とある至高の四十一人の日記   作:兵庫人

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日記21+支配者とシモベ達の会話

【四十四日目】

 

 ……あ、ありのままに今起こった事を話すぜ。

 

 朝、自室で目を覚ますとソファーで眠っていた俺の体の上に、ベッドに入っていたはずのクレマンティーヌが眠っていた……! それも衣服を一切身につけていない裸でだ。

 

 寝ぼけていたとか、淫夢を見たとかそんなちゃちなものじゃない。もっと恐ろしい……。

 

 と、思わず馬鹿な事を考えてしまうくらいビックリする出来事が今日は朝からあった。

 

 何だか寝苦しいなと思って目を開けてみると全裸のクレマンティーヌの寝顔がドアップであって、突然の出来事に脳がフリーズしていると、目を覚ました彼女は「おはよー」といつも調子で挨拶をしてきた。

 

 ……え? 何で一緒に寝ていたの? 何で裸であれほど密着していて何でもないような顔をしているの?

 

 混乱する俺を余所にクレマンティーヌは自分の服を着るのだが、彼女は俺のすぐ側で着替えていて、その動きはとてもゆっくりとしたものだった。……まるで俺に見せつけるように。

 

 おかしい。

 

 今まで俺は何度も同じテントで野宿したり、同じ宿屋の部屋に泊まったりしたが、こんなエロゲーのようなイベントは一度も起きなかったぞ? 一体いつ俺はイベントのフラグを立てたというのだ?

 

 しかし実際にエロゲーのようなイベントが発生すると「彼女いない歴=人生」の俺は気が気でなく、なるべくクレマンティーヌを見ないようにして「昨日、アルベドと何を話した?」と必死にいつも通りの口調を保ちながら彼女に話しかけた。……ヘタレと言うなかれ。

 

 まあ、それはとにかく昨日アルベドがクレマンティーヌを呼び出した用件は、至高の四十一人……つまり俺の部下になった以上、無様な真似は許さない。もしそんなことをしたら守護者統括様直々に抹殺する、という非常にシンプルかつ物騒な忠告をする事だったらしい。

 

 アルベドってば本当に真面目だよな、と俺が思っているとクレマンティーヌはアルベドが忠告をした後での会話で「私はアインズ様一筋よ」と言っていたと教えてくれた。

 

 ……アレ? 確かナザリック地下大墳墓のNPC達の人格って、ユグドラシル時代の設定に準じているはずだよね?

 

 俺の記憶が間違っていなかったら、ユグドラシル時代に呼んだアルベドのバカ長い設定文には最後に「ちなみにビッチである」というあんまりすぎる一文が書かれていたはず。もしアルベドが設定通りの人格ならばそんな特定の人物、アインズさんだけを愛するようなことを言うのだろうか?

 

 少し気になったのでアインズさんに何か知っていないか聞いてみると、アインズさんは俺の質問に頭を抱えてしばらく悶えた後、懺悔でもするような声で説明をしてくれた。

 

 アインズさんの説明によるとアルベドの人格が少し設定と違う理由は彼にあるらしく、何でもユグドラシルのサービス終了日に彼女の設定文の「ちなみにビッチである」の部分を「モモンガを愛している」に変更したのだとか。

 

 説明を聞いて「何考えてんだ、このハゲ」と、思わず素で突っ込んだ俺は悪くないと思う。

 

 アインズさんは「はっ!? ハハハ、ハゲと違うわ!」と頭に手を当てて反論するがアンタ骸骨じゃん? 毛髪なんて一本も残っていないツルッパゲじゃん?

 

 それは置いといてアルベドの設定変更の件なんだが……俺はそれほど問題ではないと思う。

 

 と言うのもアルベドを設定したアインズ・ウール・ゴウンのギルドメンバーの一人、タブラさんはギャップ萌えの上にNTR属性を持つ方だったからだ。以前俺とペロロンチーノさんが好きなエロゲーヒロインの属性について話し合っていると、いつの間にかタブラさんが話の輪に入ってきてNTR属性について熱く語ったのは今となってはいい思い出である。

 

 そう言うとアインズさんは肩をガックリと落として「救われた気はしますけど、そういう話は聞きたくありませんでした……」とため息混じりに言葉を漏らした。……ですよねー。

 

 それからしばらくアインズさんと他愛のない雑談をしていると、突然この見た目骸骨のギルド長が「今日は各階層守護者達にクモエルさんのことをどう見ているか聞いてみようと思います」と言ってきた。……何で?

 

 理由を聞いてみると「NPC達が従っているのは完璧な支配者である至高の四十一人ですから、その期待が失望に変わると最悪反逆されるかもしれません。俺もNPC達が反逆するなんてこと考えたくもありませんが、万が一のために各階層守護者達がクモエルさんに対して懐いているイメージを知る必要があるんですよ」とアインズさんは言う。

 

 ……むぅ。正直あまり気が乗らないがアインズさんの言うことにも一理ある。ここは彼の言う通りにしておこう。

 

 アインズさんの提案に乗ることにした俺は、まず第六階層でクレマンティーヌに自主練を命じた後、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウンを使わずに隠密スキルをいくつも発動させながら自分の足で第十階層にある玉座の間に向かった。

 

 玉座の間にはすでにアインズさんと各階層守護者(ガルガンチュアとヴィクティムは除く)、そしてセバスが集まっており、わざわざ第六階層から隠密スキルを使いながら来た甲斐もあって、玉座の間に俺が来たことはアインズさん以外誰も気づいていなかった。

 

 そしていよいよ例の質問タイム。

 

 ……さて、NPC達は一体俺のことをどの様に見ているのだろうな?

 

 ☆

 

「全員、よく集まってくれた」

 

 ナザリック地下大墳墓の第十階層にある玉座の間でアインズは、ここ場に集まったガルガンチュアとヴィクティムを除く各階層守護者五名、そして守護者統括のアルベドと執事のセバスに感謝の言葉を投げかけた。

 

「皆に集まってもらったのは一つ聞きたいことがあったからだ」

 

「聞きたいこと……ですか?」

 

 早速本題を切り出したアインズにアルベドが首を傾げてここにいる全員を代表して訊ねる。

 

「そうだ。以前、私達がこの世界に来たばかりの頃、私はお前達に『私はどの様な存在か?』と聞いたな? 今日はそれに似た質問をしたいと思う。先日このナザリック地下大墳墓に帰還した我が盟友クモエルさん。……お前達にとって彼はどの様な存在だ?」

 

『……………』

 

 アインズの質問に彼以外のここに集まった全員が沈黙し、頭の中で自分の意見を整理する。そして数秒が経ったところで骸骨の姿をした支配者が再び口を開く。

 

「まずはシャルティア」

 

「クモエル様はアインズ様とはまた別の死と恐怖の体現者。影に、虚空に溶け込んだクモエル様のお姿を見つけることは私達守護者でも不可能であり、彼の御方の暗殺の美技は例え神ですら逃れることはできません」

 

 最初に答えることになったのはナザリック地下大墳墓の地下第一階層から第三階層を守護する少女の姿をした吸血鬼の真祖シャルティア。

 

 クモエルはユグドラシル時代、主に第一階層から第三階層でナザリック地下大墳墓に侵入してきた敵プレイヤーを撃退していた為、シャルティアは彼の戦いを……正確には彼が敵を倒した後の姿を何度か目にしたことがあった。

 

 敵が侵入してきたという報告を受けて迎撃に出ても現場に着いた時には戦いは終わっており、現場でした事と言えば「すでにこと切れて地面に倒れ伏している敵の屍と、隠密スキルで姿を消していくクモエルの姿を見ることだけ」という体験を何度もした事があるシャルティアは、ここにいる守護者達の中で一番クモエルの実力、恐ろしさを知っていた。

 

 さらにシャルティアはずっと昔、このナザリック地下大墳墓に「六大神」と「八欲王」と名乗る集団が攻め込んで来た日の出来事を思い出す。

 

 六大神と八欲王は何を思ったのか第ニ階層で同士討ちを始めた時にワールドアイテムを使用して神と無限を思わせる数の悪魔の軍勢を呼び出したのだが、その時にクモエルはたった一人で呼び出された神と悪魔の軍勢を従える魔神を速やかに暗殺して見せて、それを見たシャルティアは確信する。

 

 至高の四十一人こそが自分達の上に立つ絶対の支配者であると。

 

 ここにいるアインズが絶大なる魔法の力で万物を滅ぼす死神だとすれば、クモエルは磨き抜かれた暗殺の技で万物を殺す悪魔であると。

 

 そんなシャルティアの答えに満足したアインズは他の者達にも問いかける。

 

「コキュートス」

 

「我々トハ種類ノ違ウ『力』ヲ収メ、更ニソノ上ヲ常に目指シ続ケル求道者ト呼ブベキ方カト。純粋ナ戦闘デハ恐レ多クモ我々ガ上デショウガ、クモエル様ガ我々ヨリ強者デアルノハ疑イヨウノナイ事実デス」

 

 二足歩行の昆虫の姿をした守護者のコキュートスは、武人らしく冷静に自分達とクモエルの戦闘能力を分析して発言をする。

 

「アウラ、マーレ」

 

「敵が現れたらまず最初にご自分が戦いにいく、とても勇敢で頼もしい方です」

 

「で、でも僕達シモベの事を大切に思ってくれているとても慈悲深い方だと思います」

 

 ダークエルフの双子の守護者は自分達の感じたクモエルのイメージを簡潔に話す。

 

「デミウルゴス」

 

「ナザリック地下大墳墓を影より守ってきてくださった偉大なる御方。これまでこのナザリック地下大墳墓は何度も敵に攻め込まれましたが、その度にクモエル様は敵の首領を単身で討ち取り、防衛時での彼の御方の功績は計り知れません。まさにナザリック地下大墳墓の影の守護神と呼ぶに相応しいかと」

 

 ナザリック地下大墳墓の防衛時の指揮官である人間の姿をした悪魔の守護者は、クモエルが今まで撃退してきた侵入者の数を正確に思い出しながら意見を言う。

 

「セバス」

 

「アインズ様と共に我らを見放さず見守ってくれた慈悲深き御方。そして先日このナザリック地下大墳墓にご帰還なされたお姿は、他の至高の方々もいずれは帰ってくださるのではないか、という希望を私達に与えてくれました」

 

 アインズの執事として仕えている初老の男は、クモエルの帰還がナザリック地下大墳墓の者達に大きな希望を与えてくれたと言った。

 

「アルベド」

 

「アインズ様と並び、私達ナザリック地下大墳墓の者達を統べるに相応しき絶対なる支配者。このアルベド、アインズ様とクモエル様に永遠の忠誠を捧げることをここに誓います」

 

 守護者達の統括である絶世の美女はクモエルのことをアインズと並ぶナザリック地下大墳墓の支配者であると言い、同時に鬼気迫るほどの真剣な表情で忠誠を誓った。

 

 玉座の間に集まった者達のクモエルに対する評価はこれ以上なく高く、また言った本人達の表情も真剣なもので一片の嘘がない事が分かる。

 

(…………………………え? 何、あの高評価? あいつら、マジだ……!)

 

 そしてそれを隠密スキルで姿を消した状態で聞いていたクモエルは、柱の影から顔を出す体勢で絶句していた。

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