「ふあ~良く寝た……」
寝ぼけ眼を擦りながら、立ち上がろうとする。
だが、下半身に違和感を感じる。
「何よもう…」
よく見ると、血塗れの空が私に膝枕させていた。
いや、もう膝枕というか、普通に横たわってるだけなのだけど。
「癒やしなさい、風よ『リストアブリーズ』」
吹き付けるだけで傷を癒やす風…
そんな物を想像しながら詠唱する。
すると、空の周囲が渦巻き始め、彼の傷を癒やし始めた。
体が痛い。
確か俺は、後ろから何かに刺されて……
俺はもう死んじまったのか?
…冗談じゃない。終わるには早すぎる。
「目が覚めた?」
「ん?ああ……」
俺は希の足の上に横たわっていた。
そういや、希を起こそうとしてそのまま寝てしまったのだった。
背中を血が伝う感覚は無い。
どうやら傷は塞がっているようだ。
「希がやったのか?」
「まあね。褒めてもいいのよ?」
「遠慮しとく」
「そう。残念ね」
希はそう言ってクスクス笑う。
こんな彼女を見てると、最初あんなに警戒してた俺が馬鹿みたいだ。
希も俺達と変わらない…普通の人間…まあ、今の俺達は普通じゃないがな。
「そういやここ何処だ?」
「転送地点からはそんなに離れてはないわね。そう…転送地点から東に2㎞ほどね」
「2㎞か、なら徒歩30分くらいか」
「え~こんなか弱い女の子を30分歩かせるの~?」
「茶番は結構だ」
「分かったわよ。行きましょう」
30分後。転送地点、始まりの町『アニマ』
この世界には、
その人達は、この世界の発展のため予め送られた者達だ。
その為、農家だったり科学者だったりとそういった者達しかいない。
「ここが転送地点の町ね」
「転送地点だから、あまり大きい街ではないがな」
「なんで?広い方が良いじゃない?」
希はそう言ったが、すぐに意図を理解したようだ。
理屈は簡単だ。
また、グループで入る際には、その内の一人でも
その為、予想より多い人がゲートを利用する。
この町の住人が多いと、ゲートが渋滞してしまう。
結果として、ここに住めるのは
「そういや、あいつらは一体どこに…」
「ま、探してれば見つかるわよ」
「そうだと良いがな…」
「全く、気楽ねえ。もうちょっと焦っても良いんじゃない?」
「何言ってんだ希、お前も気楽な発言してた癖に」
「今喋ったの私じゃないわよ?」
「は?」
「『は?』じゃないわよ!」
声と共に、固いもので後頭部を殴られる。
この感触は……
「なんで本なんか持ってんだよ恵……」
「知らないわよ。起きたら持ってたんだもの」
「あれ、それ魔導書じゃない!?」
「何それ」
「魔法を発動したり、魔法を発動する助けになる本よ!」
「え!?そうだったの!?」
「じゃあお前何に使ってたんだ」
「ずっと鈍器として使ってた…」
「だろうな!見事に使いこなしてやがる!鈍器としてだがな!いつもより痛えよ!」
こんなんでこの先大丈夫なのだろうか……
死んでいったクラスメートの敵討ち、そして、世界滅亡の阻止。
俺達には荷がまだ重いかもしれない。
だが、まだ物語は始まったばかりだ。
「絶対にやってやる。刺し違えてでも…な」