百万大図書館   作:凸凹セカンド

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貸本屋、合流する

 

 

 

 

「店長、これ連絡先です」

 ムーディは電話番号の書かれた紙切れをシェスカに手渡す。肩には旅行鞄が提げられており、10日間という休暇を有意義に使う気満々であることが伺える。

「誰?この番号」

「あ、知人の番号です。そいつにかけてもらえば俺に繋がります」

「うん、わかった。まあ、別に連絡することないと思うけど」

「携帯いりますかねぇ」

「必要性を感じないわ」

 基本的にシェスカは引き篭もりで店から出ないし、ムーディは半端ではない量の仕事をしているので、こんなときでなければ外出などしない。外にいる人間と連絡がとりたいなら、店舗の電話で事足りた。

「鍵閉め終わったわよ」

 貸本屋二人が視線を寄越すと、ビスケットが腰に手を当てて店舗の入り口を指差した。店舗の扉には、「お休みします。開店は10日後…百万図書」という張り紙が申し訳程度に張ってあり、普通の南京錠と、神字の刻まれた鍵も取り付けてある。これで「一般人」と「そうでない」者の侵入を防いでいる。壁一面いたるところに希少な蔵書が眠る店舗に穴を開けて侵入する者は少ないだろうということで、とりあえず入り口を塞いでいる。住居側の入り口も同様に鍵を掛け、そのほかトラップもしかけている。とりあえず、留守の間はこの仕様で不埒者を撃退するつもりでいた。もし仮に侵入を果たし、蔵書が盗難にあったとしても、残念ならが価値ある書物は基本的にシェスカの念能力による産物であるので、7日間で消失してしまうためそれほどの痛手をおうことはない。

「ありがとう、ビスケ」

「ま、これくらいはどうってことないわさ」

 ビスケットとしては、今後のためにもここで好感を残しておきたいので、神字を刻む行為も二つ返事で了承した。

 これが有効とわかれば、引き篭もりとワーカーホリックも少しは外に出るかもしれないという母性的な発想が影にはあるのだが、勿論そんなことはおくびにも出さない。

「ルシルフル」

「こっちはいつでも」

 セミフォーマルな格好をしたクロロは、特に荷物もないようで片手をあげて応えた。実は財布さえもっていない。必要なら奪う、とまさに盗賊の鑑のような男である。

「じゃ、いってくるわ」

「はい、気をつけて」

 

 

 

 

 

 貸本屋、合流する

 

 

 

 

 ハンター最終試験は、多少最初の1戦で時間がとられたものの、滞りなく進んでいた。ゴンVSハンゾーは、ハンゾーが負けを宣言することでゴンの勝利が確定し、次の勝負へと移行した。

 第2試合、クラピカVSヒソカ。この試合ではヒソカが何事かクラピカに囁き、その後ヒソカが負けを宣言し、クラピカの勝利に終る。

 第3試合、ハンゾーVSポックル。この試合は、第1試合のゴン戦を観戦していたポックルがハンゾーの脅しに屈し、負けを宣言。ハンゾーの勝利となる。

 第4試合、ヒソカVSボドロ。一方的なワンサイドゲームになっていたが、この試合でもヒソカが何事か囁き、その後ボトロが負けを宣言し、ヒソカの勝利となる。

 第5試合、キルアVSポックル。キルアが開始と同時に戦線離脱、ポックルの勝利となる。

 第6試合、ディルムッドVSレオリオ。この試合に関しては、レオリオが、この試合が終った後に控えるボドロのため、彼の怪我を理由に後回しにして欲しいと要求。これをディルムッドも了承、委員会も認めたため、ディルムッドVSレオリオは、ギタラクルVSキルアの試合の後に開始されることとなった。

 

 

 

「久しぶりだね、キル」

「あ、兄…貴!」

 ギタラクルの顔から鋲が一本一本抜けていくと、そこには先ほどとはまったくの別人としかいいようのない黒髪の青年が立っていた。

 彼等はキルアの言葉通りなら兄弟であり、殺し屋なのだという。

 キルアと長時間行動をともにしていたレオリオとクラピカは、彼等の家業を承知しているらしい。その職業を聞いても目立った困惑は見られない。

 暗殺者で、一家でそれを生業にしていると聞き、ディルムッドの秀麗な顔が歪む。

「失礼」

 距離を縮め、次の対戦相手であるレオリオに声をかけると、レオリオは視線をディルムッドへ向けた。怪訝な表情ではあるが、特に邪険にするでもなく「なんだ?」と聞き返す。

 このとき、密かにギタラクル―――イルミが身構えたのを、ネテロとヒソカは見逃さなかった。

「彼等の家名を知っていたら教えて欲しい」

「あ?ゾルディックだろ。有名らしいぜ」

「――――――ほう」

 

 瞬間。

 

 室内の空気は確かに凍りついた。

 イルミによる徹底的な教育により「勝ち目のない敵とは戦うな」と言い聞かせられたキルアなどは、可哀想なほどに怯えていた。何故なら、部屋を凍りつかせた絶対零度のその気配は、明らかに試験中の2人に向かって放たれたものであるからだ。

 

「…貴様等、よくもこの俺の前に出てこれたな…舐めているのか?」

「…『彼』から説明があったんじゃないの?俺たちはビジネスで暗殺を請けてる。君の主人に手を出すことはもうないよ」

「主を襲った事実には変わりはない。危険の芽があるとするならば、それを排除するのは当然の役目」

「えー…困ったな、どういえば信じてくれるわけ?うちとしては、勝算のない殺しはしないんだけど?」

「信じる?面白いことを言うな、暗殺者。主の命を奪おうという輩の言葉に耳を傾ける者がどこにいる?」

 

 ミシリ。

 

 と、確かに部屋の空気が軋む。2人にだけは理解できる話に置いていかれた周りは見守ることしかできない。それでも、圧迫する空気は彼等の意識を蝕む。それを向けられているわけでもないのに肌が粟立つというのに、濃密な殺意の本流は、中央にいる兄弟2人に向けられている。平然な顔をしているがその実高速でなんとか切り抜けようと考えるイルミと、それどころではないキルア。特に、念能力を習得しておらず、事情が理解できないキルアは混乱の極みで足ががくがくと震え、顔色は蒼白となっていた。

 

「昂ぶっているところまこと恐縮じゃがのう、今彼等に危害を加えれば試験失格になるぞ?この場合はお主の私情による試合の干渉になるので、失格になるのは当然お主じゃ――――その主人の命でここにきているのではなかったかの?」

 

 絶対零度の空間の中で、ネテロの言葉が室内全員に届く。その言葉を理解すると、じわりと温かみが広がるように感じるのは、そのカリスマ故か。

 無意識に息を詰めていたものたちが、はっ、っと呼吸を再開させる。

 ゴンのときとは違い、圧倒的に敗戦色の強い試合に手を出すのではなく、あくまで私生活の中であった事情による介入は、試合をしている二人ではなくディルムッド自身の過失となる。

 

 ディルムッドの怒れる琥珀の双眸がネテロを射抜いた。イルミとの間に割り込まれたからではない。事情も知らない第3者に主人のことを話題に出されたのが、今の彼には不愉快だったのだ。

 数拍の沈黙ののち、ディルムッドはゆっくりと目を伏せた。体を壁に密着させ、何事も無かったかのように腕を組む。

 空気が幾分か和らいだ。しかし、目線を上げたその双眸の苛烈さはなりを潜めてはいない。彼がまだ、煮えたぎる激情を抱えていることは誰の目にも明らかだった。

 兄のほうはまだ耐性があるとして、弟のほうは限界に近いのか、冷や汗が止まらず握り締めた拳の強さが、彼がいかに我慢を強いられているかを物語っていた。

 

「24番。やめろ(・・・)

 

 この状態のディルムッドに声をかけられるとすれば、それは彼の主人くらいしかいないものだと思われた。しかし、硬い声のそれは、彼の真横から聞こえた。

 

「……」

 

 403番、レオリオ。

 ディルムッドより微かに高い身長の彼は、不機嫌さを隠しもしないでなお続ける。

 

「キルアは確かにゾルディックっていう暗殺一家なんだとよ。でもあいつは暗殺嫌なんだと!自由になりたいんだと!どうやら事情知ってるのはあっちの猫目の兄貴のほうみたいじゃねぇか、12歳になったばっかの餓鬼に難癖つけんのやめろ」

 

 恐怖を感じないといえばそれは嘘になる。

 レオリオからすれば、良識のあるように見えるディルムッドは、しかし実力だけでいえばヒソカと同等ほどとみていた。そんな実力者に、自分が勝てるとは思えない。しかし、レオリオには言わないという選択肢はなかった。嫌というほど時間のあったトリックタワーで彼の話は聞いた。いくら暗殺一家期待の三男で、元暗殺者といっても、今のキルアは明らかに怯えていた。そして理解していない様子だった。

 レオリオにとって、キルアはもう仲間だった。彼にとって力の及ぶ限り手を貸すべき友人だった。

 そして、彼の恩人で仲間であるゴンと同じ、まだ12歳の子供だった。

 

 ディルムッドは微かに目を開いてレオリオを見た。

 後ろではレオリオの行動を見送ったクラピカも、呆然としていた。

 クラピカもディルムッドに言いたいことはあった。彼にとってもキルアは仲間である。様子からしてキルアは何も知らない可能性があることを理解した。しかし、どういっていいものか考えあぐねいていたのだが。

 自分の感情で走ることがあるとは思っていたが。彼はいい意味で、レオリオの凄さに賞賛を送った。

 そして、ディルムッドもまた同じ気持ちを抱いた。

 

「…そうか。そうだな…確かに俺の落ち度もある。…謝罪しよう、そっちの99番にだけな。これからの試合に俺は一切干渉しない」

 

 ディルムッドは恥じいるように目を伏せると、キルアに向けてのみ口頭での謝罪を口にした。その雰囲気は、通常の彼の雰囲気に戻っていた。

 

 キルアは緩んだ空気に力の入った体を弛緩させる。

 それを見たレオリオは「なんだこいつ、話したらわかるじゃねぇか」とディルムッドの評価を修正した。

 

「…いい友人に恵まれたものだな」

 

 ぽつりと零した言葉が、まさかこの試験に更なる波紋を呼ぶとは、彼は思いもしなかった。

 

 

 

 

 

「レオリオ氏VSディルムッド氏の試合は、圧倒的な実力差を感じたレオリオ氏が床に押さえつけられ、右腕を締め上げられたところでレオリオ氏が負けを宣言。ディルムッド氏の合格が確定しました。それから持ち越しされていたレオリオ氏VSボドロ氏の試合開始と同時に――――…キルア氏は、ボドロ氏を殺害。委員会は彼を不合格とみなしました」

 

 

 サトツは、ゴンに試験の顛末を語った。

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 

「冷や汗ものじゃったよ、ビスケ」

「そりゃご愁傷様。あたしも今はまだ無事だけど、これからどうなるかわかんないわさ。なんせ彼の逆鱗連れてきたわけだし。あとはあの能天気書痴が上手く制御してくれるのを期待するしかないわね」

「まったく…カリスマ☆会長とは辛いものじゃのう」

「☆とか付けるな、腹が立つから」

「ところでその『ご主人様』は今どこかのう?」

「その言い方、彼に聞かれないようにして欲しいわさ。多分本気で怒る……そこの窓から見えるわ…茶髪の女が黒髪の男とソファーに座ってるでしょ」

 

 会長ネテロは、最終試験会場まで赴いたビスケットと対面し、噂の『逆鱗』の所在を尋ねる。

 今試験に関わったハンターが集まる中2階のレクリエーション室の窓から覗き込むと、1階のロビーの様子がよく見える。

 エントランスロビーの、室内用樹木の隣にある大人が三人座っても余裕のありそうなソファーに、男女二人が腰掛けていた。

 一人は、電話をしているようで、額にバンダナを巻いた黒髪の男。

 一人は、黙々と本を読みふけっている、茶髪の女。

 ネテロは二人を観察し、まず黒髪の男の見事な纏に感心し、茶髪の女の見事な双丘にだらしなく目元を垂らした。

 ギロリ、と隣で直弟子に睨まれなければ、軽く10分は観察していたかもしれない。

 ゴホン、と誤魔化すように咳払いをする。ビスケットの絶対零度の視線がいやに痛かった。視線を鋭くしていたビスケットは、思い出したかのように掌を打った。

「それはそうと、念習得の合格者には話はし終わったの?」

「ほ?終っとるよ?それがどうした?」

「彼はどうするの。念を習得してようがしてまいがはっきり言ってあまり意味のない人だわよ」

「そうなんじゃよ…一応裏試験合格に『念』の習得は必須事項なのじゃが……彼、習得しとらんが見えとるんじゃろ?」

「ええ、はじめてあったときからわかってたみたい」

 

 ふたりの師弟は「あーっ…」とまったく同じ所作で天を仰いだ。

 

「無意識に『凝』みたいなことをしとるってことじゃろ?……もういんじゃね?」

「同感…一応委員会で話し合ったほうがいいとは思うけど…激しく同感」

 

 実際は違和感に対処しているだけだが、あまりに正確な彼の動作に、二人は彼が『見えている』ものと思ったのだ。

 一応部屋に集まったプロハンター達に視線を寄越すが、誰も彼も特に異議はないようである。特に、トリックタワーの監視カメラで2人の戦闘を見ていたリッポーは顔色が悪い。

 2次試験官メンチは、体をもじもじと落ち着き無く動かし、言おうか言わないでおくか、考えあぐねいている様子が手に取るようにわかる。

「メンチくん、どうしたかね?」

 意地は悪いが、おっぱい大きい女性が大好きなネテロはひげを弄りながらメンチに声をかけた。

 メンチは、微かに逡巡したあと、躊躇いがちに「主人」と「24番」がどうしてそう注目されているかを口にした。

 

「どこの誰か知らないけど、あれだけの実力者が副会長派に味方についたらどうしようとか、栓のないこといってあたしの手を煩わせたのよ。全く!こっちから言わせるならディルムッドがあいつ…シェスカ以外の人間に傾倒するわけないわさ!……んん?あーっ…ほら…丁度再会を…『ズガアァァァン』……再会した途端かよ」

 

 さすがディルムッド歪みない。ビスケットの真顔に試験官たちは引いた。

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 クロロは高速で上体を前に屈めた。

 チッ、と髪が何かを掠めると同時に、轟音が響く。

 

「―――…チッ」

「舌打ち!?舌打ちした今!?殺す気満々!?」

 

 クロロの後方。

 白い壁に轟音を立てて黄色い(・・・)槍が突き刺さっている。

 あと少し前に屈むのが遅かったら、クロロの顔に黄色い(・・・)槍が突き刺さっていたことだろう。

 

「何それスプラッタ」

 

 隣に座って本を読みふけっていたシェスカは、その事実に気付くと思わず呟いた。相変わらず突っ込みどころに問題ありである。

 

「盗人…貴様…貴様貴様貴様ァ!主をこのような場所に連れてくるとはどういうつもりだ!いや、言い訳はいい、聞かない。聞かないからとりあえず殺させろ。それで許す」

「殺されて許すってめちゃくちゃすぎるだろ!?」

「電話をしても出ないと思ったら、貴様が連れ歩いていたのだろう!主を危険に晒すとは、やはり貴様に護衛としての意識はないらしい。よし、死ね」

「嫌だこいつ全然俺の話聞く気ないよ!?」

「常識的なことを口にしようとしているようだが、まず俺は貴様に常識を求めていないから大丈夫だ」

「どの辺が大丈夫なの!?」

 

 ひゅん、と布に包まれた長い方の獲物を回し、いつでも突撃できる体制をとっているディルムッド。

 はっきりいえば八つ当たりだと思われるが、勿論彼が試験中にどんな目にあったか、クロロは知らない。

「シェ…シェスカ!」

 隣の唯一の制御装置に助けを求める。怖すぎて視線を逸らすことができないので、手探りで彼女の手を握る。ディルムッドの双眸が怪しい光をたたえる。

 シェスカは半眼でクロロを見た。

 そして過去を振り返る。

 まあ、借りの分仕事はしてくれたかな、という結論に達した。今の状況は、それ以上にホテル側に迷惑だろうと、クロロの身よりホテルを取った。酷い。

 

「ディルムッド」

「はい、シェスカ様」

 

 先ほどまでクロロに相対していたときには考えられない変わり身の早さで、シェスカに向き直る。

 これで彼等の間に色恋がまったくないというのだから、クロロには彼等の関係は理解し難いものだった。

 

「試験は?」

「はい、問題…なく」

 

 微かに間があったが、ディルムッドは手渡されたばかりのライセンスカードをシェスカに手渡した。

 シェスカはそれを手に取るとしげしげと眺め、感触を確かめたりしている。

 

「普通ね」

「セキュリティは半端ないらしいよ」

 

 シャルナークもライセンスを所持しているため、クロロは彼等よりライセンスに対する知識はある。

 一見普通のカードだが、それ自体に偽造防止のためのあらゆる最高技術が施されている。

 

「…そう」

 

 カードを返すと、周りを見渡した。もの凄い注目を集めるかと思いきや、ハンター協会が配慮したのか、囲んでいるものは『念』の気配があるものばかり。

 その中で、ぞくり、と背筋を粟立たせる感覚に、思わず視線を寄越す。

 

「……ピエロ?」

「…ヒソカ」

 

 そこにいたのは、にたりと微笑む、奇術師。

 思わず呟いたシェスカの視線を追ったクロロとディルムッドの眉間に皺がよる。

 

「知り合いか盗人。縁を切ったほうがいいと忠告できるレベルだぞ。ちなみに俺は貴様とも縁を切りたい」

「……あーあー…」

「あ、お仲間?」

「盗人、店の敷居を跨ぐな。2度とだ」

 

 今試験に彼等の仲間が参加しているという言葉を思い出したシェスカは、半眼でクロロを見たが、クロロの表情がディルムッドと良く似たようになっているのを見てなんだか可哀想になった。

 どうやら見ているだけで手を出してこないようなので、とっととビスケットと合流して店に帰ろう、と腰を上げる。

 

「ビスケと合流して帰りましょ」

「…主をここに呼んだのは彼女でしたか」

「どういう理由か知らないけど」

 

 肩を竦めるシェスカに、ディルムッドの表情が曇る。

 クロロに手を上げるのに躊躇いはないが、ビスケットは昔から世話になった知人だ。主を危険な目に合わせたという事実は憤慨するところだが、クロロのように簡単に槍を向けられる相手ではない。

 それに、考えようによっては、クロロとビスケットの二人がいると考えれば、確かにシェスカの身に及ぶ危険度は下がる。

 だからといって、一言も苦言を口にしないことはできないが。

 

「あ、そうだそうだ。そのビスケにやれっていわれたことがあったのよ…」

「はぁ…」

「うーん…恥ずかしい…やる意味もわからないけど…仕方ないか」

「主?」

「ディルムッド」

 

 シェスカの碧眼が琥珀の双眸に向き直る。ディルムッドは間をおかず姿勢を正した。

 

 

 

「良くぞ使命を遂行してくれました。嬉しく思います。流石は我が騎士。貴方は私の誉れです。これからもともに頑張りましょう」

 

 

 そういって、彼女は微かに微笑んだ。

 

 

 

 




オスカー女優!主人公!

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