読者の方々には本当に感謝申し上げます。
これからも『転生したけど後悔はしていない』をよろしくお願いいたします。
では本編どうぞ。
IS学園 屋上
「一夏…これは…
どういうことだぁーー!」
屋上には一夏、箒、鈴、セシリア、簪、シャルル、帝の7人が集まっていた。
「だって大勢で食べたほうが美味いだろ?」
「そうよ箒〜、大勢で食べ物持ち寄れば楽しいじゃない。
「くっ…」
その副音声を感じ取った箒は押し黙ってしまった。箒としては一夏と二人きりでお昼を食べたかったのだが……
「え、えっと、僕もいて良かったのかな?」
「デュノアさんは転校してきたばかりですからこうやって濃いメンバーから慣れていきましょう」
((((((自分もその濃いメンバーの自覚はあるのか…))))))
「それじゃあ食べましょう!!」グギュルルるる
((((((そんなに早く食べたかったのか…))))))
大きなシートの上にはたくさんの料理が並んでいる。
「じゃ、じゃあまずは私からだな」
そう言って箒が弁当箱を開け、前に出す。
「お!美味そう!!いっただっきまーす!」
一夏は箒の弁当を食べ始める。
「ね、ねえ…帝?私もお弁当作ってきたんだ。良かったら食べて?」
簪が小さな弁当箱を三葉に差し出す。
「良いんですか?ありがとうございます!!」
三葉は簪から受け取った弁当のふたを開けると、
「わぁ、すごいです!」
そこには日曜にあっている特撮戦隊モノのキャラ弁があった。
「す、すごいですわね…」
「ほんとほんと、器用だね簪さん!」
シャルルとセシリアが目をキラキラさせながら感嘆の声を上げる。
「////」
褒められた本人も嬉しそうである。(照れてる)
「味もすんごい美味しいですよ!」もぐもぐ
「あ!帝私まだ写真撮ってないのに…」
「私もですわ…」
「僕も…」
と3人が残念そうな顔をするが、
「バッチリ撮ってます」キリッ
三葉はスマホを取り出し、簪特製キャラ弁の画像を三人に見せながら、
口にご飯粒を付けていた。
(ほんとに子供っぽいわよね…帝って)
(これは…取るべきでしょうか…取るべきですわよね?!)
(私が作ったお弁当だし…ここは私が…)
だが、
「ん?おい帝…ほっぺにご飯粒ついてるぞ?」
「え?ほんとです…ありがとうございます一夏」
「良いってことよ」
一夏からしたら善意でやったことだが、簪とセシリアからしたら…
(恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい恨めしい………………………………)
(一夏さん…戦争がしたいのですね?そうなんですのね?)
と、その時謎の殺気に襲われたと、のちに一夏は語る。
「ほら一夏、酢豚食べなさい酢豚」
鈴はタッパーを取り出し、一夏に差し出す。
「お!鈴の酢豚だ!」
「ふふん、あんた食べたいって言ってたでしょ?作ってきてあげたんだから感謝しなさいよね?」
「おう!サンキューな!」
三葉は、
「あ、あの…帝さん?わたくしも、今日はたまたま、たまたま早く目が覚めまして…こういうものを作ってきて参りましたの…よかったら召し上がってくださいな…」
「良いんですか?!」
「はい!!」
セシリアは大きなバスケットを取り出し、三葉に中身を見せる。
「おー!すっごい綺麗ですね!では早速…」
ーーーー瞬間ーーーー
三葉の脳裏に、危険信号が鳴り響く。今まで体験したことの無い悪寒が走り、冷や汗が流れる。
だが、折角作ってきてくれたのだ。これを食わねば男が廃る‼︎
「いただきます‼︎」
三葉はバスケットの中で一番鮮やかな色彩をしていたサンドイッチを手に取る。
パクっ
サンドイッチを一つ丸呑みにすると
ーーーーーーーー
「あ、三葉君起きた?」
目の前にはシャルルの顔があり、流石の三葉もビックリした。状況的に言えば三葉がシャルルに膝枕されている状態である。
顔を横に向けるとセシリアが正座してサンドイッチに何を入れただとか味見はしたのかだとか質問攻めにあっている。
「デュノアさん?」
「シャルルでいいよ…?」
「じゃあ僕も帝と呼んでください」
「え?いいの?」
「はい、モーマンタイです」
そんな会話をしていると
「あ!帝起きたのか?大丈夫か?あの後大変だったんだぞ?」
一夏が三葉が起きたことに気がつき、他のメンバーもぞろぞろと寄ってきた。
「そうそう、あの後一夏も一口食べたんだけど、一夏も倒れちゃってさ…セシリアに何入れたのか尋問してたところよ」
「ですから!何も入れていないと言っているではありませんか…」
「じゃあ材料名言ってみなさいよ…」
「ですから…
卵に食パン、トマトにハム、レタス…」
ここまでは一般的なサンドイッチの材料だ。
だが、
「隠し味には…クロロ酢酸をはじめとした様々なものを…「はいストップ!!」え?」
「もうそこからおかしい!!何?クロロ酢酸?何それそんなん料理に使う人初めて見たわよ!」
「そうなのですか?!」
「え?何その私が珍しい見たいな反応…違うわよね?珍しいのはセシリアの方で私じゃないわよね?」
鈴は常識の外側にあるセシリア料理のレシピに現実味が薄れ、頭がついていかないようだ。
「納得いかない〜!!」
◇◆◇◆
放課後
三葉はいつものようにトレーニングを終え、ジムの鍵を返すべく職員室に向かっていた。
「……ぜ…すか!!教官!」
曲がり角から何やら大きな声が聞こえる。
「教官ほどの方がこんな所で教鞭をとるなど間違っています。ここの女達は危機感にも疎く意識が甘い、ISをアクセサリーか何かと勘違いしている!!」
「……」
教官と呼ばれている千冬はただ無言で何かを考えている。
「教官!もう一度ドイツでご指導を!ここでは貴女の力は半分も「いい加減にしろよ小娘」?!」
凄味のある千冬の声を聞き、さすがのラウラもその覇気に萎縮してしまい、言葉を途切れさせたまま、続きが出てこない。
「15の小娘の癖にもう選ばれた人間気取りか?随分と偉くなったな?」
「わ、私は…そんなつもりでは…」
「無いと言うのか?いいかボーデヴィッヒ、貴様が先程言っていたように見えたのは彼女達がここに来て2ヶ月程度の一般人だからだ。その思想を三年間でゆっくりと培っていくのが目的でもある。わかるな?」
千冬の声は、先ほどの凄味のあるものからいつもの声色にもどる。
「………」
「もう寮に戻れ。そろそろ外出禁止の時間だ」
「それでも…それでも私は!!」
そう言ってラウラは走って行ってしまった。
「ふぅ、そこの男子、盗み聞きとは感心しないな…」
「いや〜なんか出づらい雰囲気だったので…」
三葉が頭を掻きながら現れる。
「トレーニングは終わったのか?」
「はい。あとこれ鍵です」
「うむ。…三葉…出来ればでいい…ボーデヴィッヒのことを気にかけておいてくれないか?」
「え?僕がですか?
一夏の方がいいのでは?というか織斑先生が直接指導した方が確実だと思いますが…」
「あいつはダメだ。朝の件もある。ボーデヴィッヒにいい印象を持っていないだろう」
「ああ、会って早々に引っぱたいたんでしたっけ?」
「確かに…ラウラは私の言葉に従うだろうがそれだけだよ。自分で言うのもなんだが、奴は私を信仰している節がある。私の言うことを鵜呑みにしすぎて自分で知ろうとしない。それを抜きにしてもこの件はお前が一番適任だと思ってな…あいつは世界の広さを知らなさ過ぎる…」
腕を組み、何やら感慨深いとばかりに考え込む。
「できる限り気には掛けますが…彼女次第なところもありますよ?」
「それは承知している。出来ればでいい。あと、デュノアとお前は同室になっている。お前から部屋の鍵を渡しておいてくれ」
「わかりました…ボーデヴィッヒの件ですが…場合によっては一度
「ああ、お前に任せる事にするよ…」
千冬は部屋の鍵を渡すと職員室に歩いて行った。
◇◆◇◆
「えっと、よろしくね?帝…」
「こちらこそよろしくです。シャルルさん…あとシャワーは好きに使って構いませんよ?僕はジムとか更衣室のシャワー室を使うのが主ですから」
「そっか。いつもトレーニングしてるんだってね?今度僕も一緒して良いなかな?」
お互いの爽やかな笑顔で部屋の空気が澄んだものなっている。もしこの場に第三者がいたならば「ここは山の山頂か何処かなのか?」と疑うほどだ。
「ええ、構いませんよ。セシリアさんや簪さんもよく一緒ですけど…」
「全然良いよ」
色々な話をして、二人は眠りについた。
◇◆◇◆
翌日早朝
食堂
「ねぇねぇ聞いた?個人戦で優勝したら織斑君か三葉君、デュノア君の誰かと付き合えるんだって!」
「そ、それほんと?!」
「う、嘘ではありませんのよね?!」
食堂から出ようという時、朝から騒がしい学園の生徒達は何やら噂話に夢中であった。
「なんだ?」
「さあ?」
「何かあったのかな?」
上から一夏、三葉、シャルルである。
「本当なの!!この噂、学園中で持ちきりなんだから!!月末の学年別トーナメントで優勝したら男子3人の内の誰かと交際ーーーー」
「僕らがどうかしたんですか?」
後ろ、というよりは上斜め後ろから声を掛けられた彼女たちは、
「「「キャァァッ!?」」」
いくら豪胆な三葉であっても悲鳴をあげられなかなかショックを受ける。
「で?なんの話してたんだ?」
「なんでも無いのよなんでも…」
「は、早く教室に行きませんと…」
二人はわざとらしくはぐらかして、周りの女子と共にそそくさとこの場をあとにした。
「……なんだったんだ?」
「さあ……?」
「取り敢えず教室に行きましょう……」ズーン
◇◆◇◆
〜箒視点〜
(な、なぜこのようなことに……)
私は教室の自分席で、表情を崩さないように焦っていた。
……近頃、トーナメントに関するうわさが流れているのは知っていた……だが!!
『学年別トーナメントの優勝者は男子の誰かと交際できる』
(それは私と一夏だけの話だろう!?)
その上問題なのは三葉とデュノアにまで迷惑を掛けてしまったことである。
流石にそれはまずい。もし他の生徒が優勝してその権利を三葉やデュノアに使ってしまったら目も当てられない。
(絶対勝たなければ…!!!)
箒が優勝しなければならない理由に新たな項目が追加された。
◇◆◇◆
アリーナ
「「あ」」
二人揃って間の抜けた声を出してしまう。時間は放課後。場所は第三アリーナ。人物は鈴とセシリアである。
「あら?鈴さん…」
「何してんのセシリア?」
「わ、わたくしは月末のトーナメントに向けてちょっと訓練をと思いまして…」
「奇遇ね〜?私もなのよ。良かったら模擬戦する?」
「良いですわね。そろそろ決着を付けようと思っておりましたし」
セシリアと鈴がお互いの
「ではーー」
ーーと、いきなり声を遮って超音速の砲弾が飛来する。
「「?!」」
二人は咄嗟に緊急回避をした後、砲弾が飛来してきた方向を見る。
そこには漆黒のISに身を包んだ…
「ラウラ・ボーデヴィッヒ…」
セシリアの表情が苦く強張る。
「何のつもり?いきなりぶっ放すとか…ドイツ人はそういうことするのが伝統とかなわけ?」
カチャ、と連結した青龍刀《双天牙月》を肩に預けながら、鈴は衝撃砲を準備態勢へと移行させる。
「中国の《甲龍》にイギリスの《ブルーティアーズ》か。……ふん、データで見た時の方がまだ強そうではあったな」
「何?やるの?わざわざドイツくんだりからやってきてボコられたいだなんて大したマゾヒストじゃない。それともジャガイモ農場ではそういうのが流行ってんの?」
「あらあら鈴さん?こちらの方はどうも言語をお持ちでないようですから、あんまりいじめるのはかわいそうですわよ?犬でもワンと吠えますのに」
ラウラの挑発的な態度と目つきに並々ならぬ不快感を抱いた二人は、それでもどうにか怒りのはけ口を言葉に見出そうとする。
「はっ‥‥‥ふたりがかりで量産機に負ける程度の力量しか持たぬものが専用機持ちとはな。よほど人材不足と見える。数くらいしか能のない国と、古いだけが取り柄の国はな」
ぷつんーーー
二人の中で何かが切れる音がする。
「ああ、ああ、わかった。わかったわよ。スクラップがお望みなわけね?セシリア、どっちが先やるかジャンケンしよ」
「ええ、そうですわね。しかしここはコイントスが良いのですがーーー」
「はっ!ふたりがかりで来たらどうだ?一足す一は所詮二にしかならん。下らん種馬にすがるようなメスに、この私が負けるものか」
「あれ?おかしいわね?私の耳には『どうぞ好きなだけ殴ってください』って聞こえるんだけど?気のせい?気のせいかしら?」
「この場にいない人間の侮辱までするとは、同じ欧州連合の候補生として恥ずかしい限りですわ。その軽口、二度と叩けぬようにここで裂いておきましょう」
それぞれの武器を握りしめ、こめかみをヒクヒクとさせながら怒りを隠せずにラウラを睨みつける二人。
「とっとと来い」
「「上等!!」」
ーーーーーーーー
「今日は帝は訓練機取れたの?」
「一応取れはしましたが回ってくる時間はまだまだ後なんです…」
「そっか…じゃあ回ってくるまで一夏の射撃訓練でもしてようか」
「それが良いですね」
「うっ…射撃苦手なんだけどなぁ〜」
三人の美男子が微笑み合いながら廊下を歩く、それだけで貴腐人たちは大喜びであろうが、今は三人以外には誰もいない。
そんなこんなで話していたら何やら第三アリーナのほうが騒がしいことに気がつく。
「どうやら誰かが模擬戦をしているらしいですね……。でも、少し様子が――――――」
ドゴォン!!
「「「??!!!」」」
いきなり響く爆発音。
「あれは…鈴?!セシリア?!」
爆発があった方向に視線を向けると、そこには鈴とセシリアの姿がある。
特殊なエネルギーシールドで隔離されたステージからこちらに爆発か及ぶことこそないが、同時にこちらからの声も聞こえない。
そこには漆黒のIS『シュヴァルツェア・レーゲン』を駆るラウラ。
鈴とセシリアはかなりのダメージを受け、機体には所々損傷のあとがある。
その上セシリアは鈴の後ろで脚を抑えながら倒れている。セシリアを庇うように鈴が前に出る。
「くらえ!!!」
ジャカッ!!と鈴は衝撃砲の最大出力をラウラに放つ。
だが、その攻撃をラウラは避けようともしない。
「無駄だ。このシュヴァルツェア・レーゲンの『停止結界』の前ではな」
衝撃砲の不可視の弾丸がラウラを目指す。だが、その攻撃はいくら待ってもラウラに届くことはない。
「くっ!まさかここまで相性が悪いなんて…」
「やはり私とこの、
ラウラの肩に搭載されているレールガンの照準が鈴と倒れたセシリアに定められる。
ゾッーーーーーーーー!!!!
その場を支配したのは圧倒的なまでの殺意。
軍に所属しているラウラでさえ、ここまでの殺意には出会ったことがない。冷や汗が流れ、ISのシールドエネルギーが減っていないかを即座に確認する。
「?」
いつまで経っても砲弾が飛んでこないことに疑問を抱いた鈴は、少しだけ目を開けてラウラを見る。
その様子を見たラウラは先ほどの殺気がピンポイントに自分にだけ降り注いだことを理解する。
「模擬戦をやるのは構わん。――――――が、限度というものがある。この戦いの決着は学年別トーナメントで着けてもらおうか……」
そして、突如として現れた千冬によりその場は収められた。
◇◆◇◆
先ほどの事件からすでに一時間が経過している。
場所は保健室。
ベッドの上では打撲の治療を受けて包帯の巻かれた鈴とセシリアが不機嫌顔で視線をあらぬ方向へと向けていた。
「織斑先生が介入しなければ勝てましたのに」
「本当よ。あそこから私達の逆転劇が起こるところだったのに…」
「なあ二人ともどうしてそんなに意固地になるんだ?」
二人の発言に一夏が突っかかる。あのままでは危なかったかもしれないのだ当然だろう。
「好きな人に格好悪いところを見られたから、恥ずかしいんだよ」
シャルルが飲み物を持って部屋に入ってくる。
「なっ?!」
「いちいち一言多いわねえデュノアは!?」
二人が立ち上がりシャルルに一言もの申そうとした時、
ズキーン!!×2
「「(プルプル)」」
「…二人はしばらく安静にしてた方が良いですね…」
三葉に言われ…渋々といった風に大人しくなる二人。
ドドドドドドドドド
「何の音でしょう?」
三葉がそんなことを言った次の瞬間ーーーー
どかーん
突然ドアを突き破り大量の女生徒達がなだれ込んできた。
「織斑君!」
「デュノア君!」
「三葉君!」
おびただしい数の女生徒達。だが三人は何が起こったのか分かっていない。
「ど……どうしたの皆?」
シャルルの問いに、待ってましたと言わんばかりにある紙を前に出す。
「「「これ!」」
「『今月開催する学年別トーナメントでは、より実戦的に行うため、二人一組での参加を必須とする。なお、ペアが出来なかった者は抽選により選ばれた生徒同士で組むものとする。締め切りはトーナメント開始2日前までとする。』―――」
一夏がそこまで読むと、
「「「「私と組んでください!!」」」」
各々三人の前に現れる手、手、手、その数は数えるのも億劫になる程だ。
(一夏…シャルル…二人で組んでください…男同士の方が周りも納得します)
(わ、分かった)
(う、うん…)
一夏はともかく、シャルルは渋々といった感じで受け答えをする。
「え、えっ〜と…すまん!俺はシャルルと組むから!」
「そ、そうなんだ…だからごめんね?」
「え?そうなの?」
「なんだ〜やっぱり男子同士の方が良いもんね?」
周りも納得したが…
「三葉君!三葉君はどう?!」
「私と組んでくれない?」
こっちは?!と言わんばかりに迫ってくる。
「ごめんなさい…少し考えさせてください…」
申し訳なさそうに返す三葉に我を忘れていた生徒達も落ち着き、
「まあ、そうだよね?いきなりこんなこと言われても戸惑うよね…」
と、生徒達はぞろぞろと保健室を後にする。
「ドア…」
三葉はドアをなんとか直そうとする。
「それじゃあ二人共?ちゃんと安静にしてなきゃだめだぞ?」
「わかってるわよ」
「お三方…トーナメント頑張ってくださいな」
ガラガラピシャ
三人が保健室を出ると、
「強かったわね…あいつ」
「そうですわね…」
「手も…足も…出なかった…」
「…ええ…」
鈴は肩を震わせて涙ぐみ、セシリアは窓の方を向いている。
それでも、涙を流そうとしないのは今がその時ではないから。泣くのは勝つ時と決めたから。ISに関わると決めた時からいつか負けることは分かっていたから…今は…泣く時ではない。
「強く…なるわよ…!」
「はい…!」
誰もいない保健室で二人の少女は新たな決意を固める。
◇◆◇◆
コツコツコツコツ
三葉は今、ジムでのトレーニングを終えて自室に戻っていた。
「ただいま戻りました〜」
ガチャ
「あっ……」
「……失礼しました……」
バタン…
三葉は部屋番号を確かめる。
合っている。
「…ただ今……戻りました……」
「あ……う、うん!お帰り!帝!」
平然を装おうとしているがかなり焦った痕跡があり、シャルルの髪は少し濡れていた。
「えっと…シャルルさんって…女…なんですか?」
ここまできたら三葉は直球に聞いてみることにした。
「あ、あはは…やっぱり分かっちゃったよね…」
「………」
三葉はベットに座り込むとシャルルも三葉と背中合わせに座り込む。
「もしかして…帝は僕が女だって…気付いてた?」
「確信したのはさっきですが…この前…抱き上げた時に少し違和感を覚えたんです。男の体じゃないなって…」
「…そっか…ごめんね?騙してて…」
「その…どうして男のフリなんか…」
その言葉にシャルルは少しだけ震えながらしゃべりだす。
「僕の家がデュノア家だっていうのは知ってるよね?僕はね?社長の愛人の子供なんだ。僕の母さんが死んで…社長夫婦が僕を引き取ってくれた。
嬉しかったよ…愛人の子供である僕を…二人は本当の子供みたいに愛してくれた。でも…しばらくしてデュノア社は経営危機に陥った。そして僕の存在を都合が良いって考えたフランス政府の偉い人が
「男のフリをして男性操縦者のデータを盗んで我々に提供しろ、そうすればデュノア社には資金援助をし続けよう」
そう言ってきたんだ…父さん達は反対しようとしたけど…「受け入れなかったら今している資金援助を取り止める」って…」
「……」
三葉は喋らない。ただ上を眺めているだけだ。
「でも、ばれちゃったから…もうおしまい。デュノア社は倒産して、僕は牢屋行き、フランス政府にはトカゲの尻尾切りにされるだろうなぁ」
シャルルは泣いていた。無力な自分を、新しい父と母を、デュノア社を守れなかったことに対して…涙を流す。
「シャルルさん…貴女はどうしたいですか?」
「え?」
三葉が急に立ち上がり、シャルルの目を見る。
「どうしたいって…そりゃ…僕だってまた父さんや義母さんと楽しく暮らしたいよ…!」
「……」
「でも無理なんだ!僕は何もできない。弱い子供なんだ!父さんや義母さんの助けにすらなれなかった弱い子供なんだ!」
シャルルはただ泣き続ける。
「じゃあ『助けて』って言えよ!!!」
「?!!?!」
「助けてって言え!誰がどうとか、敵が誰かなんてどうでも良い!お前はどうしたい?!他の誰でも無いお前自身はどうして欲しいんだ!!」
三葉はシャルルの肩を掴み、その黒い眼でシャルルの目を見る。
「………助けて……
助けて!!!!!!」
その言葉を聞いた三葉は
「任せろ」
シャルルの手を引きながら部屋を出る。
バタン
ーーーーーーーー
寮長室
「織斑先生…」
「三葉か…どうした…」
「デュノアのことです…」
「そうか…お前も知ったのか…」
まるで最初から知っていたかのようにこちらを向く千冬。
「実はデュノア社からあらかじめ『シャルル・デュノアは女』だということは伝えられていたんだ。だから教師陣は全員知っていた」
驚きの発言に三葉とシャルルは驚きを隠せないでいた。
「…そうですか…では、僕がなんのためにここに来たのか…わかってくれますか?」
「ああ。デュノア!」
「は、はい!」
急に名前を呼ばれ、シャルルは体をビクッと跳ねさせる。
「お前は三葉に助けを求めた。故にここにいる。違うか?」
「い、いえ、その通りです」
その言葉に安堵した千冬は、
「そうか…ならばお前にも協力してもらう。それと三葉、お前にもな…」
「僕にできることがあるなら…」
その返事を聞いて千冬はこれからのことを話し始める。
「まずはデュノア、お前には囮になってもらう。そしてデータをフランス政府の人間に渡す所を現行犯で引っ捕らえる」
千冬は鋭い目付きで二人を見る。その目はさながら獲物を狩る鷹のようだ。
「次にデュノア社の経済問題だが、これをどうするかだが、それについては三葉…お前の出番だ」
突然呼ばれ「僕?」というふうに首を傾げる三葉。
「ああ、デュノア社には
お前のスポンサーになってもらう」
千冬が言いたいのはこういう事だ。
世界でも貴重な男性操縦者、その上三葉は様々なスポーツでプロ入り確定と言われた人間であり、そのスポンサーともなれば知名度は凄まじいものになるだろう。そして三葉は今までスポンサーをとった事が無い。それはつまり、『今までスポンサーを取らなかった三葉 帝』が初めてとったスポンサーという事になる。
「なるほど…確かにそれくらい世間に広告できれば、財政状況も立て直せるかも…」
シャルルは何やら考え始める。
「だが、それでも問題はある。未だ専用機を持たない三葉をスポンサーにしても大丈夫なのかどうか、そこで、三葉には何としても月末のトーナメントで優秀な結果を残してもらわなければならない」
「もとよりそのつもりです」
三葉の答えに千冬はふっと笑う。
「じゃあ…これで…」
「ああ、デュノアは救われる。だが、まだ終わったわけじゃ無い。まだやる事を決めたにすぎない。ここで気を抜くなよ?そういう訳でデュノアには月末トーナメントまで男のフリをして貰わなければならない。あと織斑には言うな、どこから情報が漏れるか分からん。あいつはすぐに顔にでるからな…」
若干呆れ気味にため息を吐く千冬。それには帝もシャルルも同情の視線を向ける。
「わかりました。僕…何としても素性を隠し通します」
その目には明らかな強い思いがあった。何としても家族を守るという強い思いが…。
◇◆◇◆
部屋に戻ってから二人は気がつく。
三葉がシャルルの裸を見たという事に。
「帝…」
「は、はい…」
「帝の…えっち…」
「すいませんでした!!!」
それはもう…それはもう見事な土下座であった。
「ふ…ふふ…あはははは…」
急に笑い始めたシャルルに、三葉は涙目顔でシャルルを見上げる。
「あのね?帝…僕の本当の名前ね?シャルロットって言うんだ…。これからはそう呼んで欲しいな…」
その笑顔に三葉は、
「はい。シャルロット…」
「プフ…」
「クス…」
「「あはははは!!」」
二人は笑う。楽しそうに笑う。
「あ、でもシャルロットって呼んだらばれますよね…」
「そっか…」シュン
「じゃ、じゃああだ名で呼びましょう!そうですね…『シャル』なんでどうです?これなら呼びやすいですし他の人たちにバレませんよ?」
三葉の提案にシャルルは顔を赤くして、
「シャル…良いよ!すごく良い!」
「喜んでもらえたなら何よりです!」
三葉の満面の笑みにシャルルはさらに顔を赤くする。
(いきなりは反則だよ!)
そんな事があったとさ…。
お気に入り200を祝して一万字です。
すいません嘘です。書いてたら区切りが分からずこんなんなってました。
でも200で一万字になっててちょっと嬉しいです。