機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第四部三世代編
第96話


 ヴァニスによるネオ・ヴェイガンの建国宣言から一か月。

 世界の情勢は大きく変わっていた。

 ヴァニスの元には反連邦組織などが参加に入り、連邦軍からもネオ・ヴェイガンに寝返る者も後を絶たなかった。

 ヴァニスは宣言通りに自分に屈服する者は誰であれ受け入れ、その能力に応じた対応をしている。

 そこに元ヴェイガンの戦力を合わせると連邦軍の戦力を容易に上回っていた。

 ビッグリング、ロストロウラン、ルナベースを失った連邦軍は宇宙での戦力を大幅に削られ、残っている戦力は宇宙の各所でネオ・ヴェイガンと小競り合いをしているが、ほとんどが敗走している。

 連邦軍とヴェイガン、UIEの三つ巴の戦争から連邦軍は半ば脱落しかけているのだった。

 だが、連邦軍にもフリット・アスノが率いるディーヴァやユーリア・アスノのバロックスなどの部隊が善戦を続けている事もあり、軍全体の戦意は完全に失った訳でもないが、連邦軍の敗色が濃い事は事実であり、連邦軍のスポンサーや政府の首脳陣などは連邦軍に見切りをつけ始めていた。

 連邦軍の残された戦力の内3分の1がノートラムに配備されているが、そのノートラムにネオ・ヴェイガンの本部として運用されているヴァニスの搭乗艦であるグレート・エデンが接近していた。

 グレート・エデンは単艦だが、配備されている戦力で十分にノートラムに侵攻出来ると踏んでノートラムに侵攻を開始するのだった。

 格納庫にはヴェイガンの時からの主力機であるダナジンやドラドの他にこの一か月で優先的に量産した新型の量産MS「量産型レギルス」はすでにグレート・エデンには配備されている。

 量産型レギルスはガンダムレギルスを元に開発されたネオ・ヴェイガンの主力機だ。

 コストを大幅に削減する為に武装のビームバスターやレギルスキャノンを拡散ビーム砲やビームライフルに変更し、レギルスコアやセンサーバルカン、ツインアイ、Xフレーム、Xトランスミッター、ライフルとシールドと言った物を廃止して徹底的コストダウンを図った。

 その結果、機体性能はガンダムレギルスよりも大幅に低下するも、ダナジンレベルまでのコスト削減に成功し、機体性能はダナジン以上を確保している。

 その上でXラウンダーでなくとも扱えるように改良して量産型レギルスは完成した。

 カラーリングにはヴェイガンが初めて実戦投入したMS、ガフランと同じダークブルーで統一する事でネオ・ヴェイガン初の量産MSとして実戦投入されている。

 すでに100機程量産され、ネオ・ヴェイガンの各部隊に着々と配備が進んでいる。

 

「お前ら、今回が初陣の新人がいるんだ。気を抜くんじゃねぇぞ」

 

 量産型レギルスの指揮官機仕様の量産型レギルスLのコックピットでゴドム・タイナムは部下にそういう。

 ゴドムの量産型レギルスLはカラーリングがダークブルーからドラドと同じ紫になっている以外は基本性能に差異はないが、左腕にドラドの三連装バルカンの内蔵された小型シールドとジルスベインガンを母体に開発されたレギルスガンを装備している。

 ゴドムの言葉にドゴム隊の量産型レギルスのパイロット2人は返事をして、3機目の量産型レギルスのパイロットのディーン・アノンは上ずった声で返事をして操縦桿を無意識のうちに強く握り絞める。

 ネオ・ヴェイガンの新たな方針の1つに若者は必ず軍に所属する事があった。

 旧ヴェイガンの時は軍へは志願制で大抵の若者は軍に入るが、強制ではなかった。

 だが、ネオ・ヴェイガンではそれが強制となり、それを拒めば最低限の水と食事で死ぬまで強制労働が科せられる。

 建国宣言の時にも地球の人間をも受け入れる事に否定的な人間は家族もろとも強制労働に回されている事もあり、ほとんどの若者が軍に入っている。

 ディーンもその中の1人であった。

 しかし、その反面軍で戦果を挙げた場合はそれ相応の報酬が自分のみならず家族にも支給される。

 強制的とはいえ軍に入る事を苦痛に思う者はほとんどいなかった。

 その上で新兵を育てる為のシステムとして4人で1つの小隊として中堅以上のパイロット3人に新兵を1人で小隊を編成している。

 その小隊は運命共同体で戦果も失態も小隊規模で判断される。

 つまり、新兵が撃墜されるとそれは小隊の失態となり小隊だけではなくその家族に対しても処罰の対象になる。

 ベテランのパイロットは足を引っ張り合いにならないように前の陣営を関係なしに連携を取り、実力で劣る新兵のフォローをする事で小隊の失態を減らすのと同時に新兵の戦死率を減らす事になる。

 また、新兵もいつまでもベテランのパイロットのおかげで戦果を挙げる事に申し訳なさを感じるようになり、自身の実力を上げようと必死となり結果として小隊の実力を底上げにする事になっている。

 ミスを犯せば家族にまで徹底的な罰を与え、結果と出すと家族にも裕福な生活を与えると言う飴と鞭を使う事でネオ・ヴェイガンの兵の実力は高い水準を誇る。

 

「ゴドム隊、発進をお願いします」

「おう、ゴドム隊、出るぞ」

 

 ゴドムの量産型レギルスLを先頭にドゴム隊が発進する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレート・エデンから次々とMSが射出される。

 グレート・エデンには100機近くのMSが搭載される為、単艦でも戦力は十分な程搭載できる。

 ブリッジでヴァニスは艦長席に座りMSが展開して行くさまを見ている。

 あれから一か月で自身の体は発作のたびに頭痛に加えて吐血をするなど確実の悪化しているが、部下の前では決してそれを見せる事はなく毅然と振る舞っている。

 その後ろにはヴァレリが立っている。

 ヴァレリはゼハートの離反にザナルドの戦死によってヴァニスの側近がいなくなったこともあり、いつの間にかヴァニスの参謀の地位に納まっている。

 ヴァニスもヴァレリの中の野心には気が付いているが役に立つとの理由で自分の傍に置いている。

 

「陛下、MSの展開を完了しました」

「うむ。向こうに通信を繋げ」

 

 ヴァニスは艦長席から立ち上がると連邦軍側へ通信を繋ぐように指示を出す。

 少しすると音声だけだが回線が繋がる。

 

「こちらはネオ・ヴェイガンの女帝、ヴァニス・イゼルカントだ。お前達には即時の武装解除と無条件降伏を勧告する。ただちに我が軍門に下れ」

 

 ヴァニスは一方的に勧告するが、ノートラムに駐留している連邦軍の戦艦からはアデルマークⅡやクランシェが射出される。

 

「成程、それが答えと言う訳か……」

「愚かな選択をしましたね。全軍攻撃開始です」

 

 MSを展開したと言う事は連邦軍に降伏する意思はないと言う事になる。

 その為、展開していたネオ・ヴェイガンのMSにノートラム駐留軍に対して攻撃命令が発令される。

 

 

 

 

 

 戦闘が開始されるがネオ・ヴェイガンは量産型レギルスを中心として連邦軍を圧倒している。

 連邦軍も何とか持ち堪えてはいるが確実に押されている。

 アデルマークⅡがディーンの量産型レギルスにドッズガンを放ち、ディーン機は腕の電磁装甲で防ぎながら、ビームバルカンを放つが上手く当たらない。

 だが、2機の量産型レギルスがビームライフルで牽制してゴドムの量産型レギルスLがレギルスガンの先端にビームサーベルを展開して、アデルマークⅡを両断して三連装バルカンでクランシェを撃墜する。

 

「新入り! お前は俺の後ろで援護してろ!」

「はい!」

 

 ゴドム機はレギルスガンを連射して、ディーン機もビームライフルでゴドム機を援護する。

 戦闘は全体的にネオ・ヴェイガンの優勢で運び連邦軍のMSは次々と破壊されていく。

 

「呆気ない物だな。これでは私が出る幕はなさそうだ」

「ですね。陛下、ここは親衛隊を出撃させてより確実に勝利を収めてはどうでしょうか?」

「親衛隊か……悪くない案だ。アイツらにも戦場を用意してやらねばな」

 

 ヴァレリはヴァニスに親衛隊を出撃させる事を進言する。

 親衛隊とはこの一か月に結成された部隊でその名の通りヴァニスの親衛隊をして組織された部隊だ。

 元連邦軍のエースパイロット、ジラード・スプリガンを隊長として常にヴァニスの周辺警護を任される事から全員が女性で編成されている。

 結成してから一度も実戦に投入する局面が無い為、今まではグレート・エデンにてヴァニスの警護の任務しかして来なかったが、今後の事を考えると実戦に投入するしておいた方が良い。

 

「ではすぐに準備させます」

 

 ヴァレリはすぐに親衛隊の出撃準備に入らせる。

 

 

 

 

 

 グレート・エデンの中に作られている親衛隊専用の詰所でジラードは出撃準備が出た事を聞かされる。

 ジラードは親衛隊の隊長になった今でも連邦軍の軍服を身にまとっている。

 それは連邦軍へのあてつけの意味もあり、ヴァニスも元連邦軍でも実力さえあればネオ・ヴェイガンで高い地位につけると言う事も示す意味もあり、特に問題にはされていない。

 親衛隊専用の詰所には一般のパイロットの詰所よりも明らかに広く、詰所と言うよりは高級ホテルのラウンジ並みの設備が整っている。

 

「隊長、何かあったんですか?」

 

 指示を受けていたジラードに元CMCの傭兵のアキラが尋ねる。

 ホワイトファングがCMCを離反した時にホワイトファングを降りたアキラだが、ネオ・ヴェイガンは性別も関係なしに能力さえあれば上に上がれると言う事でCMCからネオ・ヴェイガンに移籍している。

 そして、その実力が認められて今ではヴァニスの親衛隊にまで昇り詰めている。

 

「出撃命令が出たわ」

「えー。こんな戦闘に私らが出る必要ないじゃん」

 

 出撃命令にシェリー・アーリスは明らかに不快感を露わにしている。

 シェリーは親衛隊の中で最年少の12歳だ。

 まだ幼いとも言える年だが、親衛隊の中でジラード以外で唯一、Xラウンダー能力を持っている。

 パイロットとしてのセンスも非常に高い事もあり、親衛隊の一員としてスカウトされた。

 

「文句を言うな。シェリー、陛下のご命令だ」

 

 戦闘をめんどくさがるシェリーをコーデリア・ウッドヴァインが注意をする。

 コーデリアは元は連邦軍に吸収されたブリッシュ公国の生まれでブリッシュ公国のお国柄である騎士道をを持り、ヴァニスを主として忠誠を使っている。

 故にヴァニスの命令は絶対だった。

 

「まっ、あたし等は所詮兵隊だから上がやれと言えばやるだけよ。諦めなさい」

 

 タチアナ・バラノフスキーが納得がいかないシェリーにそういう。

 元連邦軍の特殊部隊に所属し、親衛隊の中で最年長のタチアナはコーデリアのようにヴァニスに忠誠を誓っている訳ではないが、親衛隊である事を仕事として割り切っている。

 

「そういう訳だから、私達はすぐに出撃準備に入るわよ」

 

 隊長のジラードがそう締めてシェリーも渋々だが、出撃準備に入る。

 

 

 

 

 

 

 グレート・エデンの親衛隊専用の格納庫には5機のレギルスタイプのMSが置かれている。

 量産型レギルスの先行試作機と親衛隊に合わせてカスタムがされている。

 隊長であるジラード専用機のレギルスGはティエルヴァとほぼ変わらない操縦システムが採用され、ティエルヴァと同じ色で塗装がされている。

 ジラードがXラウンダーである事もありエンビットシステムが搭載され、レギルスビットも使う事が出来る。

 装備は右手にレギルスライフル、左腕に質量装甲で出来た大型シールドを装備し、汎用型MSとして調整がされている。

 親衛隊の副隊長であるコーデリアのレギルスCは機体に鎧を着ているかのように追加の装甲がつけられた白兵戦用のカスタムがされている。

 聖騎士を思わせる白銀の装甲に身丈程もある大剣、レギルスブレードを装備し、両腕には量産型レギルスLが装備している三連バルカンと内蔵した小型シールドを装備している。

 アキラのレギルスAはアキラの得意をするドッグファイトを行えるようにゼダスの可変機構を採用する為にフレームから大幅に改造されている。

 倉庫に眠っていたゼダスのパーツを改良する事でゼダスに近い形状になっており、胸部の拡散ビーム砲はダナジンキャノンを流用したビームキャノンに変更されて手持ちの武器はなく、尾にゼダスソードやゼイドラソードの発展系のレギルスソードが装備されて。ゼダス同様に黒で塗装されている。

 シェリーのレギルスSはジラードのレギルスG同様にXラウンダー能力に対応した調整とエンビットシステムが搭載されている。

 ギラーガのギラーガスピアとギラーガテイルの発展系の大きな鎌状のビーム刃を形成し、ビーム砲が内蔵されているレギルスサイズとレギルステイルを装備して、ギラーガよりも薄い赤で塗装がされている。

 タチアナのレギルスTはダークグリーンの塗装がされた砲戦用のカスタムがされている。

 ガンダムAGE-FXのダイダルバズーカの技術が使われているレギルスランチャーを装備している。

 レギルスランチャーは発射時に三つ又に割れて中央からビームが放たれるが、チャージには時間がかかる為、三つ又の先端にはドッズライフルの銃身が内蔵されている。

 また、閉じた状態では巨大なビームソードを展開する事も可能になっている。

 この5機がヴァニスの親衛隊専用のMSである。

 5機とも元は量産型レギルスであるが、改良によって一騎当千の戦闘能力を発揮する事が可能となっている。

 

 

 

 

 出撃した5機のMSは戦場の中心部に進む。

 

「タチアナは援護は援護をお願い」

「了解」

 

 砲戦仕様のレギルスTは足を止めるとレギルスランチャーを構える。

 レギルスランチャーの中央が三つ又に開閉して、エネルギーをチャージする。

 

「チャージ完了。レギルスランチャー発射」

 

 レギルスランチャーが発射され、射線上の敵MSを破壊して行き、後方の戦艦を撃沈する。

 レギルスランチャーの発射を終えると開閉していた砲身を閉じてレギルスランチャーの先端のドッズライフルを放ちながら、先行している4機を追いかける。

 レギルスAは飛行形態で4機よりも先行しビームキャノンで戦艦を撃沈すると、MS形態に変形してレギルスソードをつけてアデルマークⅡを切り裂く。

 その後から3機のレギルスが到着する。

 

「各機、散開して連邦軍のMSを蹴散らしなさい」

 

 レギルスGはレギルスライフルでクランシェを撃墜する。

 

「行きなさい。ビット」

 

 レギルスビットが射出され周囲のMSを破壊して行く。

 

「私の分も残してよね!」

 

 シェリーのレギルスSがレギルスサイズで複数のMSを一振りで切り裂く。

 

「アハハハァ! 行って! ビット!」

 

 レギルスSのレギルスビットはクランシェの方に向かう。

 クランシェはビームバルカンで迎撃するが対応しきれずに頭部に直撃し、バランスが崩れたところに更にレギルスビットの直撃を受けて撃墜される。

 アデルマークⅡが複数でレギルスSにドッズライフルを放つが、レギルスSはレギルスサイズを回転させて防ぎレギルスビットでアデルマークⅡを破壊する。

 

「そんなんで私を倒せる訳ないし!」

「余り調子に乗るなよ。シェリー」

 

 コーデリアのレギルスCはレギルスブレードでアデルマークⅡをシールドごと両断する。

 

「うるさいわね。私がどう戦おうと私の勝手でしょ!」

 

 レギルスSはレギルスサイズを構えてレギルスサイズで敵MSを一振りで葬り去る。

 レギルスCはレギルスブレードを盾にしながら戦艦に突っ込んで戦艦の主砲をレギルスブレードで防いでブリッジに取りつくとレギルスブレードでブリッジを潰し、左腕の小型シールドの三連装バルカンを連鎖する。

 4機のレギルスが猛威を振るい、レギルスTが合流する事で更に猛威を振るう。

 

 

 

 

 

 5機のレギルスの戦いをグレード・エデンのメインモニターに映される。

 その戦闘をヴァニスはつまらなそうに頬杖を突きながら見ている。

 これ程まで圧倒的な戦闘ではヴァニスの出番はない。

 

「圧倒的ですね。親衛隊は」

「そうだな……」

 

 親衛隊を手こずらせる程の敵がいればヴァニスも出撃する事も考えられるが、このままでは簡単に押し切るのは時間の問題だ。

 

「陛下、連邦軍より降伏宣言が届いていますがいかがなさいますか?」

「ヴァレリ、何かあったか?」

「さぁ? 私には分かりかねます」

 

 ヴァニスはわざとらしくヴァレリに尋ねてヴァレリも白々しく答える。

 当然、ヴァニスやヴァレリにも降伏宣言が送られて来ている事は確認出来る。

 だが、それをどちらも何もないと言う。

 つまりは連邦軍からの降伏を無視すると言う事を遠回しに言っている。

 

「どうせ、降伏宣言を言ったところだろう。ヴァレリ、我が軍に敗者は必要か?」

「いえ。必要ありません」

「そういう事だ。MS隊にも伝えて置け」

 

 このタイミングで連邦軍がこちらに通信を送って来る理由は降伏すると言う事を伝えようとしているのだろう。

 しかし、ヴァニスは降伏を受け入れる気は無かった。

 始めに無条件降伏を勧告した時に連邦軍はMSを出撃させて戦う意思を示した。

 その時点でヴァニスはノートラムの防衛部隊を敵として判断し、殲滅する事を決めている。

 今更、降伏を宣言して武装を解除したところで殲滅する事には変わらない。

 

「奴らを生かす理由はない。1人残らず始末しろ。タチアナはコロニー内に侵入し、ノートラムを確保しろ」

 

 連邦軍は生かすつもりはないが、ノートラムはネオ・ヴェイガンにとっても地上に部隊を送る為と、ノートラム内の工廠は価値がある事あり元連邦軍の特殊部隊出身のタチアナはコロ

 

ニーの制圧の向かわせる。

 

「殲滅ね……聞いたわね」

 

 前線の親衛隊にも敵を殲滅するように指示が入る。

 レギルスGはレギルスライフルを戦艦に数発撃ちこんで撃沈する。

 

「了解」

 

 レギルスAは飛行形態に変形すると、ビームバルカンで敵MSを蹴散らしてビームキャノンで複数のMSを撃ち抜く。

 

「当然!」

「お前達に恨みはないが、陛下のご命令だ」

 

 レギルスSがレギルスビットを使い、アデルマークⅡやクランシェを撃破し、レギルスCは拡散ビーム砲を戦艦に撃ちこんで撃沈する。

 降伏宣言をしても返答はなく、敵の攻撃を続ける事で次第に戦意を失い敵から背を向けるMSも出て来る。

 

「戦場で敵に背を向けるか……恥を知れ!」

 

 レギルスCは背中を向けて逃げようとするアデルマークⅡをレギルスブレードで両断する。

 1機が逃げようとした事で連邦軍のMSもタカが外れたかのように逃げようとするMSが増えて来る。

 だが、敵に背を向けた事で次々と撃破されていく。

 

「アキラ、陛下からコロニーの制圧の指示が出たから乗せて」

「全く……」

 

 レギルスAは飛行形態でレギルスTを背に乗せるとビームキャノンとビームバルカンを撃ちながらノートラムに向かう。

 2機のレギルスが抜けたところでネオ・ヴェイガンの戦力が低下する事もなく、残りの3機でも十分に圧倒出来る。

 その上でネオ・ヴェイガンの量産型レギルスも次々と連邦軍のMS撃墜し、やがて連邦軍のMSと戦艦は全滅しネオ・ヴェイガンが戦闘に勝利する。

 

 

 

 

 

 

 

 ネオ・ヴェイガンのノートラム侵攻は連邦軍の全滅でネオ・ヴェイガンが勝利した。

 その後もノートラムにタチアナが先行し、内部の制圧も完了するほどなく完了した。

 それにより、グレート・エデンはノートラムに管制を掌握し、完全にノートラムはネオ・ヴェイガンの制圧下に入る。

 住民も連邦軍が全滅した事で抵抗をする事なく、ネオ・ヴェイガンを受け入れざる負えなかった。

 もしも、抵抗すれば民間人だろうと容赦なく殺されるからだ。

 初めは抵抗した者もいたが、生身の人間が鉄パイプなどで武装しただけの者に対してネオ・ヴェイガンはMSを使った事も住民から抵抗の意志を奪った。

 ノートラムを制圧した事でヴァニスはブリッジを離れて自室へと戻っている。

 ヴァニスの自室には相変わらずキオが軟禁状態になっている。

 そこでキオは特に尋問をされる事もなく、情報端末から外の情報もリアルタイムで得る事も出来、生活も部屋から出る事が出来ない事以外は自由に動く事が出来る。

 部屋から出れないと言ってもネオ・ヴェイガンのトップの自室だけあり、生活に不自由を感じる事もなくネオ・ヴェイガンでもキオの扱いはヴァニスの許可がなければ接触をする事すら許されてはいない。

 その扱いは捕虜ですらない事から、ネオ・ヴェイガンではキオの扱いはヴァニスがそう言う異性の趣味があるのではないかと噂されるが、そんな事をヴァニスの耳に入ればどんな罰があるか分からない上にヴァニス自身、自分の噂になど興味はない為、キオの扱いに関してはネオ・ヴェイガンでは誰もが触れないようになっていた。

 

「戦闘があったんですか?」

「ノートラムを制圧した」

 

 ヴァニスはキオの質問に嘘をつく事もなく答える。

 どの道、外の情報を得る事の出来るキオの嘘をつく理由はない。

 

「また、多くの人が死んだんですね」

「私は無条件降伏を勧告したが連邦軍は戦う道を選んだ。だから、殲滅したに過ぎない」

「だからって!」

「これは戦争だ。敵を撃つのは当然だ。お前もそうして来たのだろう」

 

 キオはヴァニスに言い返す事は出来ない。

 キオもこれが戦争である事は十分に理解している。

 戦争をしている為、人が死ぬ事は当たり前だ。

 だがらと言って、人の死を受け入れる事は到底出来ない。

 

「それは……」

「お前と戦争の事で問答をする気は無い。そろそろ、答えを聞かせて貰おうか? 私の物になれ」

「僕に地球の人を殺せって言うんですか?」

「違うな。地球の人ではない。私の敵をだ」

「一緒ですよ。そんなの……」

 

 地球の人間だろうとヴァニスの敵であろうと人を殺す事には変わりはない。

 

「共存は出来ないんですか? 火星圏の人も地球圏の人も何も変わらないなら、和解して平和な世界を作る事だって可能な筈です」

 

 キオは火星圏でルウやディーンと出会って火星圏の人も自分達と変わらない人間である事を知った。

 その為、地球圏と火星圏の間で和解して共存する事も可能なのではと考えるようになっている。

 

「あり得んな。それが可能なら戦争はここまで長引かん。それが出来ないから戦争は続いているのだ。だが、私の作る世界なら戦争は起こらない。私が起こさせない」

「でも、貴女に従わない人は殺すんでしょ?」

「当然だ。私に屈服しない人間は世界には必要はない」

「それがおかしいんですよ! 必要のない人はいません!」

 

 ヴァニスにとっては自分に屈服しない人間は敵で、敵である以上は徹底的に潰す。

 だが、それはキオにとっては到底受け入れる事の出来ない事だ。

 その果てに戦争のない世界になるとしてもだ。

 

「だが、人が増えすぎればそれだけ戦争が起こる可能性が増える。それはかつてコロニー国家間戦争が証明している」

「でも、人はそこから学ぶ事だって出来る筈です」

 

 コロニー国家間戦争は増えすぎた人口が原因の一つとされる。

 ヴァニスは人が増えるとそれだけ主義主張が増える事でそれを受け入れて貰えない時に不満が募りそれば爆発した時に戦争が起こると言う。

 しかし、キオはその間違いから人は学び繰り返さない事も出来ると言う。

 コロニー国家間戦争終結時に「銀の杯条約」によって兵器を捨ててから天使の落日まで戦争は起こらなかった。

 それはコロニー国家間戦争の教訓から人は学んだ為だ。

 どちらも歴史が証明した意見も正しいと言える。

 だが、今はヴァニスの意見とキオの意見は真っ向から衝突している。

 

「陛下、準備が出来ました」

「すぐに行く」

 

 アキラの呼び出しで、キオとの話しを打ち切ってヴァニスは廊下に出る。

 そのまま、ブリッジに向かい、アキラもヴァニスの後ろに続く。

 

「連邦軍に対しての和平の申し出の準備は出来ているけど、隊長は凄く乗る気じゃなかったわよ」

「だろうな」

 

 ヴァニスはアキラに対して連邦軍への和平交渉の場を設けたいと言う申し出をするように指示を出している。

 それによりジラードは明らかにその指示に不服を感じている。

 ロストロウランを初めとして連邦軍の主要な拠点は落ち、劣勢となっているがそれで連邦軍の事を許す気にはなれない。

 

「私は不服とまでは言わないけど、疑問はあるわ。それは他の連中も同じよ」

 

 ジラード程ではないが、アキラを初めとして和平に疑問を持つ者は少なくない。

 連邦軍との戦いは圧倒的な優位に立っている。

 UIEとの戦いに備えて戦力を蓄えるにしてもノートラムを制圧してノートラムの工廠で本格的に量産型レギルスを量産すれば十分で、地球圏の各地からネオ・ヴェイガンに入りたいと言う要望は多く、わざわざ連邦軍に和平を持ち込む意味はない。

 

「連邦軍にはフリット・アスノが残っている。奴は老いぼれだが油断は出来ない相手だ。この和平はフリット・アスノを排除する為の策だと考えてくれれば良い。ジラードにもそう伝えて置け」

「分かったわ」

 

 アキラもヴァニスが何を企んでいるかまでは分からないが、本気で連邦軍と和平を行う気でない事をジラードに伝えておけば一先ずは問題ないと判断する。

 アキラはその事をジラードに伝えるべく、ヴァニスを分かれる。

 

「それがアンタの本性って訳ね」

 

 アキラはヴァニスを一瞥してヴァニスが聞こえない程の声で呟く。

 アキラはヴァニスの仮面の下の素顔はある程度は予想がついている。

 だが、アキラにとっては仮面の下の素顔はどうでも良かった。

 ただ、自分の能力を高く評価している組織のトップがかつての同僚であったと言うだけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァニスと別れたアキラは親衛隊の詰所に来ている。

 親衛隊は命令がない時は大抵はこの詰所にいる事が多い。

 詰所にはジラードとシェリーだけしかいなかった。

 コーデリアはブリッジでヴァニスが戻る事を待っており、タチアナはノートラムにいると思われる。

 ジラードは連邦軍との和平に納得がいかずふてくされてソファーに座り、備え付けのモニターで映像を見ており、シェリーはソファーに寝転んで端末を操作している。

 

「隊長、陛下から聞いて来たけど、連邦と本気で和平を考えてはないみたい」

「どう言う事?」

 

 ジラードは話しに食いつく。

 シェリーも少し興味があるのか、端末を操作するのを止める。

 

「詳しくは知らないけど、フリット・アスノを排除する為の策らしいわ」

「フリット・アスノ? 誰それ」

「アンタ知らないの?」

 

 フリット・アスノの名を知らないシェリーにジラードもアキラも呆れている。

 それだけフリットの知名度は高く、まだ幼いとはいえシェリーも知っていてもおかしくはないからだ。

 

「フリット・アスノ。アスノ家の跡取り息子であるクライド・アスノの弟で14歳でガンダムAGE-1を設計した天才MS鍛冶、蝙蝠退治戦役でXラウンダー能力を開花させて多大な戦果を挙げてその後も戦果を上げ続けて異例の大出世をした連邦軍の英雄よ。歴史の教科書にも載ってるわ。ついでに陛下の囲っている少年の祖父でもあるわね」

「そんなの知らないって、それでわざわざ大がかりな仕掛けをしてまで排除する意味あんの? 私らで潰せば良いじゃん」

「相手は老人でも油断の出来ない相手って事でしょ」

 

 ジラードもアキラもフリットの戦果を学校で習っている為、半ば伝説を化している事もありヴァニスが力技でなく絡め手で来る事も理解は出来る。

 フリットも高齢である為、MSのパイロットとしては親衛隊からすれば面倒な相手と言うレベルだが、技術者や指揮官としての頭脳はネオ・ヴェイガンとしては十分に脅威となりえる。

 今回の作戦もフリットの頭脳を封じる事が目的なのだろう。

 

「ふーん」

 

 シェリーは話しに興味を無くしたのか端末に視線を戻す。

 それから数時間後に連邦政府からネオ・ヴェイガンの和平交渉の場を設ける事になる。

 

 

 

 

 

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