灰燼の禿鷲   作:SUNRISE

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大いに遅れましたが、新年明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。

本来は10日までに上げたいと思っていたのにどうしてこうなった。


ようこそ

 航空機や戦闘ヘリ、車両などが散在する大きな飛行場の一角に、1機の大型ヘリが砂を巻き上げながらヘリポートに着陸する。

 その傍らには、ヘリを誘導するマーシャラーとその場に似合わないビジネススーツとやらを身に纏った男女が一組。

 ヘリの後部ハッチが開き、その中から軍服を着た男女が数人降りてくる。

 

「ようこそ、我らの巣(レイヴンズ・ネスト)へ。」

「ご招待いただき感謝する。」

 

 スーツの男は屈託の無い笑みを浮かべて右手を差し出す。対する軍服の男も右手を差し出すが、その顔は不明瞭といった様子に曇っている。

 

「今回の来訪は、我々の施設を視察するとのことですが。中枢区、居住区、港湾区、飛行場、発電施設、兵器工廠のすべてが開示可能です。」

「それほどまで簡単に情報を開示していいのか?」

「ええ構いません。プロテクトは万全に済ませてありますし、そもそも模倣可能な技術とは限りませんしね。」

「・・・」

 

 変わらぬ笑顔でそう淡々と、しかし僅かに面白がるように言葉を連ねていく。こわい・・・

 俺たちは、大型ヘリのハッチから、各々方の後に続いて降りる。

 

「あの・・・」

「ん?」

 

 ふと声の源である傍らを見れば、先日この案件を提案した時の少女、篁唯依がこの物々しくおそらく信じがたいであろう情景に戸惑いながら話しかけてきた。

 あの邂逅からわずか三日。あまりにもせっかちではないかと思うほど迅速に行動に出てきたのは驚いたものだ。

 

「これほどまでとは思いもしませんでした、先日の無礼をお許しください。」

「いやいや、信じろってのが無理あるさ。」

 

 このような時でも礼節を忘れないその精神には感服したが、覗き見た顔には畏れが滲み出ていた。

 

「お、どうやら港湾区に向かうようだな。俺たちも行くとしようか。」

「あれれー?ナンパですかー?イケマセンねぇー。」

 

 少女は俺の言葉に無言で頷き同意するが、唐突に現れた第三者が暢気な声で戯言を投げかけてくる。

 声の主はビジネススーツを着ているが子供のような容姿の女だった。名をアレサと言うこいつはCPオペレーターでなかなかに優秀だが、見た目どおり緩々な性格をしている。指示もかなり大雑把だ。

 

「・・・小学生?」

「お前は俺が少女趣味を持っているように見えるのか?」

「人って言うのは見た目だけじゃ分からないものなんですよねー。マギーさんみたいにー。」

 

 お前みたいに見た目どおりぽわぽわした奴が言える事かと思ったがこいつの人を見る眼は折り紙つきである。過去に何度か世話になった。だが俺に少女趣味はない。

 篁が何か言っていたような気がするが恐らくどうでもいいことなので聞かないでおく。

 

「お前は来客の案内をしなければならんだろう。早く行け。」

「アディにお前は礼儀悪いからしゃべるなって言われちゃったー。ひどいよーぐすー。」

「あぁそういうことか。」

 

 アディとは来客を誘導しているビジネススーツを着た男のほうである。心の読めない奴で皮肉を隠す気も無いが、情報処理能力は非常に高く作戦進行の要の一人でもある。

 

「まぁ、誰に対しても自分らしく接するのが俺たちだから多少はいいだろう。行ってこい。」

「リーダーのお墨付きー。これで奴も逆らえんだろうぐへへへ。」

 

 これ以上絡まれると純粋に面倒なので適当にあしらってアディの奴に送りつけた。アディは如何にも清々しい笑顔をこちらに向けてきた。

 

「ひっ・・・」

「・・・」

 

 隣の少女は何かを感じたのか小さく悲鳴を上げた。まぁそれが奴の意図だろうが俺には効かん。

 

 

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 港湾区にはトラムの駅や各種倉庫を内包し、各拠点までの砦として機能する巨大なコンクリートの建造物が岸壁に減り込んでいて、そこから開けた地形に防御用の固定武装が立ち並んでいる。これらの武装の動力源は建造物内の発電機から別個で供給されるため通常の拠点よりも総電力が大きい。

 ヘリポートやテントも多数点在しており、やはりここでも常日頃の戦闘能力を維持するため人が忙しなく動いている。

 肝心の港には、戦艦や巡洋艦、駆逐艦が立ち並んでいる。駆逐艦St.Elmoは数百年以上前にはすでに発見されており、その船の技術を用いて巡洋艦や戦艦が開発された。タワーによる技術も含まれている。

 これらの設計図は財団の商品として三大勢力ならびに小規模勢力に供給されており、元来莫大なコストのかかる兵器種であるため使い手は限られるがその気になれば誰でも所有可能なジャイアントイリングとして重宝されている。

 尚、ここに露天されているのは戦艦1隻・巡洋艦2隻・駆逐艦2隻の計5隻1艦隊のみだが大型水路を通じた砦の地下にもう1艦隊がある。

 

「・・・どうやってこれだけの海上戦力を?」

「別に絶対に金で買わなきゃいけないって訳じゃないからな、設計図だけ買って資材は依頼なり襲撃なりで奪い取った。」

「・・・」

 

 隣の少女は唖然としている。まぁ当たり前である。たかが傭兵団がこれほどまでに壮観な艦隊を持ち得ているのだから。前の世界でもこれほどの規模を持つ小規模勢力というのは珍しいもので、大方駆逐艦4隻が関の山だろう。

 帝国のお偉いさん方も、やはりと言うべきか皆唖然としていた。

 

 

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 次に訪れたのは、兵器工廠。

 あれだけの戦力をどうやって作り上げているのかが不思議に思え、生産現場を見てみたいとのことだった。

 ACパーツを始めとした各種武装の自給を目指したためかなり大きな規模を持つ。単純な建物の構造、可能な限りの自動化など、作業効率を高めることで技術者を兵士よりも少なくすることに成功した。

 また、工廠は先ほどの大型水路と直通しており、大型ドッグなども備えるため艦船の修繕、建造が容易になっている。大型水路は艦隊がまるごと移動できるほど巨大なため建造に制約は無い。

 

「やはり労力の問題というのはあるのですね。」

「兵站は軍隊に置ける心臓、血流である。よってそれを怠れば即ち死である。それなりとはいえ小規模な兵力を維持するためにはこういった場所にも力を入れねばならないのさ。」

「なにをしてるんですか、そんな気取った語り方して。」

 

 篁は納得したように頷き、演説のように語っていたところをアディに咎められる。あの野郎・・・!

 

 

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 兵器工廠は拠点一体にある山の地下にある。これは重要な区画を空爆などのダメージから守るためだ。

 同じく重要な区画である発電施設も、トラムを挟んで兵器工廠の反対側にある。

 発電機構は、ACの動力元でもある安定金属水素を用いた縮退圧/燃焼/核融合複合発電である。

 詳しい原理は不明だが発電効率が頗る良く。一回の補給で100年以上フル稼動が可能であるほど。ACはこの安定金属水素を推進剤としても利用しているがこちらはさらに効率が良く。半永久的に稼動するジェネレーターの稼働時間よりも長い時間噴射が可能である。

 

「技術格差がありすぎてついていけません・・・」

「そらそうだ。」

 

 おそらくこの世界では千年以上は先の技術であると思われる。

 

 

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 その他の区画も巡って行き、日が傾き視察は終わった。

 彼らが帰りのヘリに乗り込もうとしていたところ、帝国の官僚の一人があることを所望した。

 

「この組織の最高責任者と話がしたい。これほどの組織を纏め上げるとなれば、相当な手腕だろう。一度お目見えしたいものだ。」

「それでしたら朝方からあちらにいますよ。」

 

 そう言ってアディはこちらを指した。

 

「貴方がここの責任者か。これほどまでに近くにいるとは思いもしなかった。」

「責任者なんて大層なもんじゃない。似たような奴を集めた結果成り行きで代表になっただけだ。」

「それでも、ここまで統率が取れていることは誠うらやましいものだ。」

 

 どうやら帝国内部でも派閥分かれなどのいざこざはあるようだ。

 勢力と言うのは規模が大きくなるとそういった同士討ちが有り得てしまうのが難点である。三大勢力もそういった事例は多々あり、それらの処理を行う専門の部隊も俄かに噂されていた。

 無論俺のチームでも数回ほど派閥が分かれたことはあった。この時にアレサがクーデターを嗅ぎ付けてくれたのである。

 

「どこも変わらないもんだな。」

「?」

「いや、なんでもない。」

 

 この世界に対してわずかながら親近感を覚えながら、今日の視察は終わった。




港湾部はSOUTH ISLANDSのデニス城塞のイメージ。あの場所ぐうすこ。

金属水素燃料は公式設定のらくがき的なものから。SUZUMUSHI mdl.1とかの新規ジェネレーターには「Metal Hydro Energy」と書かれているそうです。
金属水素は液体水素の12倍の密度で、分子に再結合すると水素/酸素反応の20倍のエネルギーを発するそうで実際に燃料としての期待が高まってるそうです。

尤も、ボツになった設定だそうですが。
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