コロニー「エンジェル」の研究所でクライドはコールドスリープ装置を停止させ、コールドスリープから眠っていた者達を起こしている。
そこには収容所から出所したグルーデック・エイノアやノートラム攻防戦の後に行方を暗ませていたセリアなどがいる。
「久しぶりだな」
「ジジィ……誰だてめぇ……いや、この感じ、クライド・アスノか?」
コールドスリープから目覚めたブラッド・イーヴィルはクライドを見てそう言う。
アンバット攻防戦からセリアと共に離脱してから少ししてブラッドは今までコールドスリープで寝ていた。
その為、ブラッドは蝙蝠退治戦役の時からほとんど変わっていない。
ブラッドこそがクライドの「ジョーカー」だ。
高いXラウンダー能力と高い操縦技術に剥き出しの闘争心を持つブラッドはうまく扱えれば心強い戦力ではあるが、下手をすればその牙は自分に対して向けられるかも知れない。
その危険性がある為、今までブラッドをコールドスリープから目覚めさせる事はしなかった。
「ご名答。直接会うのは初めてになるな」
クライドとブラッドは戦場では何度も戦った事はあるが、こうして面と向かって会うのは初めての事だ。
クライドがセリアと接触した時にはすでにブラッドはコールドスリープで眠りについており、クライドもブラッドと対面する気は無かった為、そのままにしてある。
「まぁ、そんな事はどうでも良い。それよりも俺の目的が変わった事を先に言っておく」
「目的? EXA-DBを見つけて破壊するのではないのか?」
クライドはグルーデックを勧誘した時にEXA-DBを見つけて破壊する事が目的であると告げている。
グルーデックもヴェイガンのMSがEXA-DBの技術によって作られている為、それを破壊する事に余生を使おうとしていた。
「まぁな。すでにEXA-DBは俺の手の中にある」
「手の中に? どういう事?」
「色々あったんだよ。まずは俺がEXA-DBを手に入れた経緯から話そう」
クライドはセリアやグルーデックに話す。
13年前の真実を……
A.G.151年、ノートラム防衛戦から10年が経っていた。
ノートラム防衛戦で行方不明となったクライドは宇宙海賊ビシディアンに身を寄せていた。
ドクターCと名乗りドクターの愛称でビシディアンの母艦バロノークにてメカニックとなっていた。
「ドクター! ウィービックの奴が帰って来たぜ!」
「ほう……お宝は持って来たのか?」
クライドはビシディアンが探し求めていた秘宝「EXA-DB」を捜索に出ていたビシディアンのエース、ウィービック・ランブロが帰還した知らせを聞いて格納庫に入って来る。
そこにはすでにウィービックの姿はなく、ウィービックの搭乗機のGサイフォスがハンガーに置かれているだけだ。
「いや、どうやらそうでもないらしい」
「戻って来たのはウィービックだけか?」
捜索に出たのはウィービックを含めて4人だ。
それでウィービックしか戻って来ていないと言う事は他の3人は戦死したと言う事になる。
「ドクター、キャプテンがすぐに来て欲しいって言ってるぜ」
「分かった。すぐ行く」
別の海賊にそう言われてGサイフォスの修理を後任せにしてクライドは格納庫から出て行く。
その後、クライドはビシディアンの当時のキャプテンであるアングラッゾと共にウィービックが連れて来たレウナ・イナージュからEXA-DBの事を聞かされていた。
レウナからの情報はクライドもすでに知っている事だが、EXA-DBの管理者を名乗るレウナの言葉でクライドはEXA-DBが実在し、自分の情報が正しいと言う事が裏付けられた。
「ドクター、この娘の言うEXA-DBがあれば連邦を打倒する事は可能か?」
アングラッゾはクライドに意見を求める。
アングラッゾも聞いただけでEXA-DBの事は理解は出来るが、ここは専門家の意見も聞いておきたい。
EXA-DBを手に入れても連邦軍を打倒する事が出来なければどんなに凄い秘宝だろうと意味がないからだ。
「確かにEXA-DBがコロニー国家間戦闘時の兵器データと言うのなら大した物だ。だが、その中の技術を完璧に理解する事が出来る技術者がいなければ宝の持ち腐れだ。しかし、幸いにもここにそれが可能な技術者がいる。それを手に入れればビシディアンは連邦を打倒するどころか、ヴェイガンもUIEにも勝利して地球圏を手に入れる事も可能だ」
「それはダメだ!」
クライドはEXA-DBを手に入れた時、ビシディアンが世界を手に入れる事も可能であると言うがウィービックがそれを止める。
「EXA-DBのせいで戦争が起きたんだ! レウナと共にEXA-DBのデータは消すべきだ!」
「何だと!」
ウィービックはEXA-DBのデータを削除すべきと主張する。
ヴェイガンはEXA-DBの技術の一端を手に入れた事で連邦軍を上回る兵器の開発に成功している。
それにより天使の落日が引き起こされて戦争が起きている。
「もしも、そのデータが流出してしまえば、世界は破滅してしまうかも知れない!」
一端のデータだけであれだけのMSを開発出来ると言う事はEXA-DBのすべてのデータを手に入れたとなれば、それ以上のMSを開発する事も大量破壊兵器を開発する事も可能となり、使い方を間違えれば世界を破滅する危険性もあり得る。
「だが、それ程の物なら使い方を間違えなければ戦争を終わらせる事も世界を平和にする事も出来る」
クライドが横やりを入れる。
このままウィービックに喋らせたままだと、ウィービックに期待しているアングラッゾは考えを変えるかも知れないからだ。
4機のMSの内3機が撃墜され、エースのウィービックも被弾して戻って来たと言う事はそれだけの防衛力がEXA-DBにはあると言う事だ。
EXA-DBを手に入れる為にはまだビシディアンは必要である為、アングラッゾにはEXA-DBを手に入れようとしていた貰った方が都合が良い。
「そのEXA-DBには兵器の設計データだけではなく運用データも入っているのだな? 御嬢さん」
レウナはコクリと頷く、それを見たクライドは内心でほくそ笑む。
「ならば、その運用データに間違った使い方もある筈だ。それさえ知っていれば俺達が間違った使い方をしないで済む筈だ」
クライドも実際のところ運用データの中に間違った使い方が記されているかは分からない。
レウナがそれに反論しないところを見るとレウナ自身もそこまでは知らないのかクライドの言っている事が正しいかのどちらになる。
「成程な……」
「おやじ!」
「ウィービック、お前の言い分は理解した。だが、その娘を捕えろ!」
アングラッゾの指示でレウナは両脇から海賊に拘束される。
クライドは自身の勝利を確信している。
レウナを拘束すると言う事はウィービックの言い分を聞き入れないと言う事だ。
「おやじ! 判ってくれ! EXA-DBのせいで戦争は起きたんだ!」
「なら、その戦争を止めるのがEXA-DBの責任と言うものではないのか?」
ウィービックの反論をクライドが封じる。
EXA-DBのせいで起きた戦闘をEXA-DBの力を使って終わらせる。
そう言われてしまえばウィービックに反論する事は出来ない。
それ以前に幼少期に海賊となった為、学の無いウィービックと素性は知れないが頭が切れるクライドでは腕っぷしならともかく口では言い負かす事は出来ない。
反論出来ないウィービックはただ、レウナが連行されていくところを歯を食いしばって見ている事しか出来なかった。
レウナを拘束してかは数時間が経ち、クライドはGサイフォスの修理を終えて医務室にいる。
海賊は非合法な組織である為、船医と言ってもまともに学んだ事がある訳も無い為、ビシディアンの中でも頭の良いクライドが兼任している。
クライドも専門はMSなので医学に精通している訳でも無いが、ある程度は知識は持っている。
「薬の量はこれ以上増やしても意味がないぞ」
「分かってる」
クライドは調合した薬をアングラッゾに渡す。
アングラッゾはビシディアンの中でもクライドくらいしか知らないが、病によって長くはない。
今は薬で症状を抑えているが、今の医学では治せない不治の病であった。
「もう少しだ。もう少しなんだ。EXA-DBを手に入れる事が出来れば腐った連邦軍を叩き潰す事が出来る。そうだろ? ドクター」
「ああ、そうだ」
アングラッゾは自分の言い聞かせるようにそういう。
EXA-DBを手に入れれば腐敗した連邦軍と叩く事が出来る。
それだけが、今のアングラッゾを支えている。
クライドからすれば本気で連邦軍の腐敗を叩きたいのであれば連邦政府を完全に潰して連邦軍を一人残らず殲滅しないと無理だと考えている。
軍の腐敗は10年前からクライドの弟のフリットによって粛清されている。
それでも政府や軍は腐敗している。
それは戦争が長期化している事が原因と言う訳ではない。
戦争の長期化はきっかけでしかなく、腐敗の原因は人の持つ欲望から来ている。
その為、腐敗を叩いたところでいつかはまた腐敗する。
クライドから見ればビシディアンの行いは自己満足でしかなく無意味な事でしかない。
だが、利用価値はある為、今はとことん利用するだけであった。
「ドクター……俺はなウィービックの言い分も分かるんだ。アイツは戦争で孤児院を潰されてる。でもな……俺はどうしても連邦の腐敗を潰さないといけないんだ。昔、そう誓った。俺は間違っているのか?」
「間違ってないさ。今の……いや、連邦軍はずっと前から腐っている。誰かがそれを正さなければいけない」
クライドも連邦軍の闇を良く知っている。
クライド自身もその闇を利用して来た一人だからだ。
その為、連邦が腐敗している事も良く理解しているが、それを正す気は毛頭ない。
だが、死期が近くウィービックと見解の相違から来るのか、アングラッゾはいつになく弱気になっている。
「キャプテン! ウィービックの奴が例の女を連れ出しました!」
「ウィービックの奴……」
先ほどまでのアングラッゾの弱気は吹き飛びキャプテンの顔になる。
ウィービックはアングラッゾの決断に納得がいかず、レウナを連れ出していた。
「ドクター、アイツのGサイフォスは?」
「完璧に修理してある」
アングラッゾは舌打ちをする。
クライドを責める気は無いが、Gサイフォスの修理を終えていると言う事はGサイフォスで脱走するかも知れない。
もしも、そうなった場合ビシディアンのMSでは止める事が困難となる。
「アイツはそこまで……」
ウィービックがそこまで思い詰めている事を知り、アングラッゾの中に迷いが生じる。
アングラッゾはすぐにブリッジに向かう。
「ここいらが切り時か……」
アングラッゾが出て行き、クライドはそうつぶやく。
バロノークからウィービックとレウナが乗るGサイフォスが出て来る。
すぐにビシディアンのMSが出て来るが、Gサイフォスに機動力には追いつく事が出来ない。
「完全に修理されてる。流石はドクターだ」
「ウィービック! 自分が何をしているのか分かっているのか!」
「おやじ……」
バロノークから通信が入る。
ウィービックはアングラッゾを前に自身の行いに対する迷いが生まれるもそれを振り切り、ビシディアンのMSを引き離して離脱する。
「この辺りまでくれば……」
バロノークを引き離したGサイフォスは追撃を逃れる為、破壊された戦艦の影に隠れている。
戦艦の残骸でレーダーからはGサイフォスを捉えにくくなっている。
「この後はどうするか……」
「恐らくシドは自身を進化しようとしている筈です」
先の戦闘ではシドに対してバロノークの主砲で損傷を与えている。
その為、シドは自身を修復する為と更に強化する為に一時的にEXA-DBから離れていると考えられる。
そうなればシドと交戦する事なくEXA-DBまで辿りつく事が出来るかも知れない。
だが、Gサイフォスのレーダーに反応が現れる。
「連邦軍か! こんな時に!」
Gサイフォスは接近する連邦軍から逃げる為に残骸から飛び出す。
それに気が付いた連邦軍のアデルはGサイフォスを追撃するが、追いつく事は出来ない。
「はっ! その程度で俺に追いつける訳が……」
アデルを引き離したが、突如白い影がGサイフォスを追い抜いた。
「俺が抜かれた! このMSは……ガンダムかよ!」
Gサイフォスを追い越した白い影、それは連邦軍の誇る最強のMS、ガンダムAGE-2であった。
AGE-2はGサイフォスにハイパードッズライフルを向けている。
「糞! ガンダムだからって!」
Gサイフォスは退避しようとするが、一瞬でAGE-2はGサイフォスの背中に回り込んでビームサーベルを抜いてGサイフォスに突きつける。
「凄いです……」
「マジかよ……これがガンダムの力……」
AGE-2の動きをウィービックは目で追う事も出来ない。
「こちらは地球連邦軍所属のアセム・アスノだ。俺達は破壊された戦艦の調査に来た。何か知っているか?」
Gサイフォスにアセムからの通信が入る。
アセムはビシディアンを追って来た訳ではなく、ウィービックが隠れていた残骸の調査に来ており、その残骸の付近に所属不明のMSがいた為、動きを封じた。
もしも、本気でGサイフォスを落とす気で来たら背後を取られた時点で勝負は決まっていた。
「隊長! そいつ、海賊です!」
AGE-2はGサイフォスの背後を取っている為、死角になっていたがGサイフォスにはビシディアンのエンブレムがマーキングされていた。
その為、Gサイフォスが海賊のMSである事は一目瞭然だった。
「何だと! お前達がやったのか!」
「違う! 俺達はじゃない!」
「海賊の言う事など信用出来るか!」
ウィービックがここに来たのは偶然だが、戦艦が破壊されその近くに海賊のMSが入れば疑われるのは当然の事だった。
アセムはウィービックが戦艦を破壊した犯人だと判断しかけるが、突如アデルがビームによって撃ち抜かれて破壊する。
「何だ!」
「くそ! こんなところにいやがったのか! シド!」
そこにはEXA-DBの守護者であるシドがいた。
バロノークの主砲による損害はすでに修復されており、シドには傷一つついていなかった。
「これはMSなのか……」
その巨大な姿にアセムは圧倒される。
アセムは戦争の中で軍人として戦い続けて来たが、その中で様々なヴェイガンのMSを見て来た。
しかしここまでのMSとは遭遇した事は無い。
そして、シドはビームを放つ。
その攻撃で次々とアデルが破壊されていく。
「良くも仲間を!」
AGE-2はシドの攻撃を掻い潜って行く。
圧倒的な火力ではあったが、アセムとAGE-2は確実にかわしてシドに接近して、ハイパードッズライフルをシドに撃ちこむ。
「すげぇ……これがガンダム、これなら……」
「駄目です!」
ウィービックはただ驚くだけであった。
自分はシドの砲撃をかわすので精一杯で接近する事は出来なかったが、アセムはそれをやってのけてシドに一撃を入れている。
AGE-2の機体性能もあるが、その性能を完全に扱えるのはアセムの実力に他ならない。
通常のMSよりも高い威力を持つAGE-2のハイパードッズライフルの一撃はシドに直撃を与えシドは破壊とまではいかないが損傷を与える事に成功する。
だが、すぐに小型のシド、シド・スレイヴが周囲の残骸からシドを修復する。
「馬鹿な! MSをその場で修復しただと!」
「シドには自己再生能力があるんです!」
AGE-2によって破壊された箇所はすぐに修復され、シドを修復していたシド・スレイヴはAGE-2に向かって来る。
その数は多くAGE-2は下がりながらもハイパードッズライフルで応戦する。
一撃で数機のシド・スレイヴを落とすが数で圧倒され、AGE-2はストライダー形態に変形して距離を取ろうとする。
「早い!」
先回りして来たシド・スレイヴをビームバルカンで破壊する。
シド・スレイヴの動きは早く、ストライダー形態のAGE-2でも引き離す事は難しい。
AGE-2はMS形態に変形すると、両手にビームサーベルを持ってシド・スレイヴを切り裂く。
「数が多すぎる! これじゃキリがない!」
いつまでもシド・スレイヴの相手が出来る訳ではない為、アセムも焦り始める。
このままではアセムの体力が持たない。
すると、戦艦の残骸が流れて来てそれをGサイフォスがドッズバスターHで破壊してシド・スレイヴの視界を遮るとAGE-2は離脱して戦艦の残骸の陰に隠れる。
「何なんだよ。あの化物は……」
隠れたアセムは息を整える。
「全く……最後の任務だって言うのに……」
アセムはぼやく。
今回の漂流船の調査の任務を持ってアセムが連邦軍を除隊する予定だった。
それはつい先日、アセムは妻のロマリーとの間に息子が生まれたからでこれからは息子のキオと妻のロマリーとの時間を大切にしようとした。
「だからって俺はこんなところで死ぬ訳にはいかないんだ……ロマリーの為にもキオの為にも……」
アセムは頭をフルに使って打開策を考える。
敵は圧倒的な火力を持っている。
それに関してはアセムはかわし切る自身はある。
AGE-2のハイパードッズライフルの威力ならシドにも通用する。
だが、シド・スレイヴは非常に厄介だ。
1機の戦闘能力も並みのMSよりも上で数も多い。
AGE-2の機動力を持ってしても宙域から離脱する事は難しいだろう。
援軍もいつになるのか、そもそも来るのかも分からない。
いくつも策を考えてもすぐに消える。
考えれば考える程、状況は絶望的だ。
それでも諦める訳にはいかなかった。
何としても生き延びて家族の元に帰らなければならない。
「おい! ガンダムのパイロット! 共同戦線をいかないか?」
アセム同様に残骸に隠れていたウィービックがアセムにそう持ちかける。
シドはアセムとウィービックの共通の敵でバラバラに戦っていても勝ち目は無い為、ウィービックはアセムとの共闘を提案する。
「海賊がだと……何か策はあるのか?」
アセムは立場上、海賊と共に戦う事は出来ないが状況が状況だ。
変に意地を張ったところで勝ち目はない。
今は生き残る事が最優先でその為に海賊と共に戦う事も辞さない。
そうでもしなければこの状況で生き延びる事は出来ない。
「それは……」
ウィービックの方も自分達では勝ち目は無い為、シドを相手にあそこまで戦えたガンダムの力を借りようとしていただけなので、明確に策がある訳ではなかった。
「……シドのコアユニットを破壊すればシドの機能は停止します」
「だがどうするつもりだ? シドの周りには小型のシドが無数にいる」
長距離からの攻撃ではシド・スレイヴが邪魔で決定打を与える事が出来ず、接近しようにもシド・スレイヴが邪魔になる。
「貴方のガンダムの機動力を使えばシド・スレイヴを引きつける事が出来ます。そして、Gサイフォスにはプラズマ融合炉が搭載されています。それをゼロ距離で爆発させれば……」
「待て! お前達はどうするつもりだ! そんな事をすれば!」
確かにアセムにはシド・スレイヴを引きつける事は可能かも知れない。
Gサイフォスに搭載されているプラズマ融合炉を自爆させればシドに致命的な打撃を与える事は可能だ。
しかし、それを行えば確実にGサイフォスに乗っているウィービックとレウナは死ぬ。
幾ら、生き延びる為とはいえ、海賊の命を犠牲にする気はアセムにはない。
「けど、それそかシドを止める方法は無いんだな?」
「はい」
レウナは頷く現状の戦力でシドを倒す事の出来る策はそれしかなかった。
それしかないのであればウィービックも覚悟を決める。
「余り命を粗末にするものではいな」
覚悟を決めたウィービックだが、クライドからの通信が入る。
そして、いつの間にかクライドのF-ZEROがそこにいた。
当時のF-ZEROの両肩にはシールドが装備されておらず、見えざる傘も搭載されてはいなかったが、ビシディアンのMSの中でも高い隠密性能を持っていた。
「ドクター! 何でここに!」
「キャプテンに頼まれたんだよ」
クライドは躊躇う事もなく嘘をつく。
実際はアングラッゾに頼まれた訳ではなく無断で出撃して来た。
だが、ウィービックはクライドの言葉でアングラッゾが自分のやり方を認めた上でクライドを向かせてくれたと判断した。
「その声……叔父さんなんですか?」
「久しぶりなところ悪いが後にして貰えるか」
通信越しに聞こえる声が10年前に行方不明となっていたクライドの物に良く似ている為、アセムは驚いている。
そんなアセムの事を気にも留める事もなく、クライドは話しを進める。
「二人が犠牲にならずとも私に策がある。お嬢さん、シドとやらは自動操縦の無人MSと言う事で間違いはないのだな?」
「はい。今はシドを動かしているAIが暴走していますから制御が不能なんです」
「ならば、私がシドのAIユニットにハッキングを行い制御システムを掌握する」
「無茶です!」
クライドはシドを動かしているAIユニットに対してハッキングを行う事でシドの制御を掌握する事を提案するが、レウナはそれを無茶だと言う。
シドが無人機で制御ユニットのAIで稼働している為、当然外部からのハッキングに対する対策はしてあり、戦闘中にハッキングを行うなど無茶も良いところだ。
「君に出来なくとも私には出来る」
「ドクター……本当に可能なんだな?」
「無論だ」
クライドはレウナには出来ない事でも自分なら可能だと言い張る。
ウィービックもクライドの技術者としての腕は良く知っている。
だが、天才的な頭脳を持ったレウナが出来ないと言う為、どちらの言い分が正しいか判断しかねる。
「ウィービック、私の力を信じて欲しい」
「ドクター……」
「叔父さん、俺はどうすれば良いんですか?」
ウィービックは迷うがアセムは迷う事なくクライドに指示を仰ぐ。
クライドはアセムが知る中でクライドの技術者としての実力は地球圏でのトップクラスである為、そこに疑う余地はなかった。
「海賊、誰かが犠牲になるやり方なんて間違ってる。俺はみんなで生き残る方法があるならそれに賭ける。お前はこんなところで死んでも良いのか?」
「ああ……そうだな。俺はまだ死ぬ訳にはいかねぇ!」
アセムの言葉にウィービックもクライドのやり方に賭ける決断をする。
レウナの言葉を疑う訳ではないが、ウィービックもここで死ぬ訳にはいかない。
EXA-DBを破壊して、ビシディアンでアングラッゾと共に連邦軍の腐敗を叩かなければならない。
「俺はドクターのやり方に賭ける。良いな? レウナ」
「はいです!」
レウナもクライドに賭けてみようとする。
レウナにはシドを止めて皆が生き残る手段は考えつかないが、皆が生き残る事が出来る事に越した事は無い。
「まず、アセム、お前はAGE-2の機動力を活かして小型のシドを引きつけて欲しい。出来るな」
「任せてください」
「ウィービックは俺の護衛を頼む。シドの注意を引いて欲しい」
「分かった!」
クライドが指示を出し終えるとAGE-2はストライダー形態に変形すると、残骸から飛び出す。
「こっちだ! ついて来い!」
AGE-2を発見したシド・スレイヴは一斉にAGE-2の方に向かって行く。
シド・スレイヴの大半がAGE-2の方に向かったところでGサイフォスが飛び出す。
ドッズバスターHを連射してGサイフォスはシドの注意を引く。
「ドクター!」
Gサイフォスがシドの砲撃をかわしている間にF-ZEROはシドの背後に回り込む。
そして、掌からアンカーを射出する。
「良し……うまく行った。アリス」
「了解です。クライド様」
F-ZEROに搭載されているアリスの人格データをシドに送り込む。
元々F-ZEROはガンダムZEROをフルアーマー化したMSと言う訳ではない。
クライドは年と怪我によりパイロットとしての能力は確実に衰えている。
それを補う為、隠密能力を重視する事で敵に発見される事もなく接近した上で敵MSのシステムに介入しシステムを掌握する事で戦う事もなく勝利する事を目的としている。
そして、シドにはあれだけの動きを可能とするAIユニットが搭載されている為、アリスの人格データをAIユニットに上書きする事でアリスがシドを動かせるようにしている。
「クライド様、どうやらシドにはすでに別の人格データが書き込まれているようです。これは……EXA-DBの制作者のエドル・イナージュの物と思われます。いかがなさいますか?」
「すでに人格データが書き込まられていたが……好都合だ。そのデータの上からお前の人格データを書き込め、その上で制御システムを掌握しろ」
「了解」
シドの制御プログラムにはレウナの父親でもあるEXA-DBの製造者のエドル・イナージュの人格データが書き込まれていた。
この作戦の問題点はアリスの人格データの量が通常のデータよりも多い為、シドでも要領が足りるかが問題だったが、すでに人格データが入っているなら上書きをすればまず確実にアリスのデータを入れる事が可能だ。
「ドクター! 早くしてくれ!」
Gサイフォスは必死にシドの攻撃をかわしているがいつまでも持たない。
だが、やがてシドの動きは止まる。
「やったのか……」
「本当に出来ました! 凄いです!」
シドが止まった事でクライドの作戦が上手く行ったと言う事が分かる。
シドが止まった事でようやくウィービックも一息をつく事が出来た。
「良し、シドは止まった。レウナ、ドクター。EXA-DBを破壊しに行こう」
「悪いがそれをさせる訳にはいかないな」
F-ZEROはGサイフォスの前に立ちはだかる。
「どういう事だ。ドクター」
「EXA-DBは俺が貰い受ける」
「どういう事ですか!」
「言った筈だ。EXA-DBは俺が貰うとな」
ウィービックは再び戦闘態勢に入る。
クライドは明確に敵対する意思がある。
「要らないんだろう。なら、俺が有効に活用させて貰う」
「あれは危険な物です! 人の手に渡っては駄目なんです!」
「知った事か、EXA-DBが危険ならMSはどうだ? 戦艦はどうだ? 銃はどうだ? どれも人の命を奪う危険な物だ。EXA-DBと何も変わらない」
クライドからすればEXA-DBのデータもMSなどと何も変わらない。
MSも人を殺す道具に過ぎない。
「でも!」
「俺は君たちと議論する気はない。EXA-DBは俺が貰うと言う事が決定事項だ」
「考え直してくれ! ドクター!」
GサイフォスはF-ZEROにドッズバスターHを向ける。
この距離ならウィービックはクライドに当てる自信はある。
しかし、クライドのF-ZEROは微動だにしない。
「断る」
ウィービックは引き金を引く。
だが、本来なら放たれる筈のビームが放たれない。
ウィービックは何度も引き金を引くがビームが放たれる事は無い。
「どうなってんだ?」
機体の状況をチェックするがどこにもエラーは出ていない。
つまり、Gサイフォスのどこにも異常がないとなっているが攻撃が出来ないと言う事は明らかに異常な事だ。
F-ZEROはゆっくりとGサイフォスに近づいて来る。
異常が出ていないのに攻撃が出来ない事などから得体の知れない恐怖がウィービックを襲いF-ZEROから距離を取ろうとするが、レバーを動かしてもフットペダルを踏んでもGサイフォスは動く事は無かった。
「どうしたんですか!」
流石にレウナも異常事態だと言う事に気が付くが、レウナが気が付いたところでどうしようもない。
「どうした? ウィービック、機体トラブルか?」
「糞! どうして動かないんだ!」
「簡単な事だ。お前のGサイフォスをいつも整備したり修理しているのだ誰だ?」
「まさか……」
そこでウィービックが気が付く。
Gサイフォスはビシディアンのエース機である為、クライドが直々に整備や修理をしている。
つまり、クライドならばGサイフォスに細工をし放題と言う事だ。
「今更気づいても遅いな。生憎と俺はお前と正面から戦っても勝てる気はしないんでな」
元々、ビシディアンに対しては仲間意識は持っていない。
始めから利用するだけ利用して切り捨てる気でいた。
その為にいつでも切り捨てる用意は出来ていた。
Gサイフォスはクライドが遠隔操作でコックピットからの情報のすべてを遮断している為、コックピットで幾ら操作をしようとも一切の反応は無い。
まともに戦って勝てない事をクライドは知っており、ならばまともに戦う事なく勝つやり方を選択していた。
「卑怯な!」
「言ってくれるな。義賊を気取ったテロリストの分際で……社会の底辺のゴミが俺の役に立てたんだ。一生分の働きをしたんだ。もう、死んでも構わないだろう」
「何だと!」
「ウィービックさん! 見てください!」
レウナに言われてモニターを見るとカウントダウンと共にGサイフォスのプラズマ融合炉の出力が異常に上昇していると警告が出ている。
このままでは融合炉が爆発する事はウィービックにも分かる。
そして、F-ZEROはGサイフォスから離れていく。
「レウナ、どうにか出来ないのか?」
「駄目です! 何をやってもシステムが反応しません! 完全にコックピットからの操作が遮断されています!」
レウナが自爆を阻止しようとするが、何をやってもシステムは反応しない。
元々、確実に勝利するための細工であるので、万が一にも操縦を取り戻させるようなヘマはしていない。
今のGサイフォスは完全にクライドの制御化に置かれている。
「動け! 動いてくれ! Gサイフォス!」
ウィービックは僅かな望みに賭けて操縦桿を動かし見るも何も起こる事は無く無情にも時間だけが過ぎていく。
「くっそぉぉぉぉおぉぉぉ!」
そして、Gサイフォスに搭載されているプラズマ融合炉は大爆発を起こした。
「何だ?」
シド・スレイヴを引きつけていたアセムだが、シド・スレイヴの動きが止まった事で作戦の成功を知ったが、そのすぐ後にGサイフォスの自爆の余波がAGE-2を飲み込んだ。
やがて爆発が収まる。
爆風はAGE-2やF-ZEROをも飲み込む程であった。
F-ZEROは爆風に飲まれる直前にシドによって庇われていた為、ほとんど無傷だ。
シドは爆風の直撃を受けて破壊こそはされてはいないが損傷している。
「少しやり過ぎたかな? しまったな……アセムまで巻き込んでしまった」
元々、アセムにシド・スレイヴの引きつけ役を任せたのも単にAGE-2の機動力を使って囮になるだけではなくGサイフォスを自爆させた時に少しでも遠くにいる事で自爆に巻き込まれないようにする為であった。
「アリス、バロノークに宙域図を転送してガンダムの回収をさせて置け」
爆発に巻き込まれたアセムは機体が並みのMSよりも頑丈である為、死んではいないとは思うがこのままでは時間の問題であった。
そこで、バロノークにAGE-2の残骸を回収させる。
回収させれば自動的にアセムもビシディアンに回収される事になる。
ビシディアンは以前より、連邦軍の切り札であるガンダムを奪い連邦と戦う計画が持ち上げられていた。
クライドも奪ったガンダムの改造プランをいくつも提示している。
ビシディアンは回収したアセムが連邦軍のパイロットだろうとすぐに始末する事は無いと言う事も分かっている為、すぐに動く事の無い連邦軍よりかはアセムの生存率が高くなるだろう。
「さて……ようやくご対面だ。呪われた秘宝とやらにな」
バロノークに情報を送った後、クライドはシドの中にあるEXA-DBの位置情報からEXA-BDの元に向かう。
シドを自分の制御化に置いた為、EXA-DBまでは誰にも妨害を受ける事もなく辿り付き、クライドはEXA-DBの新たな管理者となった。
クライドは13年前の事を話し終える。
クライドがどういう経緯でEXA-DBを手に入れたかは話したが、面倒な部分はかなり省いている。
「事情は分かった。だが、なぜ破壊から確保に変わったのか納得の行く説明はあるんだろうな?」
「納得が行くかは分からんが、当時の理由としては俺が父さんより受け継いだデータを損失しかたらだ」
クライドがEXA-DBを破壊しようとしていた理由は自分が父より同様のデータを受け継ぎ、同じ物が自分以外の手にある事が気に入らなかったためだ。
だが、ノートラム防衛戦で機体を自爆して離脱した時に大けがを負い、その際に義手が破壊された事で義手に隠していたデータも破壊されてしまった為に、EXA-DBの中の技術を自身の手に入れる方向にシフトしている。
「まぁ、そんな事はどうでも良い。世界は今、色々と動いて厄介な状態となっている。だから、力を貸して欲しい」
「世界の事なんて知るかよ」
ブラッドはクライドの予想通りの事を言う。
ブラッドにとっては世界がどうなろうと関係ない。
ただ強い敵と戦えればそれで良い。
その事はセリアから聞いており、似た部分を持つクライドには対処法もすでに考えてある。
「お前ならそう言うと思ってた。だが、これを聞いてもまだそんな事が言えるのか?」
「何?」
「今、世界の主だった陣営を分けると大体8つに分かれる。ヴァニス・イゼルカントが率いるネオ・ヴェイガン、フェオドール・カルティエが率いるUIE、AGEシステムを持つディーヴァ、フリット・アスノと行動を共にしているホワイトファング、ガンダムタイプのMSを有している宇宙海賊ビシディアン、ネオ・ヴェイガンと袂と分かった旧ヴェイガン、後は連邦軍の残党だ」
「どう言う事なの? ネオ・ヴェイガンに旧ヴェイガンと言うのは? それに連邦の残党?」
世界の情勢は大きく変わっていた。
すでに連邦軍は実質的に敗退している。
それに代わる支配者がネオ・ヴェイガンとなり、それに対抗しているのはすでに組織ではなく個人的に動いている者が殆どだ。
「それが世界の情勢だ。説明は面倒だから自分で調べろ。話しを元に戻すがその中でネオ・ヴェイガンの女帝であるヴァニス・イゼルカントは表向きはヴェイガンの前指導者のフェザール・イゼルカントの娘と言う事になっているが実際は違う。アイツは俺が生み出した『最強』のパイロットだ」
クライドはわざわざ『最強』を強調して言う。
ブラッドはクライドの思惑通りに最強と言う事に反応する。
ブラッドもまた自分の能力に絶対の自信を持ち、自身が最強である事を疑わない。
故に自分以外に最強の称号を持つ事は気に入らない。
「UIEには俺が開発した『最強』のMS、ガンダムZERO Ⅱを持っている。で、俺の目的はUIEを潰す事にある」
またしても、最強を強調する。
クライドとしてはツヴァイを認めたくはないが、高性能MSである事は認めざる負えない事実で、存在を認めたくないと言う事はこの際はそこには目を瞑っている。
UIEにはクライドの両親を殺したナーガがどんな状態かは知らないがガンダムTHE ENDの生体ユニットとして未だに存在している。
クライドにはそれが許せない為、まずはUIEを潰す事を目的としている。
「そして、俺はお前が乗るに相応しいMSを用意する事が出来る。どうだ、俺について損は無いはずだ」
止めにクライドはそういう。
今の時代、その身一つで戦える訳ではない。
戦う為にはMSがどうしても必要となって来る。
MS自体を手に入れる事は金があれば簡単で金を使わずとも奪えば良い。
だが、金で簡単に手に入れる事の出来るMSの性能はたかが知れている。
高性能機を奪ったとしてもその後には整備や補給の問題も出て来る。
その辺りは強引な手段ではいつかは持たない時が来る事はブラッドも理解は出いている。
ブラッドもクライドの技術者としての実力はガンダムZEROを設計したと言う事から分かっている。
すでに年老いて、クライドとは戦う気も起きない。
「だったら、その俺に相応しいMSとやらを見せて見ろ。まさか、ここまで言って用意していないって事はないよな?」
「当然だ」
ブラッドが口だけで納得するとは思っていない。
その為、すでにブラッドのMSは用意してあった。
エンジェルの宇宙港はすでに使い物にならないが、クライドが一部の港を修復してある。
そこにアブディエル改が停泊している。
見た目こそはアブディエルとは変わらないが中身は大きく異なる。
EXA-DBの技術を応用しており、見えざる傘などを使う事が出来るだけでなく単艦でも高い戦闘能力を持っている。
クライドはブラッドとセリアを連れて格納庫に入って来る。
グルーデックはアブディエル改のブリッジに向かっている為別行動だ。
その格納庫にブラッドのMSが置かれていた。
「エミリオ、ご苦労」
「師匠、整備は完璧にしてありますよ」
格納庫に置かれている真紅のMS「ブラッディゼイドラ」を整備していたエミリオがクライド達に気づいてそういう。
ブラッディゼイドラはヴェイガンが23年前に投入したゼハート専用機のゼイドラを母体にクライドが改良したMSだ。
主に高速白兵戦を重視している為、バックパックにはガンダムZERO Ⅱに実装されたビームウイングが搭載されて機動力を増している。
ゼイドラとの最大の違いはその両腕だ。
ブラッディゼイドラの両腕はヴェイガンの水陸両用MS「ウロッゾ」を思わせるような腕になっており、先端にはシグルクローが装備され、手の平には拡散ビーム砲が内蔵されている。
両手の形状が違う事で手持ちの火器や尾のゼイドラソードは廃止されているが、代わりにエンベッドビットシステムが搭載され、ゼイドラビットを使う事が出来る。
その隣にはセリア用のMSが置かれている。
アブディエル改の艦長にはグルーデックがなる為、セリアもパイロットとして復帰する事になっている。
セリアのMSはゼイドラの姉妹機であるクロノスを改良したバスタークロノスだ。
バスタークロノスは砲戦用MSであったクロノスを更に砲戦用MSに特化させている。
手持ちの火器であったクロノスガンを改良してビームサーベルを出せなくした代わりに威力を向上させて手持ち式から腕部への取り付け式にした事でビームバルカンも同時に使用する事が可能になり腕を上下に挟むように取り付けられたダブルクロノスガンを両腕に装備している。
両肩にはガンダムAGE-2 ダブルバレットのツインドッズキャノンが追加され、ツインドッズキャノンの砲身には小型スラスターが内蔵されることでパージしてもビット兵器のようにある程度は遠隔操作が出来るようになっている。
肩の装甲には小型ミサイルが内蔵され、尾にはクロノスキャノンが追加されて全体的に格闘戦よりも砲戦に特化させてた。
その上でブラッディゼイドラ同様にエンベッドビットシステムが搭載されてクロノスビットを使う事も可能だ。
最大の特徴はバックパックにはクロノスキャノンを外してAGE-1 フラットのゼフルドランチャーが改造して取り付けられている。
そのゼフルドランチャーに装填されているミサイルは対艦ミサイルではなく、クライドがEXA-DBの中から見つけ出し、試験的に2発だけ製造した戦術級ミサイルを搭載し、クライドはアトミックランチャーを名付けた。
この2機はクライドがEXA-DBを手に入れてからその技術のデータを集める為に製造したMSである。
「赤いMSがブラッドので黒い方がセリアのMSだ。乗ってみるか?」
「その必要はねぇよ。ビンビン来やがる」
ブラッドはブラッディゼイドラに乗り込む事なくその性能を見抜いていた。
元となったMSは20年以上も前のMSではあるがクライドがEXA-DBの技術を使っている為、現在のMSよりも遥かに高性能機に仕上がっておりブラッドは機体を見ただけでそれを判断した。
「良いだろう。こいつは気に入った。お前が何をするのかは興味はねぇが、お前に乗せられてやるよ」
ブラッドはクライドの目的には興味はないがブラッディゼイドラは気に入った。
その為、ブラッドもクライドに協力する事にする。
クライドにつけばクライドが最強と言うヴァニスやガンダムZERO Ⅱを潰す事が出来る事が一番の理由でもあった。
「クライド、アブディエルの出航準備は完了した」
「分かった。では艦長、俺達も動くとしよう。俺のF-ZEROを搬入後、まずはUIEの移動要塞ドレッドノートを落とす」
ブリッジからアブディエル改の艦長となったグルーデックからアブディエル改の出航の準備が完了したとの報告が入る。
そして、クライドはUIEの移動要塞ドレッドノートを落とす為に動き出す。