「ということがあったんだぜ」
「なるほどねー それは少し警戒しておく必要があるわねー」
謎の少女、流華と遭遇してから一夜。
魔理沙は昼下がりの神社で紅白衣装の少女・・・ここ博麗神社の主であり、楽園の巫女 博麗霊夢とお茶をすすりながら談笑していた。
「見覚えのない顔だから外の世界からやってきたのは間違いないんだが、その割には適応力が高かったんだよなぁ・・・手を抜いていたわけじゃないんだが・・・」
「あんたのマスパを吸収した手袋だっけ?気になるわねー なにかしらの能力はあると見ていいわね」
「そうだな 一筋縄ではいかない相手だろうし、今度はもっと強いマスタースパーク撃たなきゃな!」
「もっと強いって・・・闇雲に撃っても意味ないと思うわよ」
後ろから声をかけられた。
声の方を向くと、そこには右腕を包帯でぐるぐる巻きにしたピンク髪の少女・・・茨木華扇がいた。
「華扇、あんたそれがなんなのか知ってるの?」
「詳しくは知らないけど、だいぶ前に小耳に挟んだことがあるわ。相手の弾幕・・・というか、力を吸収するグローブがあるって」
華扇はそう言いながら、並ぶように座り、お茶をすする。
「魔法的なアイテムなのか?」
「少なくともこっちのものではないってことよ。外の世界というよりは魔界とかそっち方面のものだと思うけど・・・」
「ってことはあの流華ってやつはそっち方面から来たのかしら?」
「どうだろうな。印象的にはそんな感じしなかったし、どちらかというと前のオカルトボールのときのあの菫子のほうに近かった気がする」
「それでも危ないんじゃ・・・」
オカルトボールのとき・・・少し前にオカルトボールと都市伝説が流行り、幻想郷と外の世界を隔てる結界が危うく崩壊してしまうところだったという異変があった。異変はこの3人などの尽力により一応は解決されたが、この時の中心にいたのが話に挙がった菫子という外の世界の女子高生?という少女だった。
「今じゃ監視もされてるようなものだから、あの子はおとなしいけど、たしかにあの時の一件以来結界がどこか安定しないのよねー」
「紫のやつがサボってんじゃないのかー あいつなんだかんだでそういうところあるしな」
魔理沙の言葉に霊夢、華扇は苦笑する。たしかにあのうさんくさくてつかみどころのないあの女のことだ、そういうことも考えられるだろう。
「ま、今は紫のことを気にしても仕方ないわ。仮になにか知ってても上手くかわされるだけよ」
「そうね 話を戻しましょうか。当面はその流華って娘を警戒しておく必要があるってことかしらね」
「警戒もなにもどこにいるかとかはわからんからな。昨日の夜 逃げられたあとにあたりを見てみたんだが、痕跡をうまく消されていた」
「そこらへんしっかりしてるあたり やっぱり匂うわね」
霊夢があごに手を当て思案する。こういうときの霊夢の勘は基本的に当たるので やはりなにかが起ころうとしているのは間違いないだろう。問題はどんな異変が起こるか、ではあるが。
「ただの物盗り・・・というわけではないだろうしね。盗ったものでなにかをやろうとしてるってことかしらね」
「オカルトボールみたいに7個集めたらなにかが起こせるってことか」
「ところで、魔理沙が紅魔館から盗もうとしてた本ってなんなの?」
「ああ、ナコト写本っていう本らしくてな。なんでもすげえもんがいろいろ載ってるらしいんだ」
「まーたなんか怪しげな本ねぇ・・・」
霊夢はため息をつく。霊夢はこういう本には興味がないからわからないだろうが、魔理沙ら魔法使いをはじめ、おそらくあの貸本屋・・・鈴奈庵の看板娘もそれを聞いたら飛び込んでくるであろう名前のある本なのである。
「そんなに怪しげな本って思うなら余計に渡したくないだろ?」
「私としたらあんたにも渡したくないんだけどね・・・」
「こうなったらいっそのこと、紅魔館にでも行って見せてもらいますか」
「そうねー そんな怪しげな本ならいっそのこと封印でもしておこうかしら」
魔理沙をチラリと見やり、意地悪げに微笑む霊夢。
「ははは、それは勘弁してほしいぜ・・・」
この巫女のことは下手したら本当に封印してしまうだろう。魔法使いからしたらこれは避けたいが・・・
「とはいえ、私はこれから少し野暮用があるから、ここは華扇にでも任せておくかな」
「あら?いつも暇なあなたが用事って珍しいこともあるのね」
「いつもは余計よ。少し早苗に呼ばれていてねー ちょっと守矢神社にでも行くのよ」
「おまえのほうから山にいくとはな、なんかあったのか?」
霊夢の方から山・・妖怪の山のほうに行くとは珍しい。異変の時ならともかく、平時で山に行くことはあまりない。天狗といい、河童といい、どこか面倒な連中がいることもあるのだろう。また、基本的に霊夢に用事があるときは早苗のほうからこちらにくることが多い。
「面倒なことじゃなければいいんだけどね・・・面倒なことだろうけど」
霊夢がそう言うのだ。先にも言ったとおり霊夢の勘は鋭い。おそらくあちらでも面倒なことが起こっているのであろう。
「そうか。なら私は華扇と紅魔館にでも行くぜ」
「そうね。華扇、ちゃんと魔理沙を見はってなさいよ。目を離したら面倒なこと起こしそうだし」
「任せておきなさい。魔理沙がやらかしそうなときは猿の手でも使ってにぎりつぶしておくわよ」
「おまえらは私をなんだと思ってるんだよ・・・」
おっかないことを言う華扇の言葉を聞き、冷や汗を流す。本当にやられそうなので少しはおとなしくしておくことを決めた。少しだけだが。
「まあ、霊夢のほうも気をつけろよ」
「私を誰だと思ってるのよ、泣く子も黙る博麗の巫女よ」
ウインクしながら自信満々に言う霊夢。そう言うのなら大丈夫だろう。いつもなんだかんだで異変を解決しているだけのことはあるのだから。
おそらく今回もなにが起こっても大丈夫だろう。そう思っていた。
この時はまだ今回の異変がこんな大事になるとは思っていなかったのだ・・・。
後に霊夢が倒れることになろうとはここにいるだれもが思っていなかった。
続く