百万大図書館   作:凸凹セカンド

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触媒にはパンがいいそうだ。孔明もおまけできたらしいぞ(朝パンぱくー)


感想ありがとうございます(ぺこぺこ)励みになります!( ;∀;)
みんな「おとなしくしとけお前は(意訳)」しか言ってなくて笑ってしまった。
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たくさんの感想ありがとうございます!

あと、課金は食費まで、家賃に手を出したらあかんで?(´・ω・`)


9月3日

 

 

 

 クロロ・ルシルフルには幾つかの懸念がある。

 ひとつは、鎖野郎に捕らわれた旅団員のウボォーギンが連絡を絶ち、帰ってきていないこと。シャルナークが調べ上げた内容は、ハンター証を使用しなければ利用できないサイトで得た信頼の厚い情報だ。となれば、鎖野郎の足取りは掴めたようなものだし、時間的に戻ってきてもおかしくはない。であるのにも関わらず結局ウボォーギンは夜が明けても戻ってくることはなかった。この時点で、クロロは彼の身に最悪の事態が起こったことを想定した。

 もうひとつは、旅団がアジトに使っている廃ビルの一室に軟禁しているムーディ(ばかたれ)

 馬鹿だし阿保だし考えなしだが、放っておくことができない。その場に放置することも、すぐに返すことも、そのすべての手段が最良と言い難い。ウボォーギンが戻ってきていたならば秘密裏に彼女に連絡を取ってもよかったのだが、不確定要素が多すぎる現段階ではそれもいい手とは言い辛い。せめて鎖野郎の情報が欲しい。

 身内にも手癖の悪い男がいる。(ヒソカ)の好みとはかけ離れた軟弱、貧弱、脆弱の三弱を冠するようなムーディだが、槍騎士(ディルムッド)を誘き寄せる撒き餌としてはそう弱くはない。強者との戦闘をこよなく愛するあの男が、興味でも持って調べられると面倒だ。

 ちなみにジルブレッドとかいう小物の情報はすでに揃っているが、これはあえて放置している。この情報を彼女に渡したら、一体どんな反応をするのか。興味深くはあった。

 

 現時点の優先順位はウボォーギンの行方と鎖野郎の情報を集めること。旅団員を用心のために二人組(ツーマンセル)で行動させ、待機組と捜索組に分ける。クロロにはやることがあったため、アジトには初日にムーディの対応をしたシズクと何人かを残し、夜明けとともに行動を開始した。

 

 

 

 

 

 ***

 

 

 

 午前11時。

 貸本屋「百万図書」の出入り口で開店するのを待っていた常連客たちは、いつもへらへらと締まりなく笑いながら顔を出す平凡顔のムーディではなく、朝から輝かんばかりの美貌を振りまく美丈夫が扉を開けたため、眩しそうに眼を細めた。「あ、あいつ休暇中だった」と思い出し普段通りに入口にはいってすぐ四方に散開した。

 しかし、いざ貸本を手に番台に近づくと、足を止めて目をこすった。

 基本的に午前中出勤がありえないはずの女主人が、番台に座っている。しかも、苛立ちを隠しもせず、ワインレッド色の小型携帯電話を机上で何度も置いては手に持ちまた机上に戻すという行動を繰り返しているではないか。起きて身なりを整えた後は、活字の海に沈むのがルーティンの彼女が、本を抱えていなことに、常連客はことの重大さに気付いた。

 

「……帰ったほうがいいな。これは嵐がくるぞ」

世紀末(ノストラダムス)…!!」

「折角だが、俺はこの扉を潜って帰るぜっ!!」

「冒険はしない!命あっての物種だ!」

「というか、おい!ディルムッド」

 

 言いたい放題。

 まさに言いたい放題だ。

 基本的に群れることのない極度の愛書狂(ビブリオマニア)の集団であるが、ひとたび結束すると妙な団結力を発揮する。

 そのうちの一人が、滅多に水を向けない美丈夫に嫌そうに声を掛けた。嫉妬ではない。嫉妬では。

 

「なんだ」

「なんだじゃねーよ、相変わらず客商売する気のねー奴等だな!もう今日閉めろよ、あんな状態のあいつをあそこに座らせていたって、誰も借りる気しねーぞ」

「この貸本屋周辺で起こる珍事件より珍事」

「怖い、怖すぎる。仕事をしてるような気がした(・・・・)先日より怖い。圧倒的恐怖」

 

 貴様ら…と言いかけて、ディルムッドは口を閉じた。割と客の目が本気だったし、彼だとて、今の彼女を放っておくことはしたくはなかったのだ。店を開けたのは彼女がそう命じたからだ。

「なんてことないわ、ムーディ(あいつ)がいないだけよ。そうね、どうせ旅行が楽しくて連絡するのを忘れてるだけよね…今夜帰ってくるわよ」

 まるで言い聞かせるように、ディルムッドにそう命じた。

 二泊三日。貸本屋「百万図書」からすれば長期休暇になるこの三日間、ムーディから連絡があったのは、初日に無事空港に着いたという旨と、今から友人と遊んで回るといって露店の写真を添付したメールを送ってきただけだった。旅行が楽しくて無心で遊びまわっているだけならそれでいい。初めてのヨークシンシティの時は連絡手段を持っていなかったので仕方ないとして、現時点では三人ともそれぞれ携帯電話を所有している。彼の性格上、旅先の写真をいくつか送りつけてくるものだと思っていたのに、それがない。試しに、ディルムッドがメールを送ってみたが、返答はなかった。

 ヨークシンシティには、いい思い出はない。杞憂ならばいい。無事帰ってくるのなら、それ以上は望まない。

 

「早く連絡ぐらい寄越しなさいよ…」

 

 シェスカ達は、タクシーを走らせ空港まで来ていた。ディルムッドはその魔貌を隠すために、帽子とサングラスをかけている。

 結局夜も更け、帰宅予定時間を過ぎても、ムーディは帰ってこなかった。

 

「…何かあったのかしら」

「…やはり、電話にも出ませんね」

「…ヨークシン行の最終便はまだ残ってたかしらね」

「……21時の夜間便が最終ですね、空席の確認をしてきましょうか」

「お願い」

 

 軽く頭を下げてカウンターに迎うディルムッドを見送ると、シェスカは苛立ちのままに、親指の爪を強く噛んだ。

 ヨークシンシティが御綺麗な観光地ではないと知っている。知っていたのに、この様だ。

 わかっているつもりでわかっていなかった。長い間危険とは無縁の生活を送ってきたために、危機感が欠如していた。自らの迂闊さに臍を噛む思いだった。

 天井に取り付けられた電光掲示板を見上げる。ヨークシン発の別便の横にはすでに「到着済み」の明かりが灯っている。間違ってこれに乗って帰ってきていやしないかと、視線を搭乗口に向けるが、降りてくる乗客の中に見知った阿保面はいない。

 

「シェスカ様、お待たせしました。空席ありで、すぐ乗れます」

「行きましょう」

 

 用意も何もしていなかったが、決断は早かった。

 ディルムッドがハンター証を持っているため、特別な手続きをすることなく手早く飛行船に乗り込むことができた。ありがたいことに個室である。

 もしここで顔を見せろと指示されたら、騒ぎになって発進に遅れが出てしまう。それは避けたい。行方不明、と早々に決めつけてしまうのも危険ではあるが、もし仮にそうであった場合、時間経過によって生存率が大きく変わる。こういう場合早ければ早いほどいい。

 携帯電話を取り出したシェスカは、履歴を呼び出す。掛けたのはムーディではなく「あ、もしもし、ビスケ?」知己のハンター。

 

「今どこにいるの?え、ヨークシン。そう…それは好都合だわ」

『なんだわさ、いきなり』

「ヨークシンでムーディの馬鹿が行方不明なの。今私もそっちに向かってるわ」

『……どこに行ったか目星は?』

「わからないわ、知人と観光してくる。とだけ」

『……ふーん…いいわ。かしいち(・・・・)よ、こっちでも調べてあげる』

「ありがとう」

 

 ビスケット・クルーガーは、ハンター歴の長い凄腕の念能力者だ。それ故に、彼女独自の情報網を持っている。現地に彼女がいたことは僥倖だ。基本的に引きこもりの貸本屋一行には、こういった情報戦に滅法向いていなかった。

 「はあ」疲れ切ったため息が出た。

 こんなに長い時間読書をしなかったのは初めてだ。それなのに、三大欲求よりも強かった読書欲が鳴りを潜めている。

 

「私も人間だったのね」

 

 すっかり参ってしまっている主を気遣い、ディルムッドが備え付けの茶器に手を伸ばす。電子ケトルに水を溜めようと持ち上げると、彼のポケットが震えた。

 急いで、電話を取り出すと、そこには「非通知」の文字。

 

「……もしもし」

 

 

 

 

 

 

 ****

 

 

 

 

 壁が破壊された。

 

 あ、ありのまま今起こったことを話すぜ!俺は扉が一つしかない10畳ほどの部屋に軟禁されていた。だが、いつの間にか壁に人ひとりくらい通れるほどの穴が出現したんだ。な…何を言ってるのかわからねーと思うが…俺も何が起きたのかさっぱりわからないんだ…頭がどうにかなりそうだ…催眠術だとか超スピードだとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。

 

 つまり、物理。

 

 薄暗い部屋で体を丸めて過ごしていたら、突然大きな音が響いた。それも、何回も。壁の向こうでのことだとはすぐにわかったけれど、それがどんどん近づいてきて、怖くなったので慌てて火を消し、毛布を頭から被り、息をひそめて隅に身を寄せた。

 

 破砕音。

 

 大きな穴がぽっかりと。

 その向こうには、人影が見えた。思わず、息を止める。

 人影はそのまま侵入してくることなく、隣の部屋に引っ込んだ。それから少しして、また誰かが入ってきたがこちらに一瞥をくれるだけ。

 

「キルアッ!!いるか!?」

「ああ、いるぜ」

 

 意外なことに、建物に響いたのはまだ変声期の来ていない高い子供の声。

 部屋に入ってきた背の高い人影は、舌打ちすると重い金属扉を蹴破って屋外に飛び出してしまった。

 怒涛の展開に体が震える。

 先ほどの背の高い人影の舌打ちが本当なら、あの穴をあけたのは、あの声の…子供の仕業なのか。世の中には、凄い人がたくさんいるとは思ってはいた。自分の同僚なんてそのもっともたる存在なのだが、まさか子供が壁を粉砕するなんて。そんな思ってもみないだろう。ゴリラにでも育てられたのか?

 はらはらどきどき、心臓が煩いぐらいに鳴っているし、息が荒くなる。

 どのくらいその場でそうしていたのかはわからない。

 10分?1時間?もしくはそれ以上?

 深と静まりかえった建物の中は、人の気配が感じられない。

 想像の中の店長が「いいから黙って座ってろ」と眉根を寄せて渋面を作っているが、どうしても好奇心に負けて、そろそろと扉(がかつてあった場所)まで身を寄せる。

 

「…あ、もしかして…これも囮かっっ!!!」

 

 入口に近づいた途端、男の叫び声。苛立った様子で「畜生っ!」と吠える。

 怖くなって、扉から離れ定位置に戻る。

 階段を降りる音が聞こえた。

 じっと耳を澄ませるが、それ以降何も聞こえてこない。

 

 嚥下した自分の唾液の音が随分大きく聞こえた。

 

 そろそろと忍び足で、廊下へ歩を進める。

 

 

 振り返った建物は5階建ての廃ビルで、同じような作りの建物が他に何棟か建っていた。

 先ほど怒声を上げた男の姿は結局見えず、びくびくとおっかなびっくり階段を下りて外に出てみたが、鉢合わせすることはなかった。もしかしたら、忘れられているんだろうか?そんな馬鹿な。

 けれども、好都合だ。

 何とかして人通りのあるところまでいかなければ。

 頭から毛布をかぶり、時折周りを警戒しながら、ようやくハイウェイまで出る。すでにへとへとだったが、気力を振り絞り街の明かりを目指す。

 

「ヒッチハイク…そうだ、ヒッチハイクだめかな?誰か通らないかな?」

 

 望み薄と知りながらも道路わきで毛布をバタつかせていると、奇跡的に気のいいトラックの運転手が街まで乗せてくれた。

 

「なんだ、金まで盗られたのか?そりゃ災難だったな。まあでも命があってよかったじゃねぇか」

「ええ、まったくです。取りあえず上司に連絡とります」

「電話代くらいならやるよ、ほら」

「うわーん!ありがとう運ちゃん!」

 

 完全にでっち上げの嘘を運転手は信じてくれた。心が痛んだが、警察でもない彼に話して巻き込んだりしても嫌だ。いい人だからこそ、余計に。

 あっという間に、ヨークシンシティの都市部に到着した。歩きだったら何時間かかるかわかったもんじゃない。

 運転手に礼をいい、今では珍しくなったボックス型の電話機を探す。

 10分ほど歩きまわると、緑色のそれを発見した。

 

「どっちにかけよう」

 

 受話器を上げて、はたっと悩む。電話番号は覚えているが、上司である店長か、腕っぷしの立つ同僚か。

 

「あ、電話は…でないだろうしな」

 

 上司が電話に出ているところをまっっったく想像できなかったので、同僚の電話番号を間違えないようにプッシュ。

 

 2回のコール音。

 

『……もしもし』

「あっ、ディルムッドさーん!ムーディです!」

『無事かッ!!!』

「え、なんで」

 

 実は結構大事(おおごと)になってるなんて、知る由もなく。

 

 

 

 

 




 旅団「なぜかマフィアは動きを止めたし、ノブナガ一人で大丈夫やろ」
 ノブ「むっきー!二人とも逃がさないんご!探すんご!」
 店員「ラッキー」


 

 



 触媒ありで当たるとはいってない。
 ん、自分?無事ラスボスな声の晩鐘が響きましたよ?(にっこり)


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