機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第一部クライド編
第1話


 これは夢である。

 彼にとって、忘れることの出来ないあの日の夢。

 その日のオーヴァンは地獄と化していた。

 突如、飛来したUEによって攻撃を受けていた。

 

「ハァハァ……何なんだよ。これは……」

 

 少年、茶髪の少年クライド・アスノは屋敷内を走っていた。

 クライドが屋敷の曲がり角を曲がると、何者かにぶつかり尻餅をつく。

 

「ってて……」

「大丈夫ですか。クライド坊ちゃん」

 

 クライドがぶつかったのはアスノ家に使えるメイド、アリス・バッセルがこの騒ぎがないかのように無表情で立っている。

 

「アリス……」

「大丈夫なら行きますよ。坊ちゃん」

 

 アリスはそう言い、クライドを立たせてその手を引く。

 

「行くって何処に?」

「このオーヴァンから脱出します」

「脱出? 何で? それにフリットや父さん、母さんは?」

 

 クライドは家族の事を問うがアリスは歩くスピードを緩めない。

 

「これは旦那様の命令です。フリット坊ちゃんは奥様が……」

 

 すると、屋敷の廊下が崩れ、アリスがクライドを抱きかかえて後方に飛び、二人は落ちることはなかったが、進路が絶たれた。

 

「とにかく、私は坊ちゃんを無事オーヴァンの外に逃がすことが最終戦です。ご無礼を」

 

 アリスはクライドを抱きかかえると、崩れた場所から外へと脱出する。

 アリスは外に出ると、一目散に屋敷から離れる。

 そのスピードはアリスの外見からは想像もつかないスピードを出しているが、クライドのはそれを気にしている余裕がなかった。

 

「何なんだよ……何なんだよ! これは!」

 

 クライドは地獄と化したオーヴァンを見ながら叫ぶ。

 そして、涙を流しながら、その目に焼き付けていたオーヴァンを攻撃している赤いUEを……

 

 

 

 

 

「っ! ハァハァ……」

 

 クライドは夢から覚めると、自室のベットから起き上がる。

 あの夢の日から6年余りが経ち、当時の少年は青年へと成長している。

 

「また、あの日の夢か……」

 

 クライドは自傷気味に軽く笑いながら、片手で頭を押さえる。

 クライドは未だにあの日の夢を見ることがある。

 それはあの日に誓ったこと忘れていない証拠ではあるが、未だにあの日に囚われている証拠でもある。

 

「ん……んん……クライド?」

 

 クライドの横で黒い長髪の女、エリーゼ・ブランシャールが目を覚まして、起き上がる。

 

「起こしたか、エリーゼ」

「そんなことよりも、またあの時の夢?」

 

 エリーゼはクライドの様子から、クライドがあの日の夢でうなされて起きたことに気づいて心配そうにクライドの顔を覗き込む。

 

「…………」

「クライド……」

 

 エリーゼはクライドを後ろから抱き締める。

 

「大丈夫よ。貴方は一人じゃないわ」

「エリーゼ……」

 

 クライドもエリーゼを抱きしめる。

 

「ああ……そうだな。俺は一人じゃない。それに俺はまだ……」

 

 二人は見つめ合う。

 そして、二人は唇を重ね合おうとするが、部屋のドアが開閉する。

 

「クライド様、艦長、そろそろ目的のサマーウォールの港に入港します。乳繰り合うのは後廻しにしてください」

 

 ドアの外にはアリスがクライドの夢の中と全く変わらない姿で立っている。

 部屋の中のベットの上で今にもキスをしようとしている二人を見ても顔色一つ変える事なく要件を使えると、去って行く。

 

「アリス……」

 

 突然の乱入で、エリーゼは心なしか赤らめており、クライドはため息をついた。

 

「仕方がない……行くか」

「そうね」

 

 

 

 

 

 

 

「待たせたわね」

 

 数分後にはクライドとエリーゼは支度を終え、彼らの母艦「アブディエル」のブリッジに上がる。

 アブディエルは連邦の新造艦『ディーヴァ』の設計データを盗用し、クライドが独自の改良を加えている。

 重力下で運用することも視野に入れてMSのカタパルトは設計図のディーヴァとは大きく異なり、本来はくさび型の艦体だが、くさびの中央から二つに割れており、カタパルトが艦体の前足のように出ている為、重力下でMSが横に傾かなくなっている。

 その他にも艦体全体が黒で塗装され高いステルス性や索敵能力を持ち、艦内の施設も充実しクルーが長期の航海での精神的な負担を軽減している。

 エリーゼは長い黒髪を後頭部で纏めて、スカートにブラウスに着替えており、クライドはその辺りに頓着がないのか、半袖のTシャツにジーパンをはいている。

 そこには、先ほど二人を呼びに来たアリスの他、白衣を来てメガネをかけた細身の青年アルフレッド、赤い髪にショートパンツに、ロングブーツを履いた少女ジゼルが揃っている。

 一見、彼らには共通項がなく無関係な人種に見えるが、皆クライドの仲間である。

 

『パラダイスロスト』それが彼らの組織の名前である。

 

 あの日からクライドはUnknown Enemy……通称UEに復讐を誓い、その為の同士が彼らだ。

 メイドのアリスが何処からかかき集めた資金や連邦軍の新造艦のデータを用いて私設組織としてはかなりの戦力を確保している。

 ブリッジに上がるとエリーゼは艦長席に着く。

 

「艦長、サマーウォールの宇宙港からの入港許可が出ました」

「分かったわ。指示された港に入港を」

「ここに来るのも久しぶりだな」

 

 クライドはそう呟く。

 

「アタシは初めてだけど、このコロニーはどんなところなんだ?」

「行けば分かるさ」

 

 サマーウォールが初めてのジゼルがそう言うが、クライドがそう言う。

 

「取り合えず、向こうさんに行くのは俺とエリーゼ、護衛にジゼルを付ける。ゼロとジゼルのジェノアス改はエミリオに搬送させる」

「ここはアルフレッドに任せるわ」

「構わないけど、そっちは大丈夫なのかい?クライドにジゼルの二人が一緒でさ?」

 

 アルフレッドはクライドとジゼルの組み合わせに不安を感じる。

 クライドは頭は良いが、その場のノリで動くことが多く、ジゼルは考えるより行動するタイプで面倒なことにクライドの事を「アニキ」としたっている。

 

「何だよ。アルフレッド、それじゃアタシとアニキが問題を起こしているみたいじゃんかよ!」

 

 ジゼルはアルフレッドに問い詰めようとするが、クライドが止める。

 

「お前が後先考えないで行動するのはいつもの事だろ?」

「まぁ……そうだけどさぁ……何かムカつくんだけど」

 

 ジゼルは不満そうだが、クライドに止められた以上アルフレットに文句を言いつつも引いた。

 

「話は戻すがそれで良いな」

「そうだな……クライドとジゼルをセットにするのは不安だけど、艦の主要クルーが三人も抜けたら、その穴を埋めるのはアリスくらいなものだからね。それで良いと思うよ」

「決まりね。それじゃ港に入港し次第、私達は先方に行くわね」

 

 

 

 

 

 

 

 

「凄げぇ! 海だ! 海だよ! 姐さん!」

「そうね。海ね。ジゼル」

 

 ジゼルはオープンカーから身を乗り出してはしゃいでいる。

 コロニー「サマーウォール」に入港し、三人は目的地までオープンカーで移動している。

 その際に始めて、このコロニーを訪れるジゼルのテンションは上がっていた。

 逆に車を運転しているクライドと助席に座っているエリーゼのテンションは低い。

 このコロニー「サマーウォール」は常に夏の気候を再現したリゾートコロニーでコロニー内の気温は40度近くまで上がっている。

 そして、内部には海までも再現され、海水浴やマリンスポーツをすることが出来る。

 それを見たジゼルのテンションはウナギ登りだったが、暑さでテンションがだだ下がりになっていた。

 

「海なんで、塩水の塊だろ。飲み水としても蒸留しないと使えないし、パーツの洗浄に使えば錆びる。海の何が良いんだが……」

 

 クライドは忌々しそうにそう言う。

 技術者であるクライドからすれば海水は用途が限られる上にコロニー内の気温を上げる必要性は理解出来ない。

 

「んだよ。アニキもテンション低いなぁ……」

「そう言うお前はテンションが高過ぎるぞ」

 

 クライドは呆れながらそう言う。

 

「だってさぁ、こんだけ熱いと何かテンション上がんない?」

「上がんない」

 

 即答してオープンカーの速度を上げる。

 すると、前方の大きな屋敷が見えて来る。

 リゾート系のコロニーだけに金持ちの別荘が並ぶが、目の前の別荘はその中でも上位に入るのは間違いない。

 

「でっけぇ……」

「相変わらずだよな……」

 

 クライドは屋敷に入るとオープンカーを止める。

 

「ここがクレマン邸だ」

「なぁ、アニキ! アタシ探検して来る!」

 

 ジゼルはそう言い、オープンカーから飛び降りると屋敷に走って行く。

 

「全く……あの子は……」

 

 エリーゼも降りながら、屋敷に入って行くジゼルを見てため息をつく。

 

「そんなら俺は地下に降りてるから、リゼットの相手は任せた」

 

 クライドもそう言いながら、後ろ手に手を振りながら歩いて行く。

 

「ハァ……あの二人は……」

 

 一人残されたエリーゼは渋々この屋敷の家主のリゼット・クレマンに会いに向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相変わらずここは秘密基地みたいで。心が躍るなぁ」

 

 クライドはクレマン邸の地下に隠されているMSの格納庫を訪れている。

 そこのハンガーにはジェノアス改が何機も収容されている。

 ジェノアス改はクライドが連邦軍の主力量産MS『ジェノアス』をベースに設計したMSだ。

 基本的にはジェノアスをベースとしているが、大きく違うのは脚部に陸上での機動力を確保するための『ランドローラー』が追加されている。

 武装面はジェノアスから大きく変更され、コロニー国家間戦争で使われていたMS『ジラ』や『ゼノ』が装備していたマシンガンに独自の改造を加えたマシンガンをメイン武装として装備している。

 それ以外の武装では格闘戦用の武器としてヒートランスが装備され、使わない時は折り畳んで腰の後ろに装備されている。

 また、バックパックには大型のバズーカ『ジャイアント・バズーカ』が付けられており、両腰には小型のミサイルポッドが付けられ、両腕にはアンカー付きのワイヤーも仕込まれている。

 左腕にはミサイルポッドとマシンガンの予備弾装が付いている大型のシールドが装備されている。

 

「おっ、来たかクライド」

 

 格納庫内を歩いていると、マッドーナ工房の工場長、ムクレド・マッドーナがクライドを見つけた。

 

「おやっさん、もう来てたのか?」

「まぁな。それよりも、頼まれていた品を持って来たぞ」

 

 ムクレドに案内されつつ、格納庫の一画に案内されるとそこには一機のMSが置かれている。

 そのMSはジェノアス改とは大きく違い、全体的にがっしりとした体型をしている。

 一番の違いは頭部で、ジェノアスはモノアイの上にバイザーになっているがそのMSはツインアイに額にはV字のブレードアンテナが付いている。

 そして、そのMSには装甲が付いておらず、フレームが剥き出しになっている。

 

 ASN-00 『ガンダムZERO』

 

 それがこのMSの名前である。

 そして、その脇には二つの大型コンテナが置かれている。

 

「完成したのか。ゼロのアーマーが」

 

 大型コンテナにはZEROのアーマーが置かれている。

 ガンダムZEROは装甲を換装することで様々な機体特性を持つMSとしてクライドが数年の月日をかけて設計、製造したMSだ。

 片方のコンテナは白いアーマー、もう片方のコンテナには青いアーマーがそれぞれ収容されている。

 

「ノーマルの方はクライドの注文通りに作ったんだがな……」

 

 ムクレドはそこでバツの悪そうにする。

 

「もう片方のブリーズの方なんだがな……製造の途中でいろいろと試してみたら、スラスター出力を上げ過ぎてな……」

 

 クライドはそれで、ムクレドの言いたいことを理解する。

 

「まぁ、別に構いはしませんけどね。要するに俺がそいつを使いこなせれば問題はない訳だしな」

「そう言ってくれると助かる。残りのグラディエーターの方は今月中にロールアウトする予定だ。それとクライドが設計したジェノワーズも同様だ。完成し次第、連絡を入れる」

「分かった。それで他に発注した物は?」

「持って来ている。デスドール用のビームサイズにジェノアス改用の予備パーツ……」

 

 クライドはムクレドに格納庫に搬入された物資の確認を行う。

 

「注文したパーツは揃ってるな」

「そんで、パーツや武装、アーマーを含めて全部でこれだけだ」

 

 ムクレドがパーツの代金をクライドに見せるが、かなりの額だった。

 

「マジかよ……もう少しまけて貰えない? 幾らなんでも高過ぎやしないか?」

「とんでもない。パーツや武装はともかく、ノーマルアーマーとブリーズアーマーを作るのに一体、どれだけの時間と手間、資金がかかったと思ってる」

 

 ガンダムZEROはクライドが1から設計しているので部品もオーダーメイドの特注品である為、部品一つ一つの製造費を合わせるととんでもない額になるのは当然の事だった。

 

「その上、これだけの設計データを20そこらの奴が設計した以上、MS鍛冶としての創作意欲が湧いて来たんだ。このくらいは貰わんとな」

「最後のは関係なくね……分かったよ。おやっさんにはいろいろと無茶な注文してっから、このくらいは仕方がないか……代金はいつもの口座に振り込んどくよ」

 

 クライドとしても変に代金をケチってマッドーナ工房との関係を悪くしたくはない。

 ムクレドは一代で工房を持つ程のMS鍛冶である為、今後もZEROの部品や新しい装備の開発などで何度も世話になるのは分かり切っているからだ。

 

「それで良い。俺はこれで工房に戻るが、アーマーで何か不都合があれば、言って来い。特別に格安で見てやるからな」

 

 ムクレドはそう言い、マッドーナ工房に帰って行った。

 

「エミリオ」

 

 ムクレドを見送ったクライドはZEROの整備をしているツナギの少年エミリオに声をかける。

 

「師匠、どうしたんすか?」

「ゼロの整備は?」

「完璧ですよ」

 

 エミリオは自信満々で答える。

 見た目こそは現場の下っ端に見えるエミリオだが、整備士としての腕は優秀でそれをクライドに買われてZEROの整備を任されている。

 

「そうか。だったら、すぐにノーマルアーマーを装備しておいてくれ。ようやくまともなアーマーが完成したんだ。いつまでもコイツを裸にさせる訳にも行かないしな」

「了解っす」

「後は任せた。俺はエリーゼの方に行って来る」

 

クライドはそう言い、格納庫を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ……中も凄いな。これ売ったらどのくらいになんだろ?」

 

 ジゼルは屋敷内の美術品や装飾品を見てそう言う。

 クレマン邸は外装だけでなく、内装にも一流の品が飾られている。

 

「金ってあるところにはあるもんだな……このツボも高そうだなぁ……」

 

 ジゼルは通路に置かれているいかにも高そうなツボに触れようとしていた。

 

「そのツボは高そうじゃなくて。高いんだよ」

 

 ジゼルはそう言われると、触れる直前で指を止める。

 

「お前、ここの家の奴?」

「そうだけど、そっちは姉さんのお客さん?」

 

 少年……レオナール・クレマンはそっけなくそう言う。

 

「まぁ、そんなもんだな」

「ふぅん。それで姉さんに何の用なの?」

「アタシに聞くなよ。アタシは護衛だからな」

 

 ジゼルにとって、クライド達がここに来た理由など大した問題ではなかった。

 

「護衛が一人でいて良いの?」

 

 レオナールの疑問も尤もだ。

 ジゼルはクライドとエリーゼの護衛でクレマン邸に来ていると言うのに肝心の二人とは別行動で屋敷内を探索している。

 

「別に構わないんじゃないか」

 

 あまりにも予想外の答えにレオナールは言葉を失うが、突如、コロニーが揺れた。

 

「何?」

「コロニーが揺れやがった! 敵襲かよ!」

「敵? 敵って何?」

「知るか! こっちだ!」

 

 ジゼルはレオナールの手を掴んで、地下の格納庫にへと走り出す。

 

「ちょ!」

 

 レオナールは事態に付いて行けずに、そのままジゼルの成すがままに引っ張られていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「大丈夫か?」

 

 クライドはコロニーが揺れた為、急いでエリーゼがリゼットと会っている応接室に飛び込む。

 そこにはエリーゼの他にドレスの女性、リゼット・クレマンが揺れで倒れないためか、座っている椅子にしがみ付いていた。

 クライドと別れたエリーゼはクレマン家の資産を管理しているリゼットと今後の事も含めての会談を行っていたが、何者かの襲撃でそれどころではなくなっていた。

 

「クライドさん」

「この揺れは?」

「敵だろうな、とにかくここは危険だ。地下の格納庫に向かうぞ」

 

 クライドはリゼットに近寄り手を貸した。

 

「済みません」

「クライド、ゼロは出せる?」

 

 海賊の類なら地下のジェノアス改で十分に対応出来る。

 だが、もしも襲撃して来た相手が最悪の予測通りならジェノアス改では十分に対処出来るか分からないが、完成したZEROであればそれも可能である。

 

「さぁな。エミリオ次第だ」

 

 クライドは確信ありげにそう答える。

 

 

 

 

 

 

 

 クレマン邸やコロニー内が騒然としている頃、宇宙港に入港していたアブディエルは状況の把握をしている。

 

「敵は?」

「UEのMS型が三機、すでにコロニー内に侵入した模様です」

「聞いたね。アリス、敵の狙いはクレマン邸のゼロかも知れない」

 

 アフルレッドはすでにMSに搭乗しているアリスにそう言う。

 通常、MSパイロットはパイロットスーツを着てMSに乗るがアリスはパイロットスーツを着用しないで、メイド服で搭乗している。

 

「その可能性は否定できませんね。すでにアーマーがマッドーナ工房よりクレマン邸に搬送されているので、私はクライド様のゼロが出るまでの時間稼ぎに徹底しますが、それで構いませんか?」

「ああ、構わない。決して無理はしないでくれよ」

「心得ています」

 

 そして、アリスのデスドールは射出されると、コロニー内に向かう。

 アリスのデスドールはマッドーナ製のカスタムMSである。

 ベースはマッドーナ製のシャルドールだが、その外見は大きく異なる。

 一言で言ってしまえば、シャルドールはアリス同様、メイドの姿に近い。

 見た目こそはふざけているが、性能面では通常のシャルドールを上回っている。

 本体を黒で塗装し、白い追加の装甲がメイド服に似せて配置しており、追加装甲には小型のスラスターが内蔵し、表面を軽くアンチビームコーティングがされ、機動力と防御力が向上している。

 武装はジェノアスのビームスプレーガンを二基と投擲用のヒートナイフが下半身のスカートの様な追加装甲に2基と脚部に3基つづ格闘戦用のヒートナイフが脇の下に1基つづ装備されている。

 

「見つけました。報告通り、MS型が三機……」

 

 アリスはコロニー内に入るとコロニー内でビームバルカンを放ち、内部を攻撃しているガフランを発見する。

 

「倒す必要はない。アレの注意を引いて時間を稼げば……」

 

 デスドールは足に装備されている投擲用のヒートナイフを両手の指の間に3基つづ挟みこんでガフラン目掛けて投擲する。

 デスドールの投擲したヒートナイフはガフランの頭部に直撃するが、手傷を負わせることなく弾かれる。

 攻撃を受けたことでガフランはデスドールの存在に気付き掌のビームバルカンをデスドールに向け放つ。

 

「やはり、あれしきの攻撃では意味がない。しかし……注意は引けました」

 

 デスドールはガフランのビームをかわしつつ、クレマン邸からガフランを引き離す。

 

「後はこのまま時間を稼げば……」

 

 だが、アリスの思惑とは裏腹にUEはガフランは一機を残して、クレマン邸へと戻って行く。

 

「全く……可愛いメイドを前にして釣れたのは一機だけ……宇宙人にはメイド萌えは通用しないと見た」

 

 デスドールは両手にビームスプレーガンを持ち、クレマン邸に向かう二機に攻撃を仕掛けようとするも、残った一機がビームバルカンで阻む。

 

「貴方の相手をしている暇はないんですがね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「何で、屋敷の地下にMSが……」

 

 ジゼルに連れられて地下に来たレオナールは地下にMSの格納庫がある事に驚愕していた。

 今までこの屋敷で生活していたが、巧妙に隠されていた地下の存在には全く気が付かなかった。

 

「エミリオ! アタシのジェノアス改は出せるか?」

 

 ジゼルは地下で作業をしているエミリオを見つけて駆け寄る。

 

「関節のパーツ交換は出来てるから出せるよ!」

 

 エミリオはZEROにアーマーの到着作業をしながらジゼルにそう言う。

 

「敵は何か聞いてるか?」

「UEのMS型が三機みたい。一機はアリスが抑えているけど、二機がこっちに向かっているみたい」

「UEがこっちに来ているんですか!だったら、こんなことをしている暇はないじゃないか!」

 

 コロニーを攻撃しているのがUEだと知り、レオナールはジゼルに怒鳴る。

 

「だから、MSで出るんだろ」

「無茶だ! 幾らカスタムをしていてもジェノアスでUEに勝てる訳がないよ!」

 

 UEのガフランの性能は連邦軍ジェノアスを圧倒的に凌駕し、この十数年一度も連邦軍はUEに勝利していない。

 

「んなことはどうでも良い。やらなきゃやられるだけだ」

「やったって何も変わらないよ!」

「知るか。んなもん。けどな、アタシは敵を目の前にして逃げんのは御免だね。そんなに逃げたんなら一人で逃げてろ、腰抜けが!」

 

 ジゼルはそう言い、自分のジェノアス改に乗り込む。

 クレマン邸の庭からリフトでジェノアス改が地上に出て来る。

 

「相手は二機だ。コイツの足でかき回してやるよ」

 

 ジェノアス改はランドローラーで移動しながら、ガフランにマシンガンを放つ。

 ガフランも拡散ビーム砲で応戦するが、ランドローラーで移動してるジェノアス改に当たる事はない。

 

「そんなもんだ!」

 

 ジェノアス改はシールドに内蔵されてるミサイルでガフランの注意を引く。

 

「こっちだ! ついて来やがれ! 宇宙人どもが!」

 

 ランドローラーを使い左右に蛇行しながら、ガフランにマシンガンを放っているが、もう一機のガフランが前に回り込んでおり、ビームサーベルを振り下ろす。

 

「糞ったれ!」

 

 ジェノアス改はシールドで防ぐが、そのまま後方に倒れ込む。

 

「まずった!」

 

 ガフランは倒れてるジェノアス改にビームサーベルを振り下ろそうとする。

 

「止めろ!」

 

 レオナールの叫びと共に一機のジェノアス改がシールドでガフランに突っ込む。

 レオナールのジェノアス改はガフランに突撃して倒れ込む。

 

「お前……何で?」

「僕は……僕は腰抜けじゃない!」

 

 レオナールは震えた声で叫ぶ。

 ジェノアス改は倒れた状態でガフランにマシンガンを連射する。

 ジェノアス改のマシンガンではガフランの装甲を傷つけることは出来ない。

 ガフランは狙いをジゼルのジェノアス改から、レオナールのジェノアス改に変えたのか、ビームサーベルを展開したまま、接近する。

 ガフランがビームサーベルを振るうとレオナールのジェノアス改はマシンガンごと右腕を切り落とされる。

 

「くそ! 離れろよ! この野郎が!」

 

 ジゼルのジェノアス改がマシンガンで援護するも、ガフランにはまるで効果がなく、ビームサーベルを振り上げる。

 ガフランがビームサーベルを振り下ろそうとするが、二機の間に白い影が割り込む。

 その白い影は左腕のシールドでビームサーベルを受け止める。

 

「アニキ!」

 

 二機の間に割り込んだのは、地下の格納庫でノーマルアーマーに換装したガンダムZERO N(ノーマル )

 ノーマルアーマーはZEROのアーマーの中でも最もスタンダードなアーマーとされている。

 全身を白いアーマーで統一され、武装はバックパックに高出力のビームサーベルが二基と手持ちの高出力ビームライフル、そしてZEROのフレームについているビームバルカンだけである。

 防御用の装備としてジェノアス改のシールドを改良し、マシンガンの弾装からビームガンに変更となっている。

 バックパックには高出力のスラスターが二基搭載され、そこにビームサーベルも装備されている。

 

「待たせた」

 

 ZEROノーマルはガフランのビームサーベルを押し戻すと、右手のビームライフルを腰に付けるとバックパックのビームサーベルを抜き、ガフランに突き刺す。

 ビームサーベルはガフランの腹部に突き刺さるとガフランは爆散した。

 

「UEを倒した……」

 

 レオナールは目の前で起きたことに驚いている。

 今までUEに対して、人類は敗北しか聞こえて来なかったが、目の前でそれは覆った。

 ガンダムZEROの装備している武器は通常の武器よりも遥かに高出力化されており、ガフランの装甲をもろともしない攻撃力を得ている。

 だからこそ、ガンダムZEROはガフランを撃墜すつことが可能となっていた。

 

「流石アニキだ……」

「ようやくだ。ようやく……お前たちにあの時の復讐が出来る。さぁ……行くぞ。ガンダムZERO!」

 

 クライドは完成したガンダムZEROが確かにUEに対して効果的である事を噛みしめていた。

 そして、クライドの時はあの日から動きだす。

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