A.G.101年にヴェイガンによって破壊されたコロニー「エンジェル」
そこにクライドによって集められたガンダムとそのパイロット達が集結していた。
クライドからの呼び出しには宙域図や日時以外にもエンジェルに入るに当たりルートが細かく指定され、状況が状況だけに下手に別のルートで進めばクライドが何をしでかすか分からない為、誰もが指定されたルートを進む事になる。
特殊なジャミングがかかっているらしく、エンジェルの位置は補足出来るがそれ以外には完全にレーダーが機能しない状況でガンダムのパイロットはエンジェルに到着する。
そして、ガンダムのパイロット達はエンジェルの内部を指定通りに進むとやがて一つの部屋に到着する。
その部屋はかつては会議室にでも使われていたのが大きめの机に数人分の椅子が用意されていた。
「ようこそ、来てくれたガンダムのパイロット達」
「兄さん……」
ガンダムのパイロット達はクライドに出迎えられる。
今までは別の通路からここまで来たがここでクライドに呼び出された者達は初めて顔を合わせる事になる。
その為、顔見知りや関係のある相手などに反応するが、互いを互いを警戒しつつ席に着く。
「兄さん、どういう事だ。エリアルド達だけでなくヴェイガンの奴らまで!」
フリットがエリアルドやキオ、アセムと言った身内はともかく、ゼハートやヴァニスと言ったヴェイガン側の人間まで呼んでいる事に抗議する。
一方のクライドは気にした様子はない。
「そんな事よりも、久しぶりだと言うのになんだ。その趣味の悪い仮面は……」
クライドはヴァニスに対してそういう。
その際、言葉の最後は発音する事なく、口だけ動かす。
他の誰もがその意味が分からないがヴァニスだけはその意味が理解できた。
それはクライドがヴァニスにつけたヴァニスの本当の名前だったからだ。
ヴァニスは一瞬、自分の本当の名前を持ち出された事に反応するが、それがクライドが自分を挑発している事に気が付いている為、相手にはしない。
「兄さんはこの女の事を知っているのか?」
「知っているも何も、そいつは俺の娘だ」
「父さん! どういう事なんだ!」
クライドの発言にエリアルドが声を上げる。
クライドがヴァニスを娘と言う事はエリアルドの妹になる。
その発言はヴァニスの素性を知っているアセムとゼハート以外が驚いている。
「相変わらず人を挑発する事が得意なようだな」
ヴァニスはそう言いつつ、仮面は外して机の上に置く。
ヴァニスの素顔を見たフリットとエリアルドは更に驚く。
目の色や雰囲気は違うがヴァニスは若い頃のエリーゼに良く似ているからだ。
キオやゼハート、フェオドールはエリーゼの若い頃の顔を知らず、アセムは何度もヴァニスの素顔を見ている為、驚く事は無い。
「これで良いのか?」
「当たり前だ。お前の顔は世界一良い女の顔に似せたんだ。隠す事のは勿体ない」
クライドの言葉でヴァニスは再び仮面をつける。
それがヴァニスのクライドに対する些細な抵抗である事はヴァニスは気づいてはいないが、ただ単にクライドの言葉通りの事をする事が嫌な事は確かだった。
ヴァニスが仮面をつけてこれ以上はクライドには付き合わない事を見届けたクライドは本題に入る。
「さて……本題に入る。俺がこの面子を呼び出した理由は簡単な事だ。今の世界は混迷している。その中で主だった陣営で君たちはガンダムのパイロットとして中心にいる。だが、これ以上戦争が続けば世界は破滅するだろう。そうなる前に『話し合い』によって解決しようとしてお前達を呼んだ」
クライドの話し合いと言う言葉にフリットとヴァニスはあからさまに顔色を変える。
「話し合いだと! 兄さん、ヴェイガンの奴らが何をしたのか忘れた訳ではないだろう!」
フリットはクライドを怒鳴りその勢いで立ち上がる。
フリットとクライドは戦争の中で両親をヴェイガンに殺されている。
それ以外でも仲間な部下を戦争で失っているフリットにはヴェイガンを話し合い許す気は毛頭ない。
「世界が破滅すると言うのであればその前にヴェイガンを殲滅すれば良い話だ!」
「私達はその気はありません」
「ヴェイガンの言う事など信用出来るか!」
ゼハートの言葉が逆にフリットを激昂させるだけであった。
「父さん!」
「フリット、落ち着け」
「それよりもミスターアスノ、呼び出した本人である貴方はどう思っているので?」
「この中のほとんどがアスノなんだけどな。まぁ良い」
フェオドールの言葉をクライドは茶化す。
確かにクライドの言う通りこの中の大半はアスノ家の人間でアスノ家と全く関係ないのはフェオドールだけだ。
だが、呼び出した本人と言う時点でクライドを指している事は明白だ。
「俺は戦争の行く末はどうでも良い。ただ、UIEを潰せれば後は勝手に戦争でもなんでもしていてくれ」
「なぜです? こちらとしては優秀なXラウンダーである貴方や他の方も我がUIEに迎え入れたいと思っています」
「嫌だね。UIEのつくくらいなら俺は世界を滅ぼす方を選ぶ」
クライドにとっては復讐がすべてでどんな形であろうとナーガを生体ユニットとして保有しているUIEを潰す事が目的の一つであり、UIEにつく事はあり得ない選択であった。
「それが可能な『力』をすでに用意してある」
「力だと……」
その言葉にヴァニスが反応する。
ヴァニスはその力に思い当たる物があった。
クライドが開発していた新型のガンダムだ。
そのガンダムは過去に存在したあらゆるMSを凌駕する性能を持つガンダムにするとクライドが豪語していた。
それが完成していたとすればクライドの自信も説明が付く。
しかし、クライドはガンダムを完成どころが、設計の段階にも至ってはいない。
新型ガンダムの存在を仄めかすのはブラフであった。
「父さん、彼女の事と言い一体何をしているんだ?」
「その力を俺はキオ、君に託したい」
「え?」
今まで話し合いに参加する事の無かったキオを名指しで指名される。
突然の事にキオは少し戸惑うがそれ以上にヴァニスの方が気になっていた。
仮面で表情が分からないが、ヴァニスは何かを必死に抑えつけようとしている。
「……僕は……必要ありません」
キオははっきりとクライドに対して断る。
それを聞いたヴァニスは見えないところで拳を握り占めて爆発しそうになる感情を抑え込む。
そに様子を気づかれないように見ていたクライドは内心でほくそ笑む。
今回、ガンダムのパイロットを呼び付けた理由の一つが上手く言っているからだ。
新型ガンダムを仄めかせるブラフからキオがそれを受け取る事を拒む事もクライドにとっては一番ベストな展開だ。
ここでキオが受け取ると答えれば予定が大きく狂う事になっていた。
ヴァニスは自信の存在理由であった新型ガンダムのパイロットと言う座をクライドに用意されたキオが簡単にその座を捨てた事に憤りを覚えているが、本人は気づいてはいないだろう。
ヴァニスは最強になる為に、感情は不必要と判断して捨てた気でいるが、その実、キオに嫉妬し怒りを覚えていると言う事こそが感情を捨てきれていない証拠と言える。
それこそがクライドの狙いだ。
キオがヴァニスと対等に戦えるだけの才能を持ち、ヴァニスが自分以外に執着している事は偶然の産物であるが、今はそれを最大限に利用する事を考えている。
キオを持ち上げればそれだけでヴァニスはキオに対して分かり易く嫉妬してくれる。
「爺ちゃん、父さん、聞いて欲しい事があるんだ。僕は火星圏でいろんな人に出会ったんだ。ヴェイガンの人はみんなが爺ちゃんが思っているような人ばかりじゃなかった。火星圏の人も必死に生きていたんだ。僕たちと何も変わらない。嬉しい事があれば笑って悲しい事があれば泣く、人間だったんだよ」
キオは火星圏でルウやディーンと出会った。
ルウもディーンも化物でもエイリアンでもない普通に楽しい事があれば笑って悲しい事があれば泣く。
そこには地球圏や火星圏の違いはどこにも無かった。
「だから、火星圏の人も地球圏の人も分かり合える。戦争なんてしなくても良いんだよ。だから、僕は敵を殺す為の力はいりません。僕にはヴァニスさんを止める為にヴァニスさんから貰ったガンダムがあります。そのガンダムでヴァニスさん……貴女を止めます」
キオは殺す為の力は必要はなかった。
キオはヴァニスから貰ったガンダムAGE-FXがある。
そのFXでヴァニスを止める事がキオの選んだ戦いだ。
「何を言っている! ヴェイガンは大切な人を奪う! お前だって奪われただろう!」
「父さん! 貴方は!」
「爺ちゃん……確かにシャナルアさんが死んだ事は悲しい事だよ。でも、これ以上戦争が続いたらもっと悲しい事が増えるよ!」
キオも戦争でシャナルアを殺されている。
その時は怒りに我を忘れてヴェイガンを憎もうとした事もある。
だが、火星圏の出会いと別れで地球もヴェイガンも関係なく、シャナルアが死んだ時の悲しみを誰も味わって欲しくないと思うようになった。
「だからこそ、ヴェイガンは倒さねばならない事がなぜ分からない!」
「父さん! 貴方がヴェイガンを憎む気持ちは理解できる! だが、その憎しみをキオにまで押し付けないでくれ!」
「アセム! お前まで何を言う! お前も見ただろう。ヴェイガンのして来た事を!」
「まぁ、落ち着け、フリット。お前の言い分も理解は出来る。だが、それぞれの意見が出し終えたところで提案がある」
クライドに言われればフリットも一度は落ち着かざるおえない。
実際のところ、一部の人間が一方的に自分の意見を言っていたに過ぎないが、クライドは自身の目的は果たした為、そう切り出す。
「このまま話し合いをしていたところで話しは一生かかっても平行線で終わるだろう。そこで物は相談だ。旧世紀から勝利者の意見が正しいと言う事は歴史が証明している。そこで各陣営を代表するガンダムが戦い。すべての決着をつけると言うのはどうだろう」
「俺達に戦えと言うのか? 父さん」
「無論、戦いたくはない相手とは戦う必要はないし、エンジェルから撤退するのも自由だ。各陣営の代表者が一同に会するこの場ですべての因縁に決着をつける事も良いだろう」
それがクライドがここにガンダムのパイロットを呼び付けた最大の理由だ。
EXA-DBの中には膨大なデータが集約している。
しかし、その中であるデータが存在しなかった。
それがガンダム同士による戦闘のデータだ。
歴史上、ガンダムは幾度も姿を現したが、ガンダム同士で戦う事は無かった。
それ故にガンダム同士の戦闘データはEXA-DBの中にはなく、クライドが最強のガンダムを作り出す為にはそのデータが必要不可欠であった。
「良いだろう。ここでヴェイガンの首領を叩かせて貰う」
「面白い。お前達は全て私が倒す」
クライドの提案にフリットとヴァニスは完全に乗り気だ。
他は余り乗り気ではないが、それぞれのガンダムの元に向かう。
クライドはエンジェルに隠してあったF-ZEROに乗り込む。
システムを立ち上げるとモニターに複数の映像が映る。
そこにはエンジェルに置かれているガンダムが映し出される。
エンジェル内部に入った時にガンダムを置いて内部施設に入る指示を出していた為、誰のガンダムがどこにあるのかクライドは全て分かっている。
そして、エンジェル内にはデータ収集用の隠しカメラがいくつも設置してある為、内部での戦闘をすべてF-ZEROの方で監視が出来る。
「さて……ツヴァイの方に行くか。アリス」
「了解です」
クライドの狙いはガンダムZERO Ⅱだ。
その為、ガンダムZERO ⅡのフェオドールにはF-ZEROの位置からすぐに迎えるように近い位置を指定している。
「ツヴァイは俺が仕留めるとして分かっているな」
「無論です。決着が付きそうになった時に妨害ですね」
クライドはエンジェルにデータ収集用の監視カメラだけでなく様々な細工がしてあった。
そして、戦闘中にフェオドールのガンダムZERO Ⅱ以外のガンダムにはアスノ家の人間が乗っている為、死なないように妨害するようにアリスに指示を出している。
そうする事でガンダム同士の戦闘データを収集してアスノ家から誰も死者を出さないようにしている。
「その通りだ。では行くぞ」
F-ZEROは見えざる傘を展開すると、ガンダムZERO Ⅱの方に向かう。
F-ZEROが置かれたいたところから、ガンダムZERO Ⅱまでは途中に隔壁などで遮る物はない。
その為、見えざる傘で姿を隠せば誰に見つかる事もなく接近する事が出来る。
見えざる傘を展開したF-ZEROはガンダムZERO Ⅱに近寄る。
すでにフェオドールが乗っており機体は起動しているが、見えざる傘でセンサーからも肉眼からも消えているF-ZEROに気づく事は無く、無防備になっている。
F-ZEROは無防備なガンダムZERO Ⅱに接近してシグルサイズを振り上げる。
そのまま振り落せばガンダムZERO Ⅱを一刀両断に出来たのだが、見えざる傘を展開していたF-ZEROにビームが飛んで来る。
F-ZEROはあシールドでビームを曲げて防ぐが、流石にそれでフェオドールも敵襲を察しする。
「ちっ……邪魔を」
「敵!」
「まずはお前から始末する!」
クライドの千載一遇のチャンスを妨害したのはヴァニスであった。
ヴァニスはガンダムレギオンを更に武装強化したガンダムレギオン・イレイザーに乗っている。
レギオン・イレイザーは左腕をウロッゾやゴメルの腕をベースに改造し掌にビームバスターが内蔵されているシグルクローに換装されている。
左腕は伸縮機構が採用され、使用時に腕が伸びる事でシールドが邪魔にならずに攻撃する事が可能で腕が伸びる事で敵が間合いを見切り難くもなっている。
左腕のシールドはレギオンシールドを改造したレギオンシールド改を装備している。
レギオンシールド改はレギルスのプロトタイプのラファールのシールドのデータも取り入れられており、表面には二連装拡散ビーム砲が搭載され、裏側にはシールドの両端からビームソードが展開可能な二連装ビームキャノンがついており、補助用の光波推進システムも搭載されている。
それによりレギオンビットの使用が出来なくなったが、脚部の装甲にビットの発生装備を内蔵し、ビットの使用時には装甲の中の発生装置が露出する事でレギオンビットの使用が可能になっている。
右腕には連邦軍から流れて来たクランシェなどが装備している新型のドッズライフルの技術が使われた二枚板型のレギオンキャノンが折り畳まれてレギオンライフルによる格闘戦の邪魔にならないように装備されている。
レギオン・イレイザーはレギオンよりも総合的な火力を大幅に強化された。
そして、見えざる傘を展開した無人機のシドですら感知できるヴァニスのXラウンダー能力なら見えざる傘で隠れているクライドを見つけ出す事など造作もない事だ。
レギオン・イレイザーはレギオンライフルをF-ZEROに放つ。
「こっちを先に狙うか。逃げろ。アリス」
「分かっています。この機体でアレに勝つのは不可能です」
F-ZEROは姿を隠していてもヴァニスからは逃げられない為、見えざる傘を解いて攻撃を回避する。
「あれは……クライド氏のガンダムか」
ガンダムZERO Ⅱはレギオン・イレイザーにペンタクルライフルを放つ。
レギオン・イレイザーとF-ZEROの機体性能差は歴然で戦ったところで勝機はない。
レギオン・イレイザーはシールドの二連装拡散ビーム砲を放つ。
更にはシールドを腕との付け根から回転させて、周囲にビームをまき散らす。
「面白い装備だな」
回転させる事でシールドの二連装拡散ビーム砲の射角は読み辛い。
F-ZEROとガンダムZERO Ⅱは攻撃をかわしながら、レギオン・イレイザーの砲撃で開いた穴からF-ZEROは宇宙に出る。
レギオン・イレイザーはF-ZEROを追い、宇宙に出る。
「俺の方が狙いか」
「挑発し過ぎるからです」
F-ZEROはシールドに内蔵されているビームキャノンを放つが、レギオン・イレイザーはかわしてレギオンライフルで反撃する。
その一撃をF-ZEROはシールドでビームを曲げるが、その隙にレギオン・イレイザーはF-ZEROに接近すると、シグルクローを振り下ろす。
F-ZEROはシールドで防ぐが、シールドが一撃で破壊される。
シグルサイズを振るうがレギオン・イレイザーはギリギリのところで回避すると、ビームブラスターを撃とうとするが、ガンダムZERO Ⅱが妨害する。
「ちっ……今はお前に用はない」
「悪いですけど、彼を討たせる訳にはいきません。私も協力しましょう」
「そうかい。アリス」
「了解」
フェオドールとしてもXラウンダーであるクライドをここで死なせる訳にはいかず、クライドに加勢するもF-ZEROはガンダムZERO Ⅱにシグルサイズを振るう。
ガンダムZERO Ⅱはシグルサイズの一撃をかわす。
そして、レギオン・イレイザーはシールドのビームキャノンでガンダムZERO Ⅱを追い払うかのように放つ。
「邪魔だ」
「父さん!」
「エリアルドか。助かった。何とかしろ」
エンジェルの中からエリアルドのガンダムZERO ⅢSが出て来るとクライドはエリアルドと合流する。
「貴方と言う人は……」
「文句は後だ。来るぞ」
レギオン・イレイザーはガンダムZERO Ⅱを無視してクライドとエリアルドに向かって行く。
ガンダムZERO ⅢSはバスタードッズライフルで迎撃する。
「お前の妹だ。余り手荒な事はするなよ」
「無理を言わないで欲しい!」
ガンダムZERO ⅢSは対艦刀を抜いて構える。
レギオン・イレイザーはレギオンライフルを撃ちながらシールドの先端からビームソードを展開する。
ガンダムZERO ⅢSの対艦刀とレギオン・イレイザーのビームソードはぶつかり合う。
「エリアルド・アスノ……あの男の息子か。貴様もここで仕留めさせて貰う!」
レギオン・イレイザーはガンダムZERO ⅢSを蹴り飛ばす。
デルタゲイザーをガンダムZERO ⅢSに向けるが、F-ZEROのフィンファンネルがいつの間にか、レギオン・イレイザーの周囲に展開していた。
「相変わらず姑息な戦いだ」
全方位からの攻撃をレギオン・イレイザーは回避してCファンネルを射出する。
フィンファンネルとCファンネルは高速で動きまわるが、Cファンネルが次々とフィンファンネルを撃墜する。
「貴女は少し黙っていて貰います」
クライドとエリアルドの二人に気を取られていた為、レギオン・イレイザーの背後にガンダムZERO Ⅱがビームサーベルを抜いて接近していた。
だが、レギオン・イレイザーは振り向く事なくシールドからビームソードを展開する。
完全に不意と突いたガンダムZERO Ⅱが逆に不意を突かれてガンダムZERO Ⅱのビームサーベルを持つ左腕がビームソードで肘から切り裂かれる。
「邪魔をするな!」
レギオン・イレイザーは振り向きながらシグルクローを振るう。
その一撃は左腕を失ったガンダムZERO Ⅱに直撃する。
シグルクローの一撃でガンダムZERO Ⅱの胸部のフォトンブラスターキャノンの発射口は破損する。
「ぐっ!」
「悪いが仕留めさせて貰う」
レギオン・イレイザーの一撃で弾き飛ばされたガンダムZERO ⅡにF-ZEROが追撃の一撃を加えようとする。
だが、それは多数のビームによって阻まれる。
「陛下。ご無事ですか?」
「総帥!」
ネオ・ヴェイガンの親衛隊とUIEの4機のプロト3が戦場に到着する。
すでにエンジェル一体のジャミングはデータ収集の為に解除され、ネオ・ヴェイガンとUIEが戦闘の反応を捕えた事で双方のトップの安否確認の為にMSを出撃させていた。
「増援!」
「一人で来いとは言ったが、増援を用意するなとは言ってなかったからな。尤も、それはお互い様だがな」
エンジェルの外壁が内部からビームで破壊されてブラッディゼイドラが飛び出して来る。
他の陣営がいざという時に増援を用意していたようにクライドも、エンジェル内にブラッドを待機させていた。
セリアはアブディエル改の守りの為に待機させてある為、ブラッドが一人だけの増援である。
ブラッディゼイドラは真っ直ぐ、レギオン・イレイザーへと突撃する。
ブラッドは戦場の中でヴァニスが最も高いXラウンダーである事を感知しているからだ。
「てめぇから血祭にしてやるよ!」
「ゼイドラのカスタム機か……コーデリア、シェリー、相手をしてやれ」
レギオン・イレイザーの前にコーデリアのレギルスC、シェリーのレギルスSが立ちはだかる。
「陛下のご命令だ。私が相手になろう」
「旧式を幾らカスタムしてもね!」
レギルスCとレギルスSはブラッディゼイドラを挟み込むように接近する。
レギルスCはレギルスブレイドを振るうが、ブラッディゼイドラはかわすが、すぐさまレギルスSがレギルスサイズを振るうが、ブラッディゼイドラはその一撃で片手で受け止める。
「嘘でしょ! 旧式の分際で!」
「雑魚が! 引っ込んでろ!」
ブラッディゼイドラはレギルスサイズを受け止めている逆の手のシグルクローを振るいレギルスSは胴体から破壊される。
そして、残っていた上半身に止めを刺そうとするが、タチアナのレギルスTがレギルスランチャーで牽制して、ブラッディゼイドラはレギルスSから距離を取る。
その後、レギルスCがレギルスSの上半身を回収してレギルスTの方に放り投げる。
「ちょっと! もう少し優しく扱いなさいよ!」
「撃墜されなかっただけマシに思いなさい」
レギルスTはレギルスSの上半身を受け止めるとレギルスランチャーのドッズライフルでブラッディゼイドラを牽制して、レギルスCがレギルスブレイドを振るいブラッディゼイドラはシグルクローで受け止める。
「ほう、中々やるな。だが、今は……」
3機のレギルスを相手に互角に戦うブラッディゼイドラを横目にヴァニスはF-ZEROの機影を探す。
しかし、ガンダムZERO ⅢSはプロト3タイタスと交戦しているが、F-ZEROは見つからない。
恐らくは見えざる傘を使って姿を隠していると思われるが、戦場にはXラウンダーが複数いる為、その中から姿を隠しているクライドを見つける事は難しかった。
「ちっ……」
「来るわよ」
「お前達に任せる」
タイタスを除く3機のプロト3がレギオン・イレイザーに向かうがヴァニスは相手にする気は無く、ジラードとアキラに任せる。
2機のレギルスはレギオン・イレイザーの前に出てレギルスライフルとビームキャノンを放つ。
3機のプロト3は散開する。
ダブルバレットはツインドッズキャノンとドッズライフルを放ち、レギルスGは回避しながらレギルスライフルで応戦する。
「あの火力は厄介ね。先に叩いておくわ」
レギルスGはレギルスライフルを放ちながら、ダブルバレットに向かう。
ダブルバレットは胸部のビーム砲を放つが、レギルスGには当たらない。
「素早いな」
ダブルバレットはツインドッズキャノンのバレルをパージしてドッズライフルにつけると巨大ビームサーベルを展開して振るう。
レギルスGは回避するが、ダブルバレットはカーフミサイルを放ち、ドッズライフルを放つ。
「本当に厄介ね」
レギルスGは拡散ビーム砲でカーフミサイルを迎撃し、シールドで攻撃を防ぎながらレギルスライフルを放つ。
アキラのレギルスAはプロト3 ストライダーとプロト3 スパローを相手に苦戦を強いられている。
可変機構を持つストライダーを相手にレギルスAでは機動力で圧倒する事も出来ず、スパローが隠密性の高さを活かして、レギルスAが機動力を活かせないように邪魔をする。
「2機がかりだって!」
レギルスAはビームキャノンをスパローに放つが、スパローはかわしてシグルランスの先端のシグルブレイドを射出する。
それを回避するが、その先にはストライダーがドッズライフルを構えている。
ストライダーのドッズライフルを回避するが、スパローがシグルランスを構えて接近する。
ニードルガンの牽制をレギルスソードで弾くが左腕をスパローのシグルサイズで切り落とされる。
それで体勢を崩したレギルスAにストライダーはドッズライフルで追撃する。
「この!」
ストライダーの攻撃の直撃で機体を損傷しながらも、ビームキャノンでストライダーを攻撃するも当たらず、その時に出来た隙をスパローに突かれる。
スパローにビームバルカンを向けるもすでに遅く、スパローのシグルランスがレギルスAに突き刺さりそのまま、エンジェルの外壁まで押し込まれる。
「終わったな」
その様子をヴァニスは見ていた。
しかし、アキラを助ける様子はなく、CMCにいた時からの戦友のMSを冷たい視線を向けるだけだ。
スパローの一撃で勝負は決まっていた。
後はレギルスAは止めを刺されるだけだ。
「貰ったよ」
エンジェルの外壁に叩きつけられた時の衝撃でアキラの意識は朦朧している為、機体を動かす事の出来ない。
スパローはレギルスAの左腕を膝でエンジェルの外壁に押し付けて最後の抵抗を封じる。
胸部のビームキャノンはシグルランスの一撃で潰されて、尾のビームライフルはスパローの位置は死角になっている為、狙う事は出来ない。
完全に抵抗する事の出来ないレギルスAに止めを刺す為にスパローはシグルランスを振り上げる。
意識が朦朧とする中、アキラは自身の最後を確信するが、スパローはアキラに止めを刺す事なく、シグルランスを振り上げた状態で止まる。
意識がはっきりとしてアキラはその理由に気が付く、スパローの胴体……コックピットの辺りがまるで見えない刃に貫かれているかのように穴が開いていた。
それもそのはずだ。
本当に見えない刃によって背後からスパローは貫かれているからだ。
見えざる傘を展開したクライドは戦場から離脱する事もなく、チャンスを見計らっていた。
そして、スパローがレギルスAに止めを刺す隙をついて背後からシグルサイズを振り下ろしたのだ。
その一撃はスパローのコックピットを貫いていた。
アキラはスパローが背後からの一撃でパイロットを殺した事で自分が助かったと思うが、クライドは単にスパローの隙をついて仕留めたに過ぎず、アキラを助ける気は毛頭ない為、スパローを貫いたシグルサイズの刃はレギルスAにまで達している。 姿を消したF-ZEROがシグルサイズを抜くとスパローとレギルスAの2機は爆発を起こす。
「嘘! アキラのシグナルが!」
「何だと!」
「余所見をしてんじゃねぇよ!」
アキラのレギルスAのシグナル消失に気を取られていたコーデリアのレギルスCのレギルスブレイドをブラッディゼイドラのシグルクローが粉砕する。
レギルスTはドッズライフルでを放ち、レギルスSが両腕のシールドの三連ビームバルカンを放つ。
「ニックがやられた!」
ガンダムZERO ⅢSと交戦するプロト3タイタスのカティアもスパローのシグナルが消失した事に動揺し、ガンダムZERO ⅢSの対艦刀で右腕を切り落とされる。
そして、対艦刀でタイタスに止めを刺そうとするが、ストライダーがドッズキャノンを放ち、ガンダムZERO ⅢSはシールドで防ぐ。
「カティア、後退しろ。これ以上の戦力を損失は避けたい」
「分かったわ」
タイタスが損傷し、スパローが撃墜された事でタイタスを下げるようにプロト3ストライダーのフェルナンドがカティアに指示を出す。
すでにガンダムZERO Ⅱが安全圏まで離脱している以上は無駄に戦力の消費を避けるためだ。
ガンダムZERO ⅢSをドッズキャノンで牽制しているうちにタイタスは後退する。
「ニック……アンタの仇は必ず……」
タイタスは戦闘宙域から離れると不意に機体が止まる。
「何? 何なの?」
カティアは操縦桿を動かすが機体には反応がない。
すると、何も操作していないのに勝手に機体のハッチが開閉する。
「機体が勝手に!」
そして、タイタスの前にはF-ZEROが姿を現す。
F-ZEROは左手の掌からワイヤーをタイタスにつけている。
それによってタイタスの操縦系統はF-ZEROに完全に掌握されている。
ハッチが開いた状態のタイタスにF-ZEROは左腕に装備しているパイルバンカーをコックピットに撃ちこむ。
厚い装甲を持つタイタスに対してはF-ZEROの装備では致命傷を与える事は出来ない為、システムを掌握してハッチを開閉させてそこにパイルバンカーを撃ちこむ事でタイタスの装甲に対応した。
カティアは機体から脱出する事が出来ずにタイタスをF-ZEROのパイルバンカーが貫いた。
F-ZEROはパイルバンカーを腕からパージしてタイタスから離れてタイタスは爆散した。
「これで2機目っと……」
「次はどれを狙います?」
「流石にこれ以上はやらせては貰えんだろうが、チャンスは見ておくか」
再び、F-ZEROは見えざる傘を展開して戦場へと戻って行く。
外の戦闘が激化する中、ゼハートとアセムはエンジェルの居住エリアに出ている。
「どうする。アセム」
「ヴァニスを野放しにする訳にはいかないが……」
ヴァニスを野放しにする事は危険ではあるが、ヴァニスがどこにいるかは分からない。
他のガンダムがどこにいるか分からない以上は下手に動く事も出来ない。
「この反応は……父さんのAGE-1か!」
「ヴェイガンはここで討つ!」
フリットのガンダムAGE-1 グランサはレギルスRに両腕に装備されているシールドライフルを放つ。
レギルスRはレギルススピアーを回転させてビームを弾く。
「父さん!」
「アセム!」
ダークハウンドはグランサに向かう。
グランサはダークハウンドにシールドライフルを向けるが、フリットは引き金を引く事を躊躇う。
アセムはその隙をついてダークハウンドのドッズランサーを横にしてグランサに体当たりをして、グランサを抑え込む。
「何をする! アセム!」
「もうやめてくれ! 父さん! キオはこの戦いに新しい道を示そうとしているんだ! これ以上貴方が戦う必要はないんだ!」
「そんな訳にはいかん! ここで戦う事を止めてしまえば私に託して行った者達の思いを無駄にする事になる!」
「なら、その思いを今度はキオに託せ!」
フリットとアセムもキオも目指す世界は同じ筈であった。
ただ、そのやり方とそこに至る道が違っただけだ。
フリットはここまで来る為に様々な人間から世界の未来を託されてここにいる。
そこに至る時間があまりにも長過ぎた事もあり、フリットは今更別の道に進む事も簡単ではない。
「何だ……何か来る。アセム!」
フリットとアセムの戦いに手を出す事の無かったゼハートが何かを感じ取る。
ヴァニスとは違うが強い力を感じ取る。
そして、エンジェルの居住エリアに黒いMSが外壁を破壊して突入して来る。
通常のMSを上回る巨体に悪魔を連想させるまがまがしいフォルム。
「あれは……ヴェイガンギア!」
ゼハートはそのMSを知っていた。
ヴェイガンが初めて開発したMS「ヴェイガンギア」だ。
UIEはヴェイガンギアを実践テストの為に投入して来た。
「ヴァニスはヴェイガンギアを実践に投入したのか」
「ゼハート、あのMSを知っているのか?」
「ああ……あれはヴェイガンギア、ヴェイガンが初めて開発したMSでコロニー国家間戦争時の技術で作られている」
アセムもヴェイガンギアが普通の相手でない事はXラウンダー能力を持たずとも感じる事は出来る。
「ガンダム……破壊する」
ヴェイガンギアはグランサとダークハウンドに尾のデルタゲイザーを放つ。
ダークハウンドとグランサはすぐに移動すて回避する。
「父さん、一時休戦だ。先にアレを倒す」
「分かっている。だが、ヴェイガンの手を借りる気は無い!」
グランサはシールドライフルを連射してヴェイガンギアへと向かって行く。
「父さん!」
「あれに単独では危険だ!」
ダークハウンドとレギルスRもヴェイガンギアに向かう。
グランサの攻撃を回避したヴェイガンギアにダークハウンドとレギルスRも攻撃するが3機の攻撃をヴェイガンギアは高い機動性を持って回避する。
「あの巨体であの速度か!」
「気を付けろ! 奴の性能はヴェイガンのMSの中でも最強クラスだ!」
レギルスRはレギルスビットを展開してヴェイガンギアに差し向ける。
レギルスビットをヴェイガンギアはデルタゲイザーで撃ち落し、腕に装備されているヒートフックで破壊するが、ダークハウンドは接近してドッズランサーを突き出す。
ヴェイガンギアはその一撃をかわすが、レギルスRはレギルスキャノンを放つ。
レギルスRの攻撃を回避するヴェイガンギアにグランサはシールドライフルからビームサーベルを展開して攻撃するが、ヴェイガンギアはヒートフックで弾き飛ばす。
「なんて奴だ!」
ダークハウンドはドッズガンを、レギルスRはビームバルカンを放つがヴェイガンギアを捕える事は出来ない。
「フリット! 生きてるな!」
「ウルフか……」
ホワイトファングから戦闘の反応を捕えてウルフのGファングがフリットに合流する。
「何だありゃ?」
「ウルフ隊長」
「アセムもいたのか、何がどうなってやがる」
ウルフが状況を飲み込む前にヴェイガンギアはデルタゲイザーを放つ。
「取りあえず、アイツは見たまんま敵って事かよ!」
Gファングはハイパードッズライフルを放つが、ヴェイガンギアはかわしながら近くのグランサに向かう。
「俺はシカトかよ!」
グランサはグラストロランチャーとシールドライフルの一斉射撃を行うが、ヴェイガンギアは回避してヒートフックを振るう。
グランサはとっさにシールドライフルで防ぐがシールドライフルが破壊される。
「父さん!」
ダークハウンドはストライダー形態に変形すると、ドッズガンとビームバルカンを連射する。
レギルスRはビームバスターを放ち、Gファングはハイパードッズライフルを放つ。
だが、その攻撃もヴェイガンギアに当たる事は無い。
「何と言う機動性能だ。あれがヴェイガンギアの性能なのか」
「でけぇ癖しやがって!」
Gファングはシールドからビームソードを展開して切りかかり、ヴェイガンギアはかわしてデルタゲイザーを放つ。
「ウルフ隊長!」
ダークハウンドはMS形態に変形すると、ドッズガンを連射してビームサーベルを振るう。
「ガンダム……落とす」
ヴェイガンギアはダークハウンドのビームサーベルをヒートフックで受け止める。
ダークハウンドの逆方向からはレギルスRがレギルススピアーを突き出すが、それをもヴェイガンギアはヒートフックで止める。
だが、それによってヴェイガンギアの両腕は封じられた。
「父さん! ウルフ隊長!」
「ああ! フリット!」
「分かっている!」
グランサとGファングは両腕を封じたヴェイガンギアに一斉攻撃を行うが、ヴェイガンギアはダークハウンドとレギルスRを弾き飛ばす。
「機動性能だけじゃないのか!」
弾き飛ばされた2機は体勢を整える。
「キャプテン! 親父!」
「ゼハート様、ご無事ですか?」
遅れながら、戦闘を補足したバロノークとファ・ザードからもフラム、スラッシュの2人がゼハートとアセムの援護に出撃して来た。
フォーンファルシアとギラーガ改の2機も加わりヴェイガンギアと対峙する。
「どうして……」
キオはどちらの戦闘に加わる事もなかった。
どちらの戦闘も感知する事は出来るが、どちらの戦闘に参加する気もない。
「何で戦うんだよ」
キオは火星圏の出会いからヴェイガンも人間だと知り、分かり合う事も出来るかも知れないと考えるようになるも戦場にいる者の大半は敵を倒す事しか考えていない事がXラウンダー能力を通じて伝わってくる。
「キオ!」
「セリック隊長」
キオのFXの元にディーヴァから出撃して来たセリックが合流する。
「キオ、状況はどうなっている」
セリックは戦闘が起きている事以外は状況が掴めていない為、状況を理解しているキオに尋ねるもキオは答える事もなく、エンジェルの居住エリアの方に向かう。
「父さん! 爺ちゃん! もう止めて!」
「キオか! 来るんじゃない!」
「下がれキオ! こいつは普通じゃない!」
居住エリアに入ったキオをフリットとアセムが止めようとする。
ヴェイガンギアは普通の相手ではない事は重々承知している。
そんな相手とキオを戦わせる訳にはいかなかった。
「こんな戦いは無意味です!」
「ガンダムは敵、破壊する」
キオはヴェイガンギアのゼラに呼びかけるもゼラがガンダムを倒す事のみを指示されている戦闘マシーンと化している為、キオの言葉を聞く耳を持たない。
それどころか、FXにデルタゲイザーを放つ。
「何で……どうして戦おうとするんだよ!」
ヴェイガンギアの攻撃を回避してキオは叫ぶ。
そして、キオの叫びに反応するかのようにFXは虹色の光を放つ。
それはFXバーストモードを使った時とは少し違う。
虹色の光はエンジェルを包み込む程に広がって行く。
「キオ……」
「これは一体」
エンジェル全体を包む虹色の光に飲まれるとそれは起こる。
グランサやダークハウンドだけでなくレギルスR、ギラーガ改、フォーンファルシア、Gファング、そしてヴェイガンギアの武装にエラーが表示されて使用不能になって行く。
「こいつはどういう事だ。フリット、そっちはどうなてる?」
「こっちも武装が使えなくなっている」
機体に損傷を受けた事による物とは考え難い。
だが、武装が使用できなくなっている事は事実であった。
「理解不能……撤退命令、了解」
撤退命令が出たヴェイガンギアは撤退を始める。
「撤退して行く」
「ゼハート、俺達もここは撤退するぞ」
「ああ」
ヴェイガンギアの撤退、そして武装が使えなくなると言う不可解な事態を前にアセムとゼハートも撤退を始める。
「フリット、俺達も引くぞ」
「しかし、キオが!」
「近くにディーヴァもいる筈だ。そっちに任せろ。さっさとしねぇと敵の増援が来るかも知れん」
「……分かった」
キオを置いて撤退する事に躊躇いはあるものの、武装が使えない今の状況では何も出来ない事は事実。
ヴェイガンギアが撤退したとはいえ、敵の増援が来る可能性があり、その時に迎撃するなりするには一度、母艦に戻り装備を修理するか新しい物に交換しなければいけなかった。
それはアセム達の撤退理由も同じでフリットとアセムはキオを残して撤退する事に抵抗を感じながらも母艦まで撤退する。
FXの放つ虹色の光はエンジェルを包み込み、エンジェルの外で戦闘しているMSをも包み込んでいる。
そして、中のMSと同様にMSの武装が使えなくなると言う現象が起きている。
「クライド! てめぇちゃんと整備してんのか!」
「当たり前だ。そもそも、2機も同時に武装のみがピンポイントで不備が出る事はあり得ない」
F-ZEROに搭載されている見えざる傘も使用不能になり姿を現す。
ブラッディゼイドラもF-ZEROも万全に整備された状態で出撃している。
その為、整備不良から来るマシントラブルと言う事はあり得ない。
「恐らくはAGEドライヴを搭載したFXの起こした事。戦闘を止めたいと言うキオの意志がこんな形でAGEドライヴの力を引き出したと言う事か……面白いな」
クライドはこの現象はFXに搭載されているAGEドライヴが引き起こした物と考えている。
AGEドライヴが人の意志に反応して超常現象を引き起こすと言う事は何十年も前に分かっている事だ。
その発動条件は強い思いによる物だと言う事はおおよその見当はついているが、引き起こされる現象は一貫性がない。
クライドが発動させた時は黒いオーラによる物理的な攻撃と防御で、エリアルドが置きした時は自機を中心に黒いオーラが触れる物を消滅させていった。
マリィの時は青白いオーラがガンダムAGE-2とゼイドラを爆風から守った。
そして、キオは虹色の光はMSの武装を使用不能にしている。
だが、それらのデータを元にクライドはある推論を立てた。
AGEドライヴが引き起こす現象は発動者の強い思いに関係しているのではないかと言う事だ。
クライドは家族やシャルルを殺したナーガを殺すと言う強い思い、エリアルドはシャルロットの死を否定したい、つまりは強い拒絶の意志、マリィはアセムとゼハートを守ろうとした思い、キオは戦いを止めようとする思いが影響していると考えればAGEドライヴの引き起こす超常現象も説明が出来た。
「AGEドライヴにAGEシステムを搭載したガンダムか……貴重なデータが取れた。ブラッド、長居は無用だ。撤退するぞ」
「は? ふざけんな!」
「武装が使えない状況では戦えないだろう」
「……ちっ」
ブラッドも機体の武装が使えない以上はまともに戦う事も出来ないと言う事は理解できる。
その為、嫌々ではあるが、クライドと共に撤退を始める。
「父さん!」
「エリアルド、お前も撤退しろよ」
F-ZEROとブラッディゼイドラが後退し、ガンダムZERO ⅢSも撤退する。
「陛下、ガンダムが撤退して行きます!」
「構わん。どの道、こちらもこれ以上は戦えん(だが、これは一体、キオ・アスノ……貴様がやった事なのか?)」
撤退して行く、クライド達を追撃するような事はしない。
ネオ・ヴェイガンのMSも武装が使えない以上は見逃すしかない。
「我らも撤退する」
ヴァニスは指示を出すと撤退を始める。
その道中でヴァニスは咳き込み口元を押さえる。
「力を使い過ぎたか……どうやら、私には余り時間がないようだ」
抑えた手には血が付いている。
今回の戦闘でヴァニスは見えざる傘で隠れていたF-ZEROを感知する為にXラウンダーの力を使った。
全力で使った訳ではないが、力を使っただけで頭痛ではなく吐血とすると言う事はそれだけヴァニスの体が限界に近いと言う事だ。
「キオ・アスノ、近いうちに貴様との決着をつける」
ヴァニスはそう言い残してグレート・エデンに帰投する。
FXの放つ虹色の光によって戦闘が終わり、各陣営が撤退するとFXから放たれていた虹色の光が止まる。
「今のは……一体」
「キオ! 無事か!」
「はい……」
キオは自分の身に何が起きたかも理解出来てはいない。
戦いを止めたいを必死になって叫んだ後の記憶が曖昧になっている。
意識がはっきりした時には戦闘は終了し、周囲には誰もいなかった。
「セリック隊長、爺ちゃんや父さんは?」
「気づいてなかったのか、すでに撤退を終えている」
「そうですか……」
周囲に残骸がないからと言って無事とか限らなかった。
FXが不可解な現象により跡形もなく吹き飛んだと言う事も考えられた為、フリットやアセムの無事を知り安堵する。
「とにかく、ここは危険だ。すぐにディーヴァに戻るぞ」
「分かりました」
この場に残ればいつ敵が戻って来るか分からない。
ただでさえ、FXが不可解な力を発揮した以上はこの場に留まるのは危険であった。
クランシェカスタムは飛行形態に変形するとFXと共にディーヴァへと戻って行く。
こうして、各陣営のガンダムによる戦闘は幕を下ろした。