俺の嫁(ゲーム内)と幼なじみが修羅場すぎるinデスゲーム 作:へーきち
俺には幼馴染がいる。そいつは不登校気味のヒッキーである。
物心ついた頃からそいつとはずっと一緒に過ごしてきた。ちなみにその幼馴染の妹も一緒に。ただ、その幼馴染と妹には血の繋がりはない。なんでも、俺の幼馴染はまだ小さい頃に両親と事故で死別、母方の叔母夫婦の家に養子として引き取られたのだとか。初めて聞いた時はかなり驚いた。
さて。そいつとは色々なことを一緒にやった。というより、無理やり付き合わされた。そいつとその妹が剣道を始めた時には俺もやらされた。そいつが新しいゲームを買ってくる度に俺も一緒にプレイ。まあ、楽しかったから別に構わないのだけれど。
今、この手に持っているのもその幼馴染に一緒にやろうと誘われて入手したものである。かなりお高い商品で、母親に無理を言って買ってもらった。シングルマザーの家庭には相当な出費だったはず。本当、申し訳ない(棒)。
いや、感謝はちゃんとしている。ここ最近はずっと家事を俺が担当したりしているし。ただ、これは単に母親への恩返しというわけではないのだ。
実を言うと、今俺の隣にいるこの幼馴染に小学校の卒業式の日にこう言われたのだ。『いつか養ってあげるね!』と。ふっ、つまり俺の将来安泰。現在は花嫁修業ならぬ花婿修業を頑張っている。えっ、小学生の約束事なんていつの日か忘れ去られるって?……それはまずいかも。勉強ちゃんとやってないし。いや、俺は親友を信じている!こいつは絶対に裏切らな、あれ?なんかよくゲームのプレイ中とかに嘘の情報を教えられて俺が負けることがしばしばあるような?
話が逸れた。とにかく、今はその幼馴染の家にいる。もちろん一緒にゲームをやるために。
「早くしなよ。もうすぐ一時だよ?」
「わかってるよ、"キリト"」
「あー⁉︎なんでリアルでその呼び方するの⁉︎ちゃんと名前で呼んでよ」
「いいだろ、どうせ数分後にはこれで呼ぶんだから」
「……仕方ないなぁ」
俺らがこれからプレイしようとしているゲーム、『ソードアート・オンライン』通称SAO。世界初のVRMMORPG。そう、バーチャルなのだ。機械には詳しくないのでよくはわからないが、ナーブギアと呼ばれるこの装置を頭に装着することで仮想世界にフルダイブできるらしい。仮想のアバターを作り、そのアバターを通して五感すべてがそのままフィードバックされるらしい。詳しくは隣の幼馴染に聞いてくれ。小学生の頃に自分でコンピュータを組み立てちゃうような奴だ、絶対にその方がいい。
「なあ、キリト。別にここからログインする必要ないよね?」
「へ⁉︎あ、いやある!あるよ!だって、ほら。何かあった時困るよね?"カノン"って機械苦手でしょ?」
「まあそうだけど……」
なぜだ、なぜ俺が今回プレイヤーネームにカノンを使おうとしていることがバレたんだ?あ、いつもこれだったっけ?
ナーブギアを被って目を閉じる。さすがにベッドの上はキリトが寝ているので、俺は部屋の床に寝転がる。さっき時計を確認したところ、定刻まであと1分。
「いい?合言葉は"リンクスタート"だよ?」
「わかってるよ、そこまで馬鹿じゃない」
これでも一応お前と同じ学校に行くために中二の今から猛勉強中なのだ。今年の夏にこの幼馴染から高校も同じ学校に行かないか、と言われた時は本当に嬉しかったのだ。というか、出席日数が進級ギリギリのくせに俺より頭良いとか何者だよ。別に大したことない俺と比べるのはどうかと思うけど。
「じゃあ、たぶんカノンの方が初期設定がある分時間かかると思うから、先に広場で待ってるね」
「了解」
キリトは今日の本サービス開始前に行われたβテストというものに当選した。そのためにタダでナーブギア等の一式を揃えたのだ。超羨ましい。
ピッ、という音とともに時計が午後1時を示す。いよいよだ。
「「リンクスタート!」」
カノンこと俺、
それがデスゲームになるとも知らずに。