ボクはナルト君たちが住む家の警護と言う名の監視をしているのだが、この家に張ってある結界が物凄く強力なものだと感じている。
術式が複雑すぎて、それなりに腕の立つものでも破るのは難しいんじゃないだろうか。
何せ、家の中を見ることも会話を聞くことも出来ないのだ。ともすれば力が低いものにはこの家すら認識出来ないかもしれない。
3代目様は4代目様の家を警護&監視しろとボクに命令したのだが、此処に住んでいるのがナルト君とナルト君の叔母というアマネさんという人物だ。
ナルト君は4代目様の息子で、九尾の人柱力だとは知っている。叔母のアマネさんは一般人だと言うが、3代目様の彼女への態度が一般人に対する対応ではない気がする。
どういう人物か、里の人たちからの印象しか情報がないのが実情。会話を聞こうにも聞こえない。中でどんな会話がされているのかもわからない。
この間3代目様にその事を言うと、詮索はするなと言われてしまった。警護だけしておれと。
警護するのはナルトなのかアマネさんなのか、どちらなのかと聞けばナルトだと言われる。
今はナルト君がアカデミーへ行ってるので気を付けるのは、行き帰りだけ。時々2人で出かけているが、その時は護衛は要らないと言われる。どうやら修業でもしているのかもしれない。
帰ってくると、ナルト君がボロボロなのだ。下手をすればアマネさんがおぶって帰ってくる時もある。
警護は1日置き。交代が来るまで夜通しになる。警護の次の日は休み。
そして今日は休みであり、里をブラブラしていると先輩に会った。
「よー。テンゾウ」
明らかにやる気がない感じで先輩はボクに話しかけて来た。
「お久しぶりです。カカシ先輩」
「今日は休みか?珍しい…」
「確かに珍しいかもしれないですね。なんせ今の任務は一日交代で休みがありますから。先輩の方が休みなんて珍しいんじゃないですか?」
「まーそうかもなぁ。…ふーん、いいな。一日交代で休みか…」
「先輩じゃ、この任務は務まりませんよ。遅刻厳禁ですから。遅刻しようものなら交代の奴に殺されちゃいますよ」
「そんなに面倒な任務なのか?」
「…まぁ、面倒と言えば面倒ですかね。(内容は至って楽だけど…)」
そんな会話をしていると先輩は目を見開いてある人を眼だけで追いかけていた。
「どうしたんです?先輩」
「………」
「先輩?」
「っ。スマン。今、懐かしい人に似た人を見かけたもんで…」
「?」
「…ほら、あの人だよ」
そう言ってカカシ先輩は人ごみの中を指差した。
「あぁ、あの人ですか?」
「お前、あの人の事知ってるのか?」
「えぇ、知ってますよ。波風アマネさん。うずまきナルト君の保護者ですよ」
「…っはぃぃ?」
「え?ご存じなかったんですか?」
「えっ?みんな知ってるの?」
「里の皆は知ってますよ?…あぁ、忍びの中では知ってる人って案外少ないのかな?」
「…俺は知らなかった」
先輩はなんだかがっかりした様子で頭を下に向けていた。けど直ぐに頭を上げて、目を見開いてボクの両肩を掴んだ。
「おい!今、波風って言ったか?」
「えぇ、波風アマネ。4代目様の妹さんですよ」
「えぇぇぇぇぇ!!」
「なんですか、先輩。うるさいです!」
「先生に妹がいらっしゃるなんて聞いたことないぞ!!」
「まぁ、いらっしゃったみたいですねぇ」
「…」
あーぁ。先輩目が座って珍しくふてくされてる。これは、きっと3代目様に聞きに行きそうだなぁ。
「テンゾウ、悪い!用事思い出したからまたな!」
やっぱり…先輩は瞬身で消えて行った。3代目様、大丈夫かな?
その二人のやり取りを屋根の上で見ている二つの影があった。
「おい、今の話は本当か?」
「儂ぁは知らんぞ?」
「じゃあ、先生に聞きに行くか。」
「そうじゃのう、説明して貰わんと…」
二つの影がそう会話をして火影執務室の方へ移動していった。
アマネは彼等に見られていた事と彼等の会話の内容を内なる彼女に教えられて面倒なことになって来たなぁと思いながら、買い物を済ませ自宅へ戻って行った。
コンコン。
遠眼鏡で、先ほどのやり取りを見ていたヒルゼン。アマネと同じことを考えていたようだ。
ヒルゼンはため息を一つ吐き、返事をした。入ってきたのは、はたけカカシだった。
「三代目様、お聞きしたいことがあります」
「うむ…。ナルトの保護者の事か?」
「はい、彼女は…」
「テンゾウが言っておった通りじゃ。波風アマネ、ミナトの妹じゃの。ミナト達が亡くなり、ナルトの世話係を他の者に頼もうとしておった時に現れての。最初は怪しんだのだが、ミナトの事をよう知っておった。儂らが調べたミナトの事細かな個人情報と一致したので、任せることにしたのじゃ」
「確かに、あれだけ先生にそっくりだと、誰かの変化と言う可能性は低いですね。気配を探っても懐かしく感じますし。(それに先生を女性にするとあんなに美人だったなんて)」
「ナルトの境遇を考えれば、身内に育てさせるのが最善だと判断したまでじゃ」
「解りました。ありがとうございました。では、失礼します」
納得したのかカカシは執務室を退出した。気配を探れば、里の方へ戻って言った様だ。安心したのもつかの間、直ぐにまたノックが聞こえ返事をする間もなくドアが開かれた。
「先生、ただいま戻りました。お久しぶりです」
「先生、綱手を連れてきたぞい」
「うむ、自来也ご苦労じゃった。綱手や、良く帰って来てくれた」
「先生、ナルトの事だが…」
「さて、お前達の質問に答えねばならぬな」
「あ、はい」
ヒルゼンはゆっくりと掛けていた椅子から立ち上がると、ドアの方へと歩き出した。
「疑問はわかるが、まずはついてきてくれ。ここでは説明できぬ故な」
「はぁ、やはり来ましたか。面倒ですねぇ……何処まで話してよいのやら」
「そうねぇ。ナルトに修業を付けている時点で一般人じゃないしね」
「ま、がんばって!」
「丸投げかよ~!!」
九喇嘛はナルトがアカデミーに行っている間はナルトの中へ戻っている。アマネが九喇嘛に居てくれと頼まない限りは。
アマネは買い物から帰宅後、波風のままの姿で自宅の結界を少し変えてヒルゼンたちが来るのを待っていた。
暫くすると、ノックが聞こえた。
「はーい、どちら様ですか?」
「儂じゃ、ヒルゼンじゃ」
「今開けますねぇ~」
ドアを開けると、困った顔をしたヒルゼンと、顎が外れんばかりの自来也。目を見開いて驚きを隠せない綱手の姿があった。
「いらっしゃいませ、3代目様。どうぞお上がり下さい」
「うむ、邪魔するぞ」
「お2人もどうぞお入りになって」
呆けた2人は、ハッと我に返りゆっくりと家に入って来た。入った途端3人は違和感を覚え、ヒルゼン以外は警戒している。
「おぬし達、何をしている?此処は大丈夫じゃよ」
「え?」
ヒルゼンが普通にしている。2人は驚いていた。
「あら、御免なさいねぇ。ちょっと強力な結界を張り直しておいたの。色々と問題がありますからぁ」
「アマネ様、そろそろよろしいですか?」
「…はぁ、やっぱり説明しなくては駄目かしらね?」
「こやつらは、納得しないとしつこいですからな」
「あら、忍びは皆同じでしょ?」
「そうかもしれませぬな」
アマネとヒルゼンはハハハ、ホホホと笑っている。2人は訳が解らないと首をかしげていた。
「さて、では説明いたしますね。初めまして。私は”うずまきアマネ”と言います」
「え?波風ではないのか?」
「えぇ、うずまきです」
「だってその姿、ミナトそっくりだぞ!ミナトの妹と聞いたのだが…」
「確かに、ミナトそっくりじゃのぅ。それに、ミナトに兄弟がいたという話は聞いておらん」
「えぇ、この姿は里の皆さんを化かすためにしてますから」
「え?変化の術…?」
「変化している感じはしないんだが?」
「ま、百聞は一見に如かずですね」
アマネは変化を解いた。その途端、ヒルゼン以外の2人はまた驚きを顕にしている。
「「…クシナ?」」
「ふふふ。違いますよ。クシナの双子の姉のアマネです。どうぞお見知りおきを」
「……えぇぇぇぇぇ!!」
「これ、自来也。五月蠅いぞ」
「えっ、あっ、すっ、すまん」
「先生、これは…」
「うむ。自来也なら知っておるかの?うずまき一族の伝承を」
「…『世が再び混乱に落ちし時、全てを治める巫女顕る』
『その者、内に秘めしは全ての始まりの力と愛を持ち、そして全てを治めし者の側にある』
『その者、産まれ出流は暖かき光に包まれ、御験五色の彩雲と伴に顕る』でしたっけ?」
「そうじゃ。その巫女様がアマネ様じゃ」
「本当ですか?」
「うふふ。本当です。私は時が来るまで赤子の時よりある場所で封印されていたので、クシナには一度も逢ったことも話したこともありませんけどね」
「!お婆様が時々何処かへお出かけになっていた。もしや、貴女に会いに行かれていたのか?」
「はい。綱手様とミト様の貴重なお時間を割いてしまい、申し訳ないと思っていました」
「い、いえ。私ももう大人になっていたので、それは気にしないで頂きたい」
「そうですか。それは良かったです」
「で、なぜミナトの妹なんぞに変化をしておるのだ?」
「これ、巫女様になんて口の利き方じゃ!」
「3代目様、よろしいのですよ」
「しかし…」
「よいのです。…そうですね、自来也様の疑問も最もだと思いますが、敢て言うならナルトの為です。クシナの姿でナルトと一緒に里の中を歩けるわけがないですしね。」
「そうか、4代目の妹ならば里の民の同情が惹けると共に、ナルトへの敵意が薄くなる。そう言う事か」
「はい。そう考えました。ナルトも大きくなりましたし、力も付けさせました。自分の身は自分で守れるように」
「…アマネ様は封印されていたとおっしゃりましたが、忍の力はどのようにして?」
「では、少し体験していただきましょう」
アマネは印を結ぶと、いつの間には外の景色に変わっていた。どこの森ともわからない場所。
「え?此処は……?」
「うふふ。とある場所に空間転移したのです。今は本体で移動してますが、当時私は封印されている状態でした。なので、精巧な影分身を作り、変化をしてから此処へ来て修業をしておりました。ご指導はミト様直々にですが」
「これが、巫女の力という事ですか?」
「まぁ、そんなところですね。あの方より授かっている力です」
「……」
「自来也様が習得なさっている仙術も使用できますよ」
「それだけの力があるのでしたら、表に出て頂き戦力として組み込みたいですなぁ。」
「ご冗談を(ニコッ)。私の力は表に出してはいけない力なのです。それは、あの方との約束ですから」
「あの方?」
「えぇ。この先、全ての事象をご存じな方です。予言的なモノとでも思ってください。ですが、全ての事象を話すことは固く禁じられています」
「では、アマネ様は何もかもご存じという事か」
「そうなりますね。私が、大きく事を動かしてしまうと未来が変わります。そうなれば、最善と手を打っていたことが全て無駄になりますね」
「その言い方ですと、裏では動いているという事ですか?」
「…まぁ、動いていると言えば、動いていると言っても良いかもしれませんね。暁の動向には気を付けていますよ」
「……確かに全てご存じの様だ」
「私の存在は、忘れてくださいね。私に頼られても困りますから。あなた方の力で、解決を望んでおります」
「それは、”あの方”とやらが望んでいるという事か?」
「えぇ。私はあくまでナルトの伯母でしかありません。ナルトにも嘘を織り交ぜ、話し聞かせてます。ナルトの事に関しては、ナルトが望みそれが最善であると判断した時のみナルトに力を貸します。そして、火影様の意志、
「だから、いち一般人という事じゃ」
「私が、綱手様と自来也様にお話ししたのは、この事を誰にも話さない・会話の中にも出さないで頂けると信用してお話しています。ご承知願えますか?もし承知頂けないのでしたら即、記憶を消させて頂きます」
「…了解した」
「解った。しっかし、ホントにクシナそっくりじゃ!」
「そうですか?まぁ、双子ですしね。では、元に戻しますね。【解】」
あっという間に元のリビングへと戻って来た。違和感なく、まるで手品のように。そして、いつの間にかアマネはミナト妹バージョンへ戻っていた。
「そろそろ、ナルトが戻ってきます。皆さま、お茶も出さずにすみませんでした。火影様、お忙しいところわざわざありがとうございました」
「いや、こちらこそ無理言ってすまなんだ」
「自来也様、いずれナルトに仙術の修業をしてあげてください。それと、蝦蟇口寄せも…」
「ん?アマネさんがやりゃーいいんじゃないのかの?」
「私がそこまで出来ることをナルトには隠しておきたいので…」
「そうか。あい、解った。時が来たら修業をつけよう」
「ありがとうございます」
「では、失礼するぞい」
「はい」
3人は玄関を出て、火影執務室へ向かっていった。
外を見やると、木の陰に1人此方を伺っている者がいた。それに気が付いているアマネは其処をみて、ニッコリと微笑みドアを閉めたのだった。
一方、陰から見ていたものはその笑顔を見て顔を赤くし、何も言えなくなっていた。ずっと家の中を探ろうとしていたのだが、結界があるのに気づき諦めて彼女が顔を出すのを待っていたのだった。
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