転生したけど後悔はしていない   作:HA.KO3

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第10話 ヴァルキリーと闘うけど後悔はしていない

 

 

 

「ああああああっ!!!!!」

 

 

唐突に、ラウラから身を裂かんばかりの絶叫が聞こえる。と同時にシュヴァルツェア・レーゲンから激しい電流が放たれ、シャルロットの体が吹き飛ばされた。

 

「な、なんだ!?」

 

突然の事に一夏もシャルロットも驚きを隠せていない。

 

「ぐぅ…ああああっ!!!」

 

様々な負の感情を撒き散らし、悲痛な叫び声を上げ続けるラウラ。

装甲を形どっていた線はグニャグニャに溶け、液状化しながらラウラの体を包み込む。

 

「………」

 

そこに現れたのは全身が黒い装甲で覆われたISのような『何か』。

各部の装甲はどことなく日本製のIS『打鉄』に酷似している。

そして右手には一振りの日本刀。

 

「《雪片》………!」

 

それはかつて世界最強が振るっていた刀の名。その姿は、かつての日本代表の姿。まるで複写したような雪片と機体に、一夏は無意識の内に《雪片弐型》を握りしめようとするが…

 

ガクッ!

 

「ぐうっ!」

 

一夏は三葉の本気の拳に、思ったよりダメージを受けていた。痛みは脳内分泌されたアドレナリンによって緩和されてはいたが、それは痛みだけ…肉体のダメージは、想像よりもずっと重いものだった。

 

「一夏…」

 

後ろから、三葉の声が聞こえて来る。

 

 

 

 

「見ていろ。お前が目指す物の、その極地を…これからお前がやろうとしていることの…その先を!」

 

 

『非常事態警報発令!トーナメントの全試合は中止!状況を警戒レベルDと認定、鎮圧部隊を送り込む!来賓、生徒はすぐに避難すること!繰り返す!…』

 

 

避難警報のアナウンスが流れる。

 

「シャル、一夏を連れて離れててくれ…」

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

三葉は、試合開始から初めて(・・・)構えを取る。

 

「行くぞ…」

 

刀を中段に構える黒いISに超音速で飛行する三葉が突撃する。

 

 

ガギイィィィィィンッ!!!

 

 

交差する(けん)(けん)

 

 

ヒュンヒュンヒュンッ

 

 

黒いISの神速の剣撃を、遅い(・・・)とばかりに軽々と避ける三葉。

 

その剣撃は三葉が何万回と見直してきたもの。

 

その刃は三葉がイメージで何万回と避けてきたもの。

 

いつか世界最強となるために、世界最強を越えるために、何度も何度も映像の中の千冬の試合を見ながら覚えた、篠ノ之流の剣術。

 

「そんな姿より、元のお前の方が強かったぞ…ラウラ…」

 

だが、所詮はただの模倣…偽物だ。世界最強とは程遠く、脆い。

 

 

「そんな遅い剣筋で…

 

 

俺を切れるものかぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

三葉の拳が黒いISの剣を捉える。両手の拳で刀の側面を挟む。

 

 

バキイィィィィィンッ!!!

 

 

刀が砕け、黒いISはフリーズする。

だがそんな隙を、三葉は逃さない。

 

 

「今、解放してやるぞラウラ…」

 

 

ドンッ!!!!!

 

 

三葉は右足を突き出し前屈立ちをしながら黒いISに両手を押し当てる。

 

 

「発勁!!!!!」

 

 

発勁とは発と勁で「激しく力を発する」という意味である。

 

『力は骨より発し、勁は筋より発する』

 

勁とは運動量のことを指し、発勁とは対象に勁を作用させることである。

 

発勁の構成要素は大きく分けて三つ。

 

勁(運動量)を発生させ、

 

接触面まで導き、

 

対象に作用させる。

 

発勁ではこの3つを同時に進行しなければならない。

そして三葉は、その勁の“流れ”を操作し、中にいるラウラには勁が流れないようにしたのだ。逆を言えばラウラに流れる分の勁を表面に流すしたということだ。

 

 

バリ…バリ…ドロォ

 

 

ISの表面にスパークが流れたと思ったらその表面が溶け出す。

 

 

「オオオオォォォォォォォォォ!!!」

 

 

三葉はその中に手を突っ込む。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

三葉は誰かの夢を見た。

 

 

人の手によって生まれた少女の…

 

戦うために生まれ、鍛えらてきた少女の…

 

事故で落ちこぼれと呼ばれ、蔑まれた少女の…

 

己を救い上げてくれた恩師を思い、海の果てまで来た少女の…

 

悲しくも温かい…少女の記憶…

 

 

(これは…ラウラの記憶…)

 

 

宇宙のような暗い空間に浮きながら、三葉はラウラの記憶を見た。

 

 

 

「何故、ここにいる…」

 

 

その声のする方向に振り返ると、そこには…ラウラが居た。

いつも付けている眼帯はなく。そこには金色の美しい眼がこちらを見ていた。

 

「見たのか?」

 

「え?」

 

ラウラの突然の問いに戸惑う三葉…。

 

「変な言い方かもしれんが…私の中に貴様が入ってくる感覚がしたのだ…」

 

「まぁ、見たと言えば見ました…貴女の記憶…」

 

「…そうか…私にはお前の記憶は見れなかったが…お前の理想は感じることができたよ…………遠いな…」

 

「…恥ずかしいですね…」

 

「何故恥ずかしがる…お前は強い。それもそのはずだ、私はあの人の様になることを目標にしていた。だが、お前はあの人を越える(・・・)ことを目標にしていた…最初から目指すものが違い過ぎる。勝てるはずも無い…」

 

世界最強を目指す者と世界最強を越えんとする者。それらは似ているが…決定的に違う。

自嘲気味に、自分を見て悲しそうに笑うラウラに三葉は…

 

 

 

「貴女は…織斑先生になりたいんですか?違うでしょう?」

 

 

 

「なに?」

 

「だって…貴女の目標は【織斑先生に認めてもらうこと】そうでしょう?」

 

「っ!」

 

「貴女の記憶を見て知りました。随分頑張ったんですね…今なら…認めてもらえるんじゃないですか?」

 

いつものにこやかな笑顔、その笑顔は優しさと慈愛に溢れていた。

 

「っ!無理だ…教官の顔に泥を塗ってしまった!織斑 一夏にも、迷惑をかけた。お前にだって!尻拭いをさせてしまった…」

 

俯き、涙を流すラウラ。

 

 

「Ich wahrscheinlichste Sache, es ist törichten Mann , um den Zweck zu vergessen」

 

「っ!」

 

「ドイツの哲学者の言葉です。意味は確か…

『目的を忘れることは、愚かな人間に最もありがちなことだ』。

貴女は今、自分の目標を捨てようとした。貴女はその愚か者になりたいんですか?ここまで来たんです…最後までやり遂げた方がいいじゃないですか…」

 

ラウラは顔を上げ、涙を流しながら三葉に近づく。

 

「できるだろうか…。私に…できるだろうか…」

 

「できますよ…。もし無理だって思ったら僕も手伝います」

 

その言葉に安心したように優しげな笑顔になるラウラ。

 

「ありがとう…」

 

その言葉を最後に、二人は淡い光に包まれる。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「…ん?」

 

視界がゆっくりとクリアになっていくことを確認していく三葉。

腕の中にはISスーツを着たラウラが眠っている。

 

「「帝っ!!」」

 

離れていたシャルロットと一夏が三葉に近寄ってくる。

奥にはピットから訓練機を装備した教師陣が現れる。

 

「さて…どうなることやら…」

 

帝はゆっくりと歩き出し、これからのことを考えながらちょっとだけ笑う。

 

 

 

 

 

 




10話は少ないです。
申し訳ない…。
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