東方盗物帳   作:黒パン

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第2話 異変前日<中編>

「というわけで人間の里にやってきたんだぜ」

 

「誰に話してるのよ・・・」

 

どこか冷やかな視線を向ける華扇。この仙人には冗談というものが基本的に通じない。冗談を言おうものなら口うるさく有りがたいお言葉をいただくものだ。

さすがに有りがたいお言葉をもらうのはめんどくさいので、コホンと咳払いをして話を変えることにした。

 

「とりあえずさっさと鈴奈庵に行って、小鈴を連れ出そうぜ」

 

「そうね、それにしても鈴奈庵の娘を連れて行こうだなんてよく思ったわね。いつものあなたなら直接紅魔館に行って、解読できないーんあぁぁぁぁああああ!!!って言うものだと思っていたけど」

 

「なにをう!私だって成長してるんだぜ!万が一パチュリーが読めなくても、小鈴がいれば一発だからな」

 

鈴奈庵の看板娘、本居小鈴には妖魔本を読む程度の能力がある。例の本・・・ナコト写本と呼ばれるものでも小鈴なら判読してくれるだろう。

もっとも噂通りの本ならば一筋縄では判読できなさそうではあるが・・・。

 

と、目的の鈴奈庵についたようである。いつものこの時間帯なら小鈴は里の子どもたちに読み聞かせをしているのだが、どうやら今日は違っていた。

中にいたのは子どもたちではなく、着物姿の少女・・・稗田阿求だった。

 

「あれ?魔理沙さんに・・・華扇さんでしたっけ?」

 

店に入ってきた二人に気付いた阿求が口を開く。

 

「おっす」

 

「お邪魔しますね」

 

それぞれに挨拶すると、店の奥からいつもの黄色いエプロンに頭に小さな鈴をつけた少女が現れた。鈴奈庵の看板娘、本居小鈴である。

 

「お二人ともこんにちは!今日は何を借りにきたんですか?」

 

「あー、借りに来たのは本じゃない。おまえを借りにきたんだ」

 

「私を・・・・?ま、まさか誘拐ってやつですか!!」

 

「わ、わ、わたしの目の前で小鈴を誘拐させたりは・・・」

 

なんか変な解釈をしているようである。小鈴と阿求が仲がいいのは知っているが、ここまで動揺しているのを見るともっとからかいたくなる。

 

「魔理沙、用件だけを手短に言いなさい」

 

華扇に見透かされていたのか肘でこつんとやられた。このまま勢いでからかうと仙人の有りがたいお言葉が待っているだろう、ここはひとつ真面目にやるとしよう。

 

「あーいやいや、少し小鈴に見てもらいたいもんがあってな。紅魔館まで来てもらいたいんだよ」

 

「紅魔館・・・・あの吸血鬼の館ですか?私行ったことないから少し怖いんですが・・・」

 

「あーそっか。普通はいかないもんなぁ」

 

たしかに紅魔館は吸血鬼の住む館として里に知られている。かつての異変の中心でもあり、そこに住む吸血鬼は恐ろしいものだと認知されているらしい。

もっとも館に行き慣れており、その吸血鬼とも親交のある方からしたらかなり拡大解釈されてるように思えるが。

 

「まあ安心しろ、私と華扇もいるし、別にあそこの連中も悪いもんじゃないしさ」

 

「そうね。小鈴、安心して行ってらっしゃい。私は身体が弱いからおとなしくお留守番しておくわ」

 

信頼している阿求に背中を押された小鈴は少し考えたのち、大きくうなづいた。

 

「そうですね、あまりない経験ですし、あそこの図書館には前々から興味があったので遠慮なく連れて行かれることにします!」

 

「それはよかったぜ。そうときまれば早速行こうぜ!」

 

手に持つ箒にまたがり、早速紅魔館へと出発しようとする。

と、華扇がそれを制した。

 

「少し待って、妙にトントン拍子に進んでるけど、あっちには話してるの?」

 

「・・・・・・?」

 

「はぁ・・・正式に見せてもらうんだから話くらいつけておきなさいよ」

 

「なんで話つける必要があるんだよ?いつもみたいにちょちょいと侵入して、盗み見ればいいだろ?」

 

この言葉に仙人の雷が落ちた。

 

「それじゃ泥棒でしょうがあああああああああ!!!!!!!!!」

 

そのまま華扇の右腕が顔面にめり込んだ。

 

「私とそこの小鈴さんはあなたと違って泥棒じゃないの!なに悪いことの片棒かつがせようとしてんのよ!」

 

吹き飛んだのち、むくりと身体を起こす。想像以上にダメージが入った。かなり痛い。

 

「へへへ・・・どうせならスリルあったほうが・・・へぶし!」

 

続きを言おうとしたら再び殴られた。

 

「どうやら館にいくまえに少しばかり説教が必要なようですね・・・」

 

怒りのオーラをまとわせながら華扇が近づいてくる。どうやら完全にスイッチを入れてしまったようだ。

 

「小鈴さん少し待っててね。この愚か者を説教するから」

 

恐ろしいくらいの満面の笑みを浮かべる華扇。その表情に恐怖を感じたのか、小鈴は冷や汗を流しつつ、阿求とともに外へ出ることにした。

 

彼女たちが外へ出たのち、魔理沙の悲鳴に似た叫びがこだまするのは言うまでもなかった。

 

 

 

 

 

***************************************

 

 

 

 

 

「うー 寒い」

 

一方、守矢神社に向かうべく妖怪の山を行く霊夢。

山に入ってから少し肌寒さを感じ、なにかはおりものを持ってくるべきだったなと少し後悔した。

というか、いつもの巫女装束だとわきの部分が開いてたりでなにかと寒い。

それになんかいつもより風が強い気がする・・・・。

 

「あややや!!!」

 

と、聞きなれた声がした。そちらを向くとものすごいスピードで背中に黒い羽をはやした少女・・・・烏天狗がいた。

 

「どうりで風が強いわけよ・・・」

 

めんどくさい相手にあったな、と小さくため息をつく。

 

「毎度おなじみ射命丸です。早苗さんに呼び出されたんですって?なにかあるんですね!」

 

この天狗は相変わらず早いな・・・。めんどくさいと思いつつもこの天狗・・・射命丸

文は相手にしておかないと、新聞にいろいろと好き勝手書かれそうだから適当に相手にしておくことにした。

 

「どこで仕入れたのよ、その話。早苗に呼ばれたのは昨日のことよ」

 

「ふっふっふ、我々の情報網を甘く見てもらっては困りますよ。新聞記者としての勘が異変の前兆を感じ取っているのです!ということでついて行っていいですか?」

 

カメラと手帳を片手に目を輝かせる文。これはもう断っても勝手に着いてくるのだろう。文はそういう奴だ。

 

「変なことさえ起こさなければいいわ。勝手についてきなさい」

 

「わっかりましたー」

 

一応、釘を刺しておく。多分意味ないだろうが。

これ以上ここで無駄な問答をしていると、神社に着くまでに体力を減らしてしまう。

 

「あー 寒い! 早く守矢神社に行ってあったかいお茶でも飲みたいわ」

 

「そうですね さっさといきましょう!」

 

「あんたが言うな!」

 

くだらないやりとりをしながら、早く暖を取ろうと守矢神社へと急ぐ2人なのであった。

 

 

 

 

 

続く

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