機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

104 / 155
第98話

 

 

 

 

 

 かつて、地球連邦軍の総司令部ビッグリングのあった宙域にネオ・ヴェイガンの旗艦グレート・エデンが座している。

 その光景は地球圏の支配者が変わった事を明確に告げている。

 そのグレート・エデンに連邦軍の艦隊が接近している。

 バロックスを旗艦とした連邦軍の艦隊は戦艦を10隻以上もある。

 

「提督間もなく指定された宙域に到達しますね」

「ああ……」

 

 バロックスには官僚も乗っており、アルグレアスを初めとした軍の作戦を気取られないようにしている為、空気が緊張している。

 宙域の到着し、アルグレアスは一息つく。

 そして、座席から立ち上がる。

 

「MS隊を発進! 総員戦闘配備につけ! アスノ大佐!」

「了解」

 

 アルグレアスは矢継ぎ早に指示を出す。

 ユーリアはすぐにブリッジを離れて格納庫へと向かい出撃の用意に入る。

 戦闘の予定はない事から官僚達はアルグレアスの指示に驚いている。

 

「どういう事かね? アルグレアス提督」

「決まっています。ここでネオ・ヴェイガンを叩くのですよ」

「何を考えとる。我々は……」

「連中は油断している! 今なら確実に勝てます!」

 

 アルグレアスは官僚の言葉を遮るように話す。

 官僚達はアルグレアスの勝てると言う言葉に反応する。

 和平自体、本気で平和の為に行う訳ではなく自己保身が一番の理由だったが、戦争に勝利出来るのであれば和平をする必要も年端もいかないだろう小娘に媚びる必要もない。

 

「そうか! ならば早くあの小娘を始末して勝つのだ!」

 

 変わり身に速さには呆れるが、文句を言って来るよりかはマシだ。

 アルグレアスの言葉を信じ切っている官僚は戦闘配備の指示が各部署に伝達される様子に文句の一つも言う事なく眺めている。

 

(新型が出てきたら、こちらに打つ手はない。ビシディアンの働きに期待するしかないか……)

 

 アルグレアスはいつ来るかも分からないビシディアンに最後の頼みを託していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 連邦軍がMSを出撃させた事はグレート・エデンでも補足している。

 和平に来た連邦軍が突然、MSを出撃させれば戸惑い浮き足立つが、グレート・エデンのブリッジクルーは慌てる事なく対応している。

 連邦軍が和平交渉に来たと見せかけて攻撃して来る事は予想の範囲内の行動だからだ。

 万が一にも本気で和平交渉に来たのであれば、ヴァニスは連邦軍の官僚になど何の価値も見出していない為、その場で始末する予定で、攻撃して来た場合も敵として始末する予定だった。

 その為、連邦政府の決断には関係なくネオ・ヴェイガンは和平交渉に来た連邦軍艦隊を殲滅する気だった。

 

「予想通り過ぎる」

 

 ヴァニスは迫る連邦軍のMSを見てそう言う。

 ここまでの連邦軍の行動はヴァニスの思惑通りだ。

 そうなれば、敵の司令官にフリット・アスノはいないだろう。

 フリットのいない連邦軍など恐れるに足りない。

 ヴァニスは艦長席から立ち上がる。

 

「どちらに行かれるので?」

「あの程度の戦力など親衛隊で十分だろう。私がここにいる必要はあるのか?」

 戦力差は歴然でガンダムのいない連邦軍に今のネオ・ヴェイガンは負ける事は無いだろう。親衛隊を出して終わらせろ。私は部屋に戻る……それとネズミが紛れ込んでいるそいつも始末しておけ」

 

 

 ヴァニスはそう言い残して指揮をヴァレリに移乗するとブリッジを離れていく。

 

 

 

 

 

 

 戦場に5機のレギルスが投入された事で戦局はネオ・ヴェイガンの優勢になる。

 圧倒的な戦闘能力を持つレギルスに連邦軍のMSでは成す術はない。

 

「見つけた」

 

 クランシェをレギルスGがレギルスライフルで撃ち抜くとジラードはユーリアのジェノブレイズの機影を見つける。

 ルナベースでは遅れを取ったが、ティエルヴァ以上の性能を持つレギルスGならばユーリアを相手に対等に戦う事も出来るだろう。

 

「まずはアレを落とすわよ」

 

 連邦軍の中で最も警戒すべき敵はユーリアでそれさえ撃墜してしまえば、後はどうにでもなる。

 

「隊長、変なのが紛れこんでいるみたいね」

「あれが陛下の言うネズミか……確かにな」

 

 戦場にはいつの間にかビシディアンのMSが紛れ込んでいた。

 ビシディアンはホワイトファングからの情報で事前に和平交渉の行われる現宙域に潜んでいた。

 そして、戦闘が開始されると同時にネオ・ヴェイガンに仕掛けて来ていた。

 元々、奇襲が得意な海賊はビッグリングのデブリを利用して連邦軍とネオ・ヴェイガンにほとんど気づかれる事もなく確実にネオ・ヴェイガンの戦力を削っている。

 ビシディアンはアセムのダークハウンドとゼハートのレギルスRを中心としてこの手の戦いに慣れてはいないファ・ザードのMSは距離を取り待機しているバロノークとファ・ザードの防衛に残している。

 その為、主力のGエグゼス・ジャックエッジとシャルドール・ローグ、スラッシュはファ・ザードから持ち寄られたデータから改修されたギラーガ改に搭乗している。

 ギラーガ改は改修時にスラッシュ用に改良がされており、外見はゼハートが乗っていた時と変わらないが、スラッシュがXラウンダー能力を持たない事からギラーガビットはコンピシュータによる自動操作が出来るようになった事からゼハートが乗っていた時のようなオールレンジ攻撃は出来ないが実戦では十分に使う事は出来る。

 ティアナは火星圏で機体を大破せた為、スラッシュがギラーガ改に乗り換えた事でGサイフォス・ブレイヴに乗っている。

 

「海賊か……そっちは任せたわ」

 

 ジラードは単機でジェノブレイズに向かって行く。

 レギルスGはジェノブレイズにレギルスライフルを放ち、ジェノブレイズはは左腕のビームシールドで防ぐ。

 

「新型……」

「ルナベースの借りを返してあげるわ!」

 

 レギルスGはレギルスビットを射出してジェノブレイズに差し向ける。

 

「ファンネル」

 

 ジェノブレイズはドッズファンネルを使い対応する。

 ドッズファンネルがレギルスビットを落とすが、レギルスGはジェノブレイズに接近してビームサーベルでドッズショットライフルを切り裂く。

 

「この感じ……ジラード大佐」

 

 ジェノブレイズはツインドッズキャノンを放ちながら、ハイパービームサーベルを抜いてレギルスGに向かう。

 レギルスGもビームサーベルで迎え撃つ。

 2機のビームサーベルはぶつかり合うが、ハイパービームサーベルの方が出力が高くレギルスGを弾き飛ばすが、レギルスGは尾のビームライフルを股の下から前方に向けて放ち、ジェノブレイズはビームシールドで防ぐ。

 

 

 

 

 

 

 ビシディアンのMSに対してジラードのレギルスGを除く4機が接近する。

 レギルスAは飛行形態に変形してダークハウンドに向かう。

 ビームキャノンとビームバルカンを連射しながら、ダークハウンドに向かって行く。

 ダークハウンドはかわしてストライダー形態に変形する。

 レギルスAはダークハウンドの後ろを取るとビームキャノンを放ち、ダークハウンドは最小限の動きでかわすと後方に向かってアンカーショットを射出する。

 

「ちっ」

 

 レギルスAはMS形態に変形してレギルスソードを手に付けてアンカーショットを弾き飛ばす。

 ダークハウンドもMS形態に変形し、アンカーショットを戻してドッズガンを連射する。

 レギルスTがレギルスランチャーで援護の砲撃を放つ。

 

「量産型とはいえ厄介なMSだ……」

 

 砲撃をかわしたダークハウンドにレギルスAがレギルスソードで切りかかり、ビームサーベルでレギルスAの一撃を弾き飛ばす。

 弾き飛ばしたレギルスAにドッズランサーを向けるが、レギルスTがドッズライフルを放ち、ストライダー形態に変形して回避する。

 

「2機がかりだって言うのに……流石はガンダムってところかしらね」

「そんな事は分かってるわ」

 

 レギルスTはダークハウンドを攻撃するも、ストライダー形態のダークハウンドに当てる事は出来ない。

 だが、ダークハウンドの前にレギルスAが周り込んで両手にビームサーベルを展開してダークハウンドに切りかかり、ダークハウンドはMS形態に変形してドッズランサーで受け止める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 コーデリアのレギルスCとシェリーのレギルスSはゼハートのレギルスRに仕掛けていた。

 2機のレギルスがレギルスRを挟み込むように接近する。

 先にレギルスSがレギルスサイズで切りかかり、回避したところをレギルスCがレギルスブレードで切りかかり、レギルスRはレギルススピアーで受け止めるも、そのまま押し込まれる。

 

「陛下を裏切った。裏切り者が!」

 

 レギルスRは押されつつもレギルスCを受け流すが、レギルスSがレギルスサイズのビーム砲を連射するが、レギルスRは簡単にかわす。

 

「裏切り者の癖に生意気!」

 

 レギルスSはレギルスビットをレギルスRに差し向ける。

 だが、レギルスRはビームバルカンでレギルスビットを迎撃し、背後に回ったレギルスビットをレギルスキャノンを使ってすべて撃ち落す。

 そして、レギルスRはビームバスターを放ち、レギルスSはレギルスサイズを回転させて防ぐが完全に勢いを殺し切れずに吹き飛ばされる。

 

「何なのよ!」

 

 レギルスSはレギルスビットを展開するとデタラメにレギルスRに向かわせて、レギルスRはビームバルカンで対応し、対応しきれないレギルスビットはレギルススピアーで叩き落とす。

 

「何だ……子供か?」

 

 ゼハートはXラウンダー能力で感じる感覚とレギルスSの戦い方からそう判断する。

 レギルスCはビームライフルを背部にマウントした状態で放ちながら、レギルスRに突っ込んで来てレギルスブレードを振るう。

 一撃で致命傷になり兼ねない為、レギルスRは受け止めずに確実に回避してビームバルカンを放ちレギルスCの後ろからレギルススピアーで狙うが、レギルスSがビームで邪魔をする。

 その攻撃を回避している隙にレギルスCは反転して再びレギルスRに切りかかる。

 レギルスCの斬撃は不規則かつ、Xラウンダー能力で先読みしていなければ確実に当たっている。

 

「親父!」

 

 スラッシュのギラーガ改がギラーガスピアのビーム砲でゼハートを援護し、レギルスCはレギルスブレードで防いでいるとレギルスRがレギルススピアーを突き出してレギルスブレードの横っ腹にヒビを入れる。

 ヒビが入った時点で使い物にならないとコーデリアは判断すると、レギルスブレードをレギルスRの方に投げ飛ばし、レギルスRは回避するが、両手にビームサーベルを展開してレギルスRに切りかかり、レギルスRはレギルススピアーで受け止める。

 ギラーガ改はレギルスRの援護に向かおうとするが、レギルスSが割って入りレギルスサイズを振るう。

 ギラーガ改はギラーガスピアで防ぐが弾き飛ばされる。

 

「スラッシュ様!」

 

 Gサイフォス・ブレイヴはドッズバスターHを連射する。

 

「雑魚ばっかが生意気なのよ!」

 

 レギルスSはレギルスビットを展開する。

 レギルスビットを2機に向かわせる。

 ギラーガ改はギラーガビットで迎撃しつつビームバルカンで応戦し、Gサイフォス・ブレイヴはドッズバスターHとドッズガンで応戦する。

 

「親父! このレギルスタイプはXラウンダーである事以外は対した事は無い! 俺とティアナで引き受けた!」

「任せる」

 

 レギルスRはレギルスCを弾き飛ばすとレギルスビットを大量に展開する。

 

「行け、ビット」

 

 レギルスビットは縦横無尽に動き、レギルスCに向かって行く。

 全方位から迫るレギルスビットをレギルスCは両腕の小型シールドに内蔵されている三連装バルカンで迎撃する。

 それでも対応しきれないレギルスビットをレギルスCはかわしながら三連装バルカンでレギルスビットを撃墜して行く。

 両手にビームサーベルを展開してレギルスビットの攻撃を掻い潜りレギルスRにたどり着いてレギルスCはビームサーベルを振るう。

 レギルスRはレギルススピアーでレギルスCの斬撃を弾く。

 

 

 

 

 

 

 

 連邦軍とネオ・ヴェイガンの戦闘が続く中、ヴァニスは自室に戻って来ていた。

 

「戦闘になってるんですね」

「そうだ」

 

 キオもグレート・エデンの外で戦闘が起きている事をXラウンダー能力で感知している。

 外の情報を知る事が出来るが、グレート・エデンのすぐ外で起きている戦闘までは知る事は出来ないが、ずっと気になっていた事でもあった。

 ヴァニスは答えると椅子に座る。

 キオには外の戦闘には興味のないように見える。

 

「ここには連邦軍と和平交渉に来た筈だがな。尤も連邦が仕掛ける事がなくともこちらから仕掛けていたがな」

「和平? それなのにどうして戦闘になったんですか?」

「さぁな。連中も私の支配を受け入れないと言う事だろう。私も連邦政府の官僚など私の支配する世界には不要だから始末するつもりだったがな」

「どうして貴女は! 敵を撃つ事しか考えないんですか!」

 

 キオは思わず立ち上がる。

 ヴァニスは自分に従わない者は全て排除し、自分の気に入らない相手も例え従ったとしても排除しようとしている。

 キオにはそれが理解できない。

 キオも世界中の人間の全てが親密になれるとは思ってはいない。

 だが、相手の事を理解し合う事で互いに歩み寄りをする事は出来ると思っている。

 

「どうしてだろうな? 気に入らない者、受け入れる事の出来ない者は絶対に認めずに排除する。それが私の本質だと言う事だろうな」

 

 ヴァニスはキオの質問にそう答える。

 仮面で素顔は見えないが、キオにはヴァニスがとても寂しそうに見えた。

 そんな事はヴァニスは気づいていないが、ふとヴァニスの頭にクライドの顔がよぎる。

 クライドもまた自分にとって許せない相手、家族を殺したとされるナーガ・ヘルダーの存在を認めず存在するだけでそれを排除しようとしている。

 その事に気づいているのか、それとも気づかないフリをしているのかはヴァニス本人も理解はしていないだろう。

 ヴァニスはすでに自分はクライドとは別の道を進んでいると頭の中から振り払う。

 

「私の事はどうでも良い。キオ・アスノ、私の物になる決心はついたか?」

 

 ヴァニスは何度もキオに問いかけた事を再び問いかける。

 キオはなぜ、ヴァニスがここまで自分に執着するかは分からない。

 だが、一つだけ言える事は分かった。

 

「僕は貴女の物にはなりません」

 

 今までとは違いキオははっきりを答える。

 ヴァニスもキオが今までとは違い明確に覚悟を持った目でヴァニスを真っ直ぐ見ていると言う事は理解できる。

 

「ではお前はどうするつもりだ?」

「僕は貴女を止めます」

「どうやってだ?」

「分かりません。でも、止めて見せます」

 

 キオはヴァニスに臆する事なく言い返す。

 ヴァニスをこのまま野放しにする事は出来ない。

 だが、倒すのではヴァニスと同じだ。

 だから倒すのではなく止めると決意した。

 その方法は分からない。

 今のキオには何の力も持ってはいない。

 Xラウンダー能力もガンダムに乗っていなければ活かす事は出来ない。

 ヴァニスの見た目は華奢でその出生を知らないキオにはMSに乗っていなければ強いとは思わないが、それでもキオとは体格差があり過ぎる事とキオ自身は武術の類や喧嘩の経験が無い為、生身でもヴァニスには勝てるとは思えない。

 しかし、例えそうだとしてもヴァニスを止めないといけないと言う考えは変わらない。

 

「ついて来い」

 

 キオとヴァニスは数秒間、互いに視線を逸らす事は無かったが、ヴァニスはそう言って自室から出て行こうとする。

 キオは黙ってヴァニスについて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレート・エデンの通路を歩く中で何人ものネオ・ヴェイガンの兵士とすれ違うが、戦闘中と言う事もありヴァニスがキオを連れ歩いている事は気にされる事は無い。

 ヴァニスに連れられてキオはグレート・エデンの中にいくつもある格納庫の一つに連れて来られる。

 そこにはガンダムAGE-FXだけしかない。

 本来、この格納庫には親衛隊のMSが置かれているが今は全機が出撃しており、整備兵も別の格納庫で作業をしている為、格納庫にはヴァニスとキオの二人だけだ。

 キオはFXを始めて見る為、FXをマジマジと見ていたが為、ヴァニスがいなくなっている事には気が付いていない。

 

「これを着ろ」

 

 ヴァニスがいなくなっていた事にも気が付かなかったが、戻って来た事も声をかけられるまで気が付かなかった。

 ヴァニスはキオがヴェイガンに捕まった時に来ていたパイロットスーツを持っている。

 キオは戸惑いながらもヴァニスからパイロットスーツを受け取る。

 

「どういう事ですか? それにこのガンダムは一体……」

「良いから着ろ。直に兵が来る」

 

 キオは言っている意味が良く分からなかった。

 この時、格納庫に設置されている監視カメラはヴァニスによって停止されている。

 戦闘中と言う事もあり、すぐに気づかれる事は無いだろうが、いつかは格納庫の異変に気が付いて兵が事態を確かめる為に格納庫に来るだろう。

 ヴァニスの立場的に問題はないが、これからヴァニスが行おうとしている事を実行する為には都合が悪い。

 キオは戸惑いつつもパイロットスーツに着替える。

 

「良い子だ。褒美にこれを暮れてやろう」

 

 ヴァニスはキオに向かってAGEデバイスを放り投げる。

 キオはAGEデバイスをキャッチしてそれがAGEデバイスである事を知ると驚きつつもヴァニスとAGEデバイスを見る。

 

「このガンダム……AGE-FXはAGEシステムが生み出したガンダムだ。お前が使うが良い」

「どうして僕にガンダムを渡すんですか?」

 

 キオは警戒しながらヴァニスに尋ねる。

 キオはつい先ほど、明確にヴァニスを止めると宣言した。

 それなのにキオにAGEデバイスとガンダムを渡すと言うのだ警戒するのも当然だ。

 

「お前は言ったよな? 私を止めると……ならば、そのガンダムで私を殺しに来るが良い。私を殺すしか私を止める術はない」

 

 ヴァニスはさっきの問答で確信した。

 例え戦う力を持たずともキオは自分を止める決意をした。

 その決意を見たヴァニスは確信した。

 キオこそが自分が最強である事を証明する為に最も倒すべき相手である事をだ。

 世界を手に入れただけではヴァニスは満足をする事は出来ない。

 その過程で最強の敵を打ち倒す事が出来なければ世界を手に入れたところでそれに大した意味はない。

 だが、キオにはヴァニスと対等に戦える力を持たない。

 意志はあっても力がなければヴァニスの対等の敵とは言えない。

 その為、ヴァニスはキオに力を渡す事にした。

 それがFXであった。

 FXはレギルスをも超えるガンダムでそのガンダムとヴァニスが唯一対等の敵と認めたキオを打ち倒す事で自分が最強である事を証明する事が出来ると直感的に感じ取った。

 この日の為にヴァニスはキオを自分の元においていた。

 キオが自分にとって倒すべき最大の敵となりえる素質を感じていた。

 後キオに足りなかったのはヴァニスに対する明確な敵対の意志だ。

 それが揃った今、ヴァニスにとってキオは最大の敵となり得た。

 

「僕は貴女を殺すつもりはありません。僕は必ず貴女を止めます」

 

 キオはあくまでもヴァニスを殺すのではなく止めると言い張る。

 そんな事はヴァニスにとっては些細な問題であった。

 キオが揺るがない決意を持ってヴァニスの前に出て来ると言う事が何よりも重要であったからだ。

 キオはFXに乗り込む。

 シートに座り、操縦桿などの位置を把握する。

 不思議と操縦桿やシートの位置はしっくり来る。

 FXに今までヴァニスが乗っていた事はキオは知らないが、ヴァニスはこの日の為にタチアナに指示を出して、FXのコックピットをキオに合わせていた。

 タチアナは忠義とは無縁で仕事としてヴァニスに従っているので、ヴァニスの指示に疑問を挟む事もなくFXのコックピットの調整を行っている。

 機体のシステムを立ち上げていながらふとヴァニスの方を向く。

 モニター越しにヴァニスは通信機で何かを話しており、やがて通路の中に入ると通路と格納庫の隔壁が閉じて格納庫のハッチが開閉する。

 恐らくはヴァニスはブリッジに指示を出してハッチを開閉させたのだろう。

 キオは操縦桿を握り、一拍おいてしっかりと正面を見据える。

 

「キオ・アスノ、ガンダムAGE-FX……行きます!」

 

 キオはFXを駆り戦場へと帰還する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦場に出たキオは戦場を突っ切っている。

 戦場は連邦軍とネオ・ヴェイガン、ビシディアンののMSが入り混じり混乱している。

 FXに搭載されているサイコフォローシステムによってキオのXラウンダー能力の感知能力は向上している為、戦場でどれだけの命が散っているのかが分かってしまう。

 

「どうして……こんな戦い……」

 

 FXはスタングルライフルのチャージモードで射線上にMSがいない事を確認して放つ。

 その一撃は1機もMSを撃墜する事は無いが、戦場のMSの注目を集める事には成功する。

 だからと言って戦闘が止まる訳ではないが、それでも十分だった。

 

「もう止めてください! こんな戦闘は無意味です!」

 

 キオはオープンチャンネルで戦場のMSに呼びかける。

 だが、その呼びかけに応じるMSは当然いる筈もない。

 ネオ・ヴェイガンのMSも当初はヴァニスのFXに見知らぬパイロットが搭乗している事に戸惑うも、グレート・エデンからFXが奪取された事が通達された事で量産型レギルスはFXにビームライフルを放つ。

 

「止めてください! 僕は戦うつもりはありません!」

 

 FXは量産型レギルスの攻撃をかわす。

 キオは呼びかけるが量産型レギルスのパイロットは聞く耳を持つこともなく、ビームサーベルを振るい。

 FXは左腕のビームサーベルで弾く。

 数機の量産型レギルスの攻撃をFXは軽く防いで距離を取る。

 

「どうして……」

 

 FXは量産型レギルスの攻撃を受け止めて蹴り飛ばす。

 別の量産型レギルスのビームサーベルをFXはビームサーベルで受け止める。

 

「この感じは……ディーン! そのMSにはディーンが乗っているの!」

 

 キオは量産型レギルスからディーンの感覚を感じる。

 

「キオ! どうしてお前がそのガンダムに!」

 

 通信越しでキオの声を聴いたディーンはキオがFXに乗っている事に驚く。

 セカンドムーンでルウが死んで以来会う事もなかったが、まさかこんなところで再会するとはどちらも思ってなかった。

 二人は戸惑うがゴドムの量産型レギルスLがレギルスガンでFXを攻撃する。

 FXはディーンの量産型レギルスから離れる。

 

「ディーン、そいつを落とすぞ!」

 

 ゴドム機に続き2機の量産型レギルスはビームライフルを放ち、FXに向かう。

 

「隊長! でも!」

 

 ディーンはFXのパイロットがキオである事で戦意を失いつつある。

 だが、そんな事にはお構いなしにゴドム機と2機の量産型レギルスはビームサーベルでFXに連続攻撃を繰り出すが、FXの機動力に追いつく事が出来ない。

 FXは量産型レギルスにスタングルライフルを向けるが、スタングルライフルの威力では直撃させると撃墜してしまう為、撃つ事は無かった。

 

「攻撃しないつもりか! 舐めた真似を!」

 

 ゴドム機はレギルスガンを連射する。

 FXはビームをかわすが、左腕にビームサーベルを展開する。

 そして、一瞬のうちにゴドム機との距離を詰めてゴドム機の右腕を切断して、ゴドム機を蹴り飛ばす。

 

「隊長!」

 

 2機の量産型レギルスがビームバルカンを放つが、FXはスタングルライフルを腰につけて両手にビームサーベルを展開して、一気に2機の量産型レギルスの腕を切り捨てる。

 

「キオ!」

「ディーン!」

 

 ディーン機はビームサーベルを振るい、FXもビームサーベルで受け止める。

 FXはディーン機を蹴り飛ばして距離を取ると2機の間にビームが通る。

 

「邪魔だ。どいていろ」

 

 ディーン機にヴァニスからの通信が入る。

 そして、黒い影がFXに向かう。

 その黒い影の正体は事前にグレート・エデンに移送されていたガンダムレギルスの全面改修機のガンダムレギオンだ。

 レギオンはレギルスを母体に開発されているが、その外観は大きく異なる。

 背部には10枚の羽根が取り付けられており、それぞれが大型の光波推進システムとなり先端には大型のCファンネルが装備されている。

 マリィが改修に関わっていた事で両肩と腰にはシグマシスキャノンが増設されており、右手にはレギルスライフルを発展させたレギオンライフルを持っている。

 レギオンライフルは威力こそはレギルスライフルと変わらないが、ライフルの下部は実体剣となっており格闘戦にも対応できるようになっている他、銃身を挟み込むようにビームバルカンも内蔵されている。

 左腕にはレギオンシールドが装備されている。

 レギオンシールドは質量装甲で出いており、表面のカバーを展開する事で胞子状のビット、レギオンビットを展開する事も出来る。

 胸部にはビームバスターの出力を向上させたビームブラスターに尾には新開発された火器のデルタゲイザーが装備されている。

 頭部はレギルス同様に分離してレギオンコアとして使う事が出来る。

 背部の10機の光波推進システムによってFXにも劣らない機動性能を持ち、4門のシグマシスキャノンで高い火力もガンダムレギオンは有していた。

 レギオンはFXにレギオンライフルの実体剣を振り下ろし、FXはビームサーベルで受け止める。

 

「ヴァニスさん!」

「さぁ、戦うぞ。キオ・アスノ!」

 

 レギオンはFXを弾き飛ばすと腰のシグマシスキャノンを前方に向けて肩のシグマシスキャノンと共に一斉に放つ。

 FXはかわしてスタングルライフルを向ける。

 先ほどは威力が強すぎる為、撃つ事は無かったが、ヴァニスを相手に躊躇う余裕は無い。

 FXはスタングルライフルを放ち、レギオンは回避するとレギオンライフルで応戦する。

 

「行け、ファンネル!」

 

 レギオンは10基のCファンネルを射出する。

 Cファンネルは全方位からFXを襲う。

 FXはCファンネルを両手にビームサーベルを展開して弾いて防ぐ。

 

「くっ……ファンネル!」

 

 今までは初めて使う為、使う事は無かったCファンネルをFXは射出する。

 慣れない武器ではあるが、FXのCファンネルの方が数が多く何とかレギオンの攻撃を防ぐ。

 だが、その隙にレギオンはレギオンライフルを放ち、FXに接近して実体剣で切りかかる。

 

「どうした、私を殺すのではないのか?」

「違います! 僕は貴女を止めたいんです!」

「言った筈だ。私を止めたければ私を殺すしかないとな!」

 

 FXはレギオンから距離を取るが、レギオンはレギオンビットをFXに向ける。

 FXはCファンネルを使ってレギオンビットに対応する。

 

「それでも僕は!」

 

 レギオンビットをすべて破壊したFXはビームサーベルを展開してレギオンに向かう。

 FXのビームサーベルとレギオンの実体剣がぶつかり合う。

 

「貴女を止めたいんだ! 殺したい訳じゃない!」

 

 2機は鍔迫り合いをしているが、レギオンは腰のシグマシスキャノンを前方に向ける。

 ゼロ距離からの砲撃をFXはギリギリのところで回避してレギオンを蹴る。

 レギオンは蹴り飛ばされながらもデルタゲイザーを放つ。

 FXはその攻撃をかわす。

 

「どうして戦わないといけないんですか! 戦わなくなって分かり合えばいいじゃないですか!」

「子供の意見だな。私は分かり合いたいとは思わんな!」

 

 体勢を立て直したレギオンはレギオンライフルを放つ。

 FXはCファンネルを展開する。

 レギオンを全方位からCファンネルで攻撃するが、キオはコックピットを決して狙う事は無い為、動きも読み易く、レギオンは容易くCファンネルを回避する。

 

「どうして! それだけの力を持っていながら!」

「この力は私の物だ。どう使おうと私の勝手だ」

 

 FXとレギオンは高速で動きつつライフルで牽制しつつ、近接戦闘で激しくぶつかり合う。

 だが、突如レギオンに横から何かがぶつかり、レギオンはFXから離れていく。

 

 

 

 

 

 

 FXとレギオンが交戦している中、ディーヴァも戦場に到着した。

 戦闘が開始され、ディーヴァも主砲で後方からだが支援をしている。

 

「ディーヴァか、どういう状況か分からないが、例の新型ガンダムにキオ・アスノが搭乗している。君達はガンダムを回収して離脱するんだ」

 

 バロックスからディーヴァに通信が入る。

 本来はゲリラ戦を得意とするビシディアンがグレート・エデンからキオを助け出す算段だったが、どう言う訳かキオはFXに乗っている。

 FXの動きからキオがネオ・ヴェイガンの側についた訳ではない事は分かる。

 事情は分からないがキオをグレート・エデンから助け出す手間が省けただけの事だと今は考える。

 

「分かりました。セリック少佐達を出撃させて下さい。少佐達は新型ガンダムに接触してキオ君にディーヴァに戻るように伝えてください」

「了解した。アビス隊、セリック・アビス。クランシェカスタム……出る!」

 

 ディーヴァからは次々とアビス隊のMSが射出される。

 

「俺はキオのところに向かう。他はディーヴァの守りに専念。オブライトさん、後は任せました」

 

 クランシェカスタムは飛行形態に変形すると、キオのFXの方に向かって行く。

 

 

 

 

 

 

 レギオンが突然、不自然に離れて行った事でFXは再び量産型レギルスの攻撃を受けている。

 だが、レギオンとの戦闘でFXの扱い方を把握したキオとFXに量産型レギルスでは敵う訳もなく、次々に戦闘不能となって行く。

 

「何で戦うんだよ!」

 

 FXのCファンネルが量産型レギルスの腕を切り落とす。

 量産型レギルスを戦闘不能に追い込むとダークハウンドと戦闘をしていたレギルスAが飛行形態でFXに接近してビームキャノンを放つ。

 FXはかわしてスタングルライフルで牽制する。

 レギルスAはMS形態に変形するとレギルスソードで切りかかるが、FXはかわしてレギルスAの背後を取りレギルスAの右腕を肩からビームサーベルで切り裂く。

 

「アキラ、下がってなさい」

 

 レギルスTがレギルスランチャーを放つ。

 FXはビームをかわしてスタングルライフルを放ち、レギルスTのレギルスランチャーを腕ごと撃ち抜く。

 

「やってくれるわね」

「これがFXの性能……」

「何やってんのよ! 二人とも」

「陛下のMSで勝手な真似を!」

 

 ゼハートやスラッシュと交戦していたコーデリアとシェリーもFXに向かって行く。

 

「行ってきなさい! ビット!」

「Cファンネル!」

 

 レギルスSがレギルスビットを展開し、FXもCファンネルを展開する。

 レギルスビットをCファンネルが破壊して行き、レギルスSの四肢をCファンネルが一瞬のうちに切断する。

 

「何なのよ! あいつ!」

「これ以上好きにさせるか!」

 

 レギルスCは三連バルカンを連射するが、FXはCファンネルで防御してスタングルライフルを放つ。

 そして、FXはビームサーベルでレギルスCの両腕をビームサーベルで切り落とす。

 4機のレギルスをFXは戦闘不能に持ち込むとその場から離れていく。

 

「キオ!」

 

 迫る敵を戦闘不能にしながら、戦いを止めるように訴えるも誰一人として聞く事は無かったが、FXにダークハウンドが接近して来る。

 

「父さん!」

「大丈夫だったか?」

「うん……」

「ディーヴァが近くまで来ている。お前はディーヴァに帰投するんだ」

 

 再会を喜ぶ時間もなく、アセムはキオにそういう。

 今は再会を喜んでいる時間はない。

 

「でも……僕はこの戦闘を止めたいんだ」

「なら、尚の事だ。連邦軍はディーヴァがお前を回収して退避すれば撤退する」

 

 元々、連邦軍の目的はキオの救出の為の陽動だ。

 予定とは大幅に違うがキオをディーヴァが回収すれば連邦軍も戦う理由はなく撤退を開始するだろう。

 

「キオ、それにキャプテンアッシュも一緒でしたか」

「セリック隊長!」

「キオ、行くんだ」

「父さんはどうするの?」

「俺もお前がディーヴァに戻るまでの時間を稼ぐ。安心しろ。適当に相手をして俺も撤退する」

 

 親衛隊のレギルスが4機が戦闘不能になり、レギオンも戦線から離脱しているが、未だに連邦軍の方が押されている。

 その為、アセムも戦闘に参加する事でキオが退避する時間を稼ぐと言う。

 

「アビス隊長、息子を頼む」

「分かりました。キオは責任を持ってディーヴァにまで連れて戻ります。行くぞ、キオ」

「分かりました。父さん、気をつけてね」

 

 FXとクランシェカスタムはディーヴァに向かい、2機を追撃しようとしている量産型レギルスをダークハウンドはドッズガンで牽制しているとレギルスRが量産型レギルスの頭部を切り離す。

 

「キオは無事にディーヴァに向かったんだな」

「ああ……だが、どういう事だ?」

「分からん。しかし、俺達もここは引くぞ」

 

 キオがFXを奪取出来た事には疑問が残るが、考えている余裕はない。

 今はキオが無事に離脱する事を見届けてビシディアンも戦場から離脱する事が先決であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦線から離脱したレギオンはビームブラスターを放つ。

 そして、戦闘宙域から離れたところで止まる。

 すると、レギオンから離れた場所にシドが姿を現す。

 

「やはりシドか……ようやく、私を始末しに来たか」

 

 レギオンはレギオンライフルを放つ。

 シドはその巨体とは裏腹に高い機動力を持って回避すると、姿が消える。

 

「見えざる傘か……」

 

 ヴァニスはシドが姿を消した事で神経を研ぎ澄ます。

 そして、機体を動かすとそこにビームが飛んで来る。

 レギオンがかわしたビームは屈曲してレギオンを追撃する。

 レギオンは最大速度で移動するも、ビームは正確にレギオンを追いかける。

 

「姿を消しての攻撃か……姑息な戦い方をする」

 

 追尾するビームをレギオンビットで相殺する。

 だが、見えざる傘で姿を隠しているシドに対して攻撃をする事は出来ない。

 ビームを撃ってすぐに移動している為、ビームの飛んで来た方向を狙っても無駄であった。

 

「が……私には無意味だ」

 

 ヴァニスは更に機体の速度を上げる。

 その上でXラウンダー能力を最大で使う。

 レギオンのスリット状のセンサーからツインアイが露出してガンダムとなる。

 

「そこだ!」

 

 レギオンはシールドとライフルを捨てて、両手にビームサーベルを展開する。

 向かって来るビームをビームサーベルで弾いでレギオンはビームサーベルを最大出力で突き出す。

 すると、ビームサーベルの先端からビームサーベルが突き刺さっているシドが姿を現す。

 シドはレギオンにコアユニットをビームサーベルで突き刺されており、機能が完全に停止している。

 

「陛下」

 

 レギオンが不自然な動きで戦場から離脱した事でジェノブレイズと交戦していたレギルスGがヴァニスの元に駆けつける。

 

「もう、終わった」

 

 レギオンはシドからビームサーベルを抜いてシールドとライフルを回収する。

 

「こいつを回収させろ。戦闘はどうなっている?」

「連中は後退を始めているわ。ノートラムの時みたいに殲滅させる?」

「それには及ばない。見逃してやれ」

 

 連邦軍が降伏するのであればヴァニスは迷う事なく殲滅を指示しだろう。

 だが、連邦軍は後退しようとしている。

 後退すると言う事はまだ諦めてはいないと言う事だ。

 それを見逃せば次は体勢を整えて今日の戦闘を踏まえて、万全な体制を整えて再びヴァニスの前に出て来るだろう。

 そうなればその時に叩き潰せば良い。

 機能を停止したシドを回収する為に数機の量産型レギルスがやって来る。

 シドを回収してヴァニスはグレート・エデンに帰投して連邦軍が撤退した事で戦闘は終結する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘が終結してネオ・ヴェイガンと連邦軍が完全に撤退したタイミングを見計らい戦場に1機のMSが姿を現す。

 全身が黒で統一され、ツインアイからガンダムタイプのMSだと言う事が分かる。

 『F-ZERO』それがこのMSの通称だ。

 フルアーマーガンダムZEROを略してF-ZER0と名付けられている。

 その名が示す通りクライドが開発した第一世代のガンダムZEROの設計を流用して全身に追加装甲を装備している。

 武装も強化され、左腕のアーマーにはパイルバンカーが装備され、右手には補助スラスターも兼ねているシグルサイズを持っている。

 両肩にはビームを湾曲させる投手フィールドを展開できる大型シールドにシールドにはビームキャノンが内蔵されている。

 胸部にはフラッシュアイが内蔵され、腰には放熱板に偽装されている誘導兵器、フィンファンネルが6基装備されている。

 バックパックにはビームガンとしても使えるビームサーベルが付いている。

 追加装甲には光波推進システムが内蔵され、掌を初めとして機体の至るところにアンカーのついたワイヤーの射出口が付いている。

 更には通常のサイズでありながら見えざる傘を自機のみに展開する事も可能となり高い隠密性能を持っている。

 

「周囲に敵影はありません」

「ようやく帰ってくれたか」

 

 F-ZEROのコックピットでクライドは呟く。

 クライドは誰にも見つからないように見えざる傘を使って隠れていた。

 F-ZER0にはアリスの人格データのバックアップが搭載されている為、操縦の大半はアリスによる物でクライドはXラウンダー能力での先読みとフィンファンネルの操作が主な役目であった。

 そうする事でクライドの操縦技術を補っている。

 

「シドはネオ・ヴェイガンに回収されたようです」

「構わんさ。シドのデータはすでに把握しているその気になればまた作れば良い」

 

 シドはF-ZEROの方から遠隔操作で動かしており、回収された事でクライドに繋がる情報は一切残されていない為、ネオ・ヴェイガンに回収されも問題はなかった。

 すでにクライドはシドの設計を把握している為、実機は必要はない。

 その為、戦闘中にシドをヴァニスに差し向けて戦闘データをシドから逐一送信してデータ収集を行っていた。

 見えざる傘で姿を隠しながらの攻撃にヴァニスがどう対応するかのデータを見たかったが、クライドの予想以上の早く勝負がついた。

 

「それにしてもあいつ……Xラウンダー能力を惜しむ事なく使って来たな。あれじゃ長くは持たんだろう」

 

 戦闘が早く方が付いたのもヴァニスがXラウンダー能力を惜しまなかった為だ。

 クライドの元を離れてまともなケアが受けられない状況でXラウンダー能力を使い続けると言う事は命を削る。

 ヴァニスもそれは自分の身を持って分かっている筈だが、ヴァニスからは躊躇いは感じられなかった。

 

「いかがします?」

「今は放っておけ、俺の方もこれか忙しくなる」

「では動くので?」

「そういう事だ」

 

 今までクライドは技術を流す事はあっても自分から動く事はほとんどなかった。

 だが、ようやくクライドも本格的に動き出す事を決めた。

 その準備で忙しい為、ヴァニスに構っている暇はなかった。

 

「データも回収した。俺達もさっさと帰るぞ」

 

 F-ZEROは再び見えざる傘を展開して宙域から離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。