【四十二日目】
朝、アインズさんの部屋に行くと地上にいる冒険者達がエ・ランテルに帰還したという報告を受けた。
昨日と二日前は色々と騒がしくて少し忘れがちだったが、元々俺達はこのナザリック地下大墳墓の調査をするという仕事でここに来ていたのだ。
そしてこの仕事では、一日以上外で待機している冒険者と連絡が取ることができなかった場合、冒険者達は俺達ワーカーチームが全滅したと判断して帰還するという契約になっている。薄情かもしれないが、この場合は「ここは危険な遺跡である」という情報を持ち帰る方が重要であるので仕方がないだろう。
ちなみに現在エ・ランテルに帰還している「モモン」はここにいるアインズさん本人ではなく、彼が作り出したNPC「パンドラズ・アクター」の変身である。
パンドラズ・アクターは多彩な変身能力を持つ種族「上位二重の影」で、俺やアインズさんを始めとする四十一人のギルドメンバー全員の姿に変身でき、更にはその能力の八割を使用できる実に優秀なNPCだ。
しかしパンドラズは、ユグドラシル時代にアインズさんが「カッコいい」と思って設定した通りの芝居がかった言動をとるため、今ではアインズさんの知られたくない黒歴史が実体化したような存在となっていた。だからこそパンドラズはナザリック地下大墳墓の最奥にある宝物庫に封印……もとい、番人を任されていたはずだ。
よくパンドラズを外に出す決心をしましたね、と言うとアインズさんは「確かにアレを外に出すと精神が大きく削られる気がしますが、それでも便利な奴なんですよ。アレは……」と疲れた声で答える。パンドラズを「アレ」呼ばわりとはそんなに彼を外に出すのが嫌だったのか?
それはともかく明日にはパンドラズもナーベラルもエ・ランテルに着いて、その後で転移魔法を使ってナザリック地下大墳墓に帰還する予定なので、アインズさんはその時に俺の帰還を祝うパーティーをしようと言ってくれた。
俺の帰還をナザリック地下大墳墓の皆が祝ってくれる。それはとてもありがたいと思ったが、俺はアインズさんがため息混じりにもらした「まあ……。食べ物も酒もダメなんですけどね……」という言葉が気になった。
ああ、そういえばアインズさんって全身骸骨だから食べ物を食べたり酒を飲んだりしたらすぐ出てしまうのか。
でもせっかくのパーティーだというのに、アインズさんだけ何も食べれないというのは可哀想だ。なんとかできないかと考えていた俺は自分の持つあるアイテムのことを思い出す。
早速自室に戻りアイテムボックスを探して見つけたのは中央に小さなジャック・オ・ランタンの装飾がされている首飾り。
この首飾りの名前は「生者を騙る死者の首飾り」。
何年か前のハロウィン限定の課金ガチャで手に入れた神器アイテムで、これを装備している間は常に人間の姿でいられるという異形種プレイヤーにしか使い道のないアイテムだが、今のアインズさんにとってはとても価値があるものだろう。
【四十三日目】
夕方頃にパンドラズとナーベラルがナザリック地下大墳墓に戻り、俺の帰還を祝うパーティーが開催された。
パーティー会場に俺が姿を表すとNPC達……いや、シモベ達が感動したような声をあげてくれたが、次に人間の姿に変身したアインズさんが姿を表すとシモベ達は驚きの声をあげた。
アインズさんが昨日俺が渡したアイテム、生者を騙る死者の首飾りの力で人間に変身したことを説明すると、アルベドとシャルティアとデミウルゴスとコキュートスが「これでお世継ぎが……」とか「子作りを……」とか何やらヒソヒソと話始めた。
何を話しているのか少し気になったが、俺の第六感が「この話は下手に関わると俺にまで飛び火する」と強い警告を出していたのでスルーすることにした。……よく分からないけど何だかごめん、アインズさん。
気がつけば俺は何故か心の中でアインズさんに謝罪していた。
それを除けばパーティーは非常に盛り上がって、こんなに楽しい一日は久しぶりだった。
……ただ、パーティーの途中でアルベドがクレマンティーヌを連れて会場から抜け出していたが、二人で一体何を話していたのだろう?
アルベドとクレマンティーヌの会話は次回書く予定です。