君と僕の物語   作:名無しの執筆者

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かやまた


第二十八話 「好奇の視線」

 入学式が終わり、次に始まったのはクラスメイト達との親睦会も兼ねた自己紹介と、各委員決めだった。

 立ちっぱなしから、次は座りっぱなし。

 さっきに比べれば、ある程度の自由はきくけれど、それでも焦れったいことには変わりない。一夏にも、箒にもすれ違ったりしなかったから、余計に寂しさが引き立つ。

 

「………ぶー」

 

 口をタコのように伸ばし、机にうつ伏せる。

 クラスメイト達は楽し気に流行を深めていて、今はとても満喫しているように見える。僕も早く友達欲しいなぁ……。

 何度か話しかけたりはしたのだが、皆一様に顔を背けて、こちらを見ようとしてくれない。いや、チラホラと視線は感じてはいるのだが、目を合わせようとするとすぐに逸らされて、苦味を噛まされる。

 溜息を吐き、机の上にのの字を書く。

 窓から差し込む日差しが顔を照らすが、今は何だか少し鬱陶しい光だった。孤独さも相まっているから余計だろう。

 ちら、と視線を動かす。

 するとやっぱりこちらを伺っていた数人のクラスメイト達と目が合い、そして逸らされる。これが、何度もさっきから起きているのだ。いい加減、泣きたくなってくる。

 

(はぁ〜……暇だなぁ)

 

 ボーッとクラスメイト達の顔を見ていると、ふと視線が入学式の時に見つけた青い髪の少女に行き着いた。まだクラスの自己紹介は始まっていないので、名前はまだ分からない。名前を聞こうにも彼女は必死な様子で何かの作業をしているみたいなので、ちょっかいをかけたりなんかもしない。というよりも、動く気力が湧かない。暇だから。暇だから。

 ふー、と顎をしゃくれさせて前髪を吹き上げたりしていると、唐突にツンツンと背中を触られる。

「んー?」振り返ると、そこには片目を眼帯で隠した、銀髪の少女がこちらをジッと見ていた。入学式の時には見えなかった少女である。

 

「暇をしているか?」

 

 ピンク色の唇を動かし、少女が首を傾ける。

 

「う、うん……」

 

 なぜだか寒さを感じ、ぎこちない返事をした。

 少女は少し前屈みだった姿勢を直立させると、慣れた仕草で腕を組む。ふと、それに織斑千冬を思い出した。

 

「──周りの視線が気になるだろう」

 

 と。少女が言う。

 それに少し恥ずかしくなり、頷いた。

 

「ちょっとだけね……えへへ」

 

 ちらり。視線を動かす。

 

「「「…………っ!!」」」

 

 するとやっぱり、顔を逸らされる。

 ううむ。目頭が少し熱くなった。

 

「まあ、無理もないだろうな。世界で唯一の──男性操縦者の肩書きをもっているのだから、興味の対象になるのは仕方がない。別の組にいる織斑一夏も、きっと今頃は好奇の視線に晒されているに違いない」

 

 妙に厳格な喋り方をする少女だ。

 ますますあの人に見えてくる。

 

 うむうむ、と頷く少女。

 それをホーと見つめ、首を傾げた。

 

「本来ならば女専用の兵器と言っても過言ではない代物だ。それが男でも操作出来ると分かったのだから、誰しも興味が湧くのは当然。……しかも───」

 

 少女は切れ味のある瞳をクラスメイト達に向けると、愉快そうにその口端を吊り上げた。

 

「それが近くにいるのだから、気になるものよなぁ……」

 

 と。その言葉がクラスに染み渡った途端、図星を突かれたようにクラスメイト達がビクンと肩を震わせた。

 ふん、と鼻を鳴らす銀髪の少女。その仕草といい、雰囲気といい、いやはやなんとも、

 

(か、かっくいぃぃぃっ!!!!)

 

 心を踊られされることだろうか。

 

「ぼ、僕っ、井伊月重吾です!」

「む。自ら名乗るとは礼儀のある……ふむ。私はラウラ・ボーデヴィッヒだ。憶えておくといいぞ」

「ラウラさんだね! もちろん憶えるよ!」

「良い心掛けだ、重吾」

 

 ────────────────────────────

 

 ▼▼▼

 

 一方その頃──。

 

「ねえねえ、あれが噂の……」

「すごーい! 本当に男の子だぁ!」

「千冬様の弟なんだってぇ〜」

「えー! じゃあ揃ってIS操縦者なんだ!」

「きっと凄く強いんだろうなぁ……」

「当たり前じゃない。あの千冬様の弟なのよ?」

「はぁぁ……! ちょっとタイプかもぉ……」

「なっ!? 抜け駆けは許さないわよ!!?」

「わ、私だって……っ!」

 

 ギャーギャーと騒ぐ、クラスメイト達。

 

「…………」

 

 その中心で一人、孤独と戦う織斑一夏は、

 

(あばばばばっ! 誰か助けくれぇぇぇ!!)

 

 早くもダウンしかけていた。

 




続く
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