転生したけど後悔はしていない   作:HA.KO3

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第4話 眼鏡っ娘と会ったけど後悔はしていない

セシリアと一夏の試合から数日、セシリアはクラス代表の座を一夏に譲った。

 

「織斑さんは経験が圧倒的に不足しております。ですが、初めての戦闘であれだけ動ける技量は素晴らしいものがありましたわ。クラス代表になってその不足している経験を補ってくださいな」

 

という事らしい。だが、実際は三葉と訓練するためにクラス代表の座を譲ったに過ぎないことは誰も知らない。

余談だが、セシリアは三葉の朝のトレーニングに参加まではしないでも横で見ているくらいはしているらしく、その様子はトレーニングしている旦那を見ている若妻のようで、その様子を見て千冬に弄られているらしい。

 

◇◆◇◆

 

 

 

「迷いました…」

 

三葉はいま、絶賛迷子中である。

何故かと言われれば、三葉は今日はジムが点検になったせいでトレーニングできないという事だったので、訓練機の予約は取れていないがアリーナで訓練している人の動きを参考にして時間を潰し、早めに食事に行こうと考えたのだ。

 

「ここ…どこでしょう…」

 

だが、結果はご覧のとうり。

気が付けば見知らぬ道に迷い込み、

あたふたと右往左往している。

 

「そうです!

こうなったら次見つけた扉に入ってみましょう。人がいたら道を聞けば良いんですよ!」

 

何故IS学園の男子はこの思考に至るのだろう。余談だが織斑一夏もこの方法で本来自分が受けるはずだった高校の受験会場とは違うIS学園の受験会場に来てしまったらしい。

 

「あ!見つけました。えーと、『第二整備室』」

 

三葉は整備室に入ると奥の方に薄い水色のISが鎮座していた。

 

「あれ?ISがある。ということはここで整備されてるって事ですよね?だったらここで待ってれば人が来るはずです!」

 

そして三葉はISの前に座り込み、人が来るのを待った。

 

一時間後

 

 

「誰も来ません…」ショボーン

 

 

さらに一時間後

 

 

「……」グギュルルルルッ

 

 

10分後

 

 

プシュー

 

 

ドアが開き、人型のシルエットが入ってくる。

 

「…………誰?」

 

「お腹空きました〜(泣)」

 

「…本当に誰?」

 

水色の髪に眼鏡をかけた少女がパンを幾つか持って入ってきた。

 

「……」ジー

 

「え?あの…」

 

「……」ジー

 

「た、食べる?」

 

「良いんですか?!」

 

「う、うん…」

 

「ありがとうございます!!」

 

パンを差し出す少女に満面の笑みで返す三葉はこの上なく良い笑顔をしていただろう。

 

「えっと、私は更識 簪。あなたは三葉 帝君だよね?ここで何してたの?」

 

「みふぃにまほってふぃまいました」

 

「………とりあえず全部食べてから喋って…」

 

ゴクン

三葉が4つのパンを食べる時間…実に20秒であった。

 

「食堂に行こうとしたら道に迷いまして…」

 

頭を掻く三葉

 

「普通迷わないと思うんだけど…」

 

因みに三葉はなかなかの方向音痴だ。一度と道を覚えればそんなに迷わないが気を抜くとすぐ知らない道に入り込み、目的の場所とは違うところにつくことが良くあったりする。

 

「そういえばこれってISですよね?あなたの専用機なんですか?」

 

話題を変えて誤魔化そうとする三葉。

 

「うん。名前は『打鉄弐式』…『打鉄』をベースにした第三世代機」

 

「ほうほう、第三世代機…しかも打鉄ベースですか。そう言われればなんとなく『打鉄』に似てる気がします」

 

『打鉄』とは純日本製の第2世代ISであり量産機種。 もう一つの量産型である万能型のラファール・リバイブとは違い前衛向きの機体である。だが、その後継機だからといってこの打鉄弐式が前衛機体とは限らないのだ。因みに『打鉄』はIS学園にも配備されている機体であり、訓練機である。

 

「私はコレを一人で完成させなきゃならないの…」

 

険しい顔で話す簪。

 

「………」

 

その表情を見て三葉はこの少女が何かを抱えていることを悟った。

 

「更識さんは何をそんなに思い詰めてるんですか?僕は…あなたの事はよく知りませんが、そんなに思い詰めてたら為せることも為せなくなりますよ?」

 

その言葉に簪は

 

 

 

「しょうがないじゃない!お姉ちゃんは一人でISを作り上げた。なのに私は全然進まない!お姉ちゃんを見返したくて、どれだけ頑張っても何も上手くいかない!」

 

 

知ったような口を利かれ、ついカッとなって叫んでしまう簪。

声を荒げ、胸の内を知らず知らずさらけ出す。

 

「だったら手を借りれば良いじゃないですか…。一人でできる事なんてほんの少しなんですよ?だったら他の人の力を借りなきゃずっと同じ速度でしか進みません」

 

「でも、でも…お姉ちゃんは…一人で…」

 

「お姉さんはお姉さん、簪さんは簪さんです。あなたはお姉さんになりたいんですか?違うでしょう?あなたにしかできない事があるから、あなたなんです。誰もできないことを責めたりしません」

 

 

「え?」

 

 

初めて言われた言葉だった。今まで、優秀な姉と比べられ、姉にできた事ができないと責められ、姉と同じ事をしても「出来て当然」と一蹴されてきた。そんな中で初めて掛けられた言葉に簪は涙を流し、その涙は頬を伝い、地面に落ちる。

 

フワッ

 

「もう良いんですよ?貴方は頑張ったんです。もう一人で無理に意地をはる必要なんか無いんです」

 

 

「うっ……あぁ…あぁぁぁぁぁ!」

 

 

三葉に抱きしめられ、何かが切れたように泣き始める簪。

二人しかいない整備室には、簪の泣き声だけが響く。

 

 

 

 

 

簪が泣き止むと、簪と三葉は、三葉の制服の上着が大変な事になっている事に気付く。

 

「…ご、ごめんなさい。私のせいで…」

 

顔を真っ赤に腫らして申し訳なさそうに話す簪。

 

「別に良いんですよ。濡れたのは上着だけですから、脱げば済む話ですし」

 

グギュルルルルル

突然、その場に大きな音が鳴り響く。

 

「えっと…簪さん?」

 

そう、三葉では無い。

簪はもともと、整備室でパンを食べながら作業する予定であったのたが、三葉にパンを食べられたので実際には何も食べていなかったのだ。

 

「……///」

 

顔をトマトのように赤くし、俯く簪。

 

「よし!!食堂行きましょう!!」

 

「う…うん…」

 

そして二人は整備室を出て食堂に向かい歩き始める。

 

◇◆◇◆

 

 

食堂

 

「あら、帝ちゃん今日は何食べるの〜?帝ちゃんの食べっぷりは見てて私たちも気持ち良いからね〜」

 

食堂に行くと、食堂のおばちゃんに声をかけられる。

 

「はい!ありがとうございます。でも今日はトレーニングできなかったので牛丼と日替わりランチ大盛りだけにしときます」

 

十分に食べている。

 

「そんなに食べるの?」

 

「?これでもいつもより少ないんですよ?」

 

「う…うそ…」

 

真実である。

 

 

 

二人は空いてる席に座り、食べながら話しをしだす。

 

「そういえば簪さんのISはなんで未完成なんです?」

 

「実は……」

 

簪は自分がISを作っている理由を話し始める。

 

「なるほど…つまり牡丹餅技研の人達が、織斑さんのISの作るために打鉄二式のスタッフを全部盗ってっちゃったわけですね?」もぐもぐ

 

「まあ、大体はそんな感じかな?あと倉持技研ね?」

 

「どっちでも同じですよそんな所、プロとしての自覚が無さ過ぎます」もぐもぐ

 

ISは現在スポーツとして活躍している。そのスポーツをする。選手、つまりは操縦者のためのISを途中で製作放棄など、本来ならスポーツ業界で大打撃、悪ければ二度と仕事は回ってこず、廃業にすらなる可能性がある。そのいい加減さにスポーツ選手である三葉は怒っているのだ。

あまり知られていないが、一夏のISは欠陥機とも呼べるものであり、本来ならこの前の模擬戦にすら間に合わなかったモノをISの開発者である篠ノ之 束が秘密裏に改修したおかげで模擬戦に間に合ったのだ。

 

「でも、俄然面白くなってきました。ここで完成させれば葛餅技研の人達をギャフンと言わせてやれます!!」

 

「倉持ね?

ていうか…もしかして手伝ってくれるの?」

 

「むしろ手伝わせてくれないんですか?!」

 

「ううん、そんなことないよ。手伝って欲しい。えっと…これからよろしくね?帝…」

 

「はい!!がんばりますよー!」

 

「ありがとう…帝…」

 

簪が頬を赤らめていることを三葉は知らない。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

「三葉さん今日お話されていた方はどなたですの?」

 

「ほえ?簪さんのことですか?」

 

「簪さんというのですわね?どの様な経緯でお知り合いに?」

 

「えっとですね…」

 

〜説明中〜

 

「なるほど…そういうことでしたのね?」(まずいですわ…強敵が現れましたわね…)

 

「今度簪さんのIS製作を手伝うことになっているんですよ」

 

相変わらずニコニコしながら話す三葉。

 

「そうですの…」

 

「あ、部屋に着きましたよ?オルコットさん」

 

「あ、あの!三葉さん!!」

 

「?はい、なんでしょう?」

 

もじもじとしながらチラチラと三葉を見るセシリアは誰がどう見ても乙女の顔をしていたであろう。

 

「あの…これからはわたくしの事は、セシリアと呼んでくださいまし…」

 

異性に名前で呼んでもらう。これが恋する乙女にとってどれだけ勇気のいることか…。

 

「はい。良いですよ?セシリアさん」

 

微笑みながらセシリアを見つめる黒い瞳に、セシリアは顔を赤くしながらそそくさと部屋に入る。

 

「では、三葉さん。また、明日…」

 

ドアから顔をのぞかせ、上目遣いで三葉を見つめるセシリア。

 

「はい。また明日…セシリアさん」

 

パタン

 

ドアが閉まり、三葉も部屋に向かって歩き始める。

 

 

 

◇◆◇◆

 

 

 

『いいか帝、お前は才能がある。だからこれからその才能を誰かの為に使いなさい。お前ならきっとそれが出来るからな』

 

今はもう思い出せない、最も尊敬していた人の言葉。

その人がどんな人だったのか。なにをしてくれたのか。どれくらい一緒に居たのか、帝にはもう

 

ーーー思い出せないーーー

 

 




今回は少しだけ少ないです。
申し訳ない。
でもそろそろ書き溜めして一気に投稿しようと思うので頑張ります。
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