-7月18日-
「結論から言えば、貴様らなど必要ない。素性も知れん連中にそのような大役を任せられるものか。我々の故郷は我々が護る。」
「そう。無理強いはしないけど、後になって後悔はしないように。」
おそらくこの基地の司令官であろう人物が強く言い放ち、それを意に介さずにマギーは受け流す。
不意に息を殺して近づく気配を感じた。
「がぁっ!」
応接室のドアを開けた瞬間、ナイフが自分の顔目掛けて迫ってきたが、一歩下がってナイフを持った手を捻り、掌底で顎を捉えて地面に叩きつける。
マギーを見てみれば右足を綺麗に腹へ突き刺して、次の瞬間にはそいつの頭を綺麗に蹴り上げていた。
「今回は不成立だったけど、依頼があればいつでも受けるわ。それじゃあ。」
マギーは襲撃者に驚くでもなく、それを見下げながらそう言い放つ。連絡先の無線周波数を記載した紙を置いて、自分達は基地を後にした。
なぜこのような状況になっていたのかと言うと・・・
~3時間前~
『あれがか・・・こんな都市を見るのは初めてだよ。』
「あぁ・・・にしても随分と武装されてるな。人気も感じられない・・・無線を流してくれ。」
『了解・・・この声が聞こえるなら応答を。こちらに敵意はない。』
拠点を出発して数十分、周囲を観測した部隊からの情報では地形自体は変わっていないそうだ。
相違点は、非常に大規模な都市が広域に渡って広がっていたとの情報もあり、接触を図るために交渉上手なマギーとをつれてその地点へ向かっていた。移動はヘリで行うため、パイロットも同伴だ。
もちろん、有事の際を想定してACを係留している。このようなことで死ぬのはこちらとしても御免だからな。
『こちらは帝都防衛第一師団。そちらの無線を傍受した。座標を送る、指定ポイントへ降下せよ。』
ほどなくして無線を傍受した趣の返答を受ける。引っかかる単語があるが口頭で詳細を聞こう。
『了解した・・・座標を受信できない。口頭で地点を指定してもらいたい。』
遠くからは発砲音が響いている。ふと地表をスキャンモードで観測してみると、ACより遥かに大きい人型の兵器がせわしなく動いているのが確認できた。
細かいスペックなどは確認できなかったが、武器の口径などから察するにこちらのほうに分があるようだ。
指定ポイントが見えたが、その人型が円を作っていた。手際のよろしいことで。
ゆっくりとACを降ろしてから、ヘリが降着装置を展開させて降下する。
ACを見た人型は警戒心を露わにし、その手に持つ武器を構えている。
『武装を解除して投降せよ。こちらの指示に従わない場合発砲する。』
予定調和である。だがここで下がっては傭兵の名が廃れる。
「そちらの指示には従えない。それに、先程も言ったとおり、こちらに敵意はない。」
『ならばそれを行動で示せと言うのだ!武装を解除せよ!』
「そちらが攻撃すると言うのであればこちらも黙ってはいない。それに、今は面倒ごとを増やしたくないだろう?」
『・・・しばらくそこで待っていろ。』
その言葉と共に無線が途切れる。しばらくの後、再び無線が繋がる。
『そこで事情を話せ。内容によっては受け入れよう。』
「善意に感謝する。マギー、頼んだ。」
交渉はマギーに任せる。
『ここへ足を運んだ理由としては、周辺の勢力との接触が目的よ。』
『なぜそのようなことが必要になる。ここは列記とした大日本帝国の土地であろう。』
また引っかかる単語が出てくる。
『信じがたいとは思うけれど、私達は大日本帝国など知らない。まるで別の世界に来たような・・・』
『異世界からの使者と?笑わせてくれる。』
「異世界と言うより、平行世界と言うべきか。」
まるで神様の使いのような仰々しさだが、俺はそれを訂正するように呟いた。
『平行世界・・・そのような研究をしている学者もいるが、眉唾に過ぎん。』
少し興味深い発言を聞いた。後々には会ってみたい。
『私達がその証明だと思うんだけれど。地形は同じだけど、こんな大規模な街なんて見たことがない。』
『そのようなことがありえるものか!』
『あなたも薄々感づいてるでしょう。見たこともない兵器を持っていて、こんなことを言ってる連中がどこかの回し物とは思えないわ。」
『どこかの新兵器だという可能性はないのか?ありえるだろう!』
やはりそう簡単に信じてはもらえない。だが、
『好き好んで面倒ごとに突っ込むのは私達くらいなものよ。ちゃんとした連中ならこんなところには来ない。』
『・・・』
『ここの詳細を教えてくれる?応じてくれるなら、武装解除にも応じれるわ。勿論、警戒も最低限でね。』
『わかった。要求を受けよう。』
かくして、先程の会談へ移ったということだ。
「交渉不成立だったな。まぁいずれにせよ、いい情報は得られた。」
『やっぱり平行世界のようね。それも、私達の居た時代よりもずっと昔の時代。』
『創作の中だけだと思ってたよ、世界を跳ぶなんてのは。』
帰路のヘリの中で会話を交わしている。あの司令官からはいろいろな情報をもらった。
大日本帝国やアメリカなどの国家、戦術機などの軍事技術、そして・・・BETA。
いずれにしてもさしたる問題ではなく、売り込みをしてみたがあの様子だ。連中は愛国心とやらが強いらしい。
強すぎるのも問題ではあるがな。
「管制に連絡を入れてくれ。『穏便な接触は成功、売込みは失敗』」
『悪くはないが良くもないニュースだな。』
『管制・・・ええ・・・売込みは失敗よ。着陸許可も出しておいて。』
そうして、初接触は最低限穏便に済ませることができた。
後に、帝都最終防衛線への派兵以依頼を受けたのは2週間後だった。