異世界集結戦線   作:玉城羽左右衛門

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第弐拾壱話 ≪発令! 硫黄島沖救出作戦!≫ 我、発艦セリⅡ

空は快晴。

ただ一つ足りとない雲はその快晴ぶりを物語っていた。

翔鶴甲板上、第一次制空戦隊こと岩本隊が今まさに飛び立とうとしていた。

 

彼ら駆るA1ly1噴式併用艦上戦闘機「仙風」は零式艦上戦闘機や烈風に代わる新たな艦上主力機体なのである。

本機体の最大の特徴はジェット機が主力として使われる現代戦においてまずありえないWW2の戦闘機特有たる機体形状のレシプロ機で、内情二枚の反転プロペラとターボブロップを装備していることにある。

ある種轟音響く現代戦場においてはある種時代遅れかもしれない。

ましてターボブロップの単発の戦闘機だ。

戦車で言うなれば現代戦場においてⅥ号ティーガー重戦車が戦闘に参加しているものである。

だがそれでいいのである。

彼らの状態鑑みれば…

 

 

「計器の異常は…ないな…」

一通り前方に並んだ矢印たちが狂っていないか確認をする。見る限り、いつも通りとわかると大きく溜息を付いた。眼を瞑り今から起こりうる戦いを頭の中で想像する。彼は恐れていた。

目の前の敵水上機隊の数は手で数えられる程度で別に気を抜かず護衛する限りは恐るるに足らない。だがしかしこれだけではないのだ。彼の恐怖根源は不特定多数の敵空母機動艦隊なのである。幾ら翔鶴のパイロットたちが一人5機以上撃墜させた経験のある者猛者揃いの選りすぐられた精鋭であろうと流石に物量には勝てない。岩本こと彼も前大戦において米国との戦いで経験していた。明くる日も明くる日も来襲する終わりなき米軍機の来襲に対して疲弊した。故に彼は今回の不特定多数の空母艦隊に対して大きな不安と恐怖を抱いていた。

だが今回は何故か異様なほど安心感があった。

その安心感が何かはわからない。いや、というよりは表現し難いのだ。

なぜならその安心感の根源は突如現れた謎のイージス艦だ。

岩本はその艦艇が今まで見てきた自衛隊の艦艇とは何か別の物を感じたからだ。

「実に不思議なものを感じるな…あの艦は…私たちと同じような…」

そう一笑すると大きく深呼吸をすると通信機のチャンネルを合わせると艦橋に向け告げた。

「艦橋へ。こちら岩本、発艦の是非を問う。」

岩本の通信を聞き待っていたかの如く艦橋から返答が飛ぶ。

『こちら艦橋、発艦を許可する。無事帰還すること祈る。』

「了解した。岩本隊発艦する。」

返答を返すとすぐさま発動機のスロットルを限界に上げる。

発動機は先ほどまでの呼吸から一変、咆哮に変わる。その咆哮はただ物ではなかった。二枚のプロペラは徐々に速度を上げ風を切り始める。そしてターボブロップ故に機体後部に設けられたノズルより噴煙巻き上がると爆音と共に機体が少しばかり浮き上がる。

轟音轟かせ機体は甲板上より大きく戦場たる空へと舞い上がった。

すぐさま後続も飛んでいく。

岩本駆る本気は現時点で配備されている三二型とは根本から異なる。

どこがどう違うかというとそれは機体設計からだ。

まず第一にノズルの位置からだ全型三二型は機体下部に搭載されていたが本機四一型では機体後部付けられている。

と言うよりかはノズルが延長されていると言ったほうが正しいであろう。

その為に後部に設けられているかの如く風貌を見せていたのだ。

さることながら翼部も前型とは異なっている。

搭載備砲の大口径化に伴い燃料タンクは撤廃、翼部は拡張された。前型より0.5倍延長を施され弾倉は横長になった。また羽の大型化に伴い、折り畳み口と弾倉が接している。

勿論のことながら本機体の発動機もまた異なっている。

本機が搭載する発動機は類系発動機の序列4番目にあたるものである。

この発動機は類Ⅳ噴式併用発動機は前型とみれば完全にターボブロップ機の皮を被った噴式発動機と言っても過言ではない。

本発動機を使った仙風四一型は第二世代型のジェット機と変わらない961km/tを全武装搭載済みのまま叩き出している。これには仙風の設計が影響している要素もあるがそれでも尚、こんな数値を上げている。

そして防御面である。

この仙風全型を通し日本軍機とは思えないほどの頑丈さを誇る。形状的な頑丈性な他、機体全体に張った鉄板がその硬さを顕示させた。12.7mm機関砲を何十発食らっても尚耐えるその装甲は試験時山本五十六長官他多くの官僚を驚かせた。その時それを見た山口多聞中将は「戦車を飛ばせとは一言も言っておらんぞ。」と言葉を漏らしたほどである。

それ故に本機体の格闘能力は若干ながら下がってしまった。しかしながらそれでも尚、衰えは感じられないほどである。その下がった分を補てんすべくかの如く本機は上昇性がぐーんと上がった。これにはP-51や三式戦闘機飛燕、Bf109などの上昇力が高い機体を総合し設計の組み込んでいる。

一見、本機は非常に良好な機体と思われるだろうが内情問題が山積していた。まず第一に機体の航続距離の低下である。武装強化や発動機の新調により燃料タンクが減少結果、前三二型より航続距離が三分の一となった。そしてまた新規格や設計の見直しにより前型より一部部品が流用できなくなったため整備性が非常に悪くなってしまった。信頼性もまた落ちてしまった。前型とは別設計故に今までの操作が出来なくなったのが大きいだろう。故に本機を扱う際は訓練を行わなくなってしまった。試作時においては本機は大口径ラ-49 70口径45㎜機関砲二門とラ-50 50口径機関砲を積んだため非常に劣悪な操作性になってしまったのだ。その後改修を加えられ前線へと送られた。

 

「にしても、コイツは相も変わらず凄いな…」

機首を上げ晴天に突き上げ、上昇する仙風操縦席でただ一人呟く。

「三二型も凄かったがコイツもコイツだ…同系列の機体とは大抵思えん。」

彼の手は震えていた。彼は恐怖を感じているのではないか?と心の中で疑問に思ったが彼自身恐怖のようなものは感じていなかった。

これは言うなれば武者ぶるいであったのだ。未だかつてないほどの未知数の本機体を使うことに対しての好奇心だ。本機体で実戦に臨むのは今回が初であった。

訓練はしてきたものの実際に当てていたのは実物がない的。それも動きが単調ですぐにあてられるようなものであった。

そんな中今回の出撃である。

彼は一種に敵に飢えていたのだ。本機体を試すものを。今の彼は新しい玩具を与えられた子供のようなものなのだ。

彼の口は笑いたいという感情と笑いを抑える自我により彼の顔は引きつっていた。その時である。

『隊長、一体どこまで上がるつもりなんです?』

無線通信だ。

その声は先ほど聞いた声であった。それにより彼は我に戻った計器を見やれば速度は落ちていることに気が付いた。そしてすぐさま機首を下げる。

「お、すまない。考え事していた。」

その言葉を聞いて何か察したのか坂井はトーンを下げ

『隊長、一回落ち着いて下さい。確かに本機を試したいのはわかりますが部隊の指示は忘れないでくださいよ。貴方は隊長なのですから。』

意外な一言が彼の思考を呼び戻した。

「ああ、わかっているさ。」

そう返答すると彼は大きく頭を上げ、そして戻した。

「岩本隊…行くぞ…」

通信機越しで言う

「「「了解!!!」」」

大きく返答を返すと岩本隊は更に上昇していった。

 




C91出すことになりました

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