【五日目】
夜も明けたので早速エ・ランテルに出発……と言いたいところなのだが、その前にやることが一つ。
俺の今の姿ではエ・ランテルの人達にモンスターに間違われるかもしれないので、怪しまれないように変装をしなければならない。もう二日前のように不幸な事故で大量殺人なんてしたくないので変装はしっかりとしないとな。
そんな訳でスキル「人化の術」発動。
人化の術というのはギュウキの種族レベルを上げることで習得できる種族スキルで、人間のみと対象は限られるが最大で二十四時間の間、自分の姿を変化させるスキルである。
俺は草むらの中で人化の術を使って人間に変身すると、人間時に使用する装備をアイテムボックスから取り出して装備をする。
変身をした俺の外見は黒目黒髪の二十代後半くらいの男で、服装は上下黒のシャツとズボンの上にフード付きのマントを羽織り、未知の文字を解読する魔法の眼鏡をかけたというもの。外見のイメージは「今まで人の来ない土地で研究をしていたが最近になって見聞を広めるための旅に出た魔術師」でまとめてみました。
俺はムシツカイのクラスを10レベルほど取ってあるので蟲関係の召喚に特化した特殊な召喚術師という設定でなんとかなるだろう。ユグドラシルでもそんな設定だったはずだし。
それでこの姿の時の名前は……そうだな、「クモ」エルから「スパイダー」とでも名乗ろう。安直すぎるかもしれないが、これくらい分かりやすかったらいきなり名前を聞かれてもすぐに答えられるはずだ。
こうして変装が完了した俺は無事にエ・ランテルに入ることができたのだが……そこにいる人達を見て思わず驚いた。何故ならば、エ・ランテルの人達の頭上に不気味なドクロのマークと【100%殺せるデス】という不吉なメッセージが浮かんでいたからだ。
こ、これはもしかして俺が持っているスキルの一つ「死神の観察眼」の効果なのか?
死神の観察眼というのは即死攻撃を仕掛けたときに、その相手にどれくらいの確率で通用するのかを教えてくれるパッシブスキルで、そう考えるとあのドクロのマークや不吉なメッセージにも見覚えがあった。
二日前は気付かなかったが、もしかしたら俺が殺してしまったあの団体の人達にもこのドクロのマークとメッセージが浮かんでいたのだろうか?
……何となくだけど凄くイヤだな、これ。
【六日目】
朝、泊まった宿屋の近くの酒場で朝食をとっていると、鎧を着て武装したガラの悪そうな男達にからまれた。
どうやら男達の目的は俺が着ている服らしく、何でも俺が着ている服はこの辺りでは滅多に見られない高級品なんだとか。
……変だな? 俺が今着ている服はこの姿に変身した時だけ着る性能もレア度も低い衣装アイテムのはずなんだが?
まあ、それはともかく。街中でほとんど追いはぎ同然の真似をしてくるこの男達をどうしようかと考えていると、別の鎧を着て武装した四人の集団が現れてガラの悪い男達を追い払ってくれた。
俺は新しく現れた四人の集団に礼を言ってから詳しいことを聞いてみると、彼らは「漆黒の剣」という冒険者のパーティーらしい。
へぇ、この世界には冒険者とう職業があるのか。うん、確かにこんなファンタジーRPGみたいな異世界だったら冒険者は定番だよね。
漆黒の剣の人達は全員親切な人達で、俺が旅に出たばかりで一般常識に疎いと言うとそれをあっさりと信じてくれて色々な事を教えてくれた。これは非常にありがたく大変助かったのだが、ここで気になる点が一つ……。
死神の観察眼が常時発動している俺の目には漆黒の剣の人達の頭上にもドクロのマークと不吉なメッセージが見えるのだが、彼らのは他の人達とはメッセージの内容が異なっていたのだ。その内容とは……。
【コイツ、十日以内に死ぬデス。殺すまでもねーデス】
そんなメッセージが漆黒の剣の人達全員の頭上に浮かんでいた。
……え? 死神の観察眼って、死期が近い人が分かるの?
てゆーか、内容の割りにメッセージの感じ軽くない?
というかこの人達、十日以内に死んじゃうの?
……マジで?