「いてて・・・少しは加減ってやつをだな・・」
帽子をつけていてもわかるほどのたんこぶを押さえながら、横を行く仙人に文句を言う。
「いつもより少し厳しくしただけよ。この程度で痛がるようじゃまだ修行が足りないわね」
「お前の修行は修行とは言わない。ありゃ拷問ってもんだ」
「あら?なにか言った?」
「いえ、なんでもありません・・・」
怖いくらいのにこやかな表情に思わず顔をそらした。この仙人はほんっとにおっかない。今日はやっぱりおとなしくしておこう。
「ところで紅魔館ってやっぱり恐ろしいところなんですか?」
後ろに乗る小鈴が聞いてくる。
「噂に聞くほど恐ろしいところじゃないぜ。あそこにいる連中は愉快なやつらさ。吸血鬼にメイドに魔法使いに門番に・・・・おまけに紅茶やケーキが美味しいときたもんだ」
「たしかにそれだけ聞くと、怖くなさそうですね・・・」
「お前も気にいるぞ。珍しい本もたくさんあるからな!」
それを聞いた小鈴はやはり目を輝かせた。
「そんなにですか!毎日行きたいくらいです!魔理沙さん連れて行ってください!」
「くれぐれも本を盗むようなことはしないでね。まあ、店主してるから大丈夫でしょうけど・・・」
華扇はやれやれと肩をすくめた。
と、目的の紅魔館が見えてきた。
「魔理沙、今日は正面から行くのよ」
「わかったわかった。ちゃんと正門から行くよ」
ホントは裏口から入ろうと思っていたのだが、華扇に釘を刺されたのでちゃんと正門から行くことにした。
門の近くで着地し、小鈴を箒から下ろす。
「魔理沙さん、ありがとうございます。なかなか快適な空の旅でした」
「そうか?よかったよかった。なら今度お前の店の本を・・・」
「さあー!行きましょう!」
続きを言う前に遮られた。これはこれ、それはそれということか。
華扇に肩を叩かれ、鼻で笑われた。
「なんで鼻で笑うんだよ」
「さあ、ざまあみろってことじゃない?」
「ぐぬぬ・・・」
「ふたりとも何してるんですかー!はやく行きますよー!」
「ほら、行くわよ」
急かされるようにして門へと走る魔理沙。
どうにも今日は調子が狂うようだ。こういうときは弾幕戦をしても調子が悪い。
もっとも今日は弾幕戦をすることはなさそうではあるが。
「あれ?」
前を走る小鈴が急に止まった。
その背中に思い切りぶつかる。
「急に止まるなよ・・・私だって急には止まれないぜ」
「すみません・・・門番さんがいないと思って・・・」
「たしかにそうね。いつもここにいる門番がいないわね」
いつもならここに門番がいる。だいたい寝ていることが多いが。
そのおかげでだいたいはすんなり館に入ることができる。門番の意味とはいったいなんなのか・・・となるが、それも気軽にお邪魔できる所以なのだろう。
「あいついっつも立って寝てるはずなんだが・・・」
「立って寝てるんですか」
「そう。美鈴のやつはここで立って寝てる」
しゃべりながら周りを見るが、姿はおろか気配も感じない。
「なんか嫌な予感がするわね」
華扇が口にした瞬間、目の前の館から大きな爆発音とともに窓ガラスが割れた。
「!???」
飛び散る窓ガラスの破片を魔法障壁で防ぐ。
「大丈夫か?小鈴!」
「あ、はい・・・ありがとうございます」
「とにかく中へ入るわよ!」
「ああ!」
先へ飛び出す華扇に続くように小鈴の手を引いて走る。
そのままの勢いでドアを蹴破ると、そこには倒れている門番・・美鈴とパチュリーがいた。
「おまえら!大丈夫か!!」
「ま・・・りさね。フランが急に・・・」
息を切らしながら話しかけるパチュリー。その体には思ったより大きなダメージがあるみたいだ。
「フランが!??レミリアと咲夜はどうした?」
「咲夜なら買い出しに行ってて・・・レミィが相手をしているわ」
「おい!華扇!」
呼びかけられた華扇はこくりとうなづいた。
「この二人と小鈴さんは私が見ているわ。魔理沙、任せたわよ」
「ああ!」
とりあえず詳しい話を聞く前に止めなければ。あの吸血鬼姉妹の戦いが外に飛び火するとどうなるか考えるだけで恐ろしい。
箒にまたがり、思いっきり加速する。
「ただの姉妹喧嘩であってくれたら、いいんだがな・・・・」
そうつぶやきながら、弾幕戦の現場へと急いだ。
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「霊夢さんお待ちしておりました」
守矢神社の境内に入るなり、この神社の巫女・・・東風谷早苗に挨拶された。どうやら来るのを外で待っていたらしい。
そして、後ろにいる文に気付いたのか、早苗はハッとした。
「っと、文さんもいらしていたんですね。取材みたいなものですか?」
「そういうことです。早苗さんが珍しく霊夢さんを呼び出したとなればなにかあるだろうと思いましてね・・・」
「なるほど、さすがにはやいですね。まあ、なにかが起こるのは確実だと思うんで、この際ご一緒にどうぞ」
早苗の先導で中へ入る。
「なにかが起こるって、やっぱなにかあったの?」
「そうですね。見ていただければわかると思います」
ある窓の前に立たされた。なにがあるのだろうか?そう疑問に感じていると、早苗はその窓を開いた。
「「!!!」」
視界に現れたのは神社の後ろにある大きな湖だった。
「って、ただの湖じゃないの!!」
特になんの変哲もない光景に早苗の頭をペチペチ叩く。びっくり損した気分だ。
と、横にいる文が首をかしげながら口を開いた。
「や、なにかおかしいですね?」
「おかしいってなにが?」
「なにかが足りません・・・・そう、柱が」
「柱ぁ?」
再度目の前の湖を見る。たしかに柱がない。この湖には御柱といわれる大きくて立派な柱が何本か立っていたはず。
以前、ここの神社の神・・・八坂神奈子と弾幕戦をしたときにその柱の脅威さを身をもって体験したので分かる。
「そうです。御柱がないのですよ、それも1本だけじゃなくて全部が」
「昨日まではあったのよね?」
「はい、おとといの夜・・・寝るまでは確認してます」
「それで昨日朝起きたらなくなっていたと・・・ふむふむ」
文が取材用のノートに書き込む。やはり新聞の記事にするのだろうか。
「特に大きな音とかはしなかったので、気づかなかったのですが・・・」
「あんたが鈍感なだけだったんじゃないの?」
「仮にそうだとしても、神奈子様と諏訪子様が気付いてないんですよ」
「3人が3人とも鈍感・・・なわけはないか。仮にも神様だからねー」
この守矢神社には神様が二人いる。
まあ、この早苗も現人神と呼ばれるので都合この神社には3人の神様がいることになるが。
「その神様二人はなにしてるの?」
「神奈子様は大天狗様のところへ、諏訪子様は地底にブラブラしにいってます」
「やや・・・大天狗様のお客人は神奈子さんのことだったんですね」
「にしても、ここの柱を全部・・・それも気づかれないように盗むなんて大胆な泥棒もいたものねー。魔理沙なんて足元にも及ばないようなテクニックだわ」
「感心してる場合ですか。ここまで大胆なことをされたんですよ。なにかが起こるにきまってるでしょう」
早苗のいうことはごもっともだ。やはりなにかが起こるとみていいだろう。