始まりは優しさと信じてる。
インフィニット・ストラトス──。
それを創り上げようと思ったのは紛れも無い優しさだと、篠ノ之束は己に言い聞かせている。
まず最初のキッカケは妹の誕生だ。
篠ノ之箒が産まれたのが、彼女のスタートだ。
「ねえさん」
小さな声。
小さな手。
抱き締めると柔らかくて、仄かに香るのは花の匂い。
彼女を姉と呼ぶ幼子は、純粋な瞳で空を見つめる。
それが可愛くて、束はいつも彼女を思っていた。
家族だったから──家族だったから、大好きだった。
だから、創り上げようと思ったんだ。インフィニット・ストラトスという兵器を。女性にしか扱えない武器を。可能性を込めた私の「願い」そのものを、具現する物として残そうとしたんだ。けれど──。
一つ目────《白騎士》
初めの後悔はそれだった。
二つ目────《黒鍵》
もうそれで終わらせる筈だった。
三つ目────《黒兎》
結局は何も変わらなかった。
四つ目────《白式》
これが唯一の希望だった。
五つ目────《紅椿》
だから最後に願いを残した。
世界とはあやふやで、いくら頑張っても変えられるものではなかった。たとえ異常な才を持って産まれてきても、その尊さには到底及ばず、手を伸ばしても欠片すら掴めない。世界とは、そういう風に出来ていた。
尊い────いや、違うな。世界とは残酷だ。
選択を望めば、それ以上のものを奪われる。過度な期待は裏切りが前提の約束であり、果たされることは絶対にない。
だが、篠ノ之束は賭けた。その自殺とも言える可能性に全てを捨てて縋った。
どんな実験もした。
どんな国も敵に回した。
そして最後には生涯もっとも愛した我が子でさえ、世界の変革の為に捨てた。捨ててみせた。
けれど───やはり駄目だった。
残酷の世界は、それ以上の対価を望み、それ以上の何かを求めてきた。もう何も残っていない。探しても手元には何も無い。賭けられるものは、全て賭けた。だからそこで、篠ノ之束が目指した理想は終わった。
「────だからさ。重吾、いっくん、ハルト。君達三人の男の子が、この世界を救っておくれよ……」
インフィニット・ストラトス──。
それを創ろうと思ったのは、優しさだと信じてる。
《白式》が放出し、《黒兎》が束ね、《紅椿》が生み出すその果てにあるエネルギーの先は無限に広がる空。
篠ノ之束が夢見た理想は、誰もが幸せになれる世界。そしてたった一人の息子と平和に暮らせる、何でもないただの日常だった。
続く