 

~ACパイロット side~

 

「脆いな。」

 

例の戦術機と呼ばれるそれに纏わり付く赤い化け物を、本来ミサイル迎撃に使うCIWSで蹴散らした後、そう独り言ちる。

オエライ方が言うにはこの世界は俺達のいた時代よりも遥か以前であるらしい。

技術力や軍事力も当然格差があり、レーザー兵器の有無はもちろんのこと、素材技術やエネルギー技術も大幅に劣っている。

 

「あーこちらM1、生存者を発見した。繰り返す、生存者を発見した。」

『了解、これから向かいます。M1は周囲の脅威を排除、M2は生存者との接触、M3は周囲の警戒、M4は要救助者の応急処置。友軍は既に撤退を始めています。対象の回収後は速やかに全部隊とACを回収して戦域を離脱します。』

「M1了解。」

『M2アルファ了解。』

『M3アルファ了解。それと、生存者を一名発見し、保護している。回収の了承を。』

『M4アルファ了解。』

『オペレーター了解しました、M3の要求を了承します。』

 

 

通信を終え、周囲の状況を確認する。

黄色いパイロットスーツらしきものを来た少女は放心状態なのかへたり込んでいる。ふと後ろを振り向くと化け物の一匹が右腕に掴みかかってきた。

 

「ついてないよ、本当に。」

 

所詮は生物、いや生物なのかは怪しいが遥か未来の技術が掻き集めて生まれたACの敵ではない、左腕のガトリングを叩きつけて豪快に吹っ飛ばした。ガトリングには損害は見受けられない。

 

ふと奥を見据えると、吹っ飛ばした化け物と同じ連中がうごめいていた。

 

「本当についてないよ。こんな連中を相手にするなんてよ。」

 

両手のガトリングが唸りを上げて回転する。瞬間大量の砲弾が化け物どもに打ち出された。

着弾するたびに炸裂音が鳴り響く。榴弾を使用しているわけではないが、あまりの運動エネルギーに着弾点が爆ぜているのだ。

 

あっという間に辺り一面は真っ赤に染まり、主な着弾点には血すら残っていなかった。

 

『おうおう、豪快にやっちゃってるねー。』

「いつもどおりだろうに。感覚が鈍ったか?」

『ははは。それもそうだな。元の世界に戻って今までどおりにいけるか心配だな?』

「冗談に聞こえないな。」

『ありゃ、本気にしちゃって。』

『こちらM2、戦術機のコックピットに要救助者を発見、重傷の様で意識を失っている。M4、応急処置を頼む。』

 

不意に声が聞こえ、振り向くと4人小隊が2つ到着していた。疲労で昏倒した救助対象を介抱する奴や戦術機のパイロットを救助している奴、周囲の警戒をする奴がいた。

近くには、少女を載せた担架が置かれていた。

あまりに手ごたえがない、さすがにチームリーダーよりかは弱いがそんな俺でもそれなりに名の知れた傭兵だった。

この調子じゃ腕が鈍って仕事が来なくなってしまうだろう。

 

ふと、静寂の遠くからたったひとつのヘリの音が聞こえる。かなり豪快な音だ。

 

『回収ポイントに到着しました。急いでください。』

「M1了解。こちらも合流した、そちらに向かう。」

 

ここは一応屋内であり、わずかに見える外を覗くとシンクロプター式(サイドバイサイド式とも)の大型ヘリが見える。

 

『M4、生存者の応急処置を完了。』

『M3、回収の準備はできた。いつでもいいぜ。』

『M2アルファ、先行する。』

「M1了解。撤退を開始する。」

 

小隊を先行させるのはヘリへの回収をスムーズにするためだ。

部隊員が警戒体制を取って、その中心では救助対象の少女達を携帯担架へ載せて先行する。M4が急ぎ足で先行し、追う様にして自分はACの足を進めた。




M2~M4は4人小隊です。オペレーターはヘリ。

殴りつけただけで沈黙させるってのはやりすぎかな?でも戦艦砲をやばくしたものをまともにうけて立ってるくらいなのでそれくらい強度あってもいいよね。

ちなみにトータルイクリプスにしたのはここで死ぬ黒髪パッツン娘(山城 上総)がかわいいので生存させたかっただけです。鬱クラッシャーだからいいよね!

ここのAC乗りは1話の一人称(チームリーダー)とは別人です。
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