機動戦士ガンダムAGE ZERO   作:ケンヤ

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第106話

 

 

 

 グレート・エデンをディーヴァとバロノークが突破してもグレート・エデンでの戦闘は終わらない。

 ラ・グラミスへと向かった2隻を背中から撃たせない為にもホワイトファングをファ・ザードの部隊が抑えている。

 

「ゼハート様、ディーヴァとバロノークが無事にグレート・エデンを突破しました」

「そうか。フラム、我が隊はグレート・エデンの後方で対処に当たらせろ」

「はっ」

 

 ゼハートはファ・ザードからMS隊の指示を出していたフラムに指示を出す。

 ファ・ザードもディーヴァとバロノーク同様にグレート・エデンを突破してグレート・エデンの後ろを取る形になっている。

 

「敵艦には突破されて前方のはフォトンブラスター持ちに後方にはヴェイガンの戦艦……やってられないわね」

 

 レギルスTはレギルスランチャーを放つが、グランサはかわしてシールドライフルを放つ。

 その一撃はレギルスランチャーに直撃してレギルスTはレギルスランチャーを捨ててビームバルカンを連射する。

 

「フリット・アスノ……退役したっていうのなら大人しく隠居していれば良いものを」

 

 ビームバルカンをかわして、接近するグランサはビームサーベルを展開してレギルスTもビームサーベルで応戦する。

 グランサはレギルスTを蹴り飛ばしてシールドライフルを放ち、レギルスTは腕の電磁装甲で防ぐ。

 

「シェリー、そっちは?」

「うっさい! それどころじゃないのよ!」

 

 レギルスSはレギルスサイズのビーム砲をレギルスRに連射するが、レギルスRには掠りもしない。

 

「何だ。このパイロットは」

 

 レギルスRはレギルスSの攻撃をかわしながら、レギルススピアーでレギルスSの右腕を切り落とす。

 グランサの攻撃をかわしながら、レギルスTがビームライフルでレギルスRを牽制して、レギルスSの前に出てビームバルカンをグランサとレギルスRに放つ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 グレート・エデンを突破したディーヴァとバロノークのMS隊もジラードのレギルスGとコーデリアのレギルスCを戦闘にラ・グラミスの防衛隊と交戦を始めていた。

 ダークハウンドがドッズランサーで量産型レギルスを貫いて破壊する。

 

「ガンダムの相手は私がするわ。アンタ達は母艦と他のMSの相手をしなさい」

 

 レギルスGはレギルスライフルをダークハウンドに放つ。

 ダークハウンドはストライダー形態に変形して回避する。

 

「Xラウンダー仕様のレギルスか……」

 

 ダークハウンドは旋回してMS形態に変形すると、アンカーショットを放つ。

 レギルスGはシールドでアンカーショットを弾いてレギルスライフルで反撃する。

 それをかわしてダークハウンドはレギルスGにドッズランサーを突き出してレギルスGはビームサーベルで受け止める。

 

「陛下の邪魔はさせない!」

 

 レギルスCはレギルスブレイドを振るう。

 クランシェカスタムは距離を取ってドッズライフルを放つ。

 

「こいつは近接戦闘型のレギルスだ。各機距離を取って囲め!」

 

 レギルスCをアビス隊のMSが取り囲んで集中砲火を浴びせる。

 レギルスCは回避しながらレギルスブレイドで攻撃を防ぐ。

 

「その程度の攻撃で私を止められると思うなよ!」

 

 レギルスCはクランシェカスタムに攻撃を半ば無視して突っ込む。

 レギルスブレイドの一撃をクランシェカスタムはかわして至近距離からドッズライフルをレギルスCに向ける。

 だが、レギルスCは左手をレギルスブレイドから離してビームサーベルを出してクランシェカスタムに突き刺そうとする。

 しかし、その攻撃がクランシェカスタムを貫く前にレギルスCは攻撃を止めてクランシェカスタムから距離を取ると後方よりビームが横切る。

 

「セリック隊長!」

「キオか、ここは俺達で十分だ。お前は先に行け!」

「はい!」

 

 FA-FXはそのまま戦場を突っ切ってラ・グラミスに向かう。

 その道中でFXだけはヴァニスが相手をする為、一切の手出しをするなど言う命令が出ている為、ネオ・ヴェイガンのMSは1機もFA-FXを攻撃する事なく、ラ・グラミスに向かう。

 

「この感じ……ヴァニスさん!」

 

 ラ・グラミスに接近するキオは不意にヴァニスの気配を感じ取る。

 そして、すぐにビームの雨がFA-FXを襲う。

 FA-FXはビームを回避するが、ビームはフルアーマーAGE-FXを追いかけるように曲がる。

 

「ビームが曲がった!」

 

 FA-FXは追いかけて来るビームをダイダルバスーカで一掃する為にダイダルバスーカを放つが、ビームはダイダルバズーカの攻撃をかわすように曲がりFA-FXはシールドのビーム拡散フィールドを展開して防ぐ。

 

「来たか! キオ・アスノ!」

「ヴァニスさん!」

 

 フルアーマーAGE-FXの前にレギオンAEが現れる。

 そして、6基のビームガンを放つ。

 

「ヴァニスさん! もう止めてください! こんな戦いは!」

 

 FA-FXはビームをかわそうとするも、ビームはFA-FXを追尾する為、ビーム拡散フィールドで防ぐ。

 だが、レギオンAEはレギオンキャノンを放つ。

 

「ふざけた事を!」

 

 FA-FXはレギオンキャノンをシールドで防ぐ。

 

「ファンネル!」

 

 レギオンAEは10基のCファンネルを展開し、FA-FXもCファンネルを展開する。

 

「どうして、貴女はここまでして戦おうとするんですか!」

「それが私の存在だからだ!」

 

 互いのCファンネルはぶつかり合う。

 FA-FXがダイダルバズーカを放ち、Cファンネルを何機か破壊しレギオンAEのビームブラスターがFA-FXのCファンネルを破壊して行く。

 

「そんなのおかしいですよ!」

「その為に私は作られたのだ!」

 

 レギオンAEは両腕のシールドをパージする。

 そして、シールドに搭載されている補助用の光波推進システムによってシールドは回転しながら、FA-FXに向かって行く。

 二連装拡散ビーム砲が放たれてFA-FXはビーム拡散フィールドで防ぎながら1基をダイダルバズーカで撃ち落す。

 もう1基のシールドは両端からビームソードを展開した状態でFA-FXに襲いかかるが、FA-FXはギリギリのところで回避して、シールドの機体につける側からシールドランサーで破壊する。

 

「その為の力だ!」

「そんなの間違ってます!」

「間違ってなどいない! 私の力は敵を滅ぼす為の力だ! お前のガンダムもその為に作られたのだろう!」

 

 レギオンAEはレギオンキャノンを放ち、FA-FXは避けつつもシールドランサーに内蔵されているドッズガンを連射する。

 

「違う! 爺ちゃんの作ったガンダムはみんなを守る為に作られたんだ! 確かに爺ちゃんはヴェイガンを恨んでいたけど、僕の戦いを認めてくれた! だから、僕は爺ちゃんがなれなかった本当にみんなを救える救世主になるんだ! だから、貴女も救うんだ!」

「私を救うだと!」

 

 FA-FXのドッズガンがレギオンキャノンに被弾し、腕ごと吹き飛ぶ前にレギオンキャノンのもをパージする。

 そして、レギオンAEは8連装ミサイルポッドを全弾撃ち尽くす。

 それをFA-FXはダブルドッズキャノンとシグマシスキャノンで迎撃する。

 だが、その間にレギオンAEはFA-FXに接近してビームサーベルを振るう。

 その一撃がFA-FXのダブルドッズキャノンを破壊する。

 FA-FXは至近距離からダイダルバズーカを放つも回避されるが、すぐにドッズランサーを突き出してレギオンAEのシグマシスキャノンごと肩の翼を貫く。

 レギオンAEはFA-FXのシールドスピアーを蹴り飛ばそうとするも、無理やりビットの発生装置を脚部に内蔵したせいで脚部の耐久力が低下していた為、レギオンAEの足の装甲が弾け飛ぶ。

 

「貴女の心は泣いてる! 僕はそれを感じたから貴女を救いたい!」

 

 FX-FXは装甲に内蔵されている小型のカーフミサイルを連射する。

 レギオンAEはシグマシスキャノンで迎撃し、デルタゲイザーを放つ。

 

「不完全な心などとうに捨てた!」

「捨てきれないから僕は貴女の心を感じる取る事が出来たんです!」

 

 レギオンAEの左腕のビームバスターがダイダルバズーカに掠って、FA-FXはダイダルバズーカを捨てる。

 レギオンAEは右手にビームサーベルを展開して、FA-FXに接近し、FA-FXもビームサーベルで応戦する。

 

「そんな戯言を言う為に私の前に出て来たと言うのか! キオ・アスノ!」

「戯言じゃない! 僕は本気です!」

 

 FA-FXがレギオンAEのビームサーベルを弾き上げてシールドランサーのシールドの部分でレギオンAEをラ・グラミスの方まで押し込む。

 2機はラ・グラミスのハッチに突っ込み、FA-FXはそのままレギオンAEを格納庫の地面に押し付けたまま引きずる。

 その時に衝撃でレギオンAEのシドの羽根が肩についている根本からシグマシスキャノンごともげ装甲のところどころが破損する。

 FA-FXはラ・グラミス内の格納庫にレギオンAEを押し倒すが、レギオンAEもビームブラスターをFA-FXの距離から放つ。

 FA-FXはシールドランサーをパージして距離を取る。

 レギオンAEの放ったビームはシールドランサーを破壊してラ・グラミスにも被害を与える。

 FA-FXが距離を取った事でレギオンAEも立ち上がる。

 FA-FXは追加装甲をパージする。

 

「私は……勝つ! 敵に勝利し私が最強である事を証明する!」

 

 レギオンAEは右手にビームサーベルを展開してFXに突っ込む。

 FXも両手にビームサーベルを展開して迎え撃つ。

 

「私は最強でなければならない! その為には誰にも負けない完璧な存在でなければいかんのだ!」

 

 レギオンAEの斬撃をFXはビームサーベルを使って弾く。

 

「そんな事をしてもクライドさんは喜んではくれません!」

「あの男は関係ない!」

「関係あります! 貴女はお父さんに認めて欲しいからこんな事をしてるんでしょ!」

「黙れぇぇぇ!」

 

 レギオンAEは左腕のシグルクローを腕を伸ばしながらFXを攻撃する。

 腕を伸ばした瞬間にFXは機体の姿勢を少し低くして一歩前に出る。

 左腕の伸縮機構は腕を伸ばして事で敵が間合いを取り難くする為の機構であったが、FXが一歩前に出た事で逆にFXに懐に入り込まれる形となった。

 シグルクローの一撃はFXが機体の姿勢を低くした事でFXの頭部を破壊するだけで終わる。

 FXのコックピットは一瞬だけノイズが走るもすぐにサブカメラからの映像に切り替わる。

 そして、FXはビームサーベルでレギオンAEの左腕を肘から切り落とす。

 レギオンAEは機体を下げながら股の下からデルタゲイザーを放つ。

 室内で余り動く事は出来なかったが、ギリギリのところでFXはビームを回避する。

 

「黙りません! 何度でも言います! 貴女はお父さんに認めて欲しいだけなんです!」

「黙れと言った!」

 

 レギルスAEは腰のシグマシスキャノンをFXに向けて放とうとする。

 しかし、シグマシスキャノンは放たれる事は無かった。

 

「エネルギーが足りないだと! こんな時に!」

 

 レギオンAEは大幅に火器を追加した事で火力が格段に向上している。

 それによって様々な欠陥が生じている。

 その中にエネルギーの問題がある。

 火力を増強してもエネルギー系の改良が殆どされていない為、余り派手にビームを撃ち続けるとすぐにエネルギーが足りなくなる。

 その為、シグマシスキャノンを撃つだけのエネルギーがすでにレギオンAEには残されていない。

 シグマシスキャノンの攻撃が不発になった事で出来た隙でFXがビームサーベルを振るう。

 レギオンAEは後ろに下がるも胸部のビームブラスターに掠り胸部が少しビームサーベルで切られる。

 レギオンAEはビームサーベルを振るい、FXは右腕で受け止める。

 エネルギー不足でビームサーベルの出力も低下しており、FXの右腕を切断するには至らないが、右腕の装甲に内蔵しているビームサーベルを潰す事は出来た。

 そして、レギオンAEは股の下からデルタゲイザーをFXの至近距離から放つ。

 FXはとっさに左腕で胴体を守った。

 デルタゲイザーの出力も低下しているが、至近距離であった事からFXの左腕の装甲は吹き飛びフレームが露出する。

 

「お前を倒して私はぁぁぁぁ!」

「ヴァニスさん!」

 

 レギオンAEはビームサーベルを突き出してFXは右手を突き出す。

 そして、2機はぶつかる。

 FXの右手の拳はビームサーベルですでに切り込みの入っていた胸部に突き刺さるが、レギオンAEのビームサーベルはFXの胴体には刺さる事もなく、横にそれてFXの脇腹の装甲を少し焼くだけだった。

 レギオンAEはメインシステムが機能が停止し、FXも損傷からAGEドライヴの出力が低下して膝をつく。

 

「負けた……私が負けたのか……」

 

 ヴァニスはこの事態に茫然と呟く。

 状況的には相討ちとも取れるが機体の損傷を見ればどちらが敗北しているかは明らかだ。

 レギオンAEはメインシステムの停止しているのに対してFXは出力が低下しているが、まだ動く事は出来る。

 

「何故だ……私は感情を捨て完璧な存在となって最強である事を証明する筈だった……」

「感情を捨てればそれは機械と同じです。人は機械にはなれないし、なっちゃダメなんです。僕達は人間なんですから……僕達、人間は確かに不完全なのかも知れませんですが、不完全だから強くなる事も出来ます。僕がヴァニスさんに勝つ事が出来たように……」

「人間……」

 

 キオにそう言われてヴァニスはふと思い出す。

 クライドは持論としてMSはどこまで言っても人間の道具でしかないと言う事を思い出す。

 そして、なぜクライドが自分を最強のガンダムのパイロットになる事を否定したのかに気が付いた。

 かつて、ヴァニスは自分を最強のガンダムを完成させる部品であると自分を規定していた。

 だからこそ、クライドはヴァニスを最強のガンダムのパイロットにはしないと言った。

 それはクライドの持論であるMSはどこまで言っても人の道具であると言う事から逸脱した事だからだ。

 

「ははは……そういう事だったのか……」

 

 ヴァニスはクライドの真意に気が付くと乾いた笑い声をあげる。

 気づいてしまえば簡単な事だった。

 ヴァニスは無駄に複雑に考えたが、結局、人間でないから乗せないと言う事であった。

 それに気が付いたら、今までのヴァニスの行いが馬鹿らしく思えて来る。

 自身の最強を証明する為にヴェイガンを利用し、世界を敵に回した。

 それらの全てが滑稽に思える。

 

「私は大馬鹿者だな」

「ヴァニスさん?」

「……エリスだ。エリス・アスノ……それが私が父さんから貰った。私の名だ。キオ、お前は私に勝ったのだ。聞く権利はある」

 

 ヴァニスは初めて自分の敗北を認めた。

 そして、今まではクライドしか知らなかった本当の名を告げる。

 エリス・アスノ、それがヴァニスがクライドによって付けられた本当の名前であった。

 

「エリスさん……良い名前です」

「どうだろうな。父さんは母さんの名前から取ったと言うが同時に不和と争いの女神の名でもある。父さんは実に物騒な名前を付けてくれた」

 

 ヴァニス……エリスはそう言うがキオはエリスが自分の名前を嫌っているようには思ってはいない。

 

「でも……どうして僕に?」

「何でだろうな……誰かに私の存在を覚えていて欲しかったからかも知れん。キオ、お前は私の事を覚えていて欲しい。そして、キオ、お前は変わってくれるなよ。お前はこの私に勝ったんだ。その義務はある。もしも、お前が変わってしまったら、第2第3のヴァニス・イゼルカントが現れるだろう」

「……分かりました」

 

 キオにはヴァニスの言葉が遺言に聞こえた。

 ヴァニスは全ての力を出し尽くしたが、キオに敗北した。

 そして、ヴァニスの体はすでに限界に達している。

 ヴァニスはキオに敗北し、自分の死を受け入れていた。

 故に最後にキオに自分の本当の名を伝えた。

 偽りの名で死んでいくのではなく、本当の名で死に行く為にだ。

 

「陛下!」

 

 死を待つだけのエリスにラ・グラミスの司令室からの通信が入る。

 

「何だ」

「内部での戦闘の影響でディグマゼノン砲のコントロールが効かなくなりました!」

 

 ラ・グラミス内部でレギオンAEの放ったビームはラ・グラミスの管制に打撃を与え、その結果ディグマゼノン砲の制御が効かなくなると言う事態と生じさせた。

 いつでも発射が出来るようにしておくように指示を出した事を考えると制御を失ったディグマゼノン砲は連邦首都ブルーシアを焼く事になるだろう。

 

「そうか……すぐにラ・グラミスを破棄して脱出しろ」

「は? しかし……」

「これは命令だ。ラ・グラミスを破棄した後、ディーヴァに投降しろ。この戦いは私達の負けだ」

 

 エリスはラ・グラミスの司令部に指示を出す。

 エリスがキオに敗北した時点でネオ・ヴェイガンの敗北が確定したも同然であった。

 その為、ラ・グラミスを破棄して降伏をさせる。

 

「ジラード、聞こえるか?」

「ヴァニス?」

 

 司令室の次に外で戦闘しているジラードに通信をつなぐ。

 ジラードはいつもと感じが違う事に少し戸惑っている。

 

「ラ・グラミスは破棄する。お前はラ・グラミスから脱出した将校を回収して投降しろ」

「投降って……まさか」

 

 ジラードも投降すると言う事はエリスが敗北したと言う事を悟る。

 

「すべての責は私が背負う。ジラード、お前は後を任せる」

 

 エリスはジラードの返事を聞く事なく一方的に通信を終える。

 

「エリスさん、一体何が……」

「ディグマゼノン砲のコントロールを失った。このままではブルーシアが討たれる」

「そんな!」

 

 キオもブルーシアがディグマゼノン砲で撃たれればどれだけの被害が出るかは容易に想像がつく。

 

「安心しろ。私が何とかする」

「どうするんですか?」

「ディグマゼノン砲にエネルギーをチャージしているエネルギーコアを破壊する。そうすればラ・グラミスを破壊する事は出来んが、ディグマゼノン砲を撃たせない事は出来る」

 

 レギオンAEは脱出時のサブシステムが立ち上がり、バックパックのミサイルポッドがパージされてレギオンコアが本体から切り離される。

 

「エリスさん!」

「ここも危険だ。キオ、お前はラ・グラミスから離脱するんだ」

 

 エネルギーコアを破壊した場合、ラ・グラミスを破壊する程の爆発は起こせないがそれでもここまで爆発の影響があると推測できる。

 その為、エリスはキオにも退避するように警告する。

 エリスは通信を強制的に閉じるとラ・グラミスのエネルギーコアに向かう。

 キオもエリスを追おうとするも、機体のダメージから機体を動かす事も出来ず、コアファイターに分離する事も出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ヴァニスのジラードへの通信が一方的に閉じられても戦闘がすぐに終わる事は無かった。

 レギルスGにギラーガ改とGサイフォス・ブレイヴがビームを放ち、レギルスGはかわしてレギルスライフルで応戦する。

 ダークハウンドがビームサーベルを投擲し、レギルスライフルに突き刺さった為、レギルスGはレギルスライフルを捨てる。

 

「どういう事だ?」

 

 戦闘が続く中、ラ・グラミスから脱出艇が何隻も出て来る。

 

「どういう事だ! ラ・グラミスを破棄すると言うのか!」

「さっき、ヴァニスから通信があったわ。ラ・グラミスは破棄、私達は投降しろとの事よ」

「馬鹿な! 陛下が負けるなどあり得ない!」

「でも、それが現実よ」

 

 コーデリアはあくまでもヴァニスが負けるなどあり得ないと思っているが、ラ・グラミスを破棄するだけならともかく、親衛隊の自分達に投降するように指示を出したと言う事はヴァニスがキオと戦い敗北したと言う事に他ならない。

 

「だが!」

「投降しろと言うのが最後の命令よ。ヴァニスは自分の責任を全うしようとしているわ。なら、親衛隊の私達も自分の責任を全うする事がヴァニスに対する忠義でしょ」

 

 どういう訳か、ヴァニスはネオ・ヴェイガンの女帝としてその責任を取る為に命を捨てる気でいると言う事はジラードも分かった。

 その為、親衛隊としてヴァニスの最後の命令を聞き、投降する事がヴァニスに対する忠義であるとコーデリアを諭す。

 ジラード自身も投降する事は余り気が進まない。

 ディーヴァは今は連邦軍を離れてはいるが、戦いが終われば連邦軍に復帰するだろう。

 そうなれば、自分達の身柄も連邦軍に引き渡される事になるだろう。

 しかし、ネオ・ヴェイガンの将校として、投降する事が敗北の決まった戦いで部下を死なせない事に繋がると言うのであれば戦闘を終わらせる為に投降する事は自分の立場の責任を果たすと言う事だ。

 かつて、ジラードの上官は事故を隠蔽して自分の責任を逃れた。

 そんな連邦軍に復讐をする為にジラードはヴェイガンに寝返り、ネオ・ヴェイガンについた。

 敗北が決まった現状で、自分の責任を果たす事が連邦軍に対する最後の復讐となる。

 

「……了解だ」

 

 コーデリアもそれがヴァニスの指示であるのであれば敵軍に下る決心もついた。

 

「ラ・グラミスを破棄するのか? キオが勝ったのか?」

 

 敵がラ・グラミスから脱出する事でキオが勝ったと言う可能性も考えられるがラ・グラミス内部に二人のMSが入ってから中の情報が入って来ない為、判断する事が出来ない。

 だが、ダークハウンドのコックピットに何物かからラ・グラミスの内部構造と位置データが送られて来る。

 

「これは……キオが危ないだと」

 

 そこに内部構造と位置データだけでなく、キオを助けに行かねばキオが危ないと言う事も書かれている。

 

「スラッシュ、ティアナ。ここは任せた」

 

 ダークハウンドはストライダー形態に変形してキオがいると思われる場所に向かう。

 スラッシュとティアナはラ・グラミスに向かうアセムの妨害をされないように身構えるも、やがてラ・グラミスから出て来た脱出艇が降伏信号を出して戦闘は収束する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ラ・グラミスでの戦闘が収束に向かった事でラ・グラミス付近の戦闘の反応が少なくなっている事がグレート・エデンの方でも確認できる。

 

「戦闘が終わったの? 状況はどうなっているの?」

 

 タチアナはグレート・エデンに状況を確認する。

 グレート・エデンの方でもラ・グラミスの状況を何度も確認しているが、余り正確な情報は掴めてはいないようだった。

 だが、タチアナはラ・グラミスの動きから戦いはネオ・ヴェイガンの敗北で終わったと判断した。

 

「シェリー、もう良いわ。止めなさい」

「何で! ここで少しでも結果を出さないと私達は切り捨てられるのよ!」

「もう終わったのよ」

 

 レギルスTがレギルスSのまでに出る。

 

「グレート・エデン、私の権限でラ・グラミスは破棄されて戦闘は我が軍の敗北と判断するわ。すぐに降伏の信号を出しなさい」

 

 グレート・エデンのブリッジクルーは戸惑うも、ラ・グラミスの動きを考えればそれも考えられ、親衛隊のタチアナの指示と言う事もあり、すぐに降伏を伝える信号弾が撃たれる。

 

「あの信号弾……降伏すると言うのか?」

 

 グレート・エデンから降伏の信号が撃たれた事で戦闘は中断する。

 

「てことは、キオの奴……やりやがったな!」

「当然だ。私の孫だぞ」

 

 グレート・エデンが降伏したと言う事はラ・グラミスでの戦闘に決着がついたと言う事だ。

 そして、戦いはキオが勝ったと言う事でもある。

 

「で、どうすんだ。フリット、敵は降伏してんだ。今が最大のチャンスだ」

「敵が降伏したのだ。戦いは終わりに決まっている」

 

 ウルフも本気で降伏した敵を撃つ気は無いが、フリットを最後に試した。

 フリットはアセムやキオに任せたとは言え、完全にヴェイガンに対する憎しみを捨てた訳ではない。

 その為、敵を撃つ最大の好機ではあったが、フリットは引き金を引く事は無い。

 それはヴェイガンがかつては動けないMSを破壊するなど非人道的な行動に対する当てつけと言う意味もあったのかも知れないが、少なくとも憎しみと言う感情よりも降伏したと言う理性が勝ったと言う事になる。

 

「だな」

 

 50年来の戦友が人としての道を踏み外す事の無かった事にウルフは安堵し、降伏した敵部隊の受け入れの準備を始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エリスがエネルギーコアを破壊に向かい、キオはエリスを追いかけようとするがFXは動く事は無かった。

 そして、位置情報を元にアセムのダークハウンドがFXの元にたどり着く。

 

「キオ! 無事か!」

 

 レギオンAEにレギオンコアが無い為、周囲を警戒しつつ、ダークハウンドはレギオンAEをどかしてFXの前でハッチを開く。

 

「父さん……」

 

 FXのハッチが開き、FXからキオが出て来てダークハウンドに飛び移る。

 

「キオ、ヴァニスはどうした?」

 

 キオの様子がおかしい事に気が付きつつもこの場にいないエリスの事を尋ねるとキオは明らかに反応して涙を流す。

 

「エリスさんは要塞砲のエネルギーコアを破壊しに……僕はエリスさんを救いたかった……でも!」

 

 キオは今まで我慢していたのか、アセムの胸にうずくまり大粒の涙を零す。

 アセムもおおよその事態は呑み込めた。

 キオの言うエリスとはヴァニスの事だろう。

 アセムの知る限りフォルスと言う名は偽名で恐らくはヴァニスと言う名も偽名であると考えられた。

 エリスと言う名も偽名である可能性もあるが、今はエリスがアセムの知るヴァニスを指している事が分かれば良い。

 そして、エリスはラ・グラミスのエネルギーコアを破壊しに向かったと言う事になる。

 エネルギーコアを破壊すれば爆発は掃討の規模となる。

 かつて、アセムが宇宙要塞ダウネスを破壊した時よりも大規模になる事は確実だ。

 キオの反応から考えるとエリスは死ぬ事を分かっての行動だろう。

 

「救えなかった……ようやく理解し合えたと思ったのに……」

「いや……お前は救えたさ……ヴァニスの心を」

 

 アセムの知るフォルスもヴァニスも他人の為に命を捨てるような事はしない。

 もしも、自分と他人の命を天秤にかけた場合、躊躇う事もなく自分の命を選択する。

 そんなエリスが自分の命を捨てようと言うのだ、それはエリスの心がキオとの戦いを通して何かが変わったと言う事だ。

 何をどう変えたのかアセムには分からないが、キオがせめてエリスの心を救ったと信じたかった。

 アセムは泣きじゃくるキオを抱きしめながらそういう。

 

「エネルギーコアを破壊すると言う事はここも危険だ。すぐに離脱するぞ」

「待って! 父さん!」

 

 ダークハウンドは再びストライダー形態に変形すると、最大速度でラ・グラミスから元来た道を戻って行く。

 キオはエリスを助けたいと言っているが、状況的に自分達が離脱するので精一杯だ。

 誰が位置情報を送って来たかは分からないが、送って来た相手はアセムにキオを助け出させたいとアセムは考えていた。

 ダークハウンドは止まる事なく、ラ・グラミスから離脱する。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 エネルギーコアに到着したレギオンコアはそのまま滑り込むように止まる。

 レギオンコアからエリスは降りるとすぐにエネルギーコアの管制室に入る。

 ヘルメットを脱ぎ捨ててエリスはコンソールを操作したエネルギーコアの現在の状態を確認する。

 

「エネルギーの充填率は60%か……間に合ったようだな」

 

 まだ、ディグマゼノン砲のエネルギーが半分程度しかチャージされていないと言う事は不幸中の幸いであった。

 これなら十分に対処は可能だ。

 

「蓄積したエネルギーを暴走させれば自爆も出来るだろう」

 

 充填率が60%と言ってもディグマゼノン砲程のビーム砲ならば相当のエネルギー量になる。

 それを意図的に暴走させる事が出来ればエネルギーコアを破壊してディグマゼノン砲の発射を阻止する事は出来る。

 

「全く……こんな事が出来るのも考え物だな」

 

 エリスがエネルギーコアを意図的に暴走させて破壊すると言う事が出来るのもクライドからある程度の技術を教えられているからであった。

 CMCに潜入する前に工作員としての訓練は一通り受けている。

 まさか、その時の訓練が今になって活きて来るとは奇妙な縁だ。

 

「だが、感謝しないとな」

 

 エリスはコンソールを操作して、エネルギーコアに蓄積されているエネルギーを暴走させる手筈を整えた。

 エネルギー量は60%しか溜まっていない為、すぐに暴走する事は無いがいずれは暴走して爆発を起こす事は確実となった。

 

「これで良し」

 

 準備を終えたエリスはレギオンコアへと戻る。

 レギオンコアのシートに座るとエリスは一息つくと同時に吐血する。

 キオとの戦いでは常にXラウンダー能力を全開で使っていた為、そのつけが今になって出て来たのだ。

 

「死ぬ時くらいは自分のMSの中で死にたいか……どうやら、私はパイロットのようだ」

 

 エリスは自傷気味に笑みを浮かべる。

 最後にレギオンコアに戻ったのも、最後は自分のMSの中で死にたいと思ったからだ。

 そして、それはパイロット特有の考えであると気付き、結局エリスはパイロットであると思い知る。

 

「お前には少し無理をさせてしまったな……」

 

 エリスはコックピットの操縦桿を優しく撫でる。

 最後は力に固執する余りにレギオンに無茶な改造まで施してしまった。

 もしも、クライドが知れば無茶な改造に怒るだろうなとうっすらを考える。

 そして、レギオンコアのモニター越しにエリスは巨大な死神を見る。

 右手には巨大な鎌、左手には生首を持っているMSサイズもあろうかと言う死神だ。

 

「迎えが来たか……そう言えばキオは無事に脱出しただろうか」

 

 巨大な死神を前にエリスは置いて来たキオの事を思い出す。

 レギオンAE程ではないがキオのFXも少なからず損傷を受けている。

 下手をすればキオは脱出できないでいるかも知れない。

 

「大丈夫だ」

「ああ……幻聴まで聞こえて来た。最後に聞く声が父親だと言うのは私も大概だな」

 

 エリスは薄れゆく意識の中、クライドの声が聞こえた気がするが、クライドがこんなところにいる訳もなく幻聴だと思っていたが、クライドは空きっぱなしのレギオンコアのハッチからコックピットの中に身を乗り出していた。

 エリスが巨大な死神だと思っていたのもクライドがここまで乗って来たF-ZEROであった。

 F-ZEROがシグルサイズを持っている為、意識が朦朧としていた事もあり、エリスには自分を迎えに来た死神に見えていた。

 

「お前のご執心のキオは俺がアセムに位置情報を教えて置いてさっき、アセムが回収した」

 

 アセムに送られて来たキオの位置情報はクライドが送った物であった。

 この戦闘を見えざる傘を展開してクライドはモニターしており、キオとエリスの状況は常に把握した状態だった。

 

「だからキオは無事だ。AGEデバイスとAGEドライヴを捨てて行ったのはいただけないがな」

 

 クライドの手にはAGEデバイスが握られている。

 キオがダークハウンドに乗り移った時にAGEデバイスはFXにセットされたままであった。

 エリスの件もあり、キオはそこまで考えが回らず、アセムもキオが無事な事に安堵してAGEデバイスの事はどうでも良かった。

 アセムが去ったところを見計らいクライドはFXにセットされたままのAGEデバイスを回収し、FXに搭載されているAGEドライヴも回収していた。

 エリスが生首を見間違えたのは回収したAGEドライヴであった。

 

「そうか……それは良い情報だ」

「さて、気が済んだか? 家出娘」

「ああ……気が済んだ。もう、思い残す事は何もない」

 

 エリスはそう言い意識を失う。

 すでにエリスの体は度重なる無茶のせいで限界であった。

 目を閉じたエリスの顔は非常に安らかであった。

 だが、クライドはそんなエリスを気にする事なく抱きかかえる。

 エネルギーコアのある一帯は低重力下である為、クライドでもエリスを抱きかかえる事が出来た。

 

「悪いけど、ここでエリスを死なせる気はないんだよな」

 

 クライドはエリスを抱きかかえるとF-ZEROに乗り込む。

 F-ZEROは見えざる傘を展開して、ラ・グラミスから離脱する。

 F-ZEROが離脱してしばらくすると、エリスが仕掛けた通りにエネルギーコアが暴走して爆発を起こした。

 その爆発はレギオンAEとFXを飲み込んで行く。

 ラ・グラミス全体からすればラ・グラミスが崩壊する程の爆発ではないが、エネルギーコアが破壊された事でディグマゼノン砲を放つだけのエネルギーがなくなりディグマゼノン砲が放たれる事は無かった。

 その後、ラ・グラミスは陥落しネオ・ヴェイガンの女帝、ヴァニス・イゼルカントは戦死し親衛隊も連邦軍に投降したと言う事もあり、絶対的な支配者であったヴァニスを失ったネオ・ヴェイガンに戦いを続ける力もなくネオ・ヴェイガンの勢いは一気に失速して連邦軍に投降する者や再び寝返る者も多数出て来る事になる。

 結果、ネオ・ヴェイガンは連邦軍との戦闘に敗れた事になる。

 それにより天使の落日から64年に渡る地球火星圏における戦争は一時の休戦状態となり武力衝突は一時的な終結となった。

 

 

 

 

 

 

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