君と僕の物語   作:名無しの執筆者

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another episode 「Ⅰ」

 始まりは優しさと信じてる。

 インフィニット・ストラトス──。

 それを創り上げようと思ったのは紛れも無い優しさだと、篠ノ之束は己に言い聞かせている。

 まず最初のキッカケは妹の誕生だ。

 篠ノ之箒が産まれたのが、彼女のスタートだ。

 

「ねえさん」

 

 小さな声。

 小さな手。

 抱き締めると柔らかくて、仄かに香るのは花の匂い。

 彼女を姉と呼ぶ幼子は、純粋な瞳で空を見つめる。

 それが可愛くて、束はいつも彼女を思っていた。

 家族だったから──家族だったから、大好きだった。

 だから、創り上げようと思ったんだ。インフィニット・ストラトスという兵器を。女性にしか扱えない武器を。可能性を込めた私の「願い」そのものを、具現する物として残そうとしたんだ。けれど──。

 一つ目────《白騎士》

 初めの後悔はそれだった。

 二つ目────《黒鍵》

 もうそれで終わらせる筈だった。

 三つ目────《黒兎》

 結局は何も変わらなかった。

 四つ目────《白式》

 これが唯一の希望だった。

 五つ目────《紅椿》

 だから最後に願いを残した。

 世界とはあやふやで、いくら頑張っても変えられるものではなかった。たとえ異常な才を持って産まれてきても、その尊さには到底及ばず、手を伸ばしても欠片すら掴めない。世界とは、そういう風に出来ていた。

 尊い────いや、違うな。世界とは残酷だ。

 選択を望めば、それ以上のものを奪われる。過度な期待は裏切りが前提の約束であり、果たされることは絶対にない。

 だが、篠ノ之束は賭けた。その自殺とも言える可能性に全てを捨てて縋った。

 どんな実験もした。

 どんな国も敵に回した。

 そして最後には生涯もっとも愛した我が子でさえ、世界の変革の為に捨てた。捨ててみせた。

 けれど───やはり駄目だった。

 残酷の世界は、それ以上の対価を望み、それ以上の何かを求めてきた。もう何も残っていない。探しても手元には何も無い。賭けられるものは、全て賭けた。だからそこで、篠ノ之束が目指した理想は終わった。

 

「────だからさ。重吾、いっくん、ハルト。君達三人の男の子が、この世界を救っておくれよ……」

 

 インフィニット・ストラトス──。

 それを創ろうと思ったのは、優しさだと信じてる。

 《白式》が放出し、《黒兎》が束ね、《紅椿》が生み出すその果てにあるエネルギーの先は無限に広がる空。

 篠ノ之束が夢見た理想は、誰もが幸せになれる世界。そしてたった一人の息子と平和に暮らせる、何でもないただの日常だった。

 




続く
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