灰燼の禿鷲   作:SUNRISE

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平行世界?

「撃ってよおおおおおおおお!コイツらに食われる前に!唯いいいいいいいいいいいい!!」

 

悲痛な叫びが聞こえる。目の前には赤い化け物(戦車級)がその少女を食い殺さんとその腕を伸ばしている。

手元には自害用のハンドガンのみ。戦車級には太刀打ちすることなど不可能だ。

しかし、自分には親友を撃ち殺す器量など持ち合わせていない。

 

「うわああああああああああああああああ!」

 

咆哮を上げ、ハンドガンの引き金を引く。その瞬間、横から数発の砲弾が飛来した。

コックピットの前に陣取っていた一匹をはじめ、次々と撃ち抜いていく。立った一発でその肉は爆ぜ、跡形もなく吹き飛んでいく。血が地面を染め、自分の身も赤く染めていく。

 

「ぁ・・・あ」

 

一体何が起こっているのかわからなかった。いくら戦術機でもあれだけの破壊力など持ち合わせていない。飛び掛った血もあって、私は混乱の渦に巻き込まれた。

視界に写ったのは、瑞鶴よりも遥かに小さい戦術機であった。

その兵器は、掴みかかってきた兵士級を殴り飛ばし、その手に持ったガトリングが轟音とともに火を噴いて、兵士級達を跡形もなく消し飛ばした。

 

「おい、大丈夫か?」

 

不意に声をかけられ、その兵士を見たとたんに安心感が湧き出て瞼が重くなった。

 

「あの戦術機の中に・・・もう一人・・・」

 

私を介抱してくれた兵士にそう呟いて、意識を手放した。

 

 

 

「・・・例の・・・が救助して・・・」

「・・・一体・・・何者なん・・・」

 

遠くで話し声が聞こえる。断片的にしか聞こえない。

その声で目が覚める。見えたのは病院の白い天井だった。

ふと隣を見てみれば、深く寝息を立てている山城さんが、反対側には同じように寝息を立てる和泉がいた。

 

「よかった・・・」

 

安堵。それもそうだ。次々と目の前で殺されて、独りになってしまいそうだったのだから。

そういえば、あの時現れた戦術機や兵士達は何者なのだろうか。私がこうしてここにいるということは、味方なのだろう。

しかし、不思議なものは不思議だ。私は居ても立ってもいられず、痛む身体を起こした。

 

病院の中は負傷者で溢れ返り、開いているスペースの隅々にいたるまでベッドが敷き詰められていた。

ガラス戸の奥には、見慣れた帝都の風景が健在していた。しかし、病院の敷地内にはテントが所狭しと並んでいる。

 

「篁さん?お目覚めになられたんですね。でもまだ安静にしていてください。傷も治っていませんし。」

「すいません・・・」

 

彼らのことを調べるのはまた今度にしよう。混乱することばかりだけど、今は心を落ち着かせてゆっくり休むべきだ。

 

 

 

 

-1998年7月22日-

 

「おい!ちょっと大変なことになってんぞ!起きろ!」

 

戸を叩く音がする。非常にうるさい。こちとらすやすやと睡眠を貪っていたというのに。

仕方なく寝台から立ち上がりドアを開ける。

 

「・・・こっちは眠いんだよ・・・」

「それどころじゃないんだよ!とりあえずこっちに来てくれ!」

 

言われるままについていく。あ、服着替えてない。

 

「大変なことってなんだよ・・・あーぁ」

「なんか周りの景観が変わってるんだよ。嵐が過ぎ去るのも異様に速い。」

「嵐で地形が削れたんじゃないか。」

「んなわけあるか。よく見ろ。」

 

あくびをかきながら言葉を聞き流す。

景観が変わったっていつもどおり過ごす自信はある。

しかし、扉を開けて見えた光景は予想を大きく上回っていた。

 

「・・・いつの間に植林したんだ。」

「してるわけないだろ。植えたところですぐに枯れるか吹き飛ぶのがオチだ。」

 

周囲は木々が生い茂り、鳥の囀りさえ聞こえるほどのどかだ。

施設に変わりはないものの、一夜にして回りの環境はデータバンクにあるような世界秩序崩壊前のモノになっていた。

 

「とりあえずはいつもどおりに過ごすぞ。資材や武器弾薬兵器類の確認は一応しておいてくれ。」

「参報の連中に伝えればいいか?」

「ああ。確認が済んだら状況にもよるが周囲の探索を行うようにも伝えてくれ。俺はもう一眠りする。」

「さぼんなよ!ったく夜通しで警戒してた連中に顔向けできないぞ。」

「酒でもおごっとくよ。んじゃ頼んだ。」

 

この事例は頭の中ではひとつだけ思い浮かんでいた。いや、過去にそういう事例があったわけではないが。

過去の文明では平行世界と呼ばれるものが仮定されていた。その、平行世界とやらにきてしまったのではないか、と。

 

まぁいずれにせよいくつかの確認をすませて明日には探索に出よう。そのためにも今はゆっくり休もう。

さっきまで寝ていたがね。

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