機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

107 / 155
第101話

 

 

 

 

 UIEの移動要塞ドレッドノートにネオ・ヴェイガンの巨大母艦グレート・エデンが接近している。

 本来ならば、ドレッドノートから防衛のMSが出撃されるところだが、UIEの側もネオ・ヴェイガンの接近の理由は分かっている為、防衛のMSは出撃はしない。

 グレート・エデンから3機のMSが射出される。

 1機目はヴァニスのガンダムレギオン、2機目はタチアナのレギルスT、3機目はヴァレリの乗るガンダムレギルスMだ。

 レギルスMは旧ヴェイガンが開発したガンダムレギルスの3号機に当たる。

 3号機のレギルスMはマリィの趣味がダイレクトに反映された砲戦用に調整されている。

 両肩、両腕、両膝にはレギオンが装備している物と同タイプのシグマシスキャノンが計6門装備されている。

 バックパックにはレギルスキャノンが2門追加されて全体的に火力が増している。

 そのせいで格闘能力や機動性能は低下するも圧倒的な火力を有している。

 1号機と2号機との最大の違いはレギルスMは非Xラウンダーが乗る事を前提としていた為、マリィの手が加わった後でもビット兵器を使う事が出来ない。

 グレート・エデンから出撃した3機はドレッドノートの格納庫に着艦する。

 その格納庫にはMSが1機も置かれてはいなかった。

 今回、ネオ・ヴェイガンのMSを迎えるに当たり、別の格納庫に移動させていた。

 まだ、正式に同盟を組んだ訳ではなく会談の間にネオ・ヴェイガンのMSを破壊しないと言う意思表示も兼ねている。

 着艦した3機のMSからそれぞれにパイロットがドレッドノートに降りる。

 それを、アルベリックが出迎えている。

 

「会談が終わるまで我らのMSに接近する事は許さん。良いな」

「心得ています」

 

 その後、タチアナとヴァレリは入念な身体チェックを受けて、ヴァニスと共にドレッドノートの内部に通された。

 ヴァニス達はアルベリックに案内されてドレッドノートの一室に通される。

 そこはヴァニスの自室と勝るとも劣らない内装で普通の部屋でない事が伺える。

 その部屋にUIEの総帥であるフェオドールがヴァニスを待っていた。

 

「お初にお目にかかります。ネオ・ヴェイガンの姫君。私はUIEの総帥をしています……」

「前置きは良い。本題に入るぞ」

 

 にこやかに挨拶をして来るフェオドールにヴァニスは冷たく返す。

 ヴァニスは部屋の椅子に座り、フェオドールはその対面に座る。

 

「まずはこちらの会談に応じて貰い感謝する。しかし、会談の席で素顔を晒さないと言うのは如何なものか」

 

 アルベリックはフェオドールの後ろに立ち、そう言う。

 そこには会談を少しでもUIEに有利に進めようと言う腹積もりであった。

 だが、ヴァニスは全く気にした様子はない。

 

「必要か? お前達はUIEの跡継ぎを作り出す為に私をその男を結ばせたいのであろう? ならば、重要なのは私の素顔ではなく私が子を産めるか否かではないのか?」

 

 ヴァニスはアルベリックを挑発するように返す。

 この会談におけるUIEの目的はフェオドールの跡継ぎであるとネオ・ヴェイガンは考えていた。

 フェオドールはまだ若いがコールドスリープを続けていてもいずれは老いていく。

 その為、フェオドールが若いうちに嫁を取って跡継ぎが入ればUIEの将来は安泰だ。

 そこで白羽の矢が立ったのはヴァニスであった。

 ネオ・ヴェイガンのトップであるヴァニスとUIEの総帥のフェオドールが結ばれると自動的にネオ・ヴェイガンとUIEも統合され地球圏における最大の勢力となる。

 そうなればもはや誰も止める事などは出来はしない。

 更にそれをセッティングしたヴァレリはその功績は大きい。

 その後、二人の子供はネオ・ヴェイガンとUIEが統合された軍隊を率いる事になり、ヴァレリが統合の功績を使って上手くその子供の教育係にでもなれば、その子供を自分色に染め上げる事も可能だろう。

 そうなれば間接的にヴァレリがその軍隊を操る事が出来る。

 今回の話しもその為にセッティングしたのだろう。

 

「姫、女性がそのような物言いをしてはいけない。それに私達の目的は跡継ぎではありません」

「ほう」

 

 フェオドールはヴァニスを諌める。

 これが普通の女であるのなら、諌めるフェオドールの甘いマスクに心ときめくのだが、ヴァニスはそんな事よりもUIEの目的の方に興味を持っていた。

 

「姫もご存じの通りUIEの理念は人は宇宙に出る事で新たな力に目覚め進化すると言う物です。その理念が正しい事は貴女方のようなXラウンダーの存在が証明しています」

「面白い見解だ。だが、私の父はXラウンダーは言葉を持たぬ獣へに退化と言っている」

「見解の相違ですね。確かにXラウンダーの力を突き詰めれば言葉は不要となります。しかし、言語機能が退化してもそれ以上に高い空間認識能力、近未来予知能力に代表される能力に目覚める事は十分に進化を言えます」

 

 ヴァニスはフェオドールの言葉に耳を傾けている。

 イゼルカントはXラウンダーは人類と退化と称し、逆にフェオドールは人類の進化を称している。

 どちらの意見も正しいと言えるが、ヴァニスはXラウンダーが人類が進化した姿なのか退化した姿なのかはどっちもで良い問題だ。

 

「それで?」

「残念ながら、私のXラウンダーとしての素質はありません。ですが姫、貴女は桁違いのXラウンダー能力をお持ちと聞いています」

「いかにも」

「その力を我らを導く為に使って欲しい。私との婚約は私の部下を納得させる理由でしかない」

 

 フェオドールにXラウンダーとしての力を持たない。

 その為、高いXラウンダー能力を持つヴァニスにUIEの指導者になって欲しいと言う物だ。

 言いなりネオ・ヴェイガンの女帝であるヴァニスがUIEの率いるとなったところで不満が募るであろう。

 しかし、現総帥のフェオドールと婚約し、妻となれば文句は誰も言わないであろう。

 UIEがネオ・ヴェイガンに会談を申し込んだ理由はそれであった。

 

「陛下、私は会談を受け入れるべきだと考えます」

「お前の立場ならそう言うだろうな」

 

 ネオ・ヴェイガンの予想である跡継ぎからは外れたがいずれは跡継ぎの問題は出て来る為、ヴァレリの目的は変わらない。

 

「では私の婚約を受けて貰えるので?」

「断る」

 

 ヴァニスはドレスの中に隠し持っていた銃をフェオドールに向ける。

 ドレッドノートに来た時にタチアナとヴァレリは入念な身体チェックを受けていた。

 しかし、ヴァニスだけはチェックは甘くなっていた。

 大事な会談を前に徹底的に身体チェックを行えばヴァニスの機嫌を損ねる可能性があったので、パッと見で武器の類を持ち込んでいない為、銃を持ち込んだ事を見落としていた。

 

「陛下!」

 

 ヴァレリは思わず叫んでしまう。

 今回の会談でヴァレリはフェオドールと婚約を正式に決定すると聞かされていた。

 だが、それに反してヴァニスは武器を持ち込んでいる。

 タチアナが驚く素振りを見せていない事と事前に武器を持ち込んでいると言う事からヴァニスは始めから婚約をする気などは毛頭ないと言う事だ。

 

「姫、理由を聞かせて貰っても?」

「簡単な事だ。私はお前達を導く気は毛頭ない。私の目的はただ一つ。この世界を手に入れる事だ。その為に敵は潰す。お前達もだ。やはり、父の言い分の方が正しいと言う事は私が証明しているようだな」

 

 ヴァニスにとって人類を導く事に興味はない。

 自身の存在理由である最強である事を世界に示す事だけがヴァニスの戦う理由だ。

 その為、ネオ・ヴェイガンに匹敵する戦力を持つUIEは取り込むのではなく完膚なきまでに叩き潰す事でしか利用価値は無かった。

 そして、本能のままに動くヴァニスはXラウンダーが人から獣に帰ると言うXラウンダーの退化説を唱えるイゼルカントの説を証明している。

 ヴァニスは出入り口を固めていた兵を射殺すると、タチアナと共に部屋を飛び出す。

 

「すぐにあの二人を捕えろ! 殺しても構わん!」

 

 アルベリックはヴァニスとタチアナを拘束をするのではなく殺す指示を出す。

 会談は決裂した事でヴァニスとタチアナは敵であり、ドレッドノート内に敵の侵入を許した事になる。

 過去にドレッドノートから情報が漏えいした事がある為、これ以上の情報の漏えいを防ぐ事が最優先であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァニス達がドレッドノートで会談をしている間、グレート・エデンに搭載されているMSにはパイロットが搭乗して待機命令が出ている。

 それは会談が決裂した時にすぐに出撃し、ヴァニスを救出に迎えるようにだ。

 親衛隊も待機しているが、機体の中でジラードとコーデリアは不満そうにしている。

 どちらも今回のUIEの総帥であるフェオドールとの婚約するかも知れないと言う事が不服であった。

 ジラードは過去に婚約者を失うと言う出来事から結婚に対しては人一倍特別な意味を持っていた。

 今回の婚約が両者が愛し合ってのものであれば文句はなかったが、明らかな政略結婚だ。

 無論、UIEと正面を切ってぶつかり合えばネオ・ヴェイガンでも多大な被害が出る為、政略結婚をする事自体は理解できる。

 だが、理解は出来ても納得はいかなかった。

 一方のコーデリアは理解も納得も行かない。

 コーデリアは盲目的と言っても過言でない程、ヴァニスを神格化して忠義を誓っている。

 それはヴァニスの持つ圧倒的な力が唯一無二の物であると確信している為だ。

 故にUIEが相手でもコーデリアは正面から戦っても負ける気は毛頭ない為、政略結婚などする事に納得が行っていない。

 残りのアキラとシェリーは大して興味がある訳でも無かった。

 

「納得が行かん。なぜ、陛下があのような弱弱しい男などと……」

 

 コーデリアはフェオドールの事はほとんど知らないが、過去に一度も戦場に出た事がない事からフェオドールの事をそう判断して一人愚痴っている。

 

「私達のご命令してくださればあのような要塞の一つや二つ軽く落として見せると言うのに」

「無茶言わないでよ? あそこにどんだけのMSがあると思ってんのよ。流石に面倒臭いって……マジ?」

 

 ドレッドノートに仕掛ける事をシェリーは面倒臭がっていたが、シェリーは何かを感じとって顔が引きつる。

 同様にジラードも何かを感じ取り、ブリッジに通信を繋ぐ。

 

「ブリッジ、聞こえる? すぐに全機発進させなさい」

「ジラード隊長、どういう事ですか?」

「良いからさっさとしなさい。これは命令よ」

 

 ジラードは一方的に通信を閉じる。

 ジラードとシェリーが感じたのはドレッドノートからのヴァニスの指示であった。

 ドレッドノートとグレート・エデンはそれなりに距離があるが、ヴァニスのXラウンダー能力であればXラウンダーの感応能力を活かして指示を飛ばす事も可能だった。

 それでヴァニスは全機の出撃を指示して来たのだった。

 

「どういう事だ?」

「すぐにドレッドノートを仕掛けるようにXラウンダー能力で指示があったわ」

「やっぱやんないとダメよね……」

「タチアナを連れて行った時点で予想は出来ていたでしょ」

 

 参謀であるヴァレリはともかく、ヴァニスがタチアナを連れて行った事でこうなる事はあり程度は予想出来ていた事だ。

 タチアナは元連邦軍の特殊部隊の出身で生身での戦闘では親衛隊の中では高い実力を持っている。

 単純な身体能力ではコーデリアもそこまで劣っているとは言えないが、施設内での白兵戦においてはタチアナの右に出る者はいない。

 親衛隊の隊長であるジラードやコーデリアを差し置いてタチアナを護衛に同行させた理由はドレッドノート内で戦闘になる事を見越しての事だ。

 

「嫌なら出なくても良いわよ」

「冗談。こうなったからには暴れさせて貰うっての!」

 

 親衛隊のMSが出撃し、順次グレート・エデンからMSが射出されてドレッドノートに攻撃を開始する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレート・エデンから出撃した親衛隊は後続のMSを引き離してドレッドノートに向かっている。

 ネオ・ヴェイガンがMSを出撃した事でドレッドノートからもMSが出撃して来る。

 レギルスGはレギルスライフルを放つ。

 ドレッドノートから出撃仕掛けていたゼイ・ドゥに直撃して爆発を起こす。

 その爆発が後続機をも巻き込みドレッドノートのハッチの一つを塞いだ。

 

「各機、とにかくかき乱して」

 

 レギルスGはレギルスライフルでゼイ・ドゥを撃ち抜く。

 親衛隊が4機で敵陣に切り込んだ理由はドレッドノート内にいる二人の援護の為だ。

 タチアナが居れば簡単にやられる事はないが、最悪の事態はヴァニス達のMSが破壊される事だ。

 そうなれば脱出する事は途端に難しくなる。

 その可能性を少しでも低くする為、親衛隊は敵陣に切り込んで暴れている。

 それによってUIEは親衛隊の対処をしなくてはいけなくなり、結果、内部のヴァニス達への援護となる。

 

「心得ている」

 

 レギルスCがレギルスブレードでナイトルーパー改を両断する。

 レギルスAがビームバルカンで牽制をしてレギルスSがレギルスサイズでゼイ・ドゥを切り裂く。

 

「何か来る!」

「あれは……プロト3」

 

 UIEは親衛隊のレギルスに対して奪取した4機のプロト3を投入する。

 更には奪取されたが、その性能の高さから予定よりも遅れて正規採用されたゼイ・ドルグも投入する。

 正規採用されたゼイ・ドルグは先行量産機がグレーだったのに対して、ゼイ・ドゥと同様の緑で塗装されている。

 

「それに新型機も投入して来たようね」

「ふん、相手にとって不足なし!」

 

 レギルスCはレギルスブレードを構えて4機のプロト3に向かって行く。

 4機の内、タイタス以外は散開するが機動力の低いタイタスはかわすのではなくレギルスCをドッズハンマーで迎え撃つ。

 レギルスCの一撃をドッズハンマーで受け止めるとタイタスはレギルスCを弾き飛ばす。

 

「っ! 大したパワーだ」

 

 レギルスCは体勢を整えている内にレギルスAは飛行形態に変形してタイタスにビームバルカンを連射しながら突っ込む。

 タイタスは膝のビームニードルを突き出すが、レギルスAはかわしてタイタスの背後を取る。

 

「遅いわね」

 

 背後を取ったレギルスAはタイタスにビームバルカンを放つ。

 ビームバルカンの直撃を受けるも、装甲の厚いタイタスには有効的な攻撃ではない為、レギルスAはレギルスソードを腕につけてタイタスに接近しようとするが、レギルスAの背後にはスパローが回り込みシグルランスを振り上げていた。

 

「貰ったよ」

「させないわよ」

 

 レギルスAの背後のスパローにレギルスGがレギルスライフルで牽制して、レギルスAは背後のスパローにレギルスソードで切りかかる。

 そして、タイタスにはレギルスCが三連装ビームバルカンで牽制を入れ、レギルスAにはダブルバレットが胸部のビーム砲を放ち、レギルスAは飛行形態に変形してかわすが、ダブルバレットはドッズライフルで追撃する。

 

「シェリー!」

「分かってるって!」

 

 レギルスGがビームバルカンでスパローを牽制して、レギルスSはダブルバレットにビームバルカンを連射しながら向かうが、ストライダーがドッズライフルを放ち、レギルスSはレギルスサイズを回転させて防ぎ、ダブルバレットはレギルスSにカーフミサイルを放つ。

 

「ちょっ! 止めてよね!」

 

 レギルスSはレギルスビットを射出してカーフミサイルを迎撃する。

 カーフミサイルをレギルスビットで全て迎撃すると、ドレッドノートの外壁を中からのビームが突き破る。

 そのビームによって開けられた穴からガンダムレギオンとレギルスTが出て来る。

 ドレッドノート内から無事に機体が破壊される前に機体に乗り込む事が出来たヴァニスとタチアナはレギルスTのレギルスランチャーでドレッドノートの外壁を撃ち抜いて脱出する事に成功していた。

 ドレッドノートから離脱したレギオンはそのまま、主戦場に向かって行く。

 

「陛下! ご無事でしたか!」

「ご苦労だった。お前達は適当に戦って帰投しろ」

 

 ヴァニスはそれだけ言い残して通信を閉じる。

 そして、加速してゼイ・ドゥをレギオンライフルの実体剣で切り裂き、レギオンライフルを連射して次々と敵MSを撃墜して行く。

 

「他愛もないこの程度か……」

 

 ヴァニスは仮面で制御されているがXラウンダー能力を使って敵MSの位置を感知する。

 すると、モニターに次々と敵MSがロックオンされていく。

 改修時に新しくレギオンに追加された機能の一つだ。

 ヴァニスのXラウンダー能力で感知する事で自動に敵MSをロックオンすると言う物だ。

 それによりレギオンは同時にヴァニスが感知できるだけの敵をロックオンする事が可能のなっている。

 数秒後にはモニターを埋め尽くす程の敵をロックオンしている。

 シールドからレギオンビットを大量に放出し、10基のCファンネルも展開する。

 そして、自分の周囲に展開したレギオンビットとCファンネル、右手のレギオンライフル、左手のビームバルカン、肩と腰のシグマシスキャノン、尾のデルタゲイザー、胸部のビームブラスター、頭部のセンサーバルカンの全ての火器を同時に放つ。

 レギオンの全ての火器による一斉射撃は前方のみならず、後方に対してもレギオンビットとCファンネル、デルタゲイザーによりカバーされた事で全方位に対して行われた。

 その際に射線を動かす事の出来る武器は少しづつ射線をずらし、次々と敵MSを破壊して行く。

 レギオンの一斉射撃によってUIEの戦場のMSの大半が殲滅された。

 高い機動力を活かして敵陣深くに切り込み全方位攻撃によって敵部隊を殲滅する。

 たった1機で戦いに勝利する事の出来るガンダムレギオンこそ、自身の最強を証明する事だけを目的としているヴァニスを体現したMSと言えた。

 

「ゴミは掃除した。さぁ……出て来い」

 

 レギオンによってUIEのMSの大半が撃墜された。

 だが、ドレットノートからアルベリッヒのゼイ・ガルム、そして23年前に大破したガンダムZERO Ⅱが出て来る。

 

「ほう……ツヴァイまで出て来たか……面白い!」

 

 ヴァニスもガンダムZERO Ⅱの事は知っている。

 クライドが開発するもその異常とも言える力からクライドですらも封印する事を決めたMS。

 それほどの力を持ったMSであれば相手にとって不足はない。

 その上、コロニー国家間戦争で多大な戦果を挙げたアルベリッヒとゼイ・ガルムもいるのだ文句のつけようもない。

 

「総帥、余り無理はしないようにお願いします」

「分かっている」

 

 ガンダムZERO Ⅱに乗るフェオドールは緊張した面持ちで答える。

 元々ガンダムZERO ⅡはUIEの象徴のガンダムとして運用する為に奪取していた。

 だが、実戦テストで大破したため、今まで一度も実戦に使われる事もなくフェオドールも今回が初陣となる。

 ゼイ・ガルムはロングビームライフルを放ち、ガンダムZERO Ⅱはペンタクルライフルを通常モードで放つ。

 2機からの攻撃をレギオンはかわしてレギオンライフルで応戦する。

 ガンダムZERO Ⅱへの攻撃ゼイ・ガルムがシールドで庇いファンネルを差し向ける。

 

「つまらん攻撃をする」

 

 四方からのファンネルのビームを最小限の動きでレギオンは回避してレギルスライフルでファンネルの2機を同時に撃ち落し、センサーバルカンでファンネルを牽制しつつ左手のビームサーベルで切り裂く。

 残りの3機もビームブラスターで一気に破壊する。

 だが、その隙にゼイ・ガルムはビームソードを抜いてレギオンに接近している。

 

「ファンネルは陽動と言う訳か。殺気に欠ける攻撃……そんな事だろうと思っていた」

 

 レギオンはゼイ・ガルムの一撃をかわすが、ガンダムZERO Ⅱもビームサーベルを振り下ろしていた。

 ガンダムZERO Ⅱのビームサーベルがレギオンライフルを切り裂く。

 

「成程、1撃目で私を仕留めれば良し。出来なくともツヴァイの2撃目が待っていると言う事か……だが、同じ手は2度も通用せんぞ」

 

 レギオンは股の下からデルタゲイザーを2機に向けて放つ。

 

「今のでライフルしか破壊出来んとは流石と言うところか……」

「さぁ……次はどうする!」

 

 レギオンは加速してガンダムZERO Ⅱに向かう。

 ガンダムZERO Ⅱはペンタクルライフルのガトリングモードで迎撃する。

 ペンタクルライフルの連射をレギオンは速度を緩める事もなくかわしながら、ガンダムZERO Ⅱ突き進む。

 レギオンは右手にビームサーベルを展開してガンダムZERO Ⅱ接近する。

 だが、それを狙っていたかのようにゼイ・ガルムがレギオンにビームソードを振り下ろそうとしていた。

 

「総帥を囮に使っての攻撃か……悪くはないがその方向からの攻撃は間違いだ」

 

 ゼイ・ガルムはレギオンの左側から攻撃して来ている。

 左側以外から攻撃してれば更にレギオンに損傷を与える事が出来ただろうが、ゼイ・ガルムはレギオンの左側から攻撃してしまっていた。

 レギオンは左腕のレギオンシールドをゼイ・ガルムの方にパージする。

 そして、シールドからレギオンビットが放出される。

 

「何と!」

 

 ゼイ・ガルムはとっさにシールドでガードするが至近距離でのレギオンビットをかわし切れる訳もなく直撃を受ける。

 そして、レギオンはガンダムZERO Ⅱのペンタクルライフルをビームサーベルで破壊した。

 

「アルベリッヒ!」

 

 ゼイ・ガルムはシールドで防いでいたお陰で撃墜は回避できたが、左腕が吹き飛びところどころの装甲が破壊されている。

 

「とっさにシールドで守ったか。良い腕をしている。それでこそ殺し甲斐があると言う物だ」

 

 レギオンがゼイ・ガルムに向かおうとするが、ガンダムZERO Ⅱがビームサーベルを抜いてレギオンに切りかかる。

 レギオンはビームサーベルで受け止める。

 

「その程度の腕で私に挑むか……」

 

 レギオンはガンダムZERO Ⅱを蹴り飛ばす。

 そして、距離を詰めてビームサーベルを振るいガンダムZERO Ⅱはビームサーベルで受け止めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 UIEとネオ・ヴェイガンが交戦している宙域からドレッドノートを挟んで反対側の宙域からアブディエル改がドレッドノートに接近していた。

 近くまでは見えざる傘を展開していたが、今は解除している。

 その為、予備部隊としてドレッドノートから出撃して来る。

 アブディエル改からもブラッディゼイドラとバスタークロノスを出撃させて交戦する。

 

「久しぶりの戦闘だ! 暴れさせて貰うぜ!」

 

 ブラッディゼイドラは単機で飛び出るとシグルクローでゼイ・ドゥを粉砕する。

 そして、シグルクローのついた腕を射出する。

 ブラッディゼイドラの両腕は射出する事が出来る。

 腕の部分と手の部分はワイヤーで繋がれており、それを振り回して使う事も出来る。

 手の部分は質量装甲で出来ている為、振り回すだけでの十分な武器となる。

 振り回して勢いのついた手はシールドごとゼイ・ドゥを粉砕した。

 

「手ごたえが無さ過ぎだなぁ!」

 

 手を戻してブラッディゼイドラはビームバスターでゼイ・ドゥを破壊し、シグルクローで敵を破壊する。

 

「全く……大した物だわ」

 

 バスタークロノスはツインドッズキャノンを放つ。

 ビームアックスを手に接近して来るゼイ・ドゥに両腕のダブルクロノスガンを放ちゼイ・ドゥは成す術もなく蜂の巣になって破壊される。

 

「ブラッド、アトミックランチャーのテストをするわ。邪魔な敵を排除して」

「言われるまでもねぇよ! こいつらは俺がぶっ殺す!」

 

 今回の戦闘はブラッディゼイドラとバスタークロノスの性能の実戦テストとアトミックランチャーのテストの為だった。

 その為、アトミックランチャーを確実にドレッドノートに当てる為に邪魔なMSの排除が必須だ。

 ブラッディゼイドラは両腕の拡散ビーム砲を放ち、ゼイドラビットを展開する。

 ゼイドラビットで敵を破壊しながら、シグルクローでも敵を破壊して行く。

 ゼイ・ドゥもブラッディゼイドラに対応しようとするも圧倒的な機体性能を持つブラッディゼイドラを止める事は出来ずに次々と破壊されていく。

 アブディエル改の方の部隊は予備部隊で数は大して多くない為、ブラッディゼイドラが1機でほとんどを落として全滅させられる。

 敵部隊の全滅を確認し、更に増援が来る前にバスタークロノスはバックパックのアトミックランチャーを構える。

 ドレッドノートを照準に入れてセリアは引き金を引いた。

 2発のアトミックランチャーの内1発だけとドレッドノートに向けて発射され、放たれたミサイルは迎撃されることもなくドレッドノートに直撃する。

 すると、ミサイルの大きさからは考えられない程の閃光がドレッドノートを包み込んだ。

 

「おいおいおい……こいつは……」

「冗、談でしょ……」

 

 その光景にブラッドですら驚きを隠せないでいる。

 そして、その光景はアブディエル改のブリッジでも確認できる。

 アブディエル改で観測できる熱量が異常な数値を示しており、あのミサイル1発でヴェイガンのコロニーデストロイヤーを軽く超える威力を持っている事が分かる。

 艦長席に座るグルーデック以外のクルーも言葉を失いミサイルを製造し威力も把握しているクライドも驚いている。

 

「まさかこれ程とはな……」

 

 クライドはアトミックランチャーの威力は数値上では知っていたが、実際に使ってみるとその威力を実感している。

 

「どういう事だ?」

「あれはコロニー国家戦争時代でも禁断の兵器と呼ばれたいた物なんだけどな……確かにこれは人が持ってはいけない禁断の兵器だ」

 

 コロニー国家間戦争で様々な兵器が開発されたが、旧世紀に開発されたアトミックランチャーに搭載されているミサイル、戦術核ミサイルは禁断の兵器とされてどの陣営も使わない事が暗黙の了解であった。

 そのデータを見つけたクライドは技術者としての興味からアトミックランチャーに搭載する分だけの2発を製造したが、実際に使って見て禁断の兵器と言われていた理由を知る。

 1発のミサイルでドレッドノートは陥落させる程の威力を持っているが、それ以上にこの核の光は漠然と恐怖心を覚える。

 それ故に戦術核ミサイルは禁断の兵器とされてコロニー国家間戦争でも禁断の兵器とされていたのだろう。

 

「艦長、ブラッドとセリアに帰還命令を出してくれ、宙域から離脱する」

「良いのか? ツヴァイの反応も確認しているが……」

「構わんさ。アレを見た後に戦闘を続ける気にはなれん」

 

 戦場にクライドが過去に開発したガンダムZERO Ⅱを補足していたが、核の光を見た後では戦闘を継続させる気にはなれなかった。

 グルーデックもそれに関しては同感であった為、すぐに帰投命令を出した。

 核の光はブラッドですらも戦意を削いでおり、ブラッドも文句の一つも言わずにアブディエル改に帰還して見えざる傘を使ってアブディエル改は戦闘宙域から離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ドレッドノートを包み込んだ核の光は反対の位置にいたUIEとネオ・ヴェイガンの方でも確認できる。

 核の光によって戦場の誰もが動けずにいる為、戦闘は完全に中断されている。

 

「反対側に誰かいるのか? それにあの光……核の光か」

 

 その中でただ一人、ヴァニスは驚きこそしているが冷静さを保っていた。

 ヴァニスの脳にはEXA-DBの情報が書き込まれている。

 その為、この光を核が使われたのだと認識は出来る為、実際に見て驚きこそはするが冷静さを失う程ではない。

 そして、その光の後には核によって破壊されたドレッドノートの残骸が残されている。

 

「陛下! あの光は一体!」

「興が削がれた。全機、撤退だ」

 

 核の光によってヴァニスは戦場の空気が変わった事を察すると撤退命令を出す。

 あの光によって戦場の皆の戦意は削がれており、そんな状況で戦って敵を落としても何の意味もないからだ。

 

「……了解です」

 

 ヴァニスの指示でネオ・ヴェイガンはグレート・エデンに帰投して行く。

 戦意が削がれた事で撤退時に戦闘になる事もなくネオ・ヴェイガンのMSは撤退している。

 

「まさか……あの人も来ていたとはな……」

 

 ヴァニスはそう言ってドレッドノートの方を見る。

 核は自分達とはドレッドノートを挟んだ反対側から撃ちこまれたと推測できる。

 つまり、核を使った者はその方向にいた事になる。

 そして、今の地球圏に核兵器を作る事の出来る人物は一人しかいないだろう。

 だが、ヴァニスはそこまで考えて考える事を止める。

 それ以上、考えたところで意味がないからだ。

 ヴァニスは頭を切り替えて、グレート・エデンに戻って行く。

 ネオ・ヴェイガンが撤退し、ドレッドノートを失ったUIEも付近の友軍に合流する為に宙域から離れて行った。

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。